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【side:伊織】そして訪れる好機。
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「ねえ、伊織と政文は付き合ってるの?」
そう聞いたのは羽琉。
隣では燈哉が当然のように睨みを効かせている。
「ん?
そうだね、少し前から」
政文がいればもっと上手く答えられたかもしれないけれど、職員室に呼び出されたと教室から出て行ったばかりだ。
「何で?
伊織もαだよね?」
不思議そうにそう聞いた羽琉を燈哉が嗜めるけれど、それを気にせずに話を続ける。
「そうだよ。
僕も政文もαだけど…αでもΩでも、βであっても好きになったら仕方ないよね」
そう言えば羽琉が黙ってしまう。
「αはΩと付き合うのが幸せじゃないの?」
「羽琉、」
燈哉がもう一度咎めるけれど納得できない羽琉は言葉を続ける。
「伊織も政文も、好きって言ってるΩの子多いよ?
だったら、」
「う~ん、Ωの子だったら誰でもいいわけじゃないし、僕は政文を選んだから」
本当は羽琉が好きだと、羽琉以外は好きじゃないと言いたいけれど、それを言ってしまったらせっかくの計画が台無しだ。羽琉は残酷だな、そんな風に思いながらも次の言葉を待つ。
「何かあった、とか?」
「………ヒートアタック?」
そんな事実はないけれど、思わず口にしてしまった。政文と付き合うふりをしていても「自分の方が、私の方が相応しい」と言い寄ってくるΩは後を絶たない。「αなんだからΩと付き合うべきだ」と言われることも少なくない。
時々危機感を覚えることもあり、好きでもない相手に言い寄られて、万が一にもヒートを起こされてしまったらそれこそ笑えない事になるだろうと抑制剤は常に携帯している。
「それは…」
燈哉だって身に覚えがあるのだろう。
苦い顔をして納得する。燈哉は燈哉で苦労しているのかもしれない。
そんな話をしてだいぶ経ってから、燈哉に声を掛けられたのはいつものようにふたりで下校しようとした時。
「政文、伊織、ちょっと良いか?」
燈哉の隣には当然のように羽琉が立ち、僕たちの様子を伺っている。
「どうした?」
こんな風に話しかけられるのが珍しくて政文が驚いた顔をするけれど、「頼みたい事があるんだ」と言った燈哉は渋い顔をしていた。
「あのね、燈哉が明日、家の用事で休まないといけないんだけど、明日1日一緒に過ごしてもらうことってできないかな?」
おずおずと伝えてくる羽琉の言葉を理解するのに時間がかかってしまい、「え?」と間抜けな声が出る。
「初等部の頃はこんな時は休んでたけど、中等部ではなるべく休みたくないんだ」
そう言った羽琉に燈哉が大きな溜息を吐く。
「明日は休むように言ったら嫌だって言うし、だからってひとりにしておくのは…」
正直、過保護ではないかと思った。
Ωの通う学校であるが故、校内で危険に遭うことはまずない。学校側だって、それなりの家庭の子どもを預かっているのだから必要な対策はしているし、そもそも学生であっても問題を起こした時にどんな弊害があるのかを理解できないような生徒はこの学校にはいない。
校外に出てしまえば不安はあるものの、羽琉は送迎だったはずだ。
「少し過保護じゃないか?」
政文が呆れたように言う。
僕も同じように思ったため同意してしまうけれど、内心はチャンスではないかとも思っていた。これをきっかけに、燈哉を油断させる事ができるのではないかと。
「ほら、やっぱりそう言われるんだってば」
羽琉が顔を赤くして燈哉に訴える。
そんな羽琉の様子を可愛くて仕方がないといった顔で見ながら、燈哉が言葉を引き継ぐ。
「過保護でも何でも羽琉をひとりにしておいたらαが寄ってくるぞ?」
「そんな事ないって、」
「ああ、そっち、」
そう呟いた政文は「α避けのために俺たちを使おうって事か」と苦笑いをする。
「どういう事?」
話の流れを理解しきれていない僕がそう聞くと政文が呆れたように説明してくれる。
「過保護な燈哉くんは羽琉に余計な虫が近付くのが許せなくて、仕方ないから俺たちで虫除けしたいんだって」
「でも僕たちもαだよ?」
「だからだって」
「政文と伊織は付き合っているんだろう?お前らふたりが近くにいれば羽琉に近付こうとするαは殆どいないはずだ」
燈哉もそれを認め、その隣で羽琉も頷く。
「もともと羽琉と伊織は仲が良いし、政文も一緒にいてくれれば尚安心だ」
その言葉に僕ひとりでは心許ないと思われている事に気付くけど、それでもこの申し出を断る理由は無かった。
「羽琉はそれで良いの?」
「伊織と政文が一緒にいてくれるなら僕は嬉しいよ。逆に僕、お邪魔虫じゃない?」
「何で?」
「ふたりの時間の邪魔にならない?」
「そんな、いつもふたりでイチャイチャしてるわけじゃないし」
そう答えると「イチャイチャとか、」と頬を染める羽琉が可愛い。
「もし受けてくれるならこのまま駐車場まで一緒に来てもらって良いか?
羽琉の家の人を紹介したいし」
全てが燈哉主導で話が進むのは面白くないけれど、それならとふたりの後に続く。その時に隆臣さんを紹介され、何かあった時のためにと連絡先を交換させてもらう。
燈哉が僕と政文を紹介した事に驚いた様子を見せた隆臣さんだったけど、羽琉が事情を話せば「お手数をおかけしますがよろしくお願いします」と僕達ふたりに対して頭を下げる。
「友達と一緒に過ごすだけですから」
そんな風に政文が恐縮するけれど、「羽琉さんにこんなに頼もしいご友人がいたとは知りませんでした」と笑うと「隆臣、それ酷い」と羽琉が拗ねる。
燈哉は少し面白くなさそうな顔をしていたけれど、羽琉にだって意思があるのだから仕方がないと諦めたようだ。
「それでは、明日はよろしくお願いします」
「お願いします」
翌日の時間を確認して隆臣さんとふたりで頭を下げた羽琉は車に乗り込む。去り際にわざわざ窓を開けて手を振る姿が可愛い。
「申し訳ないがよろしく頼む」
何目線なのか、少し尊大な言い方で燈哉も頭を下げ、生徒会の仕事がまだあるからと校舎に戻って行った。
「ねえ、こんなに上手く行って良いの?」
僕の言葉に政文も「上手くいきすぎだよな」と呟くものの、取り敢えず付き合っているフリは継続して望まれるままに羽琉に寄り添おうと結論を出す。燈哉が羽琉を大切に想っているように、羽琉だって燈哉のことを大切に想っているのだからふたりの仲を裂くようなことをするつもりはない。
警戒される事なく近くにいる事ができればそれで良い、そう思っていた。
翌日は望まれたままに羽琉と過ごした。駐車場への送迎はもちろん、当時も羽琉と同じクラスだった僕は教室の移動はもちろん、羽琉に望まれるままにトイレにも付き添う。校内は安全だと言っても人気の少ないところにひとりで行くのは不安なのだろう。
燈哉がどこまで羽琉の行動に付き添っているのかは知らないけれど、彼の存在自体が抑止力になっているはずだから自分が休むのなら羽琉も休んだ方が安全だと思うのは当然のことなのかもしれない。
特にトラブルもないまま1日を過ごし、無事に迎えの車まで羽琉を送り届けると「ご無理を聞いていただきありがとうございました」と頭を下げる隆臣さんと「友達ですから」既視感を覚えるやり取りを繰り返す。
クラスの違う政文は殆ど出番はなかったものの、休み時間になると顔を出してくれたから十分抑止力にはなったはずだ。正直なところ、僕ひとりでは役不足だという自覚はある。だから燈哉も僕達ふたりにお願いしたのだろう。
「1日どうだった?」
羽琉を見送り歩き出したところで政文が口を開く。
「トイレの付き添いとか、正直恥ずかしい」
「まあ、気持ちはわかるけど羽琉ひとりだと不安なんじゃないか?」
「燈哉もいつも付き添ってるのかな?」
「トイレの前で待ってるのは見たことある」
「過保護だよね…」
それだけ大切にされているということなのだろうけれど、過保護というよりは独占欲だろう。自分のΩの無防備な姿を誰にも見られたくない、そんなところかもしれない。きっと、羽琉がトイレに入っている間は誰も中に入らないようにしているのだろう。
そんな場面に遭遇したことはないけれど、燈哉ならやりかねない。
「一緒にトイレに入ったって知られたら何か言われるかな?」
「それは大丈夫なんじゃないか?
それで何か言われたらそれこそ理不尽すぎると思うぞ?」
そう苦笑いした政文の言う通り、その事で咎められることもなく、その後も燈哉の都合で一緒に過ごして欲しいと頼まれる事が増えていくことになる。
信頼されているのは嬉しいものの、複雑な気持ちを捨て切れないまま過ごした中等部だったけど、高等部入学早々にあんな事になるなんて、この時は考えてもいなかったんだ。
僕も、政文も…。
そう聞いたのは羽琉。
隣では燈哉が当然のように睨みを効かせている。
「ん?
そうだね、少し前から」
政文がいればもっと上手く答えられたかもしれないけれど、職員室に呼び出されたと教室から出て行ったばかりだ。
「何で?
伊織もαだよね?」
不思議そうにそう聞いた羽琉を燈哉が嗜めるけれど、それを気にせずに話を続ける。
「そうだよ。
僕も政文もαだけど…αでもΩでも、βであっても好きになったら仕方ないよね」
そう言えば羽琉が黙ってしまう。
「αはΩと付き合うのが幸せじゃないの?」
「羽琉、」
燈哉がもう一度咎めるけれど納得できない羽琉は言葉を続ける。
「伊織も政文も、好きって言ってるΩの子多いよ?
だったら、」
「う~ん、Ωの子だったら誰でもいいわけじゃないし、僕は政文を選んだから」
本当は羽琉が好きだと、羽琉以外は好きじゃないと言いたいけれど、それを言ってしまったらせっかくの計画が台無しだ。羽琉は残酷だな、そんな風に思いながらも次の言葉を待つ。
「何かあった、とか?」
「………ヒートアタック?」
そんな事実はないけれど、思わず口にしてしまった。政文と付き合うふりをしていても「自分の方が、私の方が相応しい」と言い寄ってくるΩは後を絶たない。「αなんだからΩと付き合うべきだ」と言われることも少なくない。
時々危機感を覚えることもあり、好きでもない相手に言い寄られて、万が一にもヒートを起こされてしまったらそれこそ笑えない事になるだろうと抑制剤は常に携帯している。
「それは…」
燈哉だって身に覚えがあるのだろう。
苦い顔をして納得する。燈哉は燈哉で苦労しているのかもしれない。
そんな話をしてだいぶ経ってから、燈哉に声を掛けられたのはいつものようにふたりで下校しようとした時。
「政文、伊織、ちょっと良いか?」
燈哉の隣には当然のように羽琉が立ち、僕たちの様子を伺っている。
「どうした?」
こんな風に話しかけられるのが珍しくて政文が驚いた顔をするけれど、「頼みたい事があるんだ」と言った燈哉は渋い顔をしていた。
「あのね、燈哉が明日、家の用事で休まないといけないんだけど、明日1日一緒に過ごしてもらうことってできないかな?」
おずおずと伝えてくる羽琉の言葉を理解するのに時間がかかってしまい、「え?」と間抜けな声が出る。
「初等部の頃はこんな時は休んでたけど、中等部ではなるべく休みたくないんだ」
そう言った羽琉に燈哉が大きな溜息を吐く。
「明日は休むように言ったら嫌だって言うし、だからってひとりにしておくのは…」
正直、過保護ではないかと思った。
Ωの通う学校であるが故、校内で危険に遭うことはまずない。学校側だって、それなりの家庭の子どもを預かっているのだから必要な対策はしているし、そもそも学生であっても問題を起こした時にどんな弊害があるのかを理解できないような生徒はこの学校にはいない。
校外に出てしまえば不安はあるものの、羽琉は送迎だったはずだ。
「少し過保護じゃないか?」
政文が呆れたように言う。
僕も同じように思ったため同意してしまうけれど、内心はチャンスではないかとも思っていた。これをきっかけに、燈哉を油断させる事ができるのではないかと。
「ほら、やっぱりそう言われるんだってば」
羽琉が顔を赤くして燈哉に訴える。
そんな羽琉の様子を可愛くて仕方がないといった顔で見ながら、燈哉が言葉を引き継ぐ。
「過保護でも何でも羽琉をひとりにしておいたらαが寄ってくるぞ?」
「そんな事ないって、」
「ああ、そっち、」
そう呟いた政文は「α避けのために俺たちを使おうって事か」と苦笑いをする。
「どういう事?」
話の流れを理解しきれていない僕がそう聞くと政文が呆れたように説明してくれる。
「過保護な燈哉くんは羽琉に余計な虫が近付くのが許せなくて、仕方ないから俺たちで虫除けしたいんだって」
「でも僕たちもαだよ?」
「だからだって」
「政文と伊織は付き合っているんだろう?お前らふたりが近くにいれば羽琉に近付こうとするαは殆どいないはずだ」
燈哉もそれを認め、その隣で羽琉も頷く。
「もともと羽琉と伊織は仲が良いし、政文も一緒にいてくれれば尚安心だ」
その言葉に僕ひとりでは心許ないと思われている事に気付くけど、それでもこの申し出を断る理由は無かった。
「羽琉はそれで良いの?」
「伊織と政文が一緒にいてくれるなら僕は嬉しいよ。逆に僕、お邪魔虫じゃない?」
「何で?」
「ふたりの時間の邪魔にならない?」
「そんな、いつもふたりでイチャイチャしてるわけじゃないし」
そう答えると「イチャイチャとか、」と頬を染める羽琉が可愛い。
「もし受けてくれるならこのまま駐車場まで一緒に来てもらって良いか?
羽琉の家の人を紹介したいし」
全てが燈哉主導で話が進むのは面白くないけれど、それならとふたりの後に続く。その時に隆臣さんを紹介され、何かあった時のためにと連絡先を交換させてもらう。
燈哉が僕と政文を紹介した事に驚いた様子を見せた隆臣さんだったけど、羽琉が事情を話せば「お手数をおかけしますがよろしくお願いします」と僕達ふたりに対して頭を下げる。
「友達と一緒に過ごすだけですから」
そんな風に政文が恐縮するけれど、「羽琉さんにこんなに頼もしいご友人がいたとは知りませんでした」と笑うと「隆臣、それ酷い」と羽琉が拗ねる。
燈哉は少し面白くなさそうな顔をしていたけれど、羽琉にだって意思があるのだから仕方がないと諦めたようだ。
「それでは、明日はよろしくお願いします」
「お願いします」
翌日の時間を確認して隆臣さんとふたりで頭を下げた羽琉は車に乗り込む。去り際にわざわざ窓を開けて手を振る姿が可愛い。
「申し訳ないがよろしく頼む」
何目線なのか、少し尊大な言い方で燈哉も頭を下げ、生徒会の仕事がまだあるからと校舎に戻って行った。
「ねえ、こんなに上手く行って良いの?」
僕の言葉に政文も「上手くいきすぎだよな」と呟くものの、取り敢えず付き合っているフリは継続して望まれるままに羽琉に寄り添おうと結論を出す。燈哉が羽琉を大切に想っているように、羽琉だって燈哉のことを大切に想っているのだからふたりの仲を裂くようなことをするつもりはない。
警戒される事なく近くにいる事ができればそれで良い、そう思っていた。
翌日は望まれたままに羽琉と過ごした。駐車場への送迎はもちろん、当時も羽琉と同じクラスだった僕は教室の移動はもちろん、羽琉に望まれるままにトイレにも付き添う。校内は安全だと言っても人気の少ないところにひとりで行くのは不安なのだろう。
燈哉がどこまで羽琉の行動に付き添っているのかは知らないけれど、彼の存在自体が抑止力になっているはずだから自分が休むのなら羽琉も休んだ方が安全だと思うのは当然のことなのかもしれない。
特にトラブルもないまま1日を過ごし、無事に迎えの車まで羽琉を送り届けると「ご無理を聞いていただきありがとうございました」と頭を下げる隆臣さんと「友達ですから」既視感を覚えるやり取りを繰り返す。
クラスの違う政文は殆ど出番はなかったものの、休み時間になると顔を出してくれたから十分抑止力にはなったはずだ。正直なところ、僕ひとりでは役不足だという自覚はある。だから燈哉も僕達ふたりにお願いしたのだろう。
「1日どうだった?」
羽琉を見送り歩き出したところで政文が口を開く。
「トイレの付き添いとか、正直恥ずかしい」
「まあ、気持ちはわかるけど羽琉ひとりだと不安なんじゃないか?」
「燈哉もいつも付き添ってるのかな?」
「トイレの前で待ってるのは見たことある」
「過保護だよね…」
それだけ大切にされているということなのだろうけれど、過保護というよりは独占欲だろう。自分のΩの無防備な姿を誰にも見られたくない、そんなところかもしれない。きっと、羽琉がトイレに入っている間は誰も中に入らないようにしているのだろう。
そんな場面に遭遇したことはないけれど、燈哉ならやりかねない。
「一緒にトイレに入ったって知られたら何か言われるかな?」
「それは大丈夫なんじゃないか?
それで何か言われたらそれこそ理不尽すぎると思うぞ?」
そう苦笑いした政文の言う通り、その事で咎められることもなく、その後も燈哉の都合で一緒に過ごして欲しいと頼まれる事が増えていくことになる。
信頼されているのは嬉しいものの、複雑な気持ちを捨て切れないまま過ごした中等部だったけど、高等部入学早々にあんな事になるなんて、この時は考えてもいなかったんだ。
僕も、政文も…。
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