36 / 102
第35話 チョコの冒険
しおりを挟む
「ぐるがう」(起きろ)
「むにゃうすぴ~」
てしてししてもタツが起きない。
まあしばらく旅をしていたから疲れが出たのかもしれない。
寝かしてやろう。
部屋を出て階段を降りる。
右の小部屋が風呂だ。
風呂桶に栓をして魔法でお湯を入れる。
「がうう」
やはりお湯に浸かるのはいい。
なぜいままで入らなかったのか不思議なくらいだ。
タツやトラがいれば体を洗ってくれるのだが、いまはお湯を浴びるだけでよしとしよう。
ぶるぶるっ
魔法で温風を出して乾かす。毛並みがふわふわになってとてもよい。
昨日はタツの父上にもたいそう気に入られてもふられまくった。
最後に手をなめてひげを整える。
キッチンに行くとタツの父上と母上がそろっていた。
「あらおはよう~」
「チョコたん、今日も毛並みがいいな」
タツによると父上はデレモードと崩壊モードがあるらしい。
いまはまだデレモードだな。
「朝ごはんはステーキよ~」
「ぐるるる」
「おおチョコたんうれしいか? 俺もうれしいぞぉ」
若干壊れてきたな。
いい匂いがする肉を食べよう。
タツについて森を出てからいろいろなものを食ったが、やはり人間の料理というものは奥深い。
一度真似をして魔法の火であぶってみたが、こんなふうにいい匂いにはならなかった。
「はふっはふっ」
「あああチョコたん~はふはふしてるぅ~」
これはもう崩壊モード一歩手前だな。
食べ終わるまでは絶対に触らないあたりきちんと教育を受けている感じがする。
「チョコちゃん、ブロッコリー食べる?」
「ぐる」
コリコリもさもさしてなかなかいい野菜だ。
父上の視線がうるさい以外はとてもいい食事だ。
「がう」
「チョコたん~食べ終わった? ブラッシングしよか」
「ぐる」
父上はブラッシングの訓練を積んだかのような熟練の技を持っている。
だが抜けた毛玉の匂いを嗅ぐのはちょっと気持ち悪い。
「うぐるう」
「ん? 出かけるのか? 気を付けてな」
「る」
父上はトラほどではないが異常に察しがいいな。
家を出てぐるっと周りを観察する。玄関、車庫、花壇、塀、裏庭、物置、その屋根に上るとタツの部屋が見える。
あいつまだ寝てるな。
「あ、チョコちゃん、おはよう」
「ぐるるう」
隣の家の窓からトラが顔を出している。
そちらの敷地へ飛び降りるとヒメサマが花壇の手入れをしている。
「あら、チョコちゃん、ごきげんよう」
「ぐるる」
「そうだわ、おいしいトマトが成ったのよ。召し上がる?」
「ぐう」
小ぶりで真っ赤な柔らかそうな実からヘタを取り除いてくれたのでかぶりつく。
甘酸っぱくて爽やかな味だ。のどの渇きを癒してくれる。
「チョコちゃん、お散歩?」
「ぐるう」
「そっか。探検しなきゃね」
「がう」
「辰巳が起きない? あいつは結構ねぼすけだからね」
「トラちゃん、チョコちゃんとお出かけしてきたら?」
「うるる」
「ひとりで行くって」
「あらそうなの? 気を付けてね」
「ぐる」
二人に見送られながら塀に飛び乗って辺りを見渡す。
この二軒の敷地は自分の縄張りとして確定しているが、このままどこまで縄張りを広げられるか確認しとかなくては。
隣の塀の上をぐるっと歩いてみたが特にほかの獣の縄張りではなさそうだ。次。
裏の敷地にはなにかいるな。
「わんっ」
「がう」
「くうん」
大きな獣だが特に強そうではないな。ここは縄張りってことでいいだろう。
「あら、りっぱな猫。見かけない子ね」
「ぐる」
トラの家の裏の人間だ。特に敵意は感じないな。縄張り。
「にゃー」
「ぐる?」
タツの家の裏には変な獣がいるな。もしかしてあれが「猫」か? ずいぶんユルい感じだが。
「がう」
「んにゃ? にゃ~ん」
なにを言ってるのかわからんがここはあいつの縄張りなんだろう。敵意は感じないが謎の余裕を感じる。
まあいい放置しよう。
「あ、チョコ、そんなとこにいたのか。おはよう」
「ぐるがう」
辰巳が起きたようだ。物置の屋根からベランダに飛び移る。
「うわっ。ジャンプ力すごいな。おかえり。どこ行ってたんだ?」
「がう」
「わからないけど楽しそうだからいいか」
タツは一番言葉が通じないが、いっしょにいると安心する。
森で独りだったときに突然現れて「君に決めた!」とか言い出したときはヤバいやつに遭ったと思ったけど、いつもそばにいて優しくなでてくれる。
冒険の旅についてきてとうとう異世界にまで来ちゃったけど、これでよかったと思ってる。
「おなかすいた。朝ごはん食べようか」
「ぐるるう」
「ん? 食べないのか? もしかしてもう食べたのか?」
「たっちゃん~もうみんな朝ごはんは済んだわよ~」
「お、チョコたん、おかえり。楽しかったか?」
「ぐるる」
「そうかそうか。父さんと風呂入るか?」
「ぐる」
「よーしよしよし。キタコレ」
「気持ち悪いよ、父さん」
「今日の朝ごはんはピーマンとブロッコリー山盛りよ~」
「なんで?!」
ひと仕事したからもういちど風呂に入ってもいいだろう。
今度はちゃんと洗ってもらおう。
「むにゃうすぴ~」
てしてししてもタツが起きない。
まあしばらく旅をしていたから疲れが出たのかもしれない。
寝かしてやろう。
部屋を出て階段を降りる。
右の小部屋が風呂だ。
風呂桶に栓をして魔法でお湯を入れる。
「がうう」
やはりお湯に浸かるのはいい。
なぜいままで入らなかったのか不思議なくらいだ。
タツやトラがいれば体を洗ってくれるのだが、いまはお湯を浴びるだけでよしとしよう。
ぶるぶるっ
魔法で温風を出して乾かす。毛並みがふわふわになってとてもよい。
昨日はタツの父上にもたいそう気に入られてもふられまくった。
最後に手をなめてひげを整える。
キッチンに行くとタツの父上と母上がそろっていた。
