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第77話 魔王の遠征
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「いやあ、ここが魔導学院か。結構凝ったはりますな」
「ボヤシさん、魔王連れて来たよ」
『ま、ま、魔王?!』
「烏丸鳳凰っちゅうもんです。生前は百田せんせがえろうお世話になったそうで」
「この人まだ生まれてないよ」
『え? あのマジナッ様の手記に書いてあった助手のかたですか?』
「へえ、そうですね」
『魔王? え? 助手? ……どゆこと?』
「こんぐらしかぼやしぼしびんたはったくっど!」
『ひぃっ!』
「なんて?」
「もうちょっとしゃっきりしたほうがいいよって」
「なんやらもっと荒々しいこと言わはったような気ぃしたけど」
『それで、今日はなんのご用で……』
「ああ、前に見せてくれた鏡をちょっと使わせてもらえないかと思ってな」
「しばらく借りてもいい?」
『あ、はい。わりとすぐ作れますので』
「なんかちょっと従順な感じになってる?」
「虎彦、脅しはよくないぞ」
「かつあげかいな?」
「かつあげってどんな料理ですか?」
「暗黒騎士団長はん、冗談きっついわあ」
『暗黒騎士団長? 魔王の配下ですか?』
「エドさんが遠い目をしている」
「話を戻すけど、すぐ作れるならもう二~三枚用意してもらえないかな?」
『それなら在庫がありますよ。なにせしばらく研究に行き詰ってヒマでしたからね』
「財布持たしちゃいけないタイプの大人だ」
『それにしてもこんなもんなにに使うんですか? 覗きくらいしかできないでしょう? あ、まさか!』
「ちょっと、むしろまさかなんだけど」
『いや、まさか!』
「ヒマだとよくないことに手を染める人っているよね。衛兵さ~ん」
『ちょ、違いますよ。前に覗きで捕まった職員はいましたけど、わたしじゃありませんからね!』
「その覗き鏡、ちょっと見せてくれへん? どんな仕組みになってんの?」
『あ、ああ! それはですね……』
「よし、この流れで包み隠さず研究内容を吐くはず」
「おぬしもワルよのう、虎彦」
「トラ様も貴族のようなことができるんですね」
「あ、暗黒騎士団長戻ってきた」
「あ、また遠くに行っちゃった」
『……それでこのレジスタに座標情報を書き込めばつながるんですが、たまたまちょっと容量に余裕があって、こないだトラ様が複雑な座標情報に加えて時刻情報まで書き込んで……』
「専門家の話になってる」
「カラスさんならついていけそうだしな」
「辰巳は参加しなくていいの?」
「俺はこないだ見たから大体わかってる」
「ほう。じゃあ日本の座標を言ってみて」
「ムリ」
「一ミリ秒も考えずに即答したね」
「なんか呪文唱えてただろ」
「呪文じゃないよ。tvelachartoschemxkajaphghurrqhfjyrwenだよ。世界の相対位置と距離とねじれと因果係数を指定して特定の世界とつなげるための式だよ」
「なんか呪文唱えただろ」
「お二人がいつもと逆みたいでおもしろいですね」
「あ、戻ってきた」
「エドさん虎彦の言ってることわかる?」
「わたしもカーさんに説明してもらったことがあるんですけど、全然わかりませんでしたよ」
「オレもさっぱりだけど、毎日見てたらなんとなくわかってくるよ」
「世界を渡る転移魔法陣を見慣れてるのは虎彦くらいだよな」
「壁紙の模様みたいなもんだよ」
「壁紙の模様なんて覚えてねえよ」
『……異世界に特化して世界の座標を少しずつ変えて見る、ですか』
「へえ、この辺の変数を細かくいじって記録できたらええなあと」
「それさあ、なんかよさそうな候補に接続できたかどうか、なんかの反応見て検出できないの?」
「へ? ああ、そうやなあ。接続が安定してるかどうかくらいは検出できるかなあ」
「ああ、前に『日本の俺の部屋』って指定したら画面が乱れてたよな。そういうの検出できるのか」
「ラジオのチューニングみたいな感じでビターっと合うたときだけわかるようにするのはできるな」
「ちゅーにんぐ?」
「もしかして若い人にはチューニング通じひんの? カルチャーショックやわあ」
「細かい変数を自動で変えていって安定したら止めてお知らせすればいいんじゃない? 手で設定変えて目で見て確認するなんて一生終わらないよ」
「オートチューニングか! あんたえらいこと考えるなあ」
「またほめられた」
「虎彦は魔道具のアイデアだけはあるよな」
「トラ様は大変優秀ですから」
「急になんな、暗黒騎士団長」
「もうやめてくださいよぅ……」
「その暗黒騎士団っての、なんでダメージ受けてるんだ?」
「それな、わてがいたずらで教えたら本気にして目ぇキラキラさせて『暗黒騎士団かっこいい!』って言うたはったんや」
「だってあのときはかっこいいと思ったんだもん」
「まだこないちいちゃかったしな」
「そんなわけないでしょう。十七歳でしたよ」
「それでうちに来てた連中みんなで暗黒騎士団って名乗りだして」
「あああああもうやめてくださいよぅ……」
「それで影の人たちみんな恥ずかしがり屋なの?」
「いやそれはそういう職業だろう」
「……」
「そもそも影に隠れて護衛する必要とか全然なくて、むしろ目立って牽制するんが普通やと思うわ」
「隠れてたほうがかっこいいって教えてくれたのカーさんじゃないですか!」
「元凶がここにいた」
