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閑話
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「それで、どうするつもり?」
少し落ち着いたのが伝わったのか、兄がそう問いかける。
「紗羅ちゃんと話すつもりみたいだけど、いつ話すの?」
「それは、明日にでも「駄目だよ」」
何度も言葉を被せて否定される僕の気持ち。「何で?」と反論した僕は、自分本位な考えを真っ向から否定されてしまった。
「世界が終わるかもしれないって時に紗柚に両親が争うところを見せるつもりなのか?」
「でも、」
「日常が戻るまでお前が我慢するべきだと思うけど」
もっともらしいことを言うけれど、それは当事者ではないから言えることで、自分じゃない相手と楽しんできた妻に冷静に向き合うことなんてできるわけがない。
「日常生活が戻るまでって、いつまで僕は我慢すればいいの?」
「何、子どもみたいなこと言ってるんだよ。
そんなの、紗柚の生活が元に戻るまでに決まってるだろ?
自分の気持ちと紗柚の気持ち、どっちを尊重するかなんて言われなくても分かれよ」
反論をしたいけれど、兄の言うことは正論過ぎて何も言うことができない。
「どのみち、紗凪君と話しただけであんなになるんだから、紗羅ちゃんとまともに話すことなんてできないだろう?」
「でも…」
「とりあえずちゃんと頭を整理して、何を話すかを考えないと。
紗羅ちゃんに言い負かされていいようにされるんじゃないか?」
兄の言葉は正論過ぎて返答に困るけれど、考えれば考えるほど自分の浅はかさに口籠ることしかできなくなる。
「明日、何時に帰るつもりなのかは知らないけど、どうせ昼は食べて帰るつもりだろう?
で、いつ話すつもりだったの?
帰ってすぐ?
紗柚が寝てから?
さっきみたいに感情を抑えられなかったら紗柚、起きるよ?
向こうの家族だっておかしいと思うんじゃないの?」
「だから履歴とスクショ見せて、」
「見せてどうする?」
「紗羅ちゃんはきっと知られたくないからこっちの条件を言えば」
「言えば聞くような性格なのか、紗羅ちゃんは」
その言葉で改めて考え込んでしまう。
「それ、どこかにバックアップ取ってあるのか?
スマホ、取り上げられたらどうするつもり?
それこそ、ドラマとかじゃないけど自分でどこかにぶつかってお前に暴力を振るわれたとか言われたら?」
僕の中では紗羅は家族で、僕の言葉を聞いてくれるくらいの信頼関係は築けていると思っていた。脅すような真似をしてしまうけど、話し合う余地はあると思っていた。
紗羅の不貞の証拠を並べ、紗羅の気持ちが自分にないのだから紗柚に悪影響が出る前に離れようと話をするつもりだった。
世間体を気にする紗羅は証拠を見せれば僕の提案に乗るしかないはずだと甘く見ていたようだ。
「お前を悪者にして、紗柚だけ手元に置いて…元婚約者がどういうつもりなのか分からないけど、お前と別れて再婚することもできるだろ?