「あらおはよう~」
「チョコたん、今日も毛並みがいいな」
タツによると父上はデレモードと崩壊モードがあるらしい。
いまはまだデレモードだな。
「朝ごはんはステーキよ~」
「ぐるるる」
「おおチョコたんうれしいか? 俺もうれしいぞぉ」
若干壊れてきたな。
いい匂いがする肉を食べよう。
タツについて森を出てからいろいろなものを食ったが、やはり人間の料理というものは奥深い。
一度真似をして魔法の火であぶってみたが、こんなふうにいい匂いにはならなかった。
「はふっはふっ」
「あああチョコたん~はふはふしてるぅ~」
これはもう崩壊モード一歩手前だな。
食べ終わるまでは絶対に触らないあたりきちんと教育を受けている感じがする。
「チョコちゃん、ブロッコリー食べる?」
「ぐる」
コリコリもさもさしてなかなかいい野菜だ。
父上の視線がうるさい以外はとてもいい食事だ。
「がう」
「チョコたん~食べ終わった? ブラッシングしよか」
「ぐる」
父上はブラッシングの訓練を積んだかのような熟練の技を持っている。
だが抜けた毛玉の匂いを嗅ぐのはちょっと気持ち悪い。
「うぐるう」
「ん? 出かけるのか? 気を付けてな」
「る」
父上はトラほどではないが異常に察しがいいな。
家を出てぐるっと周りを観察する。玄関、車庫、花壇、塀、裏庭、物置、その屋根に上るとタツの部屋が見える。
あいつまだ寝てるな。
「あ、チョコちゃん、おはよう」
「ぐるるう」
隣の家の窓からトラが顔を出している。
そちらの敷地へ飛び降りるとヒメサマが花壇の手入れをしている。
「あら、チョコちゃん、ごきげんよう」
「ぐるる」
「そうだわ、おいしいトマトが成ったのよ。召し上がる?」
「ぐう」
小ぶりで真っ赤な柔らかそうな実からヘタを取り除いてくれたのでかぶりつく。
甘酸っぱくて爽やかな味だ。のどの渇きを癒してくれる。
「チョコちゃん、お散歩?」
「ぐるう」
「そっか。探検しなきゃね」
「がう」
「辰巳が起きない? あいつは結構ねぼすけだからね」
「トラちゃん、チョコちゃんとお出かけしてきたら?」
「うるる」
「ひとりで行くって」
「あらそうなの? 気を付けてね」
「ぐる」
二人に見送られながら塀に飛び乗って辺りを見渡す。
この二軒の敷地は自分の縄張りとして確定しているが、このままどこまで縄張りを広げられるか確認しとかなくては。
隣の塀の上をぐるっと歩いてみたが特にほかの獣の縄張りではなさそうだ。次。
裏の敷地にはなにかいるな。
「わんっ」
「がう」
「くうん」
大きな獣だが特に強そうではないな。ここは縄張りってことでいいだろう。
「あら、りっぱな猫。見かけない子ね」
「ぐる」
トラの家の裏の人間だ。特に敵意は感じないな。縄張り。
「にゃー」
「ぐる?」
タツの家の裏には変な獣がいるな。もしかしてあれが「猫」か? ずいぶんユルい感じだが。
「がう」
「んにゃ? にゃ~ん」
なにを言ってるのかわからんがここはあいつの縄張りなんだろう。敵意は感じないが謎の余裕を感じる。
まあいい放置しよう。
「あ、チョコ、そんなとこにいたのか。おはよう」
「ぐるがう」
辰巳が起きたようだ。物置の屋根からベランダに飛び移る。
「うわっ。ジャンプ力すごいな。おかえり。どこ行ってたんだ?」
「がう」
「わからないけど楽しそうだからいいか」
タツは一番言葉が通じないが、いっしょにいると安心する。
森で独りだったときに突然現れて「君に決めた!」とか言い出したときはヤバいやつに遭ったと思ったけど、いつもそばにいて優しくなでてくれる。
冒険の旅についてきてとうとう異世界にまで来ちゃったけど、これでよかったと思ってる。
「おなかすいた。朝ごはん食べようか」
「ぐるるう」
「ん? 食べないのか? もしかしてもう食べたのか?」
「たっちゃん~もうみんな朝ごはんは済んだわよ~」
「お、チョコたん、おかえり。楽しかったか?」
「ぐるる」
「そうかそうか。父さんと風呂入るか?」
「ぐる」
「よーしよしよし。キタコレ」
「気持ち悪いよ、父さん」
「今日の朝ごはんはピーマンとブロッコリー山盛りよ~」
「なんで?!」
ひと仕事したからもういちど風呂に入ってもいいだろう。
今度はちゃんと洗ってもらおう。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
安全第一異世界生活
笑田
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
異世界で出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて
婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の冒険生活目指します!!

おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜
あおぞら
ファンタジー
主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。
勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。
しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。
更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。
自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。
これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる