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運命の人
光流 3
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重ねられた手に安心して、その気持ちに応えたくて指を絡める。
初めて手を繋いでからわずかな時間しか経っていないのに、こうして指を絡めているのが自然なのだと思ってしまう。
手を繋ぐだけで、触れ合うだけで伝わる気持ちが嬉しくて、それが僕を勇気づける。
「僕たちは中学も高校も大学も、系列の学校に通うのが当たり前だと思ってたから外部の大学を受験すると言われて…。与えられた環境に甘えずに僕のことを守る力をつけたいって言われた時に、それなら僕にできることはって考えたんです。
もしかしたら外部の大学で好きな人ができてしまうかもしれない。
ずっと、僕の婚約者として過ごしてきたせいで女の子にも、女性Ωからも声をかけられることはなかったみたいだけど、環境が変われば声をかけられるようになって女の子の方がいいと言われてしまうかもしれない。
その時にその子たちよりも僕を選んでもらうためには、僕のできることはって考えて、支えようと思ったんです」
言いながら指に力がこもってしまう。
嫌われたくない、だけど話さないわけにはいかない。
僕が前に進むために。
結斗さんと共に前に進むために。
僕に起こった事を話し、僕の感じた事を話し、僕の覚悟を知ってもらうために。
「そんな時に………初めてのヒートが来て、静流君からは彼を呼ぼうかと言われたけど断ったんです。
受験の邪魔をしたくないから、時間を拘束したくないから、自分がどうなるのかわからないから」
言いながら思い出す護君の事。
護君のことを思い出すと胸が痛いのは今も変わらない。
今でも後悔しているのはあの時、護君を呼ばなかったこと。
護君を呼んでいても通常のヒートが来ていたかどうかはわからない。だけど、少なくとも誤解を与える事はなかっただろう。
邪魔したくなかった、拘束したくなかった、乱れる自分を見せたくなかった。
その気持ちは今も間違っていたとは思わないけれど、間違いの始まりはここからだという事も理解しているつもりだ。
「呼ばなかったことで主治医の先生にαの気持ちを理解してないって叱られて、静流君からも心配されて、だから彼に伝えたんです。
αの気持ちを理解していなかったせいで勝手なことを言ってしまったけれど、それでも学生の間はできれば薬を飲んで過ごしたいって」
「それは、」
無意識に出てしまったような言葉に「そうですよね」と答え、自覚のなかった幼い自分を思い苦笑いが漏れる。
αの婚約者がいたのにαの性質を理解せず、何としてでも護君を支えるのだと意固地になっていたあの頃の僕。
「αからすれば許せないんですよね、そんなの。
でも僕も譲れなかった。
これから大切な時期を僕のために無駄にしてほしくない。
もしも頼ってしまって1人で過ごせなくなってしまった時に大切な試験と重なってしまったら、僕よりも試験を優先して欲しいと言いながらそれが本心じゃないと気付かれてしまったら。
気付かれた時に困らせてしまったら、呆れられてしまったら。
そう思うと怖くて怖くて…。
だからその言い訳に〈支えたいから〉って言ったんです。
もちろん、それは本心でした。
ただ家で待つだけの、囲われるだけの存在になりたくない。
彼の話す内容にただ頷くだけじゃなくて、理解した上で頷けるようになりたい。何か手伝いができるのなら手伝いだってさせて欲しい。
なんでも話して欲しいから、話してくれた内容はちゃんと理解できるようになりたい。
だから僕が大学を卒業するまでは待って欲しいって。
必要な単位は静流君の在学中に取れるだけとって、静流君が卒業した後は必要最低限の登校にして家で学べることを学ぶからって」