紗柚もいるんだから相手が不妊でももう問題無いんだし」
想定していなかった言葉に焦り、自分の甘さを実感する。
紗羅の弱みを突きつけ、紗柚と共に家を出ることを了承させるだけで済むと思っていた。家族に対する言い訳は紗羅の有責ではあるものの、紗羅が大きく傷つくことがないようにすり合わせをするつもりでいた。
「そんなことは、」
「無いとは言えないと思うけどな。
色々想定しておいた方がいいし、一対一で話すなら録音とか、何か仕掛けてきた時に自分を守る方法も考えないとな」
兄の提案に自分の甘さを実感する。
明日は3人でいつも通りに過ごし、紗柚が寝てから不貞の証拠を見せて話をするつもりだった。
このことを家族に伝えないことを条件に、紗柚と実家に戻ることを認めさせるつもりだった。
理由は紗羅が考えればいいけれど、紗柚を渡す気はなかった。何なら僕のことが嫌いで、僕の子どもである紗柚も愛せないという理由でも良いだろう。
紗羅も僕もまだやり直しのきく年だから、再婚するのも良いだろう。それこそ、元婚約者と再婚して不妊治療を受けるのも良いかもしれない。
最悪、子どもに恵まれなくても紗柚がいるのだから。
「ただ、心配なのは紗凪君だよね」
その言葉に顔を上げると僕を気遣っていたのと同じ口で僕を責めるような言葉を発し始める。
「恋人に裏切られて、お姉さんに裏切られて、お前に責められて。
紗凪君が何をどこまで知っているのかは分からないけど、馬鹿なこと考えないと良いんだけど」
「馬鹿なことって、」
「まあ、色々あるよね。
軽いのから重いのまで、」
「え、でも誰か一緒にいたし」
自分の言葉を思い出して焦り、言い訳をする。生まれてこなければと言ったけど、死んで欲しいわけじゃない。
その存在を疎ましく思いはしても、その命を断つことなんて望んではいないから。
「そうなのか?」
「たぶん、仕事のパートナーかな」
思い出すのは僕を責める紗凪じゃない誰かの声で、その声は確かに怒気を含んでいた。ひとりではないのだから、紗凪が馬鹿な行動を取ろうとする抑止力にはなるだろう。
「もともと一緒に住んでたみたいだし、」
「パートナーなのは仕事だけだよな?」
「そうなんじゃないかな?
前にお義母さんが言ってたのは、パートナーの地元で起業したのは親の使ってた事務所兼自宅を使っていいって言われたからって」
「それなら少しは安心か、」
僕の言葉で勢いで部屋を飛び出して、なんてことにはならないだろうと思い、少しだけホッとする。自分勝手な言い分だけど、その存在疎ましく思ってはいても命を絶って欲しいわけじゃないから。
「でもその元婚約者は何も無かったら地元に戻るんだろ?
そのまま紗凪君と一緒に暮らすつもりなのか?」
「………あの噂を信じてるとか」
「だったら、結婚して子どももいる紗羅ちゃんより紗凪君を優先するべきなんじゃないのか?」
「紗羅ちゃんが、」
「紗羅ちゃんが何か?」
「僕や紗柚は噂を信じてなくて、噂を信じてる自分に寄り添ってくれないから苦しいって」
「………それを信じてノコノコこっちまで来たんだ。
紗羅ちゃん、あの噂のこと嗤ってたよね」
「うん、」
「元婚約者なのに信じたんだ?」
「どうなんだろう。
信じたのか、ただの口実なのか…」
「紗凪君だって紗羅ちゃんの性格くらい知ってると思うけど…言えなかったのかな。そうだとしたら諦めたんだろうな、きっと」
兄の言葉に息苦しさを感じ、無意識に「謝らないと」と呟いたらしい。
「謝るって、紗凪君に?
謝ったからってどうかなると思ってるのか?」
「でも、」
「お前のそれは自己満足だよ。
関係無い紗凪君を巻き込んで、一方的に責め立てて、傷付けて。
謝ったって紗羅君を傷つけた事は無かったことにならないし、大体どうやって謝るつもりなんだ?」
「電話を、」
「出てくれると思ってるのか?」
兄の言葉のひとつひとつが僕の心を傷付ける。紗羅に裏切られて傷付いた心は紗凪を攻撃することで少しだけ癒えた気がしたのに、癒えた以上に傷付けられた気分だ。
「大体、お前が謝ったら紗凪君はそれを拒否すると思うか?
口先だけでもお前の謝罪を受け入れるしか無いんじゃないのか?」
「じゃあ、どうしたら」
「関わらないことだよ。
元々こっちに帰ってこないんだから接点なんてほとんど無かったんだろう?
