二世帯住宅から冒険の旅へ

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第56話 サツマ

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「あ、辰巳、戻ってきたんだ。おかえり」

「ふう、言葉が通じるっていいよな」

「なに言ってるの?」

「お茶をどうぞ」

「ありがと」

「それでなにがあったの?」

「向こうで魔物に襲われてる人がいて助けたんだけど、なに言ってるのか全然わからなくて」

「たしか死の渓谷を渡った先にはサテュイムァヌ王国という国があったはずです。何百年かまえから交流が途絶えた国なので実態がわからないのですが」

「サツマか。なるほど」

「なにに納得したの?」

「ぐるう」

「なにかおいしいものはあるのかって」

「まだなにもわからないよ。でも助けた人がなんか言ってたからどこかに案内してもらおう」

「よし行こう。冒険の旅へ」

「俺だけだよ冒険してきたの」

「これから行くんだよ」

「用意できました」

「早っ」

「じゃあみんな馬車に乗って」

「行くぞー、えい」


*****


「うわわああ! ないごっ?!」

「あ、ちょっと近すぎたか?」

「おじさん大丈夫?」

「ひったまがったあ!」

「ぐる?」

「んだもしたん?!」

「な? なに言ってるかわからないだろ?」

「おじさん、オレ虎彦、トラでいいよ」

「トラどん? おいはフィグォッドちもさげもす」

「ひごっどん? あっちは辰巳だよ。タツって呼んで」

「タッどん? いやタッどんにはいのちばすくっもろち、ほんのこてあいがともした」

「命の恩人だって」

「あ、いや、大したことはしてないので気にしないでください」

「こっちはエドさんだよ」

「エドゥオンと申します。お見知りおきを」

「こいはごてねに。ぶちほなえさっばしちげんなかこってごわす。ごぶれさあぐゎした」

「……なんと申し上げましょうか」

「ひごっどんはここでなにしてたの?」

「おいは薬草ばといけきたっせえあんといめにくわるっとこいごわした」

「薬草か」

「薬草でしたか」

「鳥さん? 鳥に襲われてたの?」

「いや、ワイバーンみたいなやつ」

「渓谷ワイバーンのことでしょうか?」

「あんざまんねはねのおゆっといがあっけおっじゃろ?」

「あーあれかあ」

「……よく会話できてるな。ネイティブならある程度わかるのか?」

「わたしにもほとんど聞き取れないのですが……」

「こげんとこいこしこいっずいもおっでんしおあね。うちげえもどっせえごれもでくいでいきもんそ」

「よし行こう!」

「なんて言ってるんだ?」

「宴だよ!」

「いっこもわからん」


*****


「いや本当に歩いて来たのか?」

「薬草ばいるっかごばかるっきっどんみかしこあるっせえすっじゃっど」

「三日も歩くのは大変だよ」

「馬車だとどれくらいだ?」

「三日歩く距離なら半日くらいでしょうか。道の状況にもよりますが」

「こしこじっぱごたっもんにのせちもろちめんぶっねごっ」

「いいんだよ。だってひごっどんといっしょに歩いたら三日かかるんでしょ?」

「まあ楽なほうがいいからな」

「ひごっどん、わざわざここまで来てなんの薬草とってたの?」

「こいやケムニンちゅ薬草であんたんあたいでしことるいもんじゃっど」

「へえ、なんか緑のコケみたいなやつ」

「これは乾燥するまえのケモネゥミですね。死の渓谷の近くでしかとれないので貴重だと聞いたことがあります」

「ああ、あの抹茶か」

「エドさん、ひごっどんと同じ説明してる」

「え?」

「どの辺が同じだったのかまったくわからん」
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