二世帯住宅から冒険の旅へ

PXXN3

文字の大きさ
上 下
22 / 103

第21話 仲直り

しおりを挟む
「うわあ、乳しぼりってこんな感じなんだね!」

「……これで合ってるのか? なんかボーたちがゴロゴロしてる上を白いスライムみたいのが這いずってるんだけど」

「これはミルフェドゥリィムっちゅう乳を吸う性質のフェドゥリィムなんだあ。うまく飼いならしたら乳しぼりに使えるんだ」

「へえ、ドロヘドリンに似てるね」

「デュルフェドゥリィムのことけ? 同じフェドゥリィム属だから似てるな」

「このあとはどうなるんだ?」

「じゅうぶん吸ったら余分な乳は乳桶に吐き出すんだ。ミルフェドゥリィムが生きるのに必要な分はごくわずかでいいからな」

「なんかミツバチみたいだね」

「ああそう聞くとちょっと抵抗が薄まるな」

「ボーたちはおとなしくしてるけど気持ちいいのかな?」

「あれは麻痺してるだけだ」

「ひぇっ」

「そこもドロヘドリンと似てるのか」

「心配するな。麻痺してる間はなんか幸せな夢を見てるって研究があるらしいからな」

「ドロヘドリンに捕まったら夢見てる間に溶かされちゃうんだ……」


*****


「ボーたちを連れて森に来るの楽しいね!」

「どっちかっていうとボーたちに連れられてる感じがするけどな」

「ねえねえ、乳しぼりの間に見た夢ってどんなの?」

「ふすふす」

「うわあ、どれくらい?」

「ふむふむ」

「すごいね!」

「この子たちなに話してるのかしら」

「全然見当もつかないな」

「うむ。俺は三つだ」

「ふすん」

「あははそれは少ないね」

「なんで混ざってるのよ……」

「通じてるのか?」

「なにもわからん」

「ぐるぐる」

「チョコちゃんは三十二か」

「なんの話なんだ……」

「あ、着いた!」

「おい虎彦、あんまり遠くに行くなよ」

「え? 辰巳ほど遠くには行かないと思うよ?」

「ぐっ」

「ふふ。やられたわね。あの子は自由でいいわね」

「ああ、虎彦はあれでいい」

「でもあんな小さな子を冒険に連れまわすのはよくないわよ。お兄ちゃんならちゃんと面倒見なきゃダメよ」

「ちょっと待て。だれがお兄ちゃんか。俺たちは同い年だぞ」

「はあ? そんなわけないでしょ。あの子まだ十二歳くらいよね?」

「十五歳だ。もうすぐ十六になるぞ」

「うそ、成人してるの? ていうか二歳しか違わないの?!」

「え? ヒステさん二十五」

「あ゛?!」

「じゅ、十八歳?ですか?」

「なんで疑問形にするのよ!」

「俺は十九歳だ」

「ぃ゜?!」

「見えないわよね」

「落ち着いた大人の男だと思ってました。ヒステさんと違って」

「ん゛?」

「大人の女ですよね」

「ルィル、ムリ強いはよくない」

「どこがムリなのよ!」

「ねえ、ペッペたちが遊びに来たよ」

「は?」

「や?!」

「お」

「きぃ?」


*****


「まさかペッペたちとこんなに平和にゲームができるなんて」

「なんなのこの感情」

「ん、楽しい」

「きぃ」

「あ、次はわたしね。おりゃっ」

「1だね」

「きっきっき」

「笑ってる」

「きーっ!」

「きぃっ!」

「きっきっ!」

「まねしてる」

「ルィル、たくさんいる」

「いないわよ!」

「次は俺か。……6だ」

「きっき」

「どんぐりだね」

「ん。4」

「きぃ」

「どんぐり没収ね!」

「ルィル、最下位だぞ」

「きーっ!」

「きぃっ!」

「きっきっ!」

「ぐるぐる」

「チョコちゃんは5か」

「どんぐり二つだ」

「きぃきぃ」

「3。あ、ゴールだ」

「おめでとう!」

「え? うそでしょ?!」

「ルィル、最下位だ」

「ちょ、もう一回!」

「きっき」

「あの、ペッペたち、昨日は追いかけまわしたりしてごめんな」

「きぃ?」

「気にしてないって」

「そっか。ありがとな」

「ききっ」

「友達だろって」

「マジか」

「ぐるう」

「なんでそこだけ青春してるのよ」

「感動した」

「もうちょっと感動した顔しなさいよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。 そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。 このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。 【web累計100万PV突破!】 著/イラスト なかの

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

神様!僕の邪魔をしないで下さい

縁 遊
ファンタジー
可愛い嫁をもらいラブラブな新婚生活を予想していたのに…実際は王位を巡る争いやら神様とのケンカやらいろいろあり嫁との時間が取れない毎日。 誰か僕に嫁と2人で過ごせる時間をください! そう思いながら毎日を過ごしている王子のお話です。 ※この物語は『神様!モフモフに囲まれる生活を希望しましたが自分がモフモフになるなんて聞いていません』のスピンオフです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...