52 / 95
第49話 チョコレート
しおりを挟む
「これ! これが一番おいしい!」
「じゃあ白黒すいかとりんご練乳とボークリームのブレンド割合はこんな感じで」
「完全に甘いミルクチョコレートだね」
「あとカカオの香ばしい甘すぎないやつも作ったし」
「ホワイトチョコレートにいろいろ着色したのもできたし」
「各種ナッツやフルーツのペーストも完成した」
「買ってきた見本の高級チョコレートセットもあるよ」
「さあお菓子職人よ、存分に作りたまえ」
「……あの……わたしはお菓子職人ではないのだが……」
「モブにしか繊細なお菓子は任せられないよ」
「くっほめられてる、だが流されんぞ」
「王太子なら国民の望んでいるものを作って差し上げろよ」
「それは使用人の仕事ではないか?」
「みんなに注目されてほめられてちやほやされるぞ」
「注目……わ、わかった。しかたがない。ほかにやることもないし」
「やったー! モブのチョコレート楽しみにしてるね」
「あ、ああ任せておけ」
「チョロすぎ」
「む?」
「なんでもない。これで準備は万端だな」
「ところでこれはなんの準備なんだ?」
「愛の告白イベントだよ」
「好きな人にチョコレートを配るんだ」
「あ、ああ、愛? 配る?! なんだその浮ついたイベントは!」
「友達同士とか家族で贈りあったりもするけど」
「チョコレートはむかし媚薬とも言われていたからな」
「お菓子業界の陰謀だって説が有力らしいけど」
「いや、お菓子業界はしかけたけど全然売れなかったらしいぞ」
「少女漫画とかで流行ったのかな?」
「ちょ、ちょっと待て、陰謀で少女に媚薬を盛るのか?! そんなイベントに手を貸していいのだろうか……」
「大丈夫だって。これは媚薬じゃないし、そもそもここはお菓子業界存在しないじゃん。いや、モブがある意味お菓子業界代表なんだけど」
「わたしが代表?」
「もういまでは『王太子の』ってついたら完全にお菓子のブランドとして定着したからな」
「それってわたしが王太子ではなくなったらどうなるんだ?」
「王太子クビってこと?」
「いや、そのうち王になるんだが……」
「え、それって王になっても自分でお菓子作ってる予定なの?」
「おまえの将来設計どうなってんだ。そのころまでには後進育てておけよ、計画的にな」
「ええ……」
「ぐるう」
「おお、チョコどのは慰めてくれるのか?」
「王になってもお菓子は作ってくれって」
「ええ……」
*****
「あら、これいいじゃない。すてきだわ」
「ペス、あんまり食べ過ぎたら鼻血出るよ」
「本当にトラは相変わらずデリカシーってものがまるっきり欠如してるわね」
「このピンクのチョコレートはかわいいしおいしいわ。ジャムが入ってるのかしら」
「俺はこのナッツ風味のビターチョコレートが好きだな。でも姫さまのチョコレートが一番好きだよ」
「勇者様(それはスーパーの売れ残りよ)」
「これは見事な装飾だな。味も舌ざわりも高級チョコレート並だ。向こうでも売れるぞ」
「どれも~おいしそうねえ~」
「おおお、なんと美しい、なんと香しい、なんたる美味! 多種多様な見た目や味のチョコレートが並べられてやがる! 芸術ですぞ! 王太子殿下!」
「料理長が壊れた」
「あ、ありがとう。うれしいよ」
「これなら大丈夫そうだな。とりあえず貴族向けに二千セットくらい売りさばこうか」
「に、二千?! そんなに作れないよ」
「あと庶民向けのセットも」
「一万セットよ。徹夜でおやりなさいね。ほかにやることなんかないでしょう?」
「母上?!」
「これはとてもいいものだわ。わたくしあなたならやれると信じているのよ」
「母上……わかりました」
「なんという愛情支配型虐待」
「ふふふ、この子はこうでもしないとすぐにサボるのよ。せっかくひとつ取り柄が見つかったんだからいまのうちに限界まで活用しないと」
「使いつぶす系パワハラ上司だ」
「お母さま、お兄さまはチョコレートケーキも作るって言ってたわ」
「まあケーキのほうは凝った装飾必要ないんでモブには上に乗せるチョコレートの飾りだけ作ってもらおうかと」
「こういうやつね」
「あらあら華やかね。貴族にもバッカバッカ売れてガッポガッポよ」
「この王妃商魂たくましいな」
「お母さまは商家出身だから」
「あれ? えらい貴族じゃないの?」
「一応伯爵家だけど、この国はその辺あまりうるさくないのよ」
「隣のナンツャラー王国だと貴族同士の内戦になるかもしれんな」
「あそこはいつも内部でもめてますわね。こちらとしては楽でいいですけど」
「王族の黒い発言怖い」
