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護との対話 4
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「僕は、護君とこの先ずっと一緒にいるために今は頑張るって決めたんだ。
学校はこのまま大学まで行くけど静流君が在籍している間にできる限りたくさんの単位を取る予定でいるし、静流君が卒業してからは最低限の出席日数に抑える予定でいます。その分、父さんや茉希さんから学べることを学ぼうと思ってるんだ」
自分の感情を隠すように早口で言ったせいか、敬語混じりの変な言葉になって護君がクスリと笑って目を細める。
「ありがとう。
静流がいるから安心だけど、それでも光流の隣を譲るのは俺も断腸の思いだよ。
だから、これくらい許して」
護君はそう言いながら僕の顔を覗き込むとそのまま顔を近付ける。
あっ、と思った時には唇が重なっていた。
そっと触れるだけの軽いキス。
そのまま僕をぎゅっと抱きしめる。
「しばらくこのままでいさせて」
護君も緊張していたのか、密着しているせいで鼓動が早いのがわかる。僕もドキドキしてるし、顔も真っ赤だろうからこの距離が心地良い。
「正直、光流は俺が思ってるほど婚約者と言う立場を重く考えてないんじゃないかって不安だったんだ」
僕を抱きしめたまま護君が言葉を続ける。
「俺より優秀なαは沢山いるし、これから先出会う機会も沢山あるだろう。子どもの頃に決められた婚約者よりも優秀なαがいることに気付いた時に光流が俺との婚約を後悔するのが怖かった。だから力が欲しいと思った。
ヒートが来て頼ってもらえればとも思ってた。俺がいないと駄目だと思わせたいなんて浅ましい事も考えてた。
ごめんな、光流はこんなにも俺のことを考えてくれてたのに…」
そう言いながら僕から身体をそっと離す。今まであった温もりが離れるのは淋しいが、顔を見てちゃんと言わないといけないことがあるから顔を上げる。顔の火照りが気になるが、僕も僕の素直な気持ちを伝える。
「護君の言ってくれたこと、すごく嬉しい。
僕の方こそ希望の大学に行ったら優秀な人と出会うことで婚約していることが負担になるんじゃないかって不安だった。僕は男だから女の子の方がいいと言われないかも不安だった。
だから誰よりも僕が良いと言ってもらえるように頑張りたかったんだ。
だから、ありがとう。
いつも一緒にいたのに護君も僕もすれ違ってたんだね」
「だな。
これから先、今よりも離れる時間が増えるけど必要な時はいつでも頼って欲しい。試験の時とか、どうにもならない時もあるかもしれないけど可能な限りなんとかする。
いつか、静流に頼らず俺だけで光流を守れるようになるから」
護君の言葉に胸が熱くなる。
この人で良かった。
この人を好きになって良かった。
幸せな気持ちのままお互い〈わざわざ口にしなくても〉と思っていたことを言葉に出してみる。
知っているようで知らなかったこと、誤解していたこと、お互いの気持ちを思い知るようなこと。
恥ずかしくて照れ臭いことを口にするとますます想いが強くなることを知った。
我慢しすぎてお互いに誤解していたことに気づいた。
お互いに好きなものを再確認したり、苦手なのに我慢して隠していたものを知ったり。
話に夢中になりすぎて様子を見に来た静流君が呆れるまであと5分。
時計を見て〈予備校、忘れてた〉と苦笑いを浮かべるのはその直後。
僕達は想いを伝え合い、一歩前進した。
学校はこのまま大学まで行くけど静流君が在籍している間にできる限りたくさんの単位を取る予定でいるし、静流君が卒業してからは最低限の出席日数に抑える予定でいます。その分、父さんや茉希さんから学べることを学ぼうと思ってるんだ」
自分の感情を隠すように早口で言ったせいか、敬語混じりの変な言葉になって護君がクスリと笑って目を細める。
「ありがとう。
静流がいるから安心だけど、それでも光流の隣を譲るのは俺も断腸の思いだよ。
だから、これくらい許して」
護君はそう言いながら僕の顔を覗き込むとそのまま顔を近付ける。
あっ、と思った時には唇が重なっていた。
そっと触れるだけの軽いキス。
そのまま僕をぎゅっと抱きしめる。
「しばらくこのままでいさせて」
護君も緊張していたのか、密着しているせいで鼓動が早いのがわかる。僕もドキドキしてるし、顔も真っ赤だろうからこの距離が心地良い。
「正直、光流は俺が思ってるほど婚約者と言う立場を重く考えてないんじゃないかって不安だったんだ」
僕を抱きしめたまま護君が言葉を続ける。
「俺より優秀なαは沢山いるし、これから先出会う機会も沢山あるだろう。子どもの頃に決められた婚約者よりも優秀なαがいることに気付いた時に光流が俺との婚約を後悔するのが怖かった。だから力が欲しいと思った。
ヒートが来て頼ってもらえればとも思ってた。俺がいないと駄目だと思わせたいなんて浅ましい事も考えてた。
ごめんな、光流はこんなにも俺のことを考えてくれてたのに…」
そう言いながら僕から身体をそっと離す。今まであった温もりが離れるのは淋しいが、顔を見てちゃんと言わないといけないことがあるから顔を上げる。顔の火照りが気になるが、僕も僕の素直な気持ちを伝える。
「護君の言ってくれたこと、すごく嬉しい。
僕の方こそ希望の大学に行ったら優秀な人と出会うことで婚約していることが負担になるんじゃないかって不安だった。僕は男だから女の子の方がいいと言われないかも不安だった。
だから誰よりも僕が良いと言ってもらえるように頑張りたかったんだ。
だから、ありがとう。
いつも一緒にいたのに護君も僕もすれ違ってたんだね」
「だな。
これから先、今よりも離れる時間が増えるけど必要な時はいつでも頼って欲しい。試験の時とか、どうにもならない時もあるかもしれないけど可能な限りなんとかする。
いつか、静流に頼らず俺だけで光流を守れるようになるから」
護君の言葉に胸が熱くなる。
この人で良かった。
この人を好きになって良かった。
幸せな気持ちのままお互い〈わざわざ口にしなくても〉と思っていたことを言葉に出してみる。
知っているようで知らなかったこと、誤解していたこと、お互いの気持ちを思い知るようなこと。
恥ずかしくて照れ臭いことを口にするとますます想いが強くなることを知った。
我慢しすぎてお互いに誤解していたことに気づいた。
お互いに好きなものを再確認したり、苦手なのに我慢して隠していたものを知ったり。
話に夢中になりすぎて様子を見に来た静流君が呆れるまであと5分。
時計を見て〈予備校、忘れてた〉と苦笑いを浮かべるのはその直後。
僕達は想いを伝え合い、一歩前進した。
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