きずな食堂へようこそ！

新しい友達

きずな食堂での日々は静かに流れていた。ナオキは新しい友達が少しずつ増えていくのを感じていた。特に仲良くなったのはタモツという男の子だった。タモツはナオキとは学区が違っていたけれど、同じ中学一年生で、柔らかい長めの髪が特徴だった。彼はいつも明るく、周りの子供たちを励ます存在だった。

タモツの服は清潔だったが、少ない枚数を着回しているため、いつも少しよれていたり、ほつれがあったりした。彼の家が経済的に困っていることは、自然と想像できた。けれども、タモツの表情はその大変さを微塵も感じさせず、いつも生き生きとしていた。

「やっほーナオキ！」

タモツはナオキよりも少し小柄だったが、きずな食堂で会うといつも元気いっぱいに声をかけてきた。ナオキも自然と笑顔になり、手を振り返す。

秋の涼しい風が吹き始める頃、ナオキはタモツと同じテーブルで食事をする機会があった。温かい食事をしながら、タモツは家族のことを話し始めた。

「うちの両親は今、事業に失敗して借金を返済中なんだ。簡単に返せる額じゃないらしい。」

タモツは口の中の食べ物を毎回きちんと飲み込んでから話を続ける。ナオキはその重い話題にどう返答していいかわからず、困ってしまった。

「でも僕たち家族は絶対に諦めないよ。」

黙ってしまったナオキに、タモツはニカッと笑いながら明るい声で言った。その言葉に、ナオキは心が動いた。自分の家庭の状況を明るく話すタモツの姿に、彼の強さと前向きな姿勢を感じたのだ。

「タモツは本当にすごいね。僕なんか、いつも自分のことでいっぱいいっぱいだ。」

ナオキは正直な気持ちを伝えた。

「そんなことないよ、ナオキも頑張ってるじゃんか。きずな食堂のみんなで支え合っていこうよ！」

タモツは屈託なく答えた。その笑顔は、秋の夕日が暖かく包み込むように、ナオキの心に温かい光を灯した。

タモツはきずな食堂の中で、他の子供たちも励ます存在だった。ある日、食堂に新しく来たまだ小学校前低学年くらいの男の子が緊張して一人で座っているのを見たタモツは、その子に優しく話しかけた。

「初めて来たの？僕はタモツっていうの。一緒にご飯食べよう！」

タモツの優しい声かけに、その子は少しずつ緊張をほぐし、笑顔を見せるようになった。外の木々が色づき始め、秋の深まりを感じさせる頃だった。

ナオキはそんなタモツの姿を見て、自分ももっと周りの人を支えたいという気持ちが芽生えた。彼の心には、タモツの強さと優しさが深く刻まれていく。

ナオキとタモツは次第に打ち解けあい、きずな食堂での時間を多く過ごすようになった。二人は学校の話や将来の夢、家族のことなどを語り合い、互いに励まし合った。冬の冷たい風が吹き始める頃に、二人の友情はさらに深まっていった。

「ナオキ、僕たちがここで出会えたのは、きっと意味があるんだよ。」

タモツはある日、冷たい風を受けた頬を赤くしながらそう言った。

「うん、そうだね。僕もそう思うよ。」

ナオキはタモツの言葉に深く頷いた。