「じゃあ白黒すいかとりんご練乳とボークリームのブレンド割合はこんな感じで」
「完全に甘いミルクチョコレートだね」
「あとカカオの香ばしい甘すぎないやつも作ったし」
「ホワイトチョコレートにいろいろ着色したのもできたし」
「各種ナッツやフルーツのペーストも完成した」
「買ってきた見本の高級チョコレートセットもあるよ」
「さあお菓子職人よ、存分に作りたまえ」
「……あの……わたしはお菓子職人ではないのだが……」
「モブにしか繊細なお菓子は任せられないよ」
「くっほめられてる、だが流されんぞ」
「王太子なら国民の望んでいるものを作って差し上げろよ」
「それは使用人の仕事ではないか?」
「みんなに注目されてほめられてちやほやされるぞ」
「注目……わ、わかった。しかたがない。ほかにやることもないし」
「やったー! モブのチョコレート楽しみにしてるね」
「あ、ああ任せておけ」
「チョロすぎ」
「む?」
「なんでもない。これで準備は万端だな」
「ところでこれはなんの準備なんだ?」
「愛の告白イベントだよ」
「好きな人にチョコレートを配るんだ」
「あ、ああ、愛? 配る?! なんだその浮ついたイベントは!」
「友達同士とか家族で贈りあったりもするけど」
「チョコレートはむかし媚薬とも言われていたからな」
「お菓子業界の陰謀だって説が有力らしいけど」
「いや、お菓子業界はしかけたけど全然売れなかったらしいぞ」
「少女漫画とかで流行ったのかな?」
「ちょ、ちょっと待て、陰謀で少女に媚薬を盛るのか?! そんなイベントに手を貸していいのだろうか……」
「大丈夫だって。これは媚薬じゃないし、そもそもここはお菓子業界存在しないじゃん。いや、モブがある意味お菓子業界代表なんだけど」
「わたしが代表?」
「もういまでは『王太子の』ってついたら完全にお菓子のブランドとして定着したからな」
「それってわたしが王太子ではなくなったらどうなるんだ?」
「王太子クビってこと?」
「いや、そのうち王になるんだが……」
「え、それって王になっても自分でお菓子作ってる予定なの?」
「おまえの将来設計どうなってんだ。そのころまでには後進育てておけよ、計画的にな」
「ええ……」
「ぐるう」
「おお、チョコどのは慰めてくれるのか?」
「王になってもお菓子は作ってくれって」
「ええ……」
*****
「あら、これいいじゃない。すてきだわ」
「ペス、あんまり食べ過ぎたら鼻血出るよ」
「本当にトラは相変わらずデリカシーってものがまるっきり欠如してるわね」
「このピンクのチョコレートはかわいいしおいしいわ。ジャムが入ってるのかしら」
「俺はこのナッツ風味のビターチョコレートが好きだな。でも姫さまのチョコレートが一番好きだよ」
「勇者様(それはスーパーの売れ残りよ)」
「これは見事な装飾だな。味も舌ざわりも高級チョコレート並だ。向こうでも売れるぞ」
「どれも~おいしそうねえ~」
「おおお、なんと美しい、なんと香しい、なんたる美味! 多種多様な見た目や味のチョコレートが並べられてやがる! 芸術ですぞ! 王太子殿下!」
「料理長が壊れた」
「あ、ありがとう。うれしいよ」
「これなら大丈夫そうだな。とりあえず貴族向けに二千セットくらい売りさばこうか」
「に、二千?! そんなに作れないよ」
「あと庶民向けのセットも」
「一万セットよ。徹夜でおやりなさいね。ほかにやることなんかないでしょう?」
「母上?!」
「これはとてもいいものだわ。わたくしあなたならやれると信じているのよ」
「母上……わかりました」
「なんという愛情支配型虐待」
「ふふふ、この子はこうでもしないとすぐにサボるのよ。せっかくひとつ取り柄が見つかったんだからいまのうちに限界まで活用しないと」
「使いつぶす系パワハラ上司だ」
「お母さま、お兄さまはチョコレートケーキも作るって言ってたわ」
「まあケーキのほうは凝った装飾必要ないんでモブには上に乗せるチョコレートの飾りだけ作ってもらおうかと」
「こういうやつね」
「あらあら華やかね。貴族にもバッカバッカ売れてガッポガッポよ」
「この王妃商魂たくましいな」
「お母さまは商家出身だから」
「あれ? えらい貴族じゃないの?」
「一応伯爵家だけど、この国はその辺あまりうるさくないのよ」
「隣のナンツャラー王国だと貴族同士の内戦になるかもしれんな」
「あそこはいつも内部でもめてますわね。こちらとしては楽でいいですけど」
「王族の黒い発言怖い」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる