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最終章 僕は日向の道を歩けない

月影のいない世界

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 目を覚ました私は病院のベッドで寝ていた。
「目を覚ましたか」
 ベッドの傍にはお父さんがいた。
「お父さん、月影が・・・・・・」
 私がそう言ってベッドから出ようとしたらお父さんは私の肩に手を置いて言った。
「月影くんは死んだんだろう。悲しい思いをしたんだろうな。しばらくはここでゆっくりしていなさい」
 話していると飲み物を買いに行っていたお母さんが帰ってきた。
「目が覚めたのね、よかった。これ、あなたの好きなカフェオレよ」
その時、1つ飲み物が多いことに気づいた。
「そのブラックコーヒーは?」
私がそう聞くとお母さんは言った。
「あ。月影くんの分まで買ってきちゃったわ。もういないのにね」
そう言ってお母さんは苦笑した。だけど、その後、私たちは黙り込んだ。
 月影がいない世界。私たちはその世界で生きていかなければならないと気づかされた。

 あれから一週間たち、私は退院したので学校に行くことにした。
「やっと学校に行けるね、月影」
私はそう言ったが、隣には誰もいなかった。いつも一緒にいた人がいなくなるとこんなに寂しいと私はこの時に知った。
「おはよう、光」
 寂しい思いをしていた私に翔子が声をかけてくれた。
「おはよう、翔子。宗輔くんは?」
 そう問うと翔子はこう言った。
「寝坊してしまったから先に行っといてだって」
「ふーん」
 そうして私たちは話しながら学校に行った。

 学校が終わり、私は自動販売機で月影がよく飲んでいた缶コーヒーを買って月影のお墓に来ていた。
「はい、月影」
そう言って私は缶コーヒーを置いた。
「ありがとう」
 そう月影は言ったように思えた。だけど月影はもういないんだよね。そんなことあるはずない。だけど、私は月影と話すかのようにお墓に向かって話していた。すると私は涙を流していた。
「寂しいよ、月影。なんで、なんで死んでしまったのよ!!」
私はそう言って泣いた。

 家に帰ってきた私は自分の部屋にいた。
「あ、課題しなくちゃ」
そう言って私は机の上にノートを出し、机の引き出しを開けた時だった。引き出しの中に一通の手紙があった。

 私はその手紙を読み終えて涙を流しながらこう言った。
「何死んでるのにかっこつけてるのよ。しかも日本語もめちゃくちゃじゃない」
そう言って私は苦笑した。

 これは世界で1番不運な少年の悲しくバカバカしい物語となって語られるようになった。

        終
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