僕の言葉に結斗さんが微妙な表情を見せる。
僕のしてしまった事はきっと、αには理解し難い事だったのだろう。その性質を無視した僕の気持ちの押し付け。
いくら相手のことを想ってのことだと言葉で伝えても、伝わることのない護君への愛情。
そう、僕にとっては我が儘でも独りよがりでもなかった。
ただただ護君を想い、護君を欲して、それでも護君の意思を尊重したいと思った僕だけが悪かったなんて、そんなのはおかしい。
僕が護君のことを理解できていなかったように、護君だって僕のことを理解していなかったじゃないか。
僕は護君との静流君を比べたりなんてしていなかった。
護君との愛情と、静流君への信頼は全く違うものだった。
護君に対する好きと、静流君に対する好きは全く違う。
もしも静流君が外部の大学を選び、護君が僕を守ってくれていたら結末は全く違っていただろう。それどころか、護君が外部の大学を選びさえしなければ今頃はきっと結婚に向けての準備をしていたはずだ。
護君はあれほどの時間を共に過ごしてきたのに、それなのに僕のことなんて見てなかったのだろう。
だから僕を置き去りにして外部に目を向けることができたんだ。
僕がαの性質を理解していなかったと言うのなら、Ωの性質を理解していなかったのは護君だ。
僕の淋しさに気付いてくれなかった護君にだって、非があったんだ。
初めて外部を受験すると聞かされた時…、あの時の衝撃を僕は忘れることができない。
ずっと一緒にいられると思っていた人が自分から離れてしまうと聞かされた時の喪失感と絶望。
だからそれを埋めるために、その気持ちを知られないために〈支える〉ことを口実に護君との一線を引くしかなかったんだ。
あの時にそこまで考えていたのかと言われれば後付けだと思わないでも無いけれど、それでもよくよく考えればそうだったのだと思えてくる。
言えない僕の気持ちを、飲み込んだ僕の気持ちを汲み取って欲しかった。
来て欲しくないと言ったけれど、それでも本当は来てくれることを願っていた。
だから…僕は少しずつ少しずつバランスを崩して、通常のヒートが来なくなったんだ。
だって、護君と僕が共に過ごしていたあの頃はお互いのフェロモンに気付いていたのだから。
あの時にバランスを崩さなけれ〈希少ヒート〉を発症しなかったかもしれない。
あの頃、あの時、そう思いながら自分を守るために色々なものを閉ざしていったのだ。
「彼は受け入れてくれました」
戸惑いの色を見せる結斗さんにそう告げる。僕の隠された願いが少しでも伝わるように。
「受験までの大切な時間を無駄にさせたくない。
学ぶための時間を大切にして欲しい。
その代わり、僕が卒業したら彼の望むようにしてくださいって」
受験までの大切な時間に邪魔をしたりはしないから、学ぶための時間を尊重するから。
だから、僕が卒業したら僕の全てを奪ってほしい。
〈支える〉なんてただの口実。
支えるふりをして僕の味わった焦燥感を護君にも味合わせたかっただけ。
自分のために頑張る僕を護君が手放すだなんて、そんなこと考えもしなかった。僕がどれだけ我慢したのかを思い知って、僕の手を離せなくなればいいとすら思っていた。
「こんな話、聞きたく無いですよね…。
でも、聞いてください。
自分の言葉で伝えないと、僕は前に進めないんです」
全て曝け出して、それでも受け入れてくれる人を欲していた。
僕は周りが思うほど無垢ではないし、案外計算高い。
静流君を困らせた時のように、静流君を試したように結斗さんを試していることにこの人は気づいてくれるのだろうか。
「正直、彼の話を聞くのは複雑だけど続き、聞かせて?」
真剣な顔で言葉を促す結斗さんの真意は分からない。だけど、表面的な僕の言葉に騙されて欲しいと思ってしまう。
そして、騙されたことに気づき笑って受け入れて欲しいと思ってしまう。
「ここからは嫉妬するような話じゃ無いですよ?