今回だって、当事者と話せばいいのに巻き込んで、傷付けて。
そもそも何て謝るつもりなんだよ」
容赦なく浴びせられる言葉に自分の弱さが嫌になる。紗羅に向き合うことをせず、ふたりで過ごす場所を知っているのに傍観して、それなのに紗凪を責め立てた自分が情けなくなる。
「とりあえず、紗凪君にはもう連絡するな。謝るためだとしても、そんな一方的な気持ちは迷惑なだけだ。
一緒にいてくれる相手が気心の知れた相手なら尚更関わらない方がいい」
謝ることが相手のためではなく自分のためだと言われてしまえば身動きが取れなくなる。自分の弱さを、狡さを、情けなさを自覚して、反省したところで許されるわけではないのだ。
「とりあえず明後日までは紗柚のために我慢するべきだ。
噂は嘘だったと安心して、日常が戻ってきたらその時は話をすればいい。
ただ、ふたりきりじゃなくて人の目のあるところで話すようにしろよ」
そうアドバイスをくれた兄は、証拠をバックアップしておくように、何ならプリントアウトしてそれを見せるのもいいのではないかと助言を受ける。
中途半端な気持ちで話をしても紗羅に言いくるめられてしまうから自分の言いたい事、聞きたい事、自分がどうしたいのかをしっかり伝えられるように言われ、自分の浅はかさに気付く。
全てが、本当に全てが中途半端で、全てにおいて甘かったと自覚させられる。
「とにかく、紗柚の日常が戻るまでは待つんだ」
そう言って話を終わらせた兄は「こっちの準備楽俺に任せておけ」と僕を元気付けるように笑ってくれた。
スマホで紗羅の居場所を確認すればホテルを出て移動していることに気付く。今日は家に戻るのだろう。
僕たちがいつ帰ってもいいように家で待っていたふりをするのだろう。
こんな時間に外出していることの証拠としてスクショを撮り、このまま家で待機していれば何か決定的な証拠が手に入るのではないかと考える。
「兄さん、」
部屋に戻った兄を追いかけた僕は、呆れた顔の兄に頼み込んで紗柚に気付かれないように家に向かうことにした。
少し落ち着いたのが伝わったのか、兄がそう問いかける。
「紗羅ちゃんと話すつもりみたいだけど、いつ話すの?」
「それは、明日にでも「駄目だよ」」
何度も言葉を被せて否定される僕の気持ち。「何で?」と反論した僕は、自分本位な考えを真っ向から否定されてしまった。
「世界が終わるかもしれないって時に紗柚に両親が争うところを見せるつもりなのか?」
「でも、」
「日常が戻るまでお前が我慢するべきだと思うけど」
もっともらしいことを言うけれど、それは当事者ではないから言えることで、自分じゃない相手と楽しんできた妻に冷静に向き合うことなんてできるわけがない。
「日常生活が戻るまでって、いつまで僕は我慢すればいいの?」
「何、子どもみたいなこと言ってるんだよ。
そんなの、紗柚の生活が元に戻るまでに決まってるだろ?
自分の気持ちと紗柚の気持ち、どっちを尊重するかなんて言われなくても分かれよ」
反論をしたいけれど、兄の言うことは正論過ぎて何も言うことができない。
「どのみち、紗凪君と話しただけであんなになるんだから、紗羅ちゃんとまともに話すことなんてできないだろう?」
「でも…」
「とりあえずちゃんと頭を整理して、何を話すかを考えないと。
紗羅ちゃんに言い負かされていいようにされるんじゃないか?」
兄の言葉は正論過ぎて返答に困るけれど、考えれば考えるほど自分の浅はかさに口籠ることしかできなくなる。
「明日、何時に帰るつもりなのかは知らないけど、どうせ昼は食べて帰るつもりだろう?
で、いつ話すつもりだったの?
帰ってすぐ?
紗柚が寝てから?
さっきみたいに感情を抑えられなかったら紗柚、起きるよ?
