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第1話 進路指導
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オレは参内虎彦、十五歳、ごく普通の中学生。
今日は進路指導の日。
「参内、進路希望だがなぁ……、『冒険者』ってなんだ?」
「え? 先生、冒険者知らないの? オレ、冒険者になるんだ!」
「はあ? おまえゲームかなんかのやりすぎじゃないか? ちょっとご両親呼んで話しようか」
「両親も冒険者やってみなさいって言ってる。職業適性がぴったりだって」
「あ? おまえの適性テストは……まあ、酷いもんだが……悲観的にならなくてもいいんだぞ?」
「あ、それじゃなくて、水晶玉で表示されるやつだよ」
「……おまえのご両親はなにか怪しい宗教でもやってるのか?」
「宗教? ミテルゼ教のこと? 国教だし、母さんは聖母って呼ばれてるし、父さんはそこの神様にちょくちょく呼ばれたりするらしいから、まあ、やってるといえばやってるかな?」
「……」
「じゃあそういうことなんで進路は冒険者だから」
「いや、ちょっと待て。心配しかない。その冒険者ってのはなにするんだ?」
「えーと、魔獣や害獣を退治したり、盗賊を捕えたり、旅の商人や要人の護衛したり、あと、薬草とかの素材採取?」
「完っ全にゲームのやりすぎじゃねぇか」
「ゲームじゃないよ。異世界?だよ?」
「ラノベの読みすぎか。……いいか? 参内、おまえ、目を覚ませ」
「先生、授業中じゃないんだから、起きてるよ」
「……授業中も起きてろよ。じゃなくて、生徒が進路指導で本気で冒険者とか異世界とか言い出したら普通に止めるだろマジでいいかげんにしろ?」
「父さんに『先生に言うのは止めとけ』って言われたけど、本当に信じないんだね! びっくり!」
「びっくりはこっちだ! やっぱご両親とも話しないとマズいんじゃ……あぁあめんどくさい……」
「先生、本音漏れてるよ……」
「これは三者面談じゃなくて家庭訪問レベルだよな、くっそ忙しいのに」
「先生、本音漏れてるよ……」
「上司への報告どうすりゃいいんだよ、異世界とか言い出した生徒がいるとか言えねぇよ……」
「先生、本音漏れてるよ……こりゃ再起不能かも。話終わりならこれで失礼します、さいならー」
「両親もヤバそうだし胃が痛い……」
*****
「進路指導終わったみたいだな。どうだった?」
「あれ? 辰巳、まだ残ってたんだ。なんか悩んでたから出てきた」
「……おまえのことだからそうとう酷い目にあわせたんだろうな」
「え? オレのせいじゃないし」
「なにを言ったんだ?」
「冒険者になるって」
「……なにを言ったんだ?」
「冒険者になるって」
「……なにを、言ったんだ?」
「無限ループ?」
「いやいやいや、のっけから対応不可能なこと言いだしたな」
「先生はゲームかラノベか宗教って言ってた」
「それか頭おかしいか」
「酷え!」
「おまえは本気だろうけど、常人には理解できないからな」
「父さんも冒険者っていうか、勇者?やってたから、オレもやってみようかなと思って」
「あー、あの人ならやってそうだけど、おまえ、大丈夫か?」
「職業適性はあるって」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「魔法はムリだけど剣はいける」
「……大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
「むかしからそういうやつだけど、さすがに心配だわ」
「あ、なんなら辰巳もいっしょに冒険者やろうぜ!」
「は?」
「城で職業適性見てもらえばいいだろ?」
「……は? 城?」
「オレのじいちゃん家だよ?」
「……夢見すぎだろ」
「勇者だった父さんは王女様だった母さんと結婚したんだよ」
「王道かよ。それじゃおまえが王子か?」
「なに言ってるの? 伯父さんがいまの王様で、その息子、オレのいとこが王子だよ」
「おまえの妄想どうなってんだ? いとこってたしか四国だか九州の方の」
「あ、それは父さんのほうの親戚ね。普通に日本人だし」
「確かに、おまえの母さんは日本人っぽくないよな。キラキラ美人だし。なに人?」
「異世界人? クマモト? そんなとこ」
「おい、熊本は日本だぞ」
「熊本じゃなくて、クマ……うまく発音できないんだよ。ともかく、辰巳も一度うちに来いよ」
「その、熊本城?に行くんじゃないのか?」
「うち二世帯住宅だよ?」
「……あー、そうかーわからん……」
「どうしたの? おなか痛い?」
「頭押さえてるだろどう見ても!」
今日は進路指導の日。
「参内、進路希望だがなぁ……、『冒険者』ってなんだ?」
「え? 先生、冒険者知らないの? オレ、冒険者になるんだ!」
「はあ? おまえゲームかなんかのやりすぎじゃないか? ちょっとご両親呼んで話しようか」
「両親も冒険者やってみなさいって言ってる。職業適性がぴったりだって」
「あ? おまえの適性テストは……まあ、酷いもんだが……悲観的にならなくてもいいんだぞ?」
「あ、それじゃなくて、水晶玉で表示されるやつだよ」
「……おまえのご両親はなにか怪しい宗教でもやってるのか?」
「宗教? ミテルゼ教のこと? 国教だし、母さんは聖母って呼ばれてるし、父さんはそこの神様にちょくちょく呼ばれたりするらしいから、まあ、やってるといえばやってるかな?」
「……」
「じゃあそういうことなんで進路は冒険者だから」
「いや、ちょっと待て。心配しかない。その冒険者ってのはなにするんだ?」
「えーと、魔獣や害獣を退治したり、盗賊を捕えたり、旅の商人や要人の護衛したり、あと、薬草とかの素材採取?」
「完っ全にゲームのやりすぎじゃねぇか」
「ゲームじゃないよ。異世界?だよ?」
「ラノベの読みすぎか。……いいか? 参内、おまえ、目を覚ませ」
「先生、授業中じゃないんだから、起きてるよ」
「……授業中も起きてろよ。じゃなくて、生徒が進路指導で本気で冒険者とか異世界とか言い出したら普通に止めるだろマジでいいかげんにしろ?」
「父さんに『先生に言うのは止めとけ』って言われたけど、本当に信じないんだね! びっくり!」
「びっくりはこっちだ! やっぱご両親とも話しないとマズいんじゃ……あぁあめんどくさい……」
「先生、本音漏れてるよ……」
「これは三者面談じゃなくて家庭訪問レベルだよな、くっそ忙しいのに」
「先生、本音漏れてるよ……」
「上司への報告どうすりゃいいんだよ、異世界とか言い出した生徒がいるとか言えねぇよ……」
「先生、本音漏れてるよ……こりゃ再起不能かも。話終わりならこれで失礼します、さいならー」
「両親もヤバそうだし胃が痛い……」
*****
「進路指導終わったみたいだな。どうだった?」
「あれ? 辰巳、まだ残ってたんだ。なんか悩んでたから出てきた」
「……おまえのことだからそうとう酷い目にあわせたんだろうな」
「え? オレのせいじゃないし」
「なにを言ったんだ?」
「冒険者になるって」
「……なにを言ったんだ?」
「冒険者になるって」
「……なにを、言ったんだ?」
「無限ループ?」
「いやいやいや、のっけから対応不可能なこと言いだしたな」
「先生はゲームかラノベか宗教って言ってた」
「それか頭おかしいか」
「酷え!」
「おまえは本気だろうけど、常人には理解できないからな」
「父さんも冒険者っていうか、勇者?やってたから、オレもやってみようかなと思って」
「あー、あの人ならやってそうだけど、おまえ、大丈夫か?」
「職業適性はあるって」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「魔法はムリだけど剣はいける」
「……大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
「むかしからそういうやつだけど、さすがに心配だわ」
「あ、なんなら辰巳もいっしょに冒険者やろうぜ!」
「は?」
「城で職業適性見てもらえばいいだろ?」
「……は? 城?」
「オレのじいちゃん家だよ?」
「……夢見すぎだろ」
「勇者だった父さんは王女様だった母さんと結婚したんだよ」
「王道かよ。それじゃおまえが王子か?」
「なに言ってるの? 伯父さんがいまの王様で、その息子、オレのいとこが王子だよ」
「おまえの妄想どうなってんだ? いとこってたしか四国だか九州の方の」
「あ、それは父さんのほうの親戚ね。普通に日本人だし」
「確かに、おまえの母さんは日本人っぽくないよな。キラキラ美人だし。なに人?」
「異世界人? クマモト? そんなとこ」
「おい、熊本は日本だぞ」
「熊本じゃなくて、クマ……うまく発音できないんだよ。ともかく、辰巳も一度うちに来いよ」
「その、熊本城?に行くんじゃないのか?」
「うち二世帯住宅だよ?」
「……あー、そうかーわからん……」
「どうしたの? おなか痛い?」
「頭押さえてるだろどう見ても!」
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