その紫陽花は時を超える

アカウントは非公開設定のはず…

学校って、何をするところなんだろう。

一人で帰り道を歩きながら、考えてみる。


物事学ぶ場所。


生き方を学ぶ場所。


思い出を作る場所。



私は、どれも達成できそうにないな。


こういうセリフって力なく笑いながら言うものなんだろうけど、今の私にはその気力もなかった。



暮井あかり、15歳。

普通の中学3年生の筈だった。


友達だっていたし、好きな教科も嫌いな教科もあった。受験して、普通の高校生になる予定だった。



でも、今は、そんな日常は無いし、そんな未来になるとも思えない。






いじめ。


まあ、よくある話といえばそうなのかもしれないけれど、私はクラスで孤立した。


誰も私に話しかけてくれないし、クラスLINEからは削除された。虐めてくる子は一部で、それ以外は遠巻きに見ているだけだけれど。


まあ、何でもいいんだ。



学校に何の意味も見いだせない。



友達だと思っていた子達も、何も話してくれない。



一体何が悲しくて、こんな人生をこのまま続けなければいけないの？







もう、終わりにしよう。









小学生の時、いつも遊んでいた裏山。





山の中腹、切り立った崖。






ここなら、誰にも迷惑かけ無いから良いよね。





お父さん、お母さんには申し訳ないと思ってるよ。

でも、こんな地獄みたいな傷を引きづって、これから生きていくなんて私には無理なんだ。


あはは、弱いなあ…




崖の先に向けて、まず一歩を踏み出す。




「ひえっ…」


…怖い。


おかしなものだな、と思った。

生きる意味なんて無いと思ってるのに、死ぬのも怖いなんて。じゃ、どうすればいいの。



けれど、戻りたくない。



あの日常に。






もう一歩を踏み出すんだ。





「ピロン！」






LINE？


お母さんかな。



自殺に向けて、あんだけ現実離れした気分でいたのに、一気に現実に引き戻されてしまった。




ポケットからスマホを取り出し、通知を確認する。



表示されていたユーザー名は、見慣れない物だった。



「あおい…？」



そんな友達はいないし、記憶にもない。



『届いてる？』
『見えてたら何らか返信お願いします』


LINEで、勝手に友達追加されてる？




『友達ではないユーザー』と警告が表示されている。




出会い厨か何かだろうか？





ブロックしようとも思ったが、何となく友達追加してみる事にした。今まさに死のうとしてるタイミングで邪魔するなんて、偶然にしては出来すぎてるし、どんなやつなのか少し興味があった。


『届いてます。あなたは誰ですか？』



『僕はあおい。大学生です。あなたの名前は？』


LINEだから名前は見えてるはずなのに、なんで聞いてくるんだろう？


『私はあかり。何で連絡してくれたんですか？』


『何でだろう…そう、話をしたかったんだ。』


この時は、変な人だとしか思わなかった。



そして、自殺をするつもりだったことなんてろくすっぽ頭から抜け落ちて、私は家に帰った。