向こうの家族だっておかしいと思うんじゃないの?」
「だから履歴とスクショ見せて、」
「見せてどうする?」
「紗羅ちゃんはきっと知られたくないからこっちの条件を言えば」
「言えば聞くような性格なのか、紗羅ちゃんは」
その言葉で改めて考え込んでしまう。
「それ、どこかにバックアップ取ってあるのか?
スマホ、取り上げられたらどうするつもり?
それこそ、ドラマとかじゃないけど自分でどこかにぶつかってお前に暴力を振るわれたとか言われたら?」
僕の中では紗羅は家族で、僕の言葉を聞いてくれるくらいの信頼関係は築けていると思っていた。脅すような真似をしてしまうけど、話し合う余地はあると思っていた。
紗羅の不貞の証拠を並べ、紗羅の気持ちが自分にないのだから紗柚に悪影響が出る前に離れようと話をするつもりだった。
世間体を気にする紗羅は証拠を見せれば僕の提案に乗るしかないはずだと甘く見ていたようだ。
「お前を悪者にして、紗柚だけ手元に置いて…元婚約者がどういうつもりなのか分からないけど、お前と別れて再婚することもできるだろ?
紗柚もいるんだから相手が不妊でももう問題無いんだし」
想定していなかった言葉に焦り、自分の甘さを実感する。
紗羅の弱みを突きつけ、紗柚と共に家を出ることを了承させるだけで済むと思っていた。家族に対する言い訳は紗羅の有責ではあるものの、紗羅が大きく傷つくことがないようにすり合わせをするつもりでいた。
「そんなことは、」
「無いとは言えないと思うけどな。
色々想定しておいた方がいいし、一対一で話すなら録音とか、何か仕掛けてきた時に自分を守る方法も考えないとな」
兄の提案に自分の甘さを実感する。
明日は3人でいつも通りに過ごし、紗柚が寝てから不貞の証拠を見せて話をするつもりだった。
このことを家族に伝えないことを条件に、紗柚と実家に戻ることを認めさせるつもりだった。
理由は紗羅が考えればいいけれど、紗柚を渡す気はなかった。何なら僕のことが嫌いで、僕の子どもである紗柚も愛せないという理由でも良いだろう。
紗羅も僕もまだやり直しのきく年だから、再婚するのも良いだろう。それこそ、元婚約者と再婚して不妊治療を受けるのも良いかもしれない。
最悪、子どもに恵まれなくても紗柚がいるのだから。
「ただ、心配なのは紗凪君だよね」
その言葉に顔を上げると僕を気遣っていたのと同じ口で僕を責めるような言葉を発し始める。
「恋人に裏切られて、お姉さんに裏切られて、お前に責められて。
紗凪君が何をどこまで知っているのかは分からないけど、馬鹿なこと考えないと良いんだけど」
「馬鹿なことって、」
「まあ、色々あるよね。
軽いのから重いのまで、」
「え、でも誰か一緒にいたし」
自分の言葉を思い出して焦り、言い訳をする。生まれてこなければと言ったけど、死んで欲しいわけじゃない。
その存在を疎ましく思いはしても、その命を断つことなんて望んではいないから。
「そうなのか?」
「たぶん、仕事のパートナーかな」
思い出すのは僕を責める紗凪じゃない誰かの声で、その声は確かに怒気を含んでいた。ひとりではないのだから、紗凪が馬鹿な行動を取ろうとする抑止力にはなるだろう。
「もともと一緒に住んでたみたいだし、」
「パートナーなのは仕事だけだよな?」
「そうなんじゃないかな?
前にお義母さんが言ってたのは、パートナーの地元で起業したのは親の使ってた事務所兼自宅を使っていいって言われたからって」
「それなら少しは安心か、」
僕の言葉で勢いで部屋を飛び出して、なんてことにはならないだろうと思い、少しだけホッとする。自分勝手な言い分だけど、その存在疎ましく思ってはいても命を絶って欲しいわけじゃないから。
「でもその元婚約者は何も無かったら地元に戻るんだろ?
