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最終章 黒い羽と青のそら
ウサちゃんの正体 4
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レティシアは、頭の中が、真っ白になっている。
正妃選びの儀の時だって、こんなふうにはならなかった。
ユージーンの頭の中を、しばしばレティシアは真っ白にしている。
が、自覚はない。
だから、自分の番が回ってきた、なんてふうには思っていなかった。
ただただ、混乱の沼に、はまり込んでいる。
(ど、どーゆうコトっ? ユージーンが、あの時のウサちゃんっ? 薬で変化ってなんだよ? そんなの知らないし!)
愛称のこともだが、レティシアには知らないことも多いのだ。
こちらの世界で暮らすようになって、1年も経っていない。
日々、勉強はしているものの、興味があることから手をつけている。
使う気があまりないため、魔術に関しては後回しになっていた。
ようやく最近になって、手をつけ始めたところだ。
そこに、さらに「薬」まで出てきては、理解が追いつくはずもない。
(てかさ……私、あの時……なにしたっけ……)
うう~と、唸りながら、自分の「やらかした」ことを思い出す。
半年ほども前のことなので、詳細までは記憶に残っていなかった。
その半年の間に、様々な事態が巻き起こっている。
穏やかな森での生活は、残念ながら、ほかの出来事より印象が薄い。
「ウサギが相手であれば、お前は積極的になれるのだな。ずいぶんと熱心に、俺の下半身を見分していただろ?」
「ぎ……っ……」
ゴムオモチャのカエルが、踏まれた時のような声をあげる。
口から、舌が、ぴよんと飛び出しそうだった。
頬が、カッカッと火照ってくる。
その熱さに、少しだけ混乱の沼から這い上がることができた。
言い訳というか反論がしたかったからだ。
「あ、あれは……う、ウサギだと思ってたからで……ゆ、ユージーンの、け、見分なんか、し、してないよ」
「それはそうだ。ウサギであればこそ、俺は無抵抗であったのだからな」
なにやら、ものすごく「悪代官」な気分になる。
無抵抗のウサギにあれやこれやした。
しかも、それはユージーンだった。
すなわち、無抵抗のユージーンに、あれやこれや。
「し、知らなかったんだからね! き、気づいてたら、あんなことしなかった!」
「わかっている」
ユージーンが、うむとうなずく。
わずかにホッとした直後。
「だが、ウサギの俺に、お前が口づけたことは覆らん」
「ぎぎ……っ……」
もう、おかしな声しか出ない。
顔は、ぽっぽっと熱いし、反論も思い浮かばないし。
ひたすら、恥ずかしくてたまらない。
ユージーンは、レティシアを騙していた。
それを悪びれた様子もなく、抜け抜けと話している。
本来なら、怒ってしかるべきところだ。
だが、怒りより、恥ずかしさが勝っている。
そのせいで、また混乱の沼に、どぼーん。
頭からはまりこみ、意味不明な思考に走る。
いわゆる「現実逃避」だ。
「あ、あ~……あれは、ウサギで、私はウサギなら好きで……てゆーか、ウサギって、可愛いよねえ」
レティシアからは、ユージーンは、平然としているように見える。
混乱の沼で、あっぷあっぷしているレティシアは、さらに追い詰められた。
「ユージーンって、ウサギになれるんだ。へえ~いいねー! 今度……」
「ならんぞ」
すぱーん。
きれいに、レティシアの思考が断ち切られる。
ユージーンは、頬杖をやめ、体を少し前へとかがませた。
レティシアの顔を覗き込むようにして、言う。
「確かに、お前の腕に抱かれるのは心地良かった」
うはぁ~と、いよいよ顔が熱くなった。
ウサギを、ぎゅうぎゅうしていた自分を思い出したからだ。
「体中を撫で回されるのも悪くはなかったしな」
頭を抱え、夜空に向かって叫びたくなる。
あの日の自分に「そのウサギは王子様だよー」と教えたかった。
さりとて、レティシアにタイムリープ機能はついていない。
やってしまったことを、あとで悔やむ。
それを「後悔」というのだ。
「俺から1度だけ口づけたのだが、お前は、わかっておらんだろ?」
「え……うん……?」
「かまわぬさ。俺はウサギであったのだから、しかたがない。気にするな」
「あ……うん……う、ぅん……?」
「つまり、ウサギでは、またそのようなことになる。ゆえに、俺はもうウサギにはならんのだ」
なにやら自分が、説教をされている体になっている。
混乱の沼に、はまってはいたものの、さすがに、それはおかしいと気づいた。
「そもそも……なんでウサギ?」
「それは、俺にもよくわからん。ただ動物でなければ、あの森には入れなかったのでな。お前を森から連れ出すために、俺はウサギになったのだ」
レティシアは、数回、瞬きをする。
結果として、その策は成功したわけだが、頭には違う映像が浮かんでいた。
小さなウサギが、必死でレティシアの手を引っ張る姿。
思わず、声を上げて笑ってしまう。
ユージーンが驚いた顔をしているのにも、気づかない。
「そ、そんな、連れ出すのに、ウサギって……それ、ムリ過ぎでしょーよ」
あはは、あははと、お腹をおさえて笑った。
なにしろ、あの時のウサギは、レティシアに、簡単に抱き上げられてしまうくらい、軽くて小さかったのだ。
(なんで、ウサギをチョイス? て、あれ……ちょっと待って……)
笑うのをやめ、レティシアは真顔に戻る。
レティシアも、少し前かがみになり、自分を見ているユージーンのほうへと体を寄せた。
こくりと、喉が上下する。
「もしかして……ニンジンのトラウマって……」
「お前に食わされたのが、ものすごく不味かった」
「やっぱりかーッ!!」
今度は、頭をかかえてのけぞった。
あの時は、本当に野生のウサギだと思っていたのだ。
だから、あえての生野菜。
サラダとは違う。
なるべく新鮮なほうがいいだろうと、土を落とす程度にしか洗っていない。
もちろん味付けもナシだ。
単にスティック状に切っただけの代物。
「変化しても、味覚や体質は変わらんのだぞ」
ユージーンが、元々、ニンジン嫌いだったのかは知らない。
さりとて、あれが原因で嫌いになったのは、間違いない。
(ぁあ~人にトラウマ作っちゃったよ! そりゃ、私も、ユージーンにはトラウマ作られてるけどさあ! 私が見て、勝手にトラウマになっただけだし!)
そこで、また「あれ?」と思った。
頭をかかえるのをやめ、ユージーンに向き直る。
「そんなに嫌だったんなら、食べなきゃ良かったのに」
ウサギのユージーンは、きれいにニンジンを食べた。
それは覚えている。
「お前が、食べてほしそうにしていたのでな」
ユージーンが、口元を緩め、笑みを浮かべていた。
トラウマというくらいなのだから、嫌な記憶のはずだ。
なのに、ユージーンは、なにか嬉しそうにしている。
「落胆させたくなかったのだ」
あの時、レティシアは気づいていなかったが、ユージーンは、ユージーンだったのだ。
話していたこともわかっていた、と言っている。
少しずつ、記憶が蘇っていた。
ニンジンという単語を出した時、ウサギは耳をピンと立てていた。
それに、なにか、したぱたと手を動かしてもいたのだ。
(嫌いって伝えようとしてたんだ……でも、私は気づいてなくて……)
レティシアは、ちゃっかりニンジンを用意している。
最初、ウサギが口にしようとせず、がっかりしかけた。
(そっか……ユージーン、私を喜ばそうとして、食べてくれたんだ……)
レティシアは、なんとも言えない気分になる。
騙されていたことなんて、気にもならなかった。
「ニンジン食べてくれて……ありがと、ユージーン」
レティシアの言葉に、ユージーンが、ふっと笑う。
それから、大仰に胸に手をあてて、言った。
「どういたしまして」
正妃選びの儀の時だって、こんなふうにはならなかった。
ユージーンの頭の中を、しばしばレティシアは真っ白にしている。
が、自覚はない。
だから、自分の番が回ってきた、なんてふうには思っていなかった。
ただただ、混乱の沼に、はまり込んでいる。
(ど、どーゆうコトっ? ユージーンが、あの時のウサちゃんっ? 薬で変化ってなんだよ? そんなの知らないし!)
愛称のこともだが、レティシアには知らないことも多いのだ。
こちらの世界で暮らすようになって、1年も経っていない。
日々、勉強はしているものの、興味があることから手をつけている。
使う気があまりないため、魔術に関しては後回しになっていた。
ようやく最近になって、手をつけ始めたところだ。
そこに、さらに「薬」まで出てきては、理解が追いつくはずもない。
(てかさ……私、あの時……なにしたっけ……)
うう~と、唸りながら、自分の「やらかした」ことを思い出す。
半年ほども前のことなので、詳細までは記憶に残っていなかった。
その半年の間に、様々な事態が巻き起こっている。
穏やかな森での生活は、残念ながら、ほかの出来事より印象が薄い。
「ウサギが相手であれば、お前は積極的になれるのだな。ずいぶんと熱心に、俺の下半身を見分していただろ?」
「ぎ……っ……」
ゴムオモチャのカエルが、踏まれた時のような声をあげる。
口から、舌が、ぴよんと飛び出しそうだった。
頬が、カッカッと火照ってくる。
その熱さに、少しだけ混乱の沼から這い上がることができた。
言い訳というか反論がしたかったからだ。
「あ、あれは……う、ウサギだと思ってたからで……ゆ、ユージーンの、け、見分なんか、し、してないよ」
「それはそうだ。ウサギであればこそ、俺は無抵抗であったのだからな」
なにやら、ものすごく「悪代官」な気分になる。
無抵抗のウサギにあれやこれやした。
しかも、それはユージーンだった。
すなわち、無抵抗のユージーンに、あれやこれや。
「し、知らなかったんだからね! き、気づいてたら、あんