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第15話 森の探検
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「なあるほど。あの勇者さんとこの坊ちゃんだったんけ」
「その、うちの父がとんだご迷惑おかけしてたようで本当にすみませんでした」
「なあに、もう二十年もこの名前だんだ。気にしねでいてば」
「この調子だと勇者いろいろやらかしてるな」
「はあぁ。あちこち行くたびに父さんのやらかしに出会う旅かあ」
「まあそのことはいったん忘れて森の見回りに行こうか」
「そういえばいろいろあってまだボー見れてなかったんだよな」
「ボーならいまはボー舎で乳しぼりしてるはずだっぺ」
「ボー見に行ってもいい?」
「坊ちゃんはいいけどそっちのおっかねえ兄ちゃんはダメだ」
「え? なんで?」
「ボーがおっかながって乳出さなくなっぺよ」
「すいません」
「じゃあ先に森の見回りを終わらせよう」
「午後からはボーが森に行っからそのときにかわいがってやってけれ」
「了解!」
「そこの兄ちゃんはうちの手伝いしてけれや」
「しかしわたしは」
「エドさんはお留守番してて」
「……かしこまりました」
*****
「辰巳、元気出して」
「俺が暴走したばっかりにボーの乳しぼり見れなくてすまん」
「いいよ。辰巳が元気ないよりも昨日みたいに暴れてたほうがオレはいいと思うよ」
「そうか。よし、落ち込んでても楽しくないよな。森の探検に出発だ!」
「ペッペ出て来るかな?」
「それは……いつかそのうち……」
「あ、なんかいる」
「ん? あれはドロヘドリンだな」
「あれ? わかりやすい名前だね」
「もとはもっと発音できない感じだ」
「あーやっぱり」
「あれは放っといてもあんまり害がないから大丈夫だ。でも近づくなよ」
「近づくとどうなるの?」
「ガバっと取り込まれて麻痺させられて溺れて死ぬ」
「怖っ」
「そして完全に溶かされてだれにも発見されない」
「完全犯罪じゃん」
「年数十件は森で行方不明事件があるそうだ」
「完全犯罪じゃん」
「事故かもしれないけど区別はつかないし証拠もないよな」
「よし近づかない」
「たまに透明で気づきにくいのが出て来るらしいんで注意しろよ」
「あ、あれなに? 木の上の」
「どれだ? ああ、あの鳥か」
「きれいだねえ」
「肉食で目ん玉狙ってくるらしいから気を付けろ」
「怖っ!」
「狙って近づいて来たところをぶっ叩いて、落とす!」
「うわっ」
「これは羽が売れるらしいから見つけたら片っ端からぶち落とすぞ」
「おっかねえ」
*****
「あ、もうお昼だね。ボーたち来てるかな?」
「そうだな。もうそろそろ戻るか」
「辰巳が楽しそうだから止めなかったけど、もう森が絶滅しちゃうから帰ろう」
「ちょっと間引いてただけだぞ」
森の入り口まで戻って来るとボーたちがもさもさと草を食っていた。
「これがボーか。かわいいような……よくわからない顔してる」
「これから乳が採れるイメージが湧かないんだよな」
「なんとなく牛のイメージになっちゃうもんね」
「食べてるときは触らないほうがいいみたいだけど、あの辺の日向ぼっこしてるやつはなでてもいいぞ」
「ほんと? やってみる」
「俺は近くで見てる」
「んん? んー、ごわごわ。でもクセになる感じ」
「思ったほど臭くもないし飼いやすそうだよな」
「なでてるとだんだんかわいい気がしてきた」
「ふすふす」
「お、耳の後ろ?」
「にゅ」
「いまの鳴き声か?」
「鳴いたね」
「ふん」
「うわっ」
「大丈夫か? ……大丈夫そうだな」
「なにこれ膝に乗ってすりすり……あまえてる?」
「ふんふん」
「懐いたみたいだな」
「辰巳もなでてみなよ」
「どれどれ」
「きーっ」
「うわ! いやなのか?」
「ふんっ」
「俺は……もっとかわいいのを探してくる!」
「え? ちょっと、辰巳? ……行っちゃった」
「その、うちの父がとんだご迷惑おかけしてたようで本当にすみませんでした」
「なあに、もう二十年もこの名前だんだ。気にしねでいてば」
「この調子だと勇者いろいろやらかしてるな」
「はあぁ。あちこち行くたびに父さんのやらかしに出会う旅かあ」
「まあそのことはいったん忘れて森の見回りに行こうか」
「そういえばいろいろあってまだボー見れてなかったんだよな」
「ボーならいまはボー舎で乳しぼりしてるはずだっぺ」
「ボー見に行ってもいい?」
「坊ちゃんはいいけどそっちのおっかねえ兄ちゃんはダメだ」
「え? なんで?」
「ボーがおっかながって乳出さなくなっぺよ」
「すいません」
「じゃあ先に森の見回りを終わらせよう」
「午後からはボーが森に行っからそのときにかわいがってやってけれ」
「了解!」
「そこの兄ちゃんはうちの手伝いしてけれや」
「しかしわたしは」
「エドさんはお留守番してて」
「……かしこまりました」
*****
「辰巳、元気出して」
「俺が暴走したばっかりにボーの乳しぼり見れなくてすまん」
「いいよ。辰巳が元気ないよりも昨日みたいに暴れてたほうがオレはいいと思うよ」
「そうか。よし、落ち込んでても楽しくないよな。森の探検に出発だ!」
「ペッペ出て来るかな?」
「それは……いつかそのうち……」
「あ、なんかいる」
「ん? あれはドロヘドリンだな」
「あれ? わかりやすい名前だね」
「もとはもっと発音できない感じだ」
「あーやっぱり」
「あれは放っといてもあんまり害がないから大丈夫だ。でも近づくなよ」
「近づくとどうなるの?」
「ガバっと取り込まれて麻痺させられて溺れて死ぬ」
「怖っ」
「そして完全に溶かされてだれにも発見されない」
「完全犯罪じゃん」
「年数十件は森で行方不明事件があるそうだ」
「完全犯罪じゃん」
「事故かもしれないけど区別はつかないし証拠もないよな」
「よし近づかない」
「たまに透明で気づきにくいのが出て来るらしいんで注意しろよ」
「あ、あれなに? 木の上の」
「どれだ? ああ、あの鳥か」
「きれいだねえ」
「肉食で目ん玉狙ってくるらしいから気を付けろ」
「怖っ!」
「狙って近づいて来たところをぶっ叩いて、落とす!」
「うわっ」
「これは羽が売れるらしいから見つけたら片っ端からぶち落とすぞ」
「おっかねえ」
*****
「あ、もうお昼だね。ボーたち来てるかな?」
「そうだな。もうそろそろ戻るか」
「辰巳が楽しそうだから止めなかったけど、もう森が絶滅しちゃうから帰ろう」
「ちょっと間引いてただけだぞ」
森の入り口まで戻って来るとボーたちがもさもさと草を食っていた。
「これがボーか。かわいいような……よくわからない顔してる」
「これから乳が採れるイメージが湧かないんだよな」
「なんとなく牛のイメージになっちゃうもんね」
「食べてるときは触らないほうがいいみたいだけど、あの辺の日向ぼっこしてるやつはなでてもいいぞ」
「ほんと? やってみる」
「俺は近くで見てる」
「んん? んー、ごわごわ。でもクセになる感じ」
「思ったほど臭くもないし飼いやすそうだよな」
「なでてるとだんだんかわいい気がしてきた」
「ふすふす」
「お、耳の後ろ?」
「にゅ」
「いまの鳴き声か?」
「鳴いたね」
「ふん」
「うわっ」
「大丈夫か? ……大丈夫そうだな」
「なにこれ膝に乗ってすりすり……あまえてる?」
「ふんふん」
「懐いたみたいだな」
「辰巳もなでてみなよ」
「どれどれ」
「きーっ」
「うわ! いやなのか?」
「ふんっ」
「俺は……もっとかわいいのを探してくる!」
「え? ちょっと、辰巳? ……行っちゃった」
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