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紗凪 2
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「義兄さんから着信があったんだ」
自分では処理できない問題に大輝を巻き込むのはどうかとは思ったけれど、義兄の意図が分からなさ過ぎてついつい頼ってしまう。
「兄さんって、お姉さんの旦那さん?」
大輝にとっても意外な言葉だったのだろう。驚いた顔を見せられるけれど「そう」としか答えることができない。着信があったというだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだから事実を伝えることしかできなかった。
「何だって?」
「分かんない。
1回着信があっただけでメッセージは入ってないし」
「折り返しは?」
「してない。
緊急ではなさそうだし、もしかしたら姉さんのことかも知れないしけど」
義兄が姉と貴哉のことを知っているとは思えないけれど、下手に連絡をしたら余計なことを言ってしまうかもしれないと思えば当然の行動だろう。
貴哉から姉と会うことを聞いたけれど、姉が直接聞いた訳では無い。だから、【その事】を知っているような発言を不用意にしないためにも慎重に行動するべきだ。
普段から姉と連絡を取る事は無いのにこんな時だけ姉の動向を知っているだなんて、そんな事は偶然でも有り得ないのだから。
「お姉さんのことって、何で紗凪に連絡くるの?」
「分からないけど、姉さんとすら連絡取ってないのに義兄さんから連絡くるって、意味分からないし。
でも両親や祖父母に何かあれば姉さんから連絡が来るだろうし、それならもっと何回も連絡が入るだろうし。
姉さんに何かあったとしても連絡が入るなら母さんからだろうし。
そう思うと不自然じゃない?」
ボクの言葉に考えるようなそぶりを見せた大輝は「確かにな、」と首を傾げる。
頻繁に連絡を取り合うような相手なら理解できるけれど、実家に帰れば話をする程度で直接連絡を取ったことのない相手からの着信に警戒してしまうのは当然だ。今現在の姉と貴哉、そしてボクの関係を考えると折り返ししてしまうのは危険だろう。
「このまま放っておいていいと思う?」
「別にいいんじゃない?
用事があればまたかかってくるだろうし」
「だよね…。
でも、何で電話してきたんだろう。
やっぱり姉さん絡みなのかな」
「それくらいしか思い当たらない?」
「うん、」
折り返さないことを肯定してもらいたいだけの会話が終わると何となく顔を見合わせ、どちらともなく溜め息を吐く。何の話し合いも持たずに姉の元に向かうと告げた貴哉と、貴哉が側にいることを願った姉。そこにボクの意思は介在していないのだから何も言える事は無いし、何か言いたいとも思わない。
もしもふたりのことでボクに何か言いたいのだとしたら、それはお門違いだとしか思えない。
変に罪悪感を感じて『何かありましたか?』なんて連絡したとしてもボクには何もできる事は無いし、何かしたいとも思わない。
そう言えば貴哉は義兄と甥が姉に寄り添ってくれないから自分に救いを求めた、みたいなことを言っていたはずだ。もしもそれが本当なら、義兄が姉に寄り添えばこんな事にならなかったとも言えるのではないか。
姉と義兄がちゃんと関係を築き、互いに不満を持たなければ貴哉の入り込む隙も無かったはずだ。
義兄と甥が姉に寄り添って円満に過ごしていれば、今ボクの隣には貴哉がいたかもしれない。
まあ、姉の言ったことが本当かどうかと問われれば嘘かもしれないと思うけれど、寄り添わなかったと言わせた義兄と、姉の嘘に騙された貴哉が悪いのだから文句を言われる筋合いはない。
