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【side:隆臣】出会いと歩み。
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「はじめまして、仲真 羽琉です」
7年前のあの日、俺に頭を下げた羽琉の白い顔は今でも忘れることができない。
色が白いという白さではなく、緊張のせいで血の気の引いた羽琉は喋らなければ人形と間違えるほどに感情の見えない子どもだった。
羽琉の母親である男性Ωのことを父親である彼は容姿端麗と言っていたけれど、羽琉も将来はそう言われるであろうと予測できてしまう。
今はまだ幼さが残り西洋の人形のように見えるけれど、あと数年もすれば同じように容姿端麗と称されるようになるだろう。
「岩瀬 隆臣です。
羽琉さん、これからよろしくお願いします」
「岩瀬さん?」
「隆臣でいいですよ」
「隆臣さん?」
「固くないですか?
お友達のことはなんて呼んでます?」
「…ゃくんって、」
きっと友人の名前を呼んだのだろうと思ったものの、はっきりと言わなかったのには何か訳があるのかもしれないとそこは敢えて聞かないでおく。
「じゃあ、隆臣君って呼びます?」
「えっ?」
俺の言葉に驚いた顔を見せた羽琉は何を言われたのか理解すると「ふふっ」と小さく笑う。その笑顔は可愛らしくて、それまでの感情のない表情とのギャップに目を奪われる。
「隆臣君って呼ぶのも何か変ですかね」
「じゃあ、やっぱり隆臣さん?」
そう言って上目遣いで俺を見る目は先程までの感情のこもらないものと違い、何かを期待するような、それでも少し警戒するような。
その様子はまるで子猫のようにも見えた。
その愛らしさに自分が何を言おうとしたのか、何を言いたかったのか分からなくなるほどの衝撃を受けて返す言葉を見失いそうになったものの、気を取り直して口を開く。
「隆臣、と呼んでください」
「でも、」
「羽琉、これから岩瀬君は羽琉のことをお世話してくれる人だから。長い付き合いになるからずっと呼べる呼び方がいいと思うよ」
「じゃあ、お父さんみたいに岩瀬君?」
「それだとよそよそしいかな?」
「じゃあ、………隆臣君?」
「だから、それだと何か変ですから」
親子の会話に入るのも躊躇われたけれど、戸惑っている羽琉をなんとかしてあげたくて思いつきで話してしまう。
「お父さんをお父さん、先生を先生と呼ぶように私のことは隆臣と呼ぶのはどうでしょうか」
「………でも、年上の人だから」
「名前だと思うから躊躇うんですよ。
私の役割、お世話する人って呼ぶのおかしいですよね?
だからの羽琉さんのお世話係イコール隆臣でどうですか?
羽琉さんのお世話係の呼び方が隆臣だと思えば呼びやすくないですか?」
詭弁だとは思いながらもそう畳み掛ければ意味がわからないという顔をする羽琉に「人の名前だけど係の名前だと思ってみれば?」と父親が助け舟を出せば何か考えてから口を開く。
「学校だと宿題係さんって、係にもさん付けるよ?」
「それは、低学年だからです。
高学年のお兄さんやお姉さんは係にさんは付けてないと思いますよ。
羽琉さんは今年から中学年になるので練習だと思ってください」
「じゃあ、僕のことも羽琉って呼ぶの?」
「学校の先生は低学年でも高学年でもさんをつけてますよね、今って。
だから、私は羽琉さんのことは羽琉さんと呼びます」
「………変なの。
でもそれなら、隆臣って呼ぶね」
俺の詭弁を羽琉の父親は面白そうに見ていたけれど、考えた末に羽琉の出した結論に満足そうな笑みを浮かべる。
「羽琉、これから羽琉のことは岩瀬君にお願いすることになるから何か困ったことがあったら岩瀬君に相談するといいよ」
「お父さんたちは?」
「お父さんたちは近くにいてあげられない時があるだろ?
だから岩瀬君にはいつも羽琉といてもらえるようにお願いしてあるんだ。
困った時にいつもそばに誰かいてくれたらお父さん達も安心だからね」
俺の言葉よりもこちらの方がもっと詭弁だと思うけれど、羽琉の人間形成のためにも必要なことなのだろうと自分を納得させる。
人間形成にとって大切なのは心の根底に深い自己肯定感を根付かせることだと学んだ自分には両親からの愛情こそが必要だと感じはするものの、羽琉の母親である男性Ωの話を聞いてしまうと戸惑う部分もある。
自分に自己肯定感を根付かせる手伝いができるのかと今更ながらに自問自答してみるけれど、引き受けてしまった以上は羽琉に向き合い、羽琉と共に成長していきたいとも思ってしまう。
結局は教職に就くことを諦めたことに対して後悔があったのかもしれない。
「…隆臣はいつもそばにいてくれるの?」
「そうですね。
羽琉さんが起きてから、羽琉さんがベッドに入るまで一緒に過ごすつもりです」
その言葉に対する羽琉の反応は嬉しそうな、それでも戸惑うような様子だったけれど、初対面の相手に対して全面的に受け入れることなんてできないだろうと思い気にすることは無かった。
羽琉との生活は凪の海のような毎日だった。
羽琉は余計なことは言わないし、俺に対して何も求めない。
自分の事は自分で出来るため俺の手を煩わせる事はないし、俺が手を出す余地などなかった。
時折質問をされたりはするけれど、こちらの答えで満足すればそれ以上のことは何も言わないし、こちらから話しかければそれに対して応えはするけれど、それ以上でも以下でもない。
ただ、それだけの関係。
朝は起こしに行かなくても自分で起きてくるし、食事も身支度も1人でできてしまう。
送迎の間も大人しく、帰宅後も言われなくても宿題を終わらせると大人しく本を読んだり、タブレットを触ったりしている。
時折話してくれる学校の話は、大抵は【番候補】である燈哉という少年の話で、彼の話をする時に頬を染める羽琉はとても可愛らしかった。
食事の時も一緒に過ごし、お風呂から出た羽琉の髪を乾かすのは気付けば俺の仕事になっていた。
柔らかな髪の羽琉は、ちゃんと乾かして寝ないと次の日に大変なことになると気付いた翌日からの習慣。
春休みの間に同居を始めていなければ新学期早々困ったことになっていただろう。
髪を乾かしてベッドに入った羽琉に「おやすみなさい」と挨拶をして自室に戻る、そんな毎日。
羽琉のベッドの横には俺の部屋に直通の呼び出しベルが置いてあるけれど、それが鳴ることは一度も無かった。
家のことをしてくれる人は別にいたせいで春休みの間は羽琉と向き合う毎日だったけれど、甘えてくるわけでもないし、かと言って俺の存在を無視するわけでもない不思議な距離感。
3年生の男の子とはこんなに大人いしものなのかと思い、小学校で勤務することになった友人に聞いてみても「その子の性格にもよるけど、どちらかと言えば大人しい方だと思うよ」と言われただけで特に問題があるわけではないようだった。
「羽琉さんは大人しいですね」
一緒に過ごすようになってしばらくしてから言ってしまった言葉。
ふたりで過ごすことにも慣れ、少しずつ甘えや子供らしさが出てくるかと期待していたのに全く変わることのない羽琉に対して呆れのような、感嘆のような気持ちで言った言葉。
だけど、言ってしまったことを後悔することになる言葉。
「Ωだから仕方ないんだよ」
俺の言葉に息をするように、流れるように告げられた言葉。
諦めたような、達観したような言葉に心が騒つく。
「何ですか、それ」
その時の俺は羽琉に対してマイナスな感情を持ったわけではなくて、羽琉にそんな言葉を言わせた周囲に対して腹立たしく思っていたのだけど、そんな感情が声に出てしまっていてのだろう。
「仕方ないんだよ。
やりたい事あっても無理すると調子悪くなるし、出来ない事だってたくさんあるし。僕、Ωだから仕方ないって、入院した時も誰かがそう言ってたし」
言い訳のように、言い慣れたように流れ出す言葉が痛々しい。
この小さな身体で、両親と共に過ごすこともままならない環境で、一体どれだけのことを我慢してきたのかと胸が痛くなる。
そして、そんな言葉を聞かせた存在を腹立たしく思う。
「その言葉、あまり使わない方がいいですよ」
「何で?」
自分の発した言葉の意味を理解していないのか、不思議そうな顔をした羽琉にお願いをすることしかできなかった。
「Ωは一般的に容姿が良くて、力が弱いので自分を守るためにも人前では言わないでください。
羽琉さんはΩらしいΩですし」
「でもΩだって見たら分かるんだから言っても言わなくても同じでしょ?」
「同じなんかじゃないです。
それに、羽琉さんの言い方だと諦めてるように聞こえます」
「何を?」
「普通に過ごそうとする事を」
そう、羽琉は既に諦めているように見えたのだ。
やりたいことを諦め、出来ないのだからと納得して、我慢に我慢を重ねたうえでの『Ωだから仕方ない』という言葉なのだろう。
そして、そんな羽琉が感情を露わにするのが【番候補】である燈哉の前なのかもしれない。
この時にもっと言葉を交わせば、向き合い、心を通わすことができていれば羽琉だってもっと素直になることができたのかもしれない。
俺は羽琉の父親の期待に応えることができなかったのだと気付かされたのは、羽琉が早い夏休みに入ったあの日。
羽琉ひとりとならばちゃんも向き合えると思っていたのに、向き合う覚悟で自分の進路を選んだつもりだったのに…。
自分の過ちのせいで羽琉にまで過ちを犯させてしまったのだと自分を責める日が来るだなんて、この時はまだ思ってもいなかったんだ。
7年前のあの日、俺に頭を下げた羽琉の白い顔は今でも忘れることができない。
色が白いという白さではなく、緊張のせいで血の気の引いた羽琉は喋らなければ人形と間違えるほどに感情の見えない子どもだった。
羽琉の母親である男性Ωのことを父親である彼は容姿端麗と言っていたけれど、羽琉も将来はそう言われるであろうと予測できてしまう。
今はまだ幼さが残り西洋の人形のように見えるけれど、あと数年もすれば同じように容姿端麗と称されるようになるだろう。
「岩瀬 隆臣です。
羽琉さん、これからよろしくお願いします」
「岩瀬さん?」
「隆臣でいいですよ」
「隆臣さん?」
「固くないですか?
お友達のことはなんて呼んでます?」
「…ゃくんって、」
きっと友人の名前を呼んだのだろうと思ったものの、はっきりと言わなかったのには何か訳があるのかもしれないとそこは敢えて聞かないでおく。
「じゃあ、隆臣君って呼びます?」
「えっ?」
俺の言葉に驚いた顔を見せた羽琉は何を言われたのか理解すると「ふふっ」と小さく笑う。その笑顔は可愛らしくて、それまでの感情のない表情とのギャップに目を奪われる。
「隆臣君って呼ぶのも何か変ですかね」
「じゃあ、やっぱり隆臣さん?」
そう言って上目遣いで俺を見る目は先程までの感情のこもらないものと違い、何かを期待するような、それでも少し警戒するような。
その様子はまるで子猫のようにも見えた。
その愛らしさに自分が何を言おうとしたのか、何を言いたかったのか分からなくなるほどの衝撃を受けて返す言葉を見失いそうになったものの、気を取り直して口を開く。
「隆臣、と呼んでください」
「でも、」
「羽琉、これから岩瀬君は羽琉のことをお世話してくれる人だから。長い付き合いになるからずっと呼べる呼び方がいいと思うよ」
「じゃあ、お父さんみたいに岩瀬君?」
「それだとよそよそしいかな?」
「じゃあ、………隆臣君?」
「だから、それだと何か変ですから」
親子の会話に入るのも躊躇われたけれど、戸惑っている羽琉をなんとかしてあげたくて思いつきで話してしまう。
「お父さんをお父さん、先生を先生と呼ぶように私のことは隆臣と呼ぶのはどうでしょうか」
「………でも、年上の人だから」
「名前だと思うから躊躇うんですよ。
私の役割、お世話する人って呼ぶのおかしいですよね?
だからの羽琉さんのお世話係イコール隆臣でどうですか?
羽琉さんのお世話係の呼び方が隆臣だと思えば呼びやすくないですか?」
詭弁だとは思いながらもそう畳み掛ければ意味がわからないという顔をする羽琉に「人の名前だけど係の名前だと思ってみれば?」と父親が助け舟を出せば何か考えてから口を開く。
「学校だと宿題係さんって、係にもさん付けるよ?」
「それは、低学年だからです。
高学年のお兄さんやお姉さんは係にさんは付けてないと思いますよ。
羽琉さんは今年から中学年になるので練習だと思ってください」
「じゃあ、僕のことも羽琉って呼ぶの?」
「学校の先生は低学年でも高学年でもさんをつけてますよね、今って。
だから、私は羽琉さんのことは羽琉さんと呼びます」
「………変なの。
でもそれなら、隆臣って呼ぶね」
俺の詭弁を羽琉の父親は面白そうに見ていたけれど、考えた末に羽琉の出した結論に満足そうな笑みを浮かべる。
「羽琉、これから羽琉のことは岩瀬君にお願いすることになるから何か困ったことがあったら岩瀬君に相談するといいよ」
「お父さんたちは?」
「お父さんたちは近くにいてあげられない時があるだろ?
だから岩瀬君にはいつも羽琉といてもらえるようにお願いしてあるんだ。
困った時にいつもそばに誰かいてくれたらお父さん達も安心だからね」
俺の言葉よりもこちらの方がもっと詭弁だと思うけれど、羽琉の人間形成のためにも必要なことなのだろうと自分を納得させる。
人間形成にとって大切なのは心の根底に深い自己肯定感を根付かせることだと学んだ自分には両親からの愛情こそが必要だと感じはするものの、羽琉の母親である男性Ωの話を聞いてしまうと戸惑う部分もある。
自分に自己肯定感を根付かせる手伝いができるのかと今更ながらに自問自答してみるけれど、引き受けてしまった以上は羽琉に向き合い、羽琉と共に成長していきたいとも思ってしまう。
結局は教職に就くことを諦めたことに対して後悔があったのかもしれない。
「…隆臣はいつもそばにいてくれるの?」
「そうですね。
羽琉さんが起きてから、羽琉さんがベッドに入るまで一緒に過ごすつもりです」
その言葉に対する羽琉の反応は嬉しそうな、それでも戸惑うような様子だったけれど、初対面の相手に対して全面的に受け入れることなんてできないだろうと思い気にすることは無かった。
羽琉との生活は凪の海のような毎日だった。
羽琉は余計なことは言わないし、俺に対して何も求めない。
自分の事は自分で出来るため俺の手を煩わせる事はないし、俺が手を出す余地などなかった。
時折質問をされたりはするけれど、こちらの答えで満足すればそれ以上のことは何も言わないし、こちらから話しかければそれに対して応えはするけれど、それ以上でも以下でもない。
ただ、それだけの関係。
朝は起こしに行かなくても自分で起きてくるし、食事も身支度も1人でできてしまう。
送迎の間も大人しく、帰宅後も言われなくても宿題を終わらせると大人しく本を読んだり、タブレットを触ったりしている。
時折話してくれる学校の話は、大抵は【番候補】である燈哉という少年の話で、彼の話をする時に頬を染める羽琉はとても可愛らしかった。
食事の時も一緒に過ごし、お風呂から出た羽琉の髪を乾かすのは気付けば俺の仕事になっていた。
柔らかな髪の羽琉は、ちゃんと乾かして寝ないと次の日に大変なことになると気付いた翌日からの習慣。
春休みの間に同居を始めていなければ新学期早々困ったことになっていただろう。
髪を乾かしてベッドに入った羽琉に「おやすみなさい」と挨拶をして自室に戻る、そんな毎日。
羽琉のベッドの横には俺の部屋に直通の呼び出しベルが置いてあるけれど、それが鳴ることは一度も無かった。
家のことをしてくれる人は別にいたせいで春休みの間は羽琉と向き合う毎日だったけれど、甘えてくるわけでもないし、かと言って俺の存在を無視するわけでもない不思議な距離感。
3年生の男の子とはこんなに大人いしものなのかと思い、小学校で勤務することになった友人に聞いてみても「その子の性格にもよるけど、どちらかと言えば大人しい方だと思うよ」と言われただけで特に問題があるわけではないようだった。
「羽琉さんは大人しいですね」
一緒に過ごすようになってしばらくしてから言ってしまった言葉。
ふたりで過ごすことにも慣れ、少しずつ甘えや子供らしさが出てくるかと期待していたのに全く変わることのない羽琉に対して呆れのような、感嘆のような気持ちで言った言葉。
だけど、言ってしまったことを後悔することになる言葉。
「Ωだから仕方ないんだよ」
俺の言葉に息をするように、流れるように告げられた言葉。
諦めたような、達観したような言葉に心が騒つく。
「何ですか、それ」
その時の俺は羽琉に対してマイナスな感情を持ったわけではなくて、羽琉にそんな言葉を言わせた周囲に対して腹立たしく思っていたのだけど、そんな感情が声に出てしまっていてのだろう。
「仕方ないんだよ。
やりたい事あっても無理すると調子悪くなるし、出来ない事だってたくさんあるし。僕、Ωだから仕方ないって、入院した時も誰かがそう言ってたし」
言い訳のように、言い慣れたように流れ出す言葉が痛々しい。
この小さな身体で、両親と共に過ごすこともままならない環境で、一体どれだけのことを我慢してきたのかと胸が痛くなる。
そして、そんな言葉を聞かせた存在を腹立たしく思う。
「その言葉、あまり使わない方がいいですよ」
「何で?」
自分の発した言葉の意味を理解していないのか、不思議そうな顔をした羽琉にお願いをすることしかできなかった。
「Ωは一般的に容姿が良くて、力が弱いので自分を守るためにも人前では言わないでください。
羽琉さんはΩらしいΩですし」
「でもΩだって見たら分かるんだから言っても言わなくても同じでしょ?」
「同じなんかじゃないです。
それに、羽琉さんの言い方だと諦めてるように聞こえます」
「何を?」
「普通に過ごそうとする事を」
そう、羽琉は既に諦めているように見えたのだ。
やりたいことを諦め、出来ないのだからと納得して、我慢に我慢を重ねたうえでの『Ωだから仕方ない』という言葉なのだろう。
そして、そんな羽琉が感情を露わにするのが【番候補】である燈哉の前なのかもしれない。
この時にもっと言葉を交わせば、向き合い、心を通わすことができていれば羽琉だってもっと素直になることができたのかもしれない。
俺は羽琉の父親の期待に応えることができなかったのだと気付かされたのは、羽琉が早い夏休みに入ったあの日。
羽琉ひとりとならばちゃんも向き合えると思っていたのに、向き合う覚悟で自分の進路を選んだつもりだったのに…。
自分の過ちのせいで羽琉にまで過ちを犯させてしまったのだと自分を責める日が来るだなんて、この時はまだ思ってもいなかったんだ。
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