『えっとつまり魔王の手下ってことです?』
「違います!」
「おもちゃやな」
「ちょっと!」
「ボヤシさん、魔王連れて来たよ」
『ま、ま、魔王?!』
「烏丸鳳凰っちゅうもんです。生前は百田せんせがえろうお世話になったそうで」
「この人まだ生まれてないよ」
『え? あのマジナッ様の手記に書いてあった助手のかたですか?』
「へえ、そうですね」
『魔王? え? 助手? ……どゆこと?』
「こんぐらしかぼやしぼしびんたはったくっど!」
『ひぃっ!』
「なんて?」
「もうちょっとしゃっきりしたほうがいいよって」
「なんやらもっと荒々しいこと言わはったような気ぃしたけど」
『それで、今日はなんのご用で……』
「ああ、前に見せてくれた鏡をちょっと使わせてもらえないかと思ってな」
「しばらく借りてもいい?」
『あ、はい。わりとすぐ作れますので』
「なんかちょっと従順な感じになってる?」
「虎彦、脅しはよくないぞ」
「かつあげかいな?」
「かつあげってどんな料理ですか?」
「暗黒騎士団長はん、冗談きっついわあ」
『暗黒騎士団長? 魔王の配下ですか?』
「エドさんが遠い目をしている」
「話を戻すけど、すぐ作れるならもう二~三枚用意してもらえないかな?」
『それなら在庫がありますよ。なにせしばらく研究に行き詰ってヒマでしたからね』
「財布持たしちゃいけないタイプの大人だ」
『それにしてもこんなもんなにに使うんですか? 覗きくらいしかできないでしょう? あ、まさか!』
「ちょっと、むしろまさかなんだけど」
『いや、まさか!』
「ヒマだとよくないことに手を染める人っているよね。衛兵さ~ん」
『ちょ、違いますよ。前に覗きで捕まった職員はいましたけど、わたしじゃありませんからね!』
「その覗き鏡、ちょっと見せてくれへん? どんな仕組みになってんの?」
『あ、ああ! それはですね……』
「よし、この流れで包み隠さず研究内容を吐くはず」
「おぬしもワルよのう、虎彦」
「トラ様も貴族のようなことができるんですね」
「あ、暗黒騎士団長戻ってきた」
「あ、また遠くに行っちゃった」
『……それでこのレジスタに座標情報を書き込めばつながるんですが、たまたまちょっと容量に余裕があって、こないだトラ様が複雑な座標情報に加えて時刻情報まで書き込んで……』
「専門家の話になってる」
「カラスさんならついていけそうだしな」
「辰巳は参加しなくていいの?」
「俺はこないだ見たから大体わかってる」
「ほう。じゃあ日本の座標を言ってみて」
「ムリ」
「一ミリ秒も考えずに即答したね」
「なんか呪文唱えてただろ」
「呪文じゃないよ。tvelachartoschemxkajaphghurrqhfjyrwenだよ。世界の相対位置と距離とねじれと因果係数を指定して特定の世界とつなげるための式だよ」
「なんか呪文唱えただろ」
「お二人がいつもと逆みたいでおもしろいですね」
「あ、戻ってきた」
「エドさん虎彦の言ってることわかる?」
「わたしもカーさんに説明してもらったことがあるんですけど、全然わかりませんでしたよ」
「オレもさっぱりだけど、毎日見てたらなんとなくわかってくるよ」
「世界を渡る転移魔法陣を見慣れてるのは虎彦くらいだよな」
「壁紙の模様みたいなもんだよ」
「壁紙の模様なんて覚えてねえよ」
『……異世界に特化して世界の座標を少しずつ変えて見る、ですか』
「へえ、この辺の変数を細かくいじって記録できたらええなあと」
「それさあ、なんかよさそうな候補に接続できたかどうか、なんかの反応見て検出できないの?」
「へ? ああ、そうやなあ。接続が安定してるかどうかくらいは検出できるかなあ」
「ああ、前に『日本の俺の部屋』って指定したら画面が乱れてたよな。そういうの検出できるのか」
「ラジオのチューニングみたいな感じでビターっと合うたときだけわかるようにするのはできるな」
「ちゅーにんぐ?」
「もしかして若い人にはチューニング通じひんの? カルチャーショックやわあ」
「細かい変数を自動で変えていって安定したら止めてお知らせすればいいんじゃない? 手で設定変えて目で見て確認するなんて一生終わらないよ」
「オートチューニングか! あんたえらいこと考えるなあ」
「またほめられた」
「虎彦は魔道具のアイデアだけはあるよな」
「トラ様は大変優秀ですから」
「急になんな、暗黒騎士団長」
「もうやめてくださいよぅ……」
「その暗黒騎士団っての、なんでダメージ受けてるんだ?」
「それな、わてがいたずらで教えたら本気にして目ぇキラキラさせて『暗黒騎士団かっこいい!』って言うたはったんや」
「だってあのときはかっこいいと思ったんだもん」
「まだこないちいちゃかったしな」
「そんなわけないでしょう。十七歳でしたよ」
「それでうちに来てた連中みんなで暗黒騎士団って名乗りだして」
「あああああもうやめてくださいよぅ……」
「それで影の人たちみんな恥ずかしがり屋なの?」
「いやそれはそういう職業だろう」
「……」
「そもそも影に隠れて護衛する必要とか全然なくて、むしろ目立って牽制するんが普通やと思うわ」
「隠れてたほうがかっこいいって教えてくれたのカーさんじゃないですか!」
「元凶がここにいた」
『えっとつまり魔王の手下ってことです?』
「違います!」
「おもちゃやな」
「ちょっと!」
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