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第59話 娘
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『わたしは旅商人で東の方からあちこちを旅してこの町に来たんです』
『ちょうどそのときうちに患者さんがいて、ああうちは代々薬師なのよ、それでこの人がいろいろ薬草を持ってるってもんだから来てもらったのよ。そしたらおばあちゃんが』
「なぜか馴れ初めらしきものを聞かされてるな」
「らぶらぶだねえ」
『マネタもおばあさんもとても腕のいい薬師でわたしの持ってきた薬草を見たことのないやり方で特上の薬に変えてくれて本当に感動したんだ』
『あら、あなたの薬草が見たこともないくらい品質がよくて珍しいものばかりだったからつい』
「おばあちゃんはどうしたの?」
『おばあちゃんはわたしを育ててくれた親でもあり師匠でもあったんだけど、ひ孫が生まれたその日にぽっくり逝っちゃってねえ』
『一目でも会わせることができて本当によかった』
『おばあちゃんは「娘を傷ものにした」ってすっごく怒ってたけど?』
「いくつのとき?」
『えーと娘が十四歳だから……あぶない、ひみつよ』
「危険な質問をするな」
『もうそろそろ娘も帰ってくるころですが』
「どこに行ったの?」
『学校よ? 平日だもの』
「え? 学校あるんだ……」
「クマモトだと貴族は自前の教師を雇うし、平民は決まった学校はなかったよな」
「そうですね。低位貴族は集団で教師を雇っているみたいですけど」
『この国ではむかし勇者様が全国民学校に通えるようにしてくれたんだよ』
「おお、いい仕事してる」
「うちの勇者ときたら」
『ただいまー』
『あら、おかえりなさい。お客様が見えてるからご挨拶なさい』
「おきゃっさ?」『こんにちは。いらっしゃいませ。なんのご病気ですか?』
『こら。患者さんじゃないよ。危ないところを助けていただいたんだ』
『え? お父さま、どんな冒険してきたの?』
「あれ? 冒険好きな感じ?」
『この子は困ったものねえ。どこのだれに似たんだかすぐ冒険ぼうけんって』
「そりゃひごっどんだよね」
『えっ? あなたお父さまのことひごっどんって呼んでるの?』
「ひごっどんはひごっどんでしょ」
「おもしとかとじゃっど、かかさ!」
「せからしか! わや」
『二人とも興奮しすぎてお客様のまえで翻訳魔法が外れてるぞ』
『あら、おほほほほ』
「素の姿が垣間見えるねえ」
「まあずっと気を使わず楽にしてくれていいぞ」
「どこ目線?」
「翻訳魔法が切れない程度でお願いします」
『変な人たちねえ。なんか聞いたことない言葉使ってるし』
『どこか遠くから来たらしいんだよ。あの谷の向こうからみたいなんだけど』
「あんたんのむこ?!」
『まあ、どうやっていらしたの?』
「ちょっと飛んで」
「とっ?!」
「辰巳が飛んで渡って、そのあと転移魔法でオレたちを運んでくれたんだよ」
「そのときたまたまひごっどんが襲われてるのが見えたから」
『あのときは夢中でどこから来たのかわかりませんでしたが、飛んで来たんですね……』
『なんなの? 超人なの?』
「それほどでも」
「なんで虎彦が謙遜するんだよ」
「タツ様は超人であり賢者ですよ」
「急になんの紹介?」
『賢者……あの賢者? 勇者とともに現れるというこの世界の救いぬし様?』
「有名人なの?」
「こっちにも言い伝えがあるんだ」
『なんてことだ。こりゃあただの命の恩人じゃ済まないぞ』
「いやいやいや、普通に、ふつーーにしてください」
「目立つと恥ずか死んじゃうタイプなんだよ」
「そりゃ影だろ」
「あまり大事にはしないでいただけると助かります。心のなかで崇めるのです」
「崇めてるんだ」
『なるほど』
『それで賢者様のお供の子はなんなの?』
「お供?」
「子?」
「トラ様はお供ではありません。トラ様とタツ様はご友人です。むしろわたしがお供です。お供いたしております」
「お供のアイデンティティを主張している」
「オレたぶん君よりは年上だよ?」
『え? 十三歳くらいでは?』
『十歳くらいよね?』
『十二歳でしょ?』
「そんなふうに見える?」
「俺たちは十六歳だぞ」
『はあ? あなたはわたしと同い年くらいだと思ってたわ』
「お二人はお若く見えますよね」
「ひったまがったわ」