とにかく受験の邪魔をしたく無い、受験を優先して欲しい、そう思ってたまに2人で出かける事はあっても塾の前にとか、塾の前に少しだけ家に寄ってくれるとか、それで良かったんです。
それだけで頑張れた。
だけど無事に合格して、やっと2人の時間が取れると思ってたら忙しくて会えないって言われることが少しずつ増えて…。
その頃、知り合ってたみたいです」
計画が狂ったのはそこから。
大学に合格した護君は、僕との時間を大切にしてくれると思っていた。今までみたいにすぐに会える距離にいないのだから、もっと僕のことを気にかけてくれるようになると思っていた。
静流君に僕の様子を聞く事もできないのだから、もっともっと連絡をくれるようになると思っていた。
だけど、全ては逆だった。
「忙しいから僕のエスコートもできないって言われて静流君のエスコートが増えて、たまに会えても僕の言葉の揚げ足を取ってばかりで会話も無くなって。
それがストレスになってたみたいで、少しずつヒートが、って言っても寝てる時間が伸びていって。
数日寝てしまうくらいなら様子を見ようって言われたみたいなんですけど、婚約を解消したいって言われた日に急激なストレスで目が覚めなくなってしまって…そのまま入院したみたいです」
こんな話を聞かせたら呆れられるかもしれない。
婚約までしておきながら相手との心の距離を測り間違えた僕の哀れな末路。
言葉にしなくても伝わる想いなんてないのに、それなのに伝わるはずだと慢心していたせいで起きてしまったすれ違い。
「入院してる間に全て終わってて、静流君が全部終わらせてくれてて、sleeping beauty projectなんて大袈裟なことになってて。
だから僕、静流君に八つ当たりしたんです。もうメチャクチャな言いがかりで静流君を責めて、せっかく治療してくれてあった包帯も掻きむしって。
静流君が帰れないって知ってるのに1人で大丈夫だから帰ってって我儘言って困らせて。
そしたら注射打たれて強制的に寝かされちゃいました」
言いながら笑ってしまった。
あの時はもう心の底から笑うことなんてできないと思っていたのに、それなのに僕は今笑うことができている。
大丈夫。
想いを口にしないまま駄目になってしまった経験は、僕を成長させたようだ。
分かってくれるはずだからと、離れられないはずだからと狡いことを考えて、自分と同じ気持ちを味合わせた上で結ばれようだなんて、そんな相手の気持ちを試すようなことをしてしまった事をこの先もずっと後悔し続けるだろ。
だけど、そんな自分と向き合ったからこそ今度は素直になることが出来るはずだと思えるのは、その相手が結斗さんだから。
僕は案外強かなのかもしれない。
初めて手を繋いでからわずかな時間しか経っていないのに、こうして指を絡めているのが自然なのだと思ってしまう。
手を繋ぐだけで、触れ合うだけで伝わる気持ちが嬉しくて、それが僕を勇気づける。
「僕たちは中学も高校も大学も、系列の学校に通うのが当たり前だと思ってたから外部の大学を受験すると言われて…。与えられた環境に甘えずに僕のことを守る力をつけたいって言われた時に、それなら僕にできることはって考えたんです。
もしかしたら外部の大学で好きな人ができてしまうかもしれない。
ずっと、僕の婚約者として過ごしてきたせいで女の子にも、女性Ωからも声をかけられることはなかったみたいだけど、環境が変われば声をかけられるようになって女の子の方がいいと言われてしまうかもしれない。
その時にその子たちよりも僕を選んでもらうためには、僕のできることはって考えて、支えようと思ったんです」
言いながら指に力がこもってしまう。
嫌われたくない、だけど話さないわけにはいかない。
僕が前に進むために。
結斗さんと共に前に進むために。
僕に起こった事を話し、僕の感じた事を話し、僕の覚悟を知ってもらうために。
「そんな時に………初めてのヒートが来て、静流君からは彼を呼ぼうかと言われたけど断ったんです。
受験の邪魔をしたくないから、時間を拘束したくないから、自分がどうなるのかわからないから」
言いながら思い出す護君の事。
護君のことを思い出すと胸が痛いのは今も変わらない。
今でも後悔しているのはあの時、護君を呼ばなかったこと。