ボクは、ただ巻き込まれただけなのだから。
「またかかって来たら出るの?」
「………その時の気分?」
「なに、その曖昧なの」
「ひとりの時なら出ないけど、大輝がいる時なら出ても良いかな」
「何、それ。
頼ってくれてるの?」
「頼ってるっていうか、第三者の耳があったほうが冷静になれるかな、と思って」
「そこは頼ってるってことにしておいてくれれば良いのに」
正直に答えたボクに苦笑いを見せながら、「オレがいない時にかかってきたら呼びに来て良いよ」と言ってくれるけど、実際に義兄から電話がかかってきたら動揺して出ることができないまま放置してしまう気がする。
「ところで揚げ物だけど、思ったより難しそうなんだよね」
そう言いながら情けない顔を見せるため一緒に揚げ方を検索したけれど、面倒になってしまい適当にサラダを作りそれで終わらせてしまった。
お腹が満たされればいいと開き直り、「少しだけ飲む?」と言った大輝の提案に乗ってリビングに移動して、物件を検索しながらアルコールの缶を開ける。空腹ではないけれど何となく物足りなくて買い出しの時に買ってきたお菓子を開けるけれど、どちらもあまり手は伸びない。
のんびりとした時間を過ごしているフリをしているけれど、実際のボクは義兄からの着信が気になってしまい、落ち着かない気持ちのままだ。部屋にいる時に着信があったらと思うとひとりで過ごすことに抵抗があったから大輝の提案はありがたかったけれど、きっと、ボクのそんな気持ちを察しての提案だったのだろう。
「紗凪は結局、噂のこと信じてるの?」
相変わらず本気とも冗談ともつかないまま温泉地の物件を検索していたものの、ふたりして調子に乗って観光地の物件を調べ始めたところで大輝が口を開いた。
「え、信じてないよ。
信じてないけど不安にはなるよね。
大輝は?」
「オレは全く信じてないし、特別不安にも思ってないかな。
大体、世界が終わるって漠然としてるけど、【世界が終わる】って概念的なものじゃなくて、現実的なものとして捉えてるだろ、今回は。
だから本当に終わるなら仕方ないと思うくらいかな。
自分だけ取り残されるとかじゃなくて本当に全部の世界が終わるなら、終わった後のこと考えても仕方ないし」
そう言って小さく笑うと「紗凪がいるからひとりで終わるわけじゃないし」と流すようにビールを飲み干す。
「足りない」と言いながら新しいビールを取りに行くと「はい、紗凪の分」と当たり前のようにボクの分も目の前に置く。ボクの分はジュースみたいな缶酎ハイだけど、手元の缶はまだ半分も減っていない。
「ボクはてっきり彼女さんと上手くいってると思ってたからすぐに出てくつもりだったんだけどね」
途切れた話を続けるように缶を弄びながら口を開く。貴哉との始まりが飲み過ぎたせいだったせいで、飲めなくなったわけではないけれど、酔うほど飲むことはなくなった。貴哉もそれに気付いていたのだろう。あの後も一緒に飲むことはあったけど、無理に進めることはなかった。
大輝のことを信用していないわけではないけれど、本能的に酔うことを恐れているのかもしれない。
「だったら別れてて正解だった」
「それ、彼女さんに悪いよ?」
「そう?
彼女は彼女で忘れられない人がいたみたいだからこれで良かったんじゃない?
オレは、もしこのまま終わるとしても紗凪と一緒なら気楽で良いけど」
「気楽って、その扱い」
「でもそのせいで今後の展望も見えてきたし」
「展望?」
「とりあえず事務所の移転かな。
目指せ完全リモート化」
そう言って「この辺なんか良くない?」とプリントアウトした資料を目の前に並べる。何かと思い手に取るとそれは物件の資料で、どれも温泉地な事に笑ってしまう。
「これ、本気なの?」
「リモートならそれも有りなんじゃない?