そのまま紗凪君と一緒に暮らすつもりなのか?」
「………あの噂を信じてるとか」
「だったら、結婚して子どももいる紗羅ちゃんより紗凪君を優先するべきなんじゃないのか?」
「紗羅ちゃんが、」
「紗羅ちゃんが何か?」
「僕や紗柚は噂を信じてなくて、噂を信じてる自分に寄り添ってくれないから苦しいって」
「………それを信じてノコノコこっちまで来たんだ。
紗羅ちゃん、あの噂のこと嗤ってたよね」
「うん、」
「元婚約者なのに信じたんだ?」
「どうなんだろう。
信じたのか、ただの口実なのか…」
「紗凪君だって紗羅ちゃんの性格くらい知ってると思うけど…言えなかったのかな。そうだとしたら諦めたんだろうな、きっと」
兄の言葉に息苦しさを感じ、無意識に「謝らないと」と呟いたらしい。
「謝るって、紗凪君に?
謝ったからってどうかなると思ってるのか?」
「でも、」
「お前のそれは自己満足だよ。
関係無い紗凪君を巻き込んで、一方的に責め立てて、傷付けて。
謝ったって紗羅君を傷つけた事は無かったことにならないし、大体どうやって謝るつもりなんだ?」
「電話を、」
「出てくれると思ってるのか?」
兄の言葉のひとつひとつが僕の心を傷付ける。紗羅に裏切られて傷付いた心は紗凪を攻撃することで少しだけ癒えた気がしたのに、癒えた以上に傷付けられた気分だ。
「大体、お前が謝ったら紗凪君はそれを拒否すると思うか?
口先だけでもお前の謝罪を受け入れるしか無いんじゃないのか?」
「じゃあ、どうしたら」
「関わらないことだよ。
元々こっちに帰ってこないんだから接点なんてほとんど無かったんだろう?
今回だって、当事者と話せばいいのに巻き込んで、傷付けて。
そもそも何て謝るつもりなんだよ」
容赦なく浴びせられる言葉に自分の弱さが嫌になる。紗羅に向き合うことをせず、ふたりで過ごす場所を知っているのに傍観して、それなのに紗凪を責め立てた自分が情けなくなる。
「とりあえず、紗凪君にはもう連絡するな。謝るためだとしても、そんな一方的な気持ちは迷惑なだけだ。
一緒にいてくれる相手が気心の知れた相手なら尚更関わらない方がいい」
謝ることが相手のためではなく自分のためだと言われてしまえば身動きが取れなくなる。自分の弱さを、狡さを、情けなさを自覚して、反省したところで許されるわけではないのだ。
「とりあえず明後日までは紗柚のために我慢するべきだ。
噂は嘘だったと安心して、日常が戻ってきたらその時は話をすればいい。
ただ、ふたりきりじゃなくて人の目のあるところで話すようにしろよ」
そうアドバイスをくれた兄は、証拠をバックアップしておくように、何ならプリントアウトしてそれを見せるのもいいのではないかと助言を受ける。
中途半端な気持ちで話をしても紗羅に言いくるめられてしまうから自分の言いたい事、聞きたい事、自分がどうしたいのかをしっかり伝えられるように言われ、自分の浅はかさに気付く。
全てが、本当に全てが中途半端で、全てにおいて甘かったと自覚させられる。
「とにかく、紗柚の日常が戻るまでは待つんだ」
そう言って話を終わらせた兄は「こっちの準備楽俺に任せておけ」と僕を元気付けるように笑ってくれた。
スマホで紗羅の居場所を確認すればホテルを出て移動していることに気付く。今日は家に戻るのだろう。
僕たちがいつ帰ってもいいように家で待っていたふりをするのだろう。
こんな時間に外出していることの証拠としてスクショを撮り、このまま家で待機していれば何か決定的な証拠が手に入るのではないかと考える。
「兄さん、」
部屋に戻った兄を追いかけた僕は、呆れた顔の兄に頼み込んで紗柚に気付かれないように家に向かうことにした。
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