護君を呼んでいても通常のヒートが来ていたかどうかはわからない。だけど、少なくとも誤解を与える事はなかっただろう。
邪魔したくなかった、拘束したくなかった、乱れる自分を見せたくなかった。
その気持ちは今も間違っていたとは思わないけれど、間違いの始まりはここからだという事も理解しているつもりだ。
「呼ばなかったことで主治医の先生にαの気持ちを理解してないって叱られて、静流君からも心配されて、だから彼に伝えたんです。
αの気持ちを理解していなかったせいで勝手なことを言ってしまったけれど、それでも学生の間はできれば薬を飲んで過ごしたいって」
「それは、」
無意識に出てしまったような言葉に「そうですよね」と答え、自覚のなかった幼い自分を思い苦笑いが漏れる。
αの婚約者がいたのにαの性質を理解せず、何としてでも護君を支えるのだと意固地になっていたあの頃の僕。
「αからすれば許せないんですよね、そんなの。
でも僕も譲れなかった。
これから大切な時期を僕のために無駄にしてほしくない。
もしも頼ってしまって1人で過ごせなくなってしまった時に大切な試験と重なってしまったら、僕よりも試験を優先して欲しいと言いながらそれが本心じゃないと気付かれてしまったら。
気付かれた時に困らせてしまったら、呆れられてしまったら。
そう思うと怖くて怖くて…。
だからその言い訳に〈支えたいから〉って言ったんです。
もちろん、それは本心でした。
ただ家で待つだけの、囲われるだけの存在になりたくない。
彼の話す内容にただ頷くだけじゃなくて、理解した上で頷けるようになりたい。何か手伝いができるのなら手伝いだってさせて欲しい。
なんでも話して欲しいから、話してくれた内容はちゃんと理解できるようになりたい。
だから僕が大学を卒業するまでは待って欲しいって。
必要な単位は静流君の在学中に取れるだけとって、静流君が卒業した後は必要最低限の登校にして家で学べることを学ぶからって」
僕の言葉に結斗さんが微妙な表情を見せる。
僕のしてしまった事はきっと、αには理解し難い事だったのだろう。その性質を無視した僕の気持ちの押し付け。
いくら相手のことを想ってのことだと言葉で伝えても、伝わることのない護君への愛情。
そう、僕にとっては我が儘でも独りよがりでもなかった。
ただただ護君を想い、護君を欲して、それでも護君の意思を尊重したいと思った僕だけが悪かったなんて、そんなのはおかしい。
僕が護君のことを理解できていなかったように、護君だって僕のことを理解していなかったじゃないか。
僕は護君との静流君を比べたりなんてしていなかった。
護君との愛情と、静流君への信頼は全く違うものだった。
護君に対する好きと、静流君に対する好きは全く違う。
もしも静流君が外部の大学を選び、護君が僕を守ってくれていたら結末は全く違っていただろう。それどころか、護君が外部の大学を選びさえしなければ今頃はきっと結婚に向けての準備をしていたはずだ。
護君はあれほどの時間を共に過ごしてきたのに、それなのに僕のことなんて見てなかったのだろう。
だから僕を置き去りにして外部に目を向けることができたんだ。
僕がαの性質を理解していなかったと言うのなら、Ωの性質を理解していなかったのは護君だ。
僕の淋しさに気付いてくれなかった護君にだって、非があったんだ。
初めて外部を受験すると聞かされた時…、あの時の衝撃を僕は忘れることができない。
ずっと一緒にいられると思っていた人が自分から離れてしまうと聞かされた時の喪失感と絶望。
だからそれを埋めるために、その気持ちを知られないために〈支える〉ことを口実に護君との一線を引くしかなかったんだ。
あの時にそこまで考えていたのかと言われれば後付けだと思わないでも無いけれど、それでもよくよく考えればそうだったのだと思えてくる。
言えない僕の気持ちを、飲み込んだ僕の気持ちを汲み取って欲しかった。
来て欲しくないと言ったけれど、それでも本当は来てくれることを願っていた。
だから…僕は少しずつ少しずつバランスを崩して、通常のヒートが来なくなったんだ。
だって、護君と僕が共に過ごしていたあの頃はお互いのフェロモンに気付いていたのだから。
あの時にバランスを崩さなけれ〈希少ヒート〉を発症しなかったかもしれない。
あの頃、あの時、そう思いながら自分を守るために色々なものを閉ざしていったのだ。
「彼は受け入れてくれました」
戸惑いの色を見せる結斗さんにそう告げる。僕の隠された願いが少しでも伝わるように。
「受験までの大切な時間を無駄にさせたくない。
学ぶための時間を大切にして欲しい。
その代わり、僕が卒業したら彼の望むようにしてくださいって」
受験までの大切な時間に邪魔をしたりはしないから、学ぶための時間を尊重するから。
だから、僕が卒業したら僕の全てを奪ってほしい。
〈支える〉なんてただの口実。
支えるふりをして僕の味わった焦燥感を護君にも味合わせたかっただけ。
自分のために頑張る僕を護君が手放すだなんて、そんなこと考えもしなかった。僕がどれだけ我慢したのかを思い知って、僕の手を離せなくなればいいとすら思っていた。
「こんな話、聞きたく無いですよね…。
でも、聞いてください。
自分の言葉で伝えないと、僕は前に進めないんです」
全て曝け出して、それでも受け入れてくれる人を欲していた。
僕は周りが思うほど無垢ではないし、案外計算高い。
静流君を困らせた時のように、静流君を試したように結斗さんを試していることにこの人は気づいてくれるのだろうか。
「正直、彼の話を聞くのは複雑だけど続き、聞かせて?」
真剣な顔で言葉を促す結斗さんの真意は分からない。だけど、表面的な僕の言葉に騙されて欲しいと思ってしまう。
そして、騙されたことに気づき笑って受け入れて欲しいと思ってしまう。
「ここからは嫉妬するような話じゃ無いですよ?
とにかく受験の邪魔をしたく無い、受験を優先して欲しい、そう思ってたまに2人で出かける事はあっても塾の前にとか、塾の前に少しだけ家に寄ってくれるとか、それで良かったんです。
それだけで頑張れた。
だけど無事に合格して、やっと2人の時間が取れると思ってたら忙しくて会えないって言われることが少しずつ増えて…。
その頃、知り合ってたみたいです」
計画が狂ったのはそこから。
大学に合格した護君は、僕との時間を大切にしてくれると思っていた。今までみたいにすぐに会える距離にいないのだから、もっと僕のことを気にかけてくれるようになると思っていた。
静流君に僕の様子を聞く事もできないのだから、もっともっと連絡をくれるようになると思っていた。
だけど、全ては逆だった。
「忙しいから僕のエスコートもできないって言われて静流君のエスコートが増えて、たまに会えても僕の言葉の揚げ足を取ってばかりで会話も無くなって。
それがストレスになってたみたいで、少しずつヒートが、って言っても寝てる時間が伸びていって。
数日寝てしまうくらいなら様子を見ようって言われたみたいなんですけど、婚約を解消したいって言われた日に急激なストレスで目が覚めなくなってしまって…そのまま入院したみたいです」
こんな話を聞かせたら呆れられるかもしれない。
婚約までしておきながら相手との心の距離を測り間違えた僕の哀れな末路。
言葉にしなくても伝わる想いなんてないのに、それなのに伝わるはずだと慢心していたせいで起きてしまったすれ違い。
「入院してる間に全て終わってて、静流君が全部終わらせてくれてて、sleeping beauty projectなんて大袈裟なことになってて。
だから僕、静流君に八つ当たりしたんです。もうメチャクチャな言いがかりで静流君を責めて、せっかく治療してくれてあった包帯も掻きむしって。
静流君が帰れないって知ってるのに1人で大丈夫だから帰ってって我儘言って困らせて。
そしたら注射打たれて強制的に寝かされちゃいました」
言いながら笑ってしまった。
あの時はもう心の底から笑うことなんてできないと思っていたのに、それなのに僕は今笑うことができている。
大丈夫。
想いを口にしないまま駄目になってしまった経験は、僕を成長させたようだ。
分かってくれるはずだからと、離れられないはずだからと狡いことを考えて、自分と同じ気持ちを味合わせた上で結ばれようだなんて、そんな相手の気持ちを試すようなことをしてしまった事をこの先もずっと後悔し続けるだろ。
だけど、そんな自分と向き合ったからこそ今度は素直になることが出来るはずだと思えるのは、その相手が結斗さんだから。
僕は案外強かなのかもしれない。
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