『もしかしてなにか年を取らない薬とか』
『なにそれ詳しく』
「そんなわけないだろ」
『ちょうどそのときうちに患者さんがいて、ああうちは代々薬師なのよ、それでこの人がいろいろ薬草を持ってるってもんだから来てもらったのよ。そしたらおばあちゃんが』
「なぜか馴れ初めらしきものを聞かされてるな」
「らぶらぶだねえ」
『マネタもおばあさんもとても腕のいい薬師でわたしの持ってきた薬草を見たことのないやり方で特上の薬に変えてくれて本当に感動したんだ』
『あら、あなたの薬草が見たこともないくらい品質がよくて珍しいものばかりだったからつい』
「おばあちゃんはどうしたの?」
『おばあちゃんはわたしを育ててくれた親でもあり師匠でもあったんだけど、ひ孫が生まれたその日にぽっくり逝っちゃってねえ』
『一目でも会わせることができて本当によかった』
『おばあちゃんは「娘を傷ものにした」ってすっごく怒ってたけど?』
「いくつのとき?」
『えーと娘が十四歳だから……あぶない、ひみつよ』
「危険な質問をするな」
『もうそろそろ娘も帰ってくるころですが』
「どこに行ったの?」
『学校よ? 平日だもの』
「え? 学校あるんだ……」
「クマモトだと貴族は自前の教師を雇うし、平民は決まった学校はなかったよな」
「そうですね。低位貴族は集団で教師を雇っているみたいですけど」
『この国ではむかし勇者様が全国民学校に通えるようにしてくれたんだよ』
「おお、いい仕事してる」
「うちの勇者ときたら」
『ただいまー』
『あら、おかえりなさい。お客様が見えてるからご挨拶なさい』
「おきゃっさ?」『こんにちは。いらっしゃいませ。なんのご病気ですか?』
『こら。患者さんじゃないよ。危ないところを助けていただいたんだ』
『え? お父さま、どんな冒険してきたの?』
「あれ? 冒険好きな感じ?」
『この子は困ったものねえ。どこのだれに似たんだかすぐ冒険ぼうけんって』
「そりゃひごっどんだよね」
『えっ? あなたお父さまのことひごっどんって呼んでるの?』
「ひごっどんはひごっどんでしょ」
「おもしとかとじゃっど、かかさ!」
「せからしか! わや」
『二人とも興奮しすぎてお客様のまえで翻訳魔法が外れてるぞ』
『あら、おほほほほ』
「素の姿が垣間見えるねえ」
「まあずっと気を使わず楽にしてくれていいぞ」
「どこ目線?」
「翻訳魔法が切れない程度でお願いします」
『変な人たちねえ。なんか聞いたことない言葉使ってるし』
『どこか遠くから来たらしいんだよ。あの谷の向こうからみたいなんだけど』
「あんたんのむこ?!」
『まあ、どうやっていらしたの?』
「ちょっと飛んで」
「とっ?!」
「辰巳が飛んで渡って、そのあと転移魔法でオレたちを運んでくれたんだよ」
「そのときたまたまひごっどんが襲われてるのが見えたから」
『あのときは夢中でどこから来たのかわかりませんでしたが、飛んで来たんですね……』
『なんなの? 超人なの?』
「それほどでも」
「なんで虎彦が謙遜するんだよ」
「タツ様は超人であり賢者ですよ」
「急になんの紹介?」
『賢者……あの賢者? 勇者とともに現れるというこの世界の救いぬし様?』
「有名人なの?」
「こっちにも言い伝えがあるんだ」
『なんてことだ。こりゃあただの命の恩人じゃ済まないぞ』
「いやいやいや、普通に、ふつーーにしてください」
「目立つと恥ずか死んじゃうタイプなんだよ」
「そりゃ影だろ」
「あまり大事にはしないでいただけると助かります。心のなかで崇めるのです」
「崇めてるんだ」
『なるほど』
『それで賢者様のお供の子はなんなの?』
「お供?」
「子?」
「トラ様はお供ではありません。トラ様とタツ様はご友人です。むしろわたしがお供です。お供いたしております」
「お供のアイデンティティを主張している」
「オレたぶん君よりは年上だよ?」
『え? 十三歳くらいでは?』
『十歳くらいよね?』
『十二歳でしょ?』
「そんなふうに見える?」
「俺たちは十六歳だぞ」
『はあ? あなたはわたしと同い年くらいだと思ってたわ』
「お二人はお若く見えますよね」
「ひったまがったわ」
『もしかしてなにか年を取らない薬とか』
『なにそれ詳しく』
「そんなわけないだろ」
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