上 下
15 / 159

護との対話 4

しおりを挟む
「僕は、護君とこの先ずっと一緒にいるために今は頑張るって決めたんだ。
 学校はこのまま大学まで行くけど静流君が在籍している間にできる限りたくさんの単位を取る予定でいるし、静流君が卒業してからは最低限の出席日数に抑える予定でいます。その分、父さんや茉希さんから学べることを学ぼうと思ってるんだ」
 自分の感情を隠すように早口で言ったせいか、敬語混じりの変な言葉になって護君がクスリと笑って目を細める。
「ありがとう。
 静流がいるから安心だけど、それでも光流の隣を譲るのは俺も断腸の思いだよ。
 だから、これくらい許して」
 護君はそう言いながら僕の顔を覗き込むとそのまま顔を近付ける。
 あっ、と思った時には唇が重なっていた。
 そっと触れるだけの軽いキス。
 そのまま僕をぎゅっと抱きしめる。
「しばらくこのままでいさせて」
 護君も緊張していたのか、密着しているせいで鼓動が早いのがわかる。僕もドキドキしてるし、顔も真っ赤だろうからこの距離が心地良い。
「正直、光流は俺が思ってるほど婚約者と言う立場を重く考えてないんじゃないかって不安だったんだ」
 僕を抱きしめたまま護君が言葉を続ける。
「俺より優秀なαは沢山いるし、これから先出会う機会も沢山あるだろう。子どもの頃に決められた婚約者よりも優秀なαがいることに気付いた時に光流が俺との婚約を後悔するのが怖かった。だから力が欲しいと思った。
 ヒートが来て頼ってもらえればとも思ってた。俺がいないと駄目だと思わせたいなんて浅ましい事も考えてた。
 ごめんな、光流はこんなにも俺のことを考えてくれてたのに…」
 そう言いながら僕から身体をそっと離す。今まであった温もりが離れるのは淋しいが、顔を見てちゃんと言わないといけないことがあるから顔を上げる。顔の火照りが気になるが、僕も僕の素直な気持ちを伝える。
「護君の言ってくれたこと、すごく嬉しい。
 僕の方こそ希望の大学に行ったら優秀な人と出会うことで婚約していることが負担になるんじゃないかって不安だった。僕は男だから女の子の方がいいと言われないかも不安だった。
 だから誰よりも僕が良いと言ってもらえるように頑張りたかったんだ。
 だから、ありがとう。
 いつも一緒にいたのに護君も僕もすれ違ってたんだね」
「だな。
 これから先、今よりも離れる時間が増えるけど必要な時はいつでも頼って欲しい。試験の時とか、どうにもならない時もあるかもしれないけど可能な限りなんとかする。
 いつか、静流に頼らず俺だけで光流を守れるようになるから」
 護君の言葉に胸が熱くなる。

 この人で良かった。

 この人を好きになって良かった。

 幸せな気持ちのままお互い〈わざわざ口にしなくても〉と思っていたことを言葉に出してみる。
 知っているようで知らなかったこと、誤解していたこと、お互いの気持ちを思い知るようなこと。

 恥ずかしくて照れ臭いことを口にするとますます想いが強くなることを知った。

 我慢しすぎてお互いに誤解していたことに気づいた。

 お互いに好きなものを再確認したり、苦手なのに我慢して隠していたものを知ったり。

 話に夢中になりすぎて様子を見に来た静流君が呆れるまであと5分。
 時計を見て〈予備校、忘れてた〉と苦笑いを浮かべるのはその直後。

 僕達は想いを伝え合い、一歩前進した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】消えた一族の末裔

華抹茶
BL
この世界は誰しもが魔法を使える世界。だがその中でただ一人、魔法が使えない役立たずの少年がいた。 魔法が使えないということがあり得ないと、少年は家族から虐げられ、とうとう父親に奴隷商へと売られることに。その道中、魔法騎士であるシモンが通りかかりその少年を助けることになった。 シモンは少年を養子として迎え、古代語で輝く星という意味を持つ『リューク』という名前を与えた。 なぜリュークは魔法が使えないのか。養父であるシモンと出会い、自らの運命に振り回されることになる。 ◎R18シーンはありません。 ◎長編なので気長に読んでください。 ◎安定のハッピーエンドです。 ◎伏線をいろいろと散りばめました。完結に向かって徐々に回収します。 ◎最終話まで執筆済み

運命の番と別れる方法

ivy
BL
運命の番と一緒に暮らす大学生の三葉。 けれどその相手はだらしなくどうしょうもないクズ男。 浮気され、開き直る相手に三葉は別れを決意するが番ってしまった相手とどうすれば別れられるのか悩む。 そんな時にとんでもない事件が起こり・・。

王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~

仁茂田もに
BL
「恋がしてみたいんだが」 アルファの夫から突然そう告げられたオメガのアレクシスはただひたすら困惑していた。 政略結婚して三十年近く――夫夫として関係を持って二十年以上が経つ。 その間、自分たちは国王と正妃として正しく義務を果たしてきた。 しかし、そこに必要以上の感情は含まれなかったはずだ。 何も期待せず、ただ妃としての役割を全うしようと思っていたアレクシスだったが、国王エドワードはその発言以来急激に距離を詰めてきて――。 一度、決定的にすれ違ってしまったふたりが二十年以上経って初恋をやり直そうとする話です。 昔若気の至りでやらかした王様×王様の昔のやらかしを別に怒ってない正妃(男)

嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。

処理中です...