二世帯住宅から冒険の旅へ

PXXN3

文字の大きさ
上 下
63 / 102

第59話 娘

しおりを挟む
『わたしは旅商人で東の方からあちこちを旅してこの町に来たんです』

『ちょうどそのときうちに患者さんがいて、ああうちは代々薬師なのよ、それでこの人がいろいろ薬草を持ってるってもんだから来てもらったのよ。そしたらおばあちゃんが』

「なぜか馴れ初めらしきものを聞かされてるな」

「らぶらぶだねえ」

『マネタもおばあさんもとても腕のいい薬師でわたしの持ってきた薬草を見たことのないやり方で特上の薬に変えてくれて本当に感動したんだ』

『あら、あなたの薬草が見たこともないくらい品質がよくて珍しいものばかりだったからつい』

「おばあちゃんはどうしたの?」

『おばあちゃんはわたしを育ててくれた親でもあり師匠でもあったんだけど、ひ孫が生まれたその日にぽっくり逝っちゃってねえ』

『一目でも会わせることができて本当によかった』

『おばあちゃんは「娘を傷ものにした」ってすっごく怒ってたけど?』

「いくつのとき?」

『えーと娘が十四歳だから……あぶない、ひみつよ』

「危険な質問をするな」

『もうそろそろ娘も帰ってくるころですが』

「どこに行ったの?」

『学校よ? 平日だもの』

「え? 学校あるんだ……」

「クマモトだと貴族は自前の教師を雇うし、平民は決まった学校はなかったよな」

「そうですね。低位貴族は集団で教師を雇っているみたいですけど」

『この国ではむかし勇者様が全国民学校に通えるようにしてくれたんだよ』

「おお、いい仕事してる」

「うちの勇者ときたら」

『ただいまー』

『あら、おかえりなさい。お客様が見えてるからご挨拶なさい』

「おきゃっさ?」『こんにちは。いらっしゃいませ。なんのご病気ですか?』

『こら。患者さんじゃないよ。危ないところを助けていただいたんだ』

『え? お父さま、どんな冒険してきたの?』

「あれ? 冒険好きな感じ?」

『この子は困ったものねえ。どこのだれに似たんだかすぐ冒険ぼうけんって』

「そりゃひごっどんだよね」

『えっ? あなたお父さまのことひごっどんって呼んでるの?』

「ひごっどんはひごっどんでしょ」

「おもしとかとじゃっど、かかさ!」

「せからしか! わや」

『二人とも興奮しすぎてお客様のまえで翻訳魔法が外れてるぞ』

『あら、おほほほほ』

「素の姿が垣間見えるねえ」

「まあずっと気を使わず楽にしてくれていいぞ」

「どこ目線?」

「翻訳魔法が切れない程度でお願いします」

『変な人たちねえ。なんか聞いたことない言葉使ってるし』

『どこか遠くから来たらしいんだよ。あの谷の向こうからみたいなんだけど』

「あんたんのむこ?!」

『まあ、どうやっていらしたの?』

「ちょっと飛んで」

「とっ?!」

「辰巳が飛んで渡って、そのあと転移魔法でオレたちを運んでくれたんだよ」

「そのときたまたまひごっどんが襲われてるのが見えたから」

『あのときは夢中でどこから来たのかわかりませんでしたが、飛んで来たんですね……』

『なんなの? 超人なの?』

「それほどでも」

「なんで虎彦が謙遜するんだよ」

「タツ様は超人であり賢者ですよ」

「急になんの紹介?」

『賢者……あの賢者? 勇者とともに現れるというこの世界の救いぬし様?』

「有名人なの?」

「こっちにも言い伝えがあるんだ」

『なんてことだ。こりゃあただの命の恩人じゃ済まないぞ』

「いやいやいや、普通に、ふつーーにしてください」

「目立つと恥ずか死んじゃうタイプなんだよ」

「そりゃ影だろ」

「あまり大事にはしないでいただけると助かります。心のなかで崇めるのです」

「崇めてるんだ」

『なるほど』

『それで賢者様のお供の子はなんなの?』

「お供?」

「子?」

「トラ様はお供ではありません。トラ様とタツ様はご友人です。むしろわたしがお供です。お供いたしております」

「お供のアイデンティティを主張している」

「オレたぶん君よりは年上だよ?」

『え? 十三歳くらいでは?』

『十歳くらいよね?』

『十二歳でしょ?』

「そんなふうに見える?」

「俺たちは十六歳だぞ」

『はあ? あなたはわたしと同い年くらいだと思ってたわ』

「お二人はお若く見えますよね」

「ひったまがったわ」

『もしかしてなにか年を取らない薬とか』

『なにそれ詳しく』

「そんなわけないだろ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...