家賃安いし、周りの環境も悪くないし。交通の便もいいし」
冗談で言ったつもりだったけれど、思いの外乗り気だったようだ。
「終わるなんて信じてないんだけど、終わらなかったら一緒にここから離れようか」
「大輝は良いの?」
ボク自身はここに何の思い入れも無いし、地元に帰りたいとも思わないから事務所をどこに構えても問題ないけれど、大輝はこの家が生家だし、地元の友達もたくさんいるはずだ。
「別に、地元離れたって学生の頃も友達とは連絡取ってたし、そもそも親だってこの家に思い入れないみたいだし。
別の場所でまた始める時に紗凪と一緒なら心強い」
そんな風に言われて悪い気がするわけがない。
「温泉地って、買い物事情とかは?」
「車あれば問題無い」
「ボク、免許無いよ?」
「休みの日に一緒に買い出しに行けば問題無いし」
「冷凍の揚げ物は禁止で」
具体的なようで具体的じゃ無い話をしながら時間が過ぎていく。
前に一緒に暮らしていた時はお互いに干渉しなかったのに、貴哉のことがあったせいか、やけに過保護になった気がするけれど、将来を見据えて同棲した彼女がいなくなったことで大輝は大輝で思うところがあるのかもしれない。
資料を見ながらそんなバカな話をしている時にスマホが振動して着信を知らせる。
「あ…」
表示された名前に思わず声が漏れた。
大輝も着信に気が付いたのだろう。
「出てみる?」
そんな風に聞かれても即答できない。
留守番に設定してないせいか、いつまで経っても切れない着信に執念のようなものを感じて嫌な気分になる。
「これ、出ないとダメなやつかな」
「っぽいね、」
そんな話をしている間も続く、着信を知らせる振動。
ボクの言葉を肯定した大輝が「出てみれば。一緒にいるし」と言ってくれたことに後押しされて通話ボタンにそっと触れ電話を繋ぐ。何を言われるのか分からないけれど、大輝になら何を聞かれてもいいと思いスピーカーに切り替えておく。
会話に入らないにしても、状況が分かればボクが間違った対応をしないように諌めてくれるだろう。
「もしもし」
そう言ったボクの声に『紗凪君?』とボクを呼ぶ声が重なる。
義兄の声はこんな声だったんだろうか。
緊張感なくそんなことを考えながら「そうです」と答える。
『久しぶり』
帰ってきたのは感情の読めない義兄の声だった。
自分では処理できない問題に大輝を巻き込むのはどうかとは思ったけれど、義兄の意図が分からなさ過ぎてついつい頼ってしまう。
「兄さんって、お姉さんの旦那さん?」
大輝にとっても意外な言葉だったのだろう。驚いた顔を見せられるけれど「そう」としか答えることができない。着信があったというだけで、それ以上でもそれ以下でもないのだから事実を伝えることしかできなかった。
「何だって?」
「分かんない。
1回着信があっただけでメッセージは入ってないし」
「折り返しは?」
「してない。
緊急ではなさそうだし、もしかしたら姉さんのことかも知れないしけど」
義兄が姉と貴哉のことを知っているとは思えないけれど、下手に連絡をしたら余計なことを言ってしまうかもしれないと思えば当然の行動だろう。
貴哉から姉と会うことを聞いたけれど、姉が直接聞いた訳では無い。だから、【その事】を知っているような発言を不用意にしないためにも慎重に行動するべきだ。
普段から姉と連絡を取る事は無いのにこんな時だけ姉の動向を知っているだなんて、そんな事は偶然でも有り得ないのだから。
「お姉さんのことって、何で紗凪に連絡くるの?」
「分からないけど、姉さんとすら連絡取ってないのに義兄さんから連絡くるって、意味分からないし。
でも両親や祖父母に何かあれば姉さんから連絡が来るだろうし、それならもっと何回も連絡が入るだろうし。
姉さんに何かあったとしても連絡が入るなら母さんからだろうし。
そう思うと不自然じゃない?」
ボクの言葉に考えるようなそぶりを見せた大輝は「確かにな、」と首を傾げる。
頻繁に連絡を取り合うような相手なら理解できるけれど、実家に帰れば話をする程度で直接連絡を取ったことのない相手からの着信に警戒してしまうのは当然だ。今現在の姉と貴哉、そしてボクの関係を考えると折り返ししてしまうのは危険だろう。
「このまま放っておいていいと思う?」
「別にいいんじゃない?
用事があればまたかかってくるだろうし」
「だよね…。
でも、何で電話してきたんだろう。
やっぱり姉さん絡みなのかな」
「それくらいしか思い当たらない?」
「うん、」
折り返さないことを肯定してもらいたいだけの会話が終わると何となく顔を見合わせ、どちらともなく溜め息を吐く。何の話し合いも持たずに姉の元に向かうと告げた貴哉と、貴哉が側にいることを願った姉。そこにボクの意思は介在していないのだから何も言える事は無いし、何か言いたいとも思わない。
もしもふたりのことでボクに何か言いたいのだとしたら、それはお門違いだとしか思えない。
変に罪悪感を感じて『何かありましたか?』なんて連絡したとしてもボクには何もできる事は無いし、何かしたいとも思わない。
そう言えば貴哉は義兄と甥が姉に寄り添ってくれないから自分に救いを求めた、みたいなことを言っていたはずだ。もしもそれが本当なら、義兄が姉に寄り添えばこんな事にならなかったとも言えるのではないか。
姉と義兄がちゃんと関係を築き、互いに不満を持たなければ貴哉の入り込む隙も無かったはずだ。
義兄と甥が姉に寄り添って円満に過ごしていれば、今ボクの隣には貴哉がいたかもしれない。
まあ、姉の言ったことが本当かどうかと問われれば嘘かもしれないと思うけれど、寄り添わなかったと言わせた義兄と、姉の嘘に騙された貴哉が悪いのだから文句を言われる筋合いはない。
ボクは、ただ巻き込まれただけなのだから。
「またかかって来たら出るの?」
「………その時の気分?」
「なに、その曖昧なの」
「ひとりの時なら出ないけど、大輝がいる時なら出ても良いかな」
「何、それ。
頼ってくれてるの?」
「頼ってるっていうか、第三者の耳があったほうが冷静になれるかな、と思って」
「そこは頼ってるってことにしておいてくれれば良いのに」
正直に答えたボクに苦笑いを見せながら、「オレがいない時にかかってきたら呼びに来て良いよ」と言ってくれるけど、実際に義兄から電話がかかってきたら動揺して出ることができないまま放置してしまう気がする。
「ところで揚げ物だけど、思ったより難しそうなんだよね」
そう言いながら情けない顔を見せるため一緒に揚げ方を検索したけれど、面倒になってしまい適当にサラダを作りそれで終わらせてしまった。
お腹が満たされればいいと開き直り、「少しだけ飲む?」と言った大輝の提案に乗ってリビングに移動して、物件を検索しながらアルコールの缶を開ける。空腹ではないけれど何となく物足りなくて買い出しの時に買ってきたお菓子を開けるけれど、どちらもあまり手は伸びない。
のんびりとした時間を過ごしているフリをしているけれど、実際のボクは義兄からの着信が気になってしまい、落ち着かない気持ちのままだ。部屋にいる時に着信があったらと思うとひとりで過ごすことに抵抗があったから大輝の提案はありがたかったけれど、きっと、ボクのそんな気持ちを察しての提案だったのだろう。
「紗凪は結局、噂のこと信じてるの?」
相変わらず本気とも冗談ともつかないまま温泉地の物件を検索していたものの、ふたりして調子に乗って観光地の物件を調べ始めたところで大輝が口を開いた。
「え、信じてないよ。
信じてないけど不安にはなるよね。
大輝は?」
「オレは全く信じてないし、特別不安にも思ってないかな。
大体、世界が終わるって漠然としてるけど、【世界が終わる】って概念的なものじゃなくて、現実的なものとして捉えてるだろ、今回は。
だから本当に終わるなら仕方ないと思うくらいかな。
自分だけ取り残されるとかじゃなくて本当に全部の世界が終わるなら、終わった後のこと考えても仕方ないし」
そう言って小さく笑うと「紗凪がいるからひとりで終わるわけじゃないし」と流すようにビールを飲み干す。
「足りない」と言いながら新しいビールを取りに行くと「はい、紗凪の分」と当たり前のようにボクの分も目の前に置く。ボクの分はジュースみたいな缶酎ハイだけど、手元の缶はまだ半分も減っていない。
「ボクはてっきり彼女さんと上手くいってると思ってたからすぐに出てくつもりだったんだけどね」
途切れた話を続けるように缶を弄びながら口を開く。貴哉との始まりが飲み過ぎたせいだったせいで、飲めなくなったわけではないけれど、酔うほど飲むことはなくなった。貴哉もそれに気付いていたのだろう。あの後も一緒に飲むことはあったけど、無理に進めることはなかった。
大輝のことを信用していないわけではないけれど、本能的に酔うことを恐れているのかもしれない。
「だったら別れてて正解だった」
「それ、彼女さんに悪いよ?」
「そう?
彼女は彼女で忘れられない人がいたみたいだからこれで良かったんじゃない?
オレは、もしこのまま終わるとしても紗凪と一緒なら気楽で良いけど」
「気楽って、その扱い」
「でもそのせいで今後の展望も見えてきたし」
「展望?」
「とりあえず事務所の移転かな。
目指せ完全リモート化」
そう言って「この辺なんか良くない?」とプリントアウトした資料を目の前に並べる。何かと思い手に取るとそれは物件の資料で、どれも温泉地な事に笑ってしまう。
「これ、本気なの?」
「リモートならそれも有りなんじゃない?
家賃安いし、周りの環境も悪くないし。交通の便もいいし」
冗談で言ったつもりだったけれど、思いの外乗り気だったようだ。
「終わるなんて信じてないんだけど、終わらなかったら一緒にここから離れようか」
「大輝は良いの?」
ボク自身はここに何の思い入れも無いし、地元に帰りたいとも思わないから事務所をどこに構えても問題ないけれど、大輝はこの家が生家だし、地元の友達もたくさんいるはずだ。
「別に、地元離れたって学生の頃も友達とは連絡取ってたし、そもそも親だってこの家に思い入れないみたいだし。
別の場所でまた始める時に紗凪と一緒なら心強い」
そんな風に言われて悪い気がするわけがない。
「温泉地って、買い物事情とかは?」
「車あれば問題無い」
「ボク、免許無いよ?」
「休みの日に一緒に買い出しに行けば問題無いし」
「冷凍の揚げ物は禁止で」
具体的なようで具体的じゃ無い話をしながら時間が過ぎていく。
前に一緒に暮らしていた時はお互いに干渉しなかったのに、貴哉のことがあったせいか、やけに過保護になった気がするけれど、将来を見据えて同棲した彼女がいなくなったことで大輝は大輝で思うところがあるのかもしれない。
資料を見ながらそんなバカな話をしている時にスマホが振動して着信を知らせる。
「あ…」
表示された名前に思わず声が漏れた。
大輝も着信に気が付いたのだろう。
「出てみる?」
そんな風に聞かれても即答できない。
留守番に設定してないせいか、いつまで経っても切れない着信に執念のようなものを感じて嫌な気分になる。
「これ、出ないとダメなやつかな」
「っぽいね、」
そんな話をしている間も続く、着信を知らせる振動。
ボクの言葉を肯定した大輝が「出てみれば。一緒にいるし」と言ってくれたことに後押しされて通話ボタンにそっと触れ電話を繋ぐ。何を言われるのか分からないけれど、大輝になら何を聞かれてもいいと思いスピーカーに切り替えておく。
会話に入らないにしても、状況が分かればボクが間違った対応をしないように諌めてくれるだろう。
「もしもし」
そう言ったボクの声に『紗凪君?』とボクを呼ぶ声が重なる。
義兄の声はこんな声だったんだろうか。
緊張感なくそんなことを考えながら「そうです」と答える。
『久しぶり』
帰ってきたのは感情の読めない義兄の声だった。
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