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母との対話 3

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「光流はさ、護君のこと好き?」
「うん」
「じゃあさ、今回何で護君を呼ばなかったの?」
 母からの純粋な質問。αの婚約者がいて初めてのヒートで、普通なら真っ先に呼んでもおかしくないのに僕はそれを拒否した。
「好きだから。甘え過ぎて依存したくないし、僕なりに護君を支えられるようになりたいから、かな」
 考えながら自分の気持ちを吐露する。
「護君はさ、小学生の頃から僕の婚約者だったようなものじゃない?だから中学も高校も僕と同じところにしてくれたし。そんな護君が外部の大学を選ぶって凄い決断だと思うんだ。だからそれを尊重したいし、この先護君を支えられるように僕もできることはしたいんだ」
「初めてのヒート、怖くなかった?」
 初めてのヒートを覚えてない母はどんな気持ちなんだろう。身内にΩがいる場合はそれなりの予備知識を伝えることもあるが、我が家は主治医であるΩ専門の医師にお任せだった。母から伝えるより客観的でわかりやすいからかと思っていたが、母からは伝えようがなかっただけらしい。
「怖いって言うか、どうなるのかわからないのが怖かった。だから客観的に知りたいと思ったから先生に薬をお願いしたし、護君も呼ばなかった。何かあったら母さんが来てくれるって安心感もあったし。思いの外軽かったから今、こう言ってられるのかもしれないけどね」
「暫定βだったΩから生まれたことも関係するのかもしれないのかな?」
 母がポツリと呟く。
「光流はさ、生まれた時からぼくそっくりで絶対Ωなんだろうなってみんな思ったんだ。だから早いうちからΩとして扱ってきたし、守ってきた。ぼくみたいに暫定βになる可能性もあったけど、父さんや静流がαだからΩ因子が自然と刺激されて安定するんじゃないかとも思ったんだ。うちの実家はみんなβでしょ?身近にαもいなかったし。光流にはぼくみたいな思いをさせたくなかったからΩらしくって思ったけど、ぼくよりもしっかりしてるよね」
 言いながら母に頭を撫でられた。小学生の頃はよくあったスキンシップだけど、中学生になる頃には少なくなり今は全くなかっただけに照れ臭い。
「光流の気持ちはわかったけど、護君とはちゃんと話しなね。αって頼ってもらえないことがストレスになることもあるからね」
 母の忠告に頷く。きっと父のことを言っているのだろう。父はとにかく母の事が好きで僕達がある程度分別がつくようになると〈母さんは自分の最愛だ〉宣言をした。スキンシップが無くなったのも父がヤキモチを妬くからだ。父曰く〈お前達はこれから守る相手、守ってくれる相手が出来るから母さんは自分に返してくれ〉だそうだ。
 その時ふと疑問に思ったことを口に出してみる。
「父さんってさ、許嫁っていなかったの?」
 今現在、兄に関しては許嫁がいないため絶対ではないはずだが気になってしまったのだ。
「許嫁はいたよ」
 母がサラリと答える。
「光流も会ってるよ。茉希さん、わかるでしょ?」
「茉希さんって、父さんの従姉妹の?」
「そう。あの茉希さん」
 母の言葉に驚く。茉希さんは父の従姉妹で外との繋がりを嫌う母の唯一と言ってもいいほどの友人である。外見だけ見れば儚い印象の母とは対照的な確固たる意志を持った女性で、知らなければαだと思う人も多いだろう。
 意外な関係に僕は言葉を無くした。
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