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独白〈紬side〉

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 底冷えのするような声色で告げられた言葉。さっさと帰ればいいと言われているようで焦燥感が募る。それでも負けるわけにはいかないのだ。
 ちゃんと伝えないと、と焦りはするがどう伝えようかと悩みつつ言葉を探す。

「正直、どう受け止めればいいか悩みました。
 運命ではないのだから諦めろと言われているのかとも思いました」
 俺の言葉に光流が辛そうな顔をする。
 大丈夫だと伝えたいけれど俺の顔を見てくれない。
「それでも…諦められなかった。
 静流さんのメッセージを読んでも気持ちは変わらなかった。
 全てを受け入れ、全てを受け止め、その上で共にありたいと思ったし…婚約が解消になった事に対しても、運命を拒否した事に対しても喜びを覚えました」
 言ってしまった。
 正直な気持ち、俺の本心。

 婚約解消にしても、運命を拒否した事にしても〈俺の為〉だと都合よく考えてしまうほどの光流に対する俺の執着。
 好きなのだから仕方がないのだ。
 大切なのだから自分が〈守ることができる〉可能性が有る事が嬉しいのだ。

「守られるだけの弱い存在ではない事は、今までのやりとりや、送っていただいた報告書で気付きました。
 自分で考え、自分で行動する強さを持っている事も理解しました。
 それでも、それでも側で支えたいし守りたい」
 ちゃんと伝えられただろうか?
 ちゃんと伝わるだろうか?

「紬さん、普段は〈俺〉なんですね」
 口を開いたのは光流だった。
 何を言われたのかわからず不思議そうな顔をしてしまったのだろう。
「今までメッセージでも電話の時も〈ボク〉だったのに」
 さっきまでの辛そうな顔はどこに行ってしまったのか、嬉しそうなくすぐったそうな顔をしている。
 何か嬉しいことでもあったのだろうか?

「それが素ですか?」
 だから、何のことなんだ?
「紬君、一人称は俺のなの?」
 辻崎兄の助け舟でやっと気づく。
 光流の前ではお行儀良く〈ボク〉で通していたのに素が出てしまったらしい。
「確かに俺だけど…出てましたか」
 俺の言葉に2人して頷く。

 やってしまったらしい…。

「ボクよりそっちの方が良いです」
 嬉しそうに告げられる言葉。
 これは…どう受け止めたら良いのだろう?
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