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紗羅
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紗凪のことが…と言うか、弟という存在が嫌いだった。
弟という存在が…と言うか、自分よりも年若いと言うだけで優先される存在が許せなかった。
きっかけは母の妊娠。
当時の私は7歳で、小学1年生。
夏休みの間に誕生日を迎えた私はまだまだ幼くて、長い長い夏休みを終えて新学期が始まることを憂鬱に思っていた。
夏休みの間は母とずっと一緒にいられたのに、学校が始まった途端に母と離れなければいけないことに不満を覚えていた。
学校に行きたくないと愚図れば納得するまで寄り添ってくれる母のことが、母からその話を聞いて気にかけてくれる父のことが大好きだった。
一緒に暮らす祖父母も、汐勿のお嬢さんと私を呼んで見守ってくれる大人も、全ての人が私のことを慈しむのが当たり前だと思っていた。
その環境が変わったのは紗凪のせい。
紗凪が母のお腹に宿ったのを知ったのは母が体調を崩し、回復してから。
体調を崩した、というか今考えるとそれは悪阻だったのだけどその当時はそれを理解できず、ただただ母の身体を心配する私に対して父は「大丈夫だよ」と笑顔を見せる。
横になっていることも多いせいで独りの時間が増えていくことが苦痛だった。いつも隣にいてくれた母がいなくなってしまうのではないかと不安だった。
母がこんなにも苦しんでいるのに笑顔でいられる父のことが理解できなくて、祖父母に「お母さん、死んじゃう」と泣きついても今だけだから大丈夫だと一蹴されてしまい、その言葉を信じた私が突きつけられた事実は…弟が妹ができるという事実。
私が知らなかっただけで家族は以前から第二子を望んでいたらしい。2人目不妊というわけではなくて、不育症というか、望んで授かってもなかなか育たず何度も悲しい思いをしていたらしい。
だから慎重にもなるし、私に告げた後でまた、という最悪のことも考え安定期になるまでは伝えないと決めていたようだ。
でもこれは私にとっては許せない行為だった。
今までにも自分に弟妹ができるかもしれないと言われていれば心の準備ができていたかもしれない。だけど、そんな経緯があったからこそ隠されていた事実は、その時に知って付いたであろう傷以上に私を傷付けた。
自分が第一子であるから、いつかは弟妹ができることもあると言われていればそういうものだと思っていただろう。だけどそんな事を告げられたことは一度もなく、弟妹ができる事を想像しないまま日々を過ごしてきた私には受け入れ難い事実でしかなかった。
【兄弟姉妹】という概念がなかったわけじゃない。
友人の中には兄姉も弟妹もいる子はたくさんいた、というよりも自分のような一人っ子の方が少なくて、だからと言ってそれを羨ましいと思うことはなかった。
母がいて、父がいて、祖父母がいて。
全ての愛情を自分だけが受け止め、愛し、慈しまれる環境。
母も、父も、祖父母も私がいれば幸せなのだと思っていた。
「お母さんね、お腹に赤ちゃんがいるの」
そう告げられたのは安定期に入った時期だったらしい。
悪阻が収まり、安定期に入り、今度こそ産むことができると確信してからの私への報告。
「これから少しずつお腹が大きくなっていくのよ」
自分の下腹部に手を当てながらそう言った母は幸せそうだったけれど、「そうなんだ、」と言うのが唯一できたこと。
母のことを笑顔で見守る父も「弟がいい?妹がいい?」と嬉しそうにしているけれど、弟も妹もいらない。
大きくなっていくお腹も気持ち悪いとしか思わなかった。あの中の存在が消えて無くなってしまえばいいのにと、そう思うことが悪いことだとも思わなかった。
今までは自分中心で進んだ物事が母の体調優先となり、叶えられない願いも増えていく。
大きくなっていくお腹と増えていく叶えられない願い。
幼稚園の参観日も、小学校の参観日も、願えば一日中居てくれたのに「お腹の赤ちゃんが苦しくなっちゃうから」と始めから最後までいてくれることがなくなってしまった。
臨月が近づけば「お姉ちゃんになるんだから」と強要される年長者としての振る舞い。
「これ、紗羅も使ったんだよ」
そう言って組み立てられたベビーベッドは邪魔くさいだけで、そもそもベビーベッドを使っていた頃の記憶なんてないのだからそんなことを言われても何の思い入れも無い。
納戸から引っ張り出してくる私が使っていた玩具だって、大切に保管されていた衣類だって思い出話と共に見せられても反応に困ってしまう。
そんな中で気付いてしまったことは、その当時の衣類は黄色や水色のシンプルなものばかりだったこと。自分だけが求められていたわけではないのだと悟ったのは女の子らしいピンクや甘い柄のものを見つけることができなかったから。
七五三の時の衣装は【良い】ものだったけれど、それは汐勿家としての対面を保つためのものだったのかもしれない。
「まだ取ってあったんだね」
存在すら知らなかった物に何の思い入れも無い。私だけの場所が生まれてくる存在を迎える準備のために少しずつ侵略されていくのは恐怖だった。
このまま自分の存在が塗り替えられていくのではないかと焦燥感に駆られてしまう。
と言っても、その頃に私が明確にそんなふうに自覚していたわけではなくて、思春期を過ぎた頃に再確認したその時の気持ち気持ち。
表面上はちゃんと生まれてくる存在を可愛がれていたと思う。
お腹が大きくなり思うように動けなくなった母を手伝い、まだ見ぬ弟妹のことを気遣い、お姉ちゃんと言う役割を望まれたように演じて過ごす日々。
生まれてしまえばきっと環境が変わると思い、我慢する日々が終わらないだなんて、変わった環境が自分の望んだものと逆のものになるだなんてその時は気付いていなかったから。
母のお腹が元に戻れば自由に動くことができるようになるのだから、そうなれば今までと同じ日常が戻ってくると信じていた。
だけど現実はそんな訳なくて、「お姉ちゃんだから」の一言で手伝いを強要され、「お姉ちゃんだから」の一言で我慢を強いられる毎日。
「紗羅がお手伝いしてくれるから紗凪も喜んでるよ」
ソンナワケナイ
「紗凪もお姉ちゃんのこと大好きって、ほら、紗羅のこと見て笑ってる」
ウソバッカリ
泣いてばかりの弟に注がれる愛情は、本来ならば私が1人で受け取るはずだったモノなのに。
母の時間も、母の愛情も、全てが私だけのものだったはずなのに。
私がもう少し幼ければ、私がもう少し成長した後だったなら、もしかしたら紗凪のことを受け入れ、慈しみ、愛することができたかもしれない。
だけどあの頃の私は愛することよりも愛されたいと願っていたから、鬱屈した思いを抱くことしかできなかった。
与えられると思っていたはずの愛情を奪われて、満たされないままの幼かった心は紗凪を貶めることで満たされるような気がした。だから表面上は【良い姉】を演じながらふとした拍子に紗凪を貶めてしまう。
8つの歳の差は大きくて、「私、その頃はこうじゃなかった?」と母に問いかければ「紗羅は頑張り屋さんだったもんね」と返される言葉に気を良くする。
しっかり者の紗羅は何でも自分でやってしまうから、自分よりも劣る紗凪に手をかけるのは仕方のないことだと言い聞かせ、周囲にもそう思わせていく。
紗凪か劣っているわけではないけれど、紗羅よりも劣る紗凪を作り上げて自分を満たし、自分の必要性を周囲に植え付けていく。
「紗凪は将来どうするの?」
中学生の紗凪が具体的に将来のことを考えているわけがないのにそんな質問をしたのは、意地悪な気持ちがあったから。そして、自分の計画のために必要なことだったから。
「将来って?」
「行きたい大学とか、やりたい仕事とか」
「………高校は何となく決めてるけどその先はまだ決めてないかな」
「そうなの?」
優しい姉を演じながら情報を引き出し、都合のいいように誘導するのは思ったよりも簡単だった。
自分は地元の大学に行ったけれど、家から通えるというだけの理由で大学を選ぶのではなくて学びたい学部で選ぶべきだったと話し、学びたいことを学べばそれを活かした職場に就職できたかもしれないのにとため息をついてみる。
「なんて言ってるけど、本音は家から出てたらもっと自由にできたかなって、ね?」
内緒だよ、と言いながら一人暮らしなら彼氏ともっと一緒にいられるのにと言えば「え、それって前に遊びに来た人?」と好奇心丸出しで聞いてくる。
紗凪が言っているのは貴哉のことだろう。
大学で知り合った友人の友人だった貴哉とは、その条件の良さから付き合うことを決めた。
部屋を借りるほど遠くではないけれど、通うにはそれなりに時間のかかる距離から通学していた貴哉は飲み会があった時などは一人暮らしの友人の家に泊めてもらうことも多く、外泊なんて許してもらえない私は彼のことを不思議な生き物として認識していた。
外泊が許されないだけでなく、人の家に泊まるくらいなら無理をしてでも自宅に帰りたいと思う私に取っては未知の存在。
「無断外泊とか、怒られないの?」
そう聞いた私に「無断じゃないけど無断でも気にしないんじゃない?」と何でもないように答えた貴哉は、三兄弟の真ん中なんて居てもいなくても同じだしと何でもないことのように告げる。
「単位取れなくて留年とか、警察から呼び出しとか、そうなるときっと怒られるんだろうけど、悪させずに居場所さえ分かってれば男なんてそんなもんだって」
そんなふうに笑った貴哉に興味を持ったのは自分の計画の役に立ちそうだったからで、少しずつ距離を縮め、少しずつ貴哉の情報を集め、その存在のちょうど良さに気付いた時から貴哉を囲い込むための算段を始める。
長い長い計画になるはずだったそれは想像していたよりも早く破綻するのだけど、その破綻のおかげで紗凪を傷付けることができるだなんて、この時は思ってもみなかった。
弟という存在が…と言うか、自分よりも年若いと言うだけで優先される存在が許せなかった。
きっかけは母の妊娠。
当時の私は7歳で、小学1年生。
夏休みの間に誕生日を迎えた私はまだまだ幼くて、長い長い夏休みを終えて新学期が始まることを憂鬱に思っていた。
夏休みの間は母とずっと一緒にいられたのに、学校が始まった途端に母と離れなければいけないことに不満を覚えていた。
学校に行きたくないと愚図れば納得するまで寄り添ってくれる母のことが、母からその話を聞いて気にかけてくれる父のことが大好きだった。
一緒に暮らす祖父母も、汐勿のお嬢さんと私を呼んで見守ってくれる大人も、全ての人が私のことを慈しむのが当たり前だと思っていた。
その環境が変わったのは紗凪のせい。
紗凪が母のお腹に宿ったのを知ったのは母が体調を崩し、回復してから。
体調を崩した、というか今考えるとそれは悪阻だったのだけどその当時はそれを理解できず、ただただ母の身体を心配する私に対して父は「大丈夫だよ」と笑顔を見せる。
横になっていることも多いせいで独りの時間が増えていくことが苦痛だった。いつも隣にいてくれた母がいなくなってしまうのではないかと不安だった。
母がこんなにも苦しんでいるのに笑顔でいられる父のことが理解できなくて、祖父母に「お母さん、死んじゃう」と泣きついても今だけだから大丈夫だと一蹴されてしまい、その言葉を信じた私が突きつけられた事実は…弟が妹ができるという事実。
私が知らなかっただけで家族は以前から第二子を望んでいたらしい。2人目不妊というわけではなくて、不育症というか、望んで授かってもなかなか育たず何度も悲しい思いをしていたらしい。
だから慎重にもなるし、私に告げた後でまた、という最悪のことも考え安定期になるまでは伝えないと決めていたようだ。
でもこれは私にとっては許せない行為だった。
今までにも自分に弟妹ができるかもしれないと言われていれば心の準備ができていたかもしれない。だけど、そんな経緯があったからこそ隠されていた事実は、その時に知って付いたであろう傷以上に私を傷付けた。
自分が第一子であるから、いつかは弟妹ができることもあると言われていればそういうものだと思っていただろう。だけどそんな事を告げられたことは一度もなく、弟妹ができる事を想像しないまま日々を過ごしてきた私には受け入れ難い事実でしかなかった。
【兄弟姉妹】という概念がなかったわけじゃない。
友人の中には兄姉も弟妹もいる子はたくさんいた、というよりも自分のような一人っ子の方が少なくて、だからと言ってそれを羨ましいと思うことはなかった。
母がいて、父がいて、祖父母がいて。
全ての愛情を自分だけが受け止め、愛し、慈しまれる環境。
母も、父も、祖父母も私がいれば幸せなのだと思っていた。
「お母さんね、お腹に赤ちゃんがいるの」
そう告げられたのは安定期に入った時期だったらしい。
悪阻が収まり、安定期に入り、今度こそ産むことができると確信してからの私への報告。
「これから少しずつお腹が大きくなっていくのよ」
自分の下腹部に手を当てながらそう言った母は幸せそうだったけれど、「そうなんだ、」と言うのが唯一できたこと。
母のことを笑顔で見守る父も「弟がいい?妹がいい?」と嬉しそうにしているけれど、弟も妹もいらない。
大きくなっていくお腹も気持ち悪いとしか思わなかった。あの中の存在が消えて無くなってしまえばいいのにと、そう思うことが悪いことだとも思わなかった。
今までは自分中心で進んだ物事が母の体調優先となり、叶えられない願いも増えていく。
大きくなっていくお腹と増えていく叶えられない願い。
幼稚園の参観日も、小学校の参観日も、願えば一日中居てくれたのに「お腹の赤ちゃんが苦しくなっちゃうから」と始めから最後までいてくれることがなくなってしまった。
臨月が近づけば「お姉ちゃんになるんだから」と強要される年長者としての振る舞い。
「これ、紗羅も使ったんだよ」
そう言って組み立てられたベビーベッドは邪魔くさいだけで、そもそもベビーベッドを使っていた頃の記憶なんてないのだからそんなことを言われても何の思い入れも無い。
納戸から引っ張り出してくる私が使っていた玩具だって、大切に保管されていた衣類だって思い出話と共に見せられても反応に困ってしまう。
そんな中で気付いてしまったことは、その当時の衣類は黄色や水色のシンプルなものばかりだったこと。自分だけが求められていたわけではないのだと悟ったのは女の子らしいピンクや甘い柄のものを見つけることができなかったから。
七五三の時の衣装は【良い】ものだったけれど、それは汐勿家としての対面を保つためのものだったのかもしれない。
「まだ取ってあったんだね」
存在すら知らなかった物に何の思い入れも無い。私だけの場所が生まれてくる存在を迎える準備のために少しずつ侵略されていくのは恐怖だった。
このまま自分の存在が塗り替えられていくのではないかと焦燥感に駆られてしまう。
と言っても、その頃に私が明確にそんなふうに自覚していたわけではなくて、思春期を過ぎた頃に再確認したその時の気持ち気持ち。
表面上はちゃんと生まれてくる存在を可愛がれていたと思う。
お腹が大きくなり思うように動けなくなった母を手伝い、まだ見ぬ弟妹のことを気遣い、お姉ちゃんと言う役割を望まれたように演じて過ごす日々。
生まれてしまえばきっと環境が変わると思い、我慢する日々が終わらないだなんて、変わった環境が自分の望んだものと逆のものになるだなんてその時は気付いていなかったから。
母のお腹が元に戻れば自由に動くことができるようになるのだから、そうなれば今までと同じ日常が戻ってくると信じていた。
だけど現実はそんな訳なくて、「お姉ちゃんだから」の一言で手伝いを強要され、「お姉ちゃんだから」の一言で我慢を強いられる毎日。
「紗羅がお手伝いしてくれるから紗凪も喜んでるよ」
ソンナワケナイ
「紗凪もお姉ちゃんのこと大好きって、ほら、紗羅のこと見て笑ってる」
ウソバッカリ
泣いてばかりの弟に注がれる愛情は、本来ならば私が1人で受け取るはずだったモノなのに。
母の時間も、母の愛情も、全てが私だけのものだったはずなのに。
私がもう少し幼ければ、私がもう少し成長した後だったなら、もしかしたら紗凪のことを受け入れ、慈しみ、愛することができたかもしれない。
だけどあの頃の私は愛することよりも愛されたいと願っていたから、鬱屈した思いを抱くことしかできなかった。
与えられると思っていたはずの愛情を奪われて、満たされないままの幼かった心は紗凪を貶めることで満たされるような気がした。だから表面上は【良い姉】を演じながらふとした拍子に紗凪を貶めてしまう。
8つの歳の差は大きくて、「私、その頃はこうじゃなかった?」と母に問いかければ「紗羅は頑張り屋さんだったもんね」と返される言葉に気を良くする。
しっかり者の紗羅は何でも自分でやってしまうから、自分よりも劣る紗凪に手をかけるのは仕方のないことだと言い聞かせ、周囲にもそう思わせていく。
紗凪か劣っているわけではないけれど、紗羅よりも劣る紗凪を作り上げて自分を満たし、自分の必要性を周囲に植え付けていく。
「紗凪は将来どうするの?」
中学生の紗凪が具体的に将来のことを考えているわけがないのにそんな質問をしたのは、意地悪な気持ちがあったから。そして、自分の計画のために必要なことだったから。
「将来って?」
「行きたい大学とか、やりたい仕事とか」
「………高校は何となく決めてるけどその先はまだ決めてないかな」
「そうなの?」
優しい姉を演じながら情報を引き出し、都合のいいように誘導するのは思ったよりも簡単だった。
自分は地元の大学に行ったけれど、家から通えるというだけの理由で大学を選ぶのではなくて学びたい学部で選ぶべきだったと話し、学びたいことを学べばそれを活かした職場に就職できたかもしれないのにとため息をついてみる。
「なんて言ってるけど、本音は家から出てたらもっと自由にできたかなって、ね?」
内緒だよ、と言いながら一人暮らしなら彼氏ともっと一緒にいられるのにと言えば「え、それって前に遊びに来た人?」と好奇心丸出しで聞いてくる。
紗凪が言っているのは貴哉のことだろう。
大学で知り合った友人の友人だった貴哉とは、その条件の良さから付き合うことを決めた。
部屋を借りるほど遠くではないけれど、通うにはそれなりに時間のかかる距離から通学していた貴哉は飲み会があった時などは一人暮らしの友人の家に泊めてもらうことも多く、外泊なんて許してもらえない私は彼のことを不思議な生き物として認識していた。
外泊が許されないだけでなく、人の家に泊まるくらいなら無理をしてでも自宅に帰りたいと思う私に取っては未知の存在。
「無断外泊とか、怒られないの?」
そう聞いた私に「無断じゃないけど無断でも気にしないんじゃない?」と何でもないように答えた貴哉は、三兄弟の真ん中なんて居てもいなくても同じだしと何でもないことのように告げる。
「単位取れなくて留年とか、警察から呼び出しとか、そうなるときっと怒られるんだろうけど、悪させずに居場所さえ分かってれば男なんてそんなもんだって」
そんなふうに笑った貴哉に興味を持ったのは自分の計画の役に立ちそうだったからで、少しずつ距離を縮め、少しずつ貴哉の情報を集め、その存在のちょうど良さに気付いた時から貴哉を囲い込むための算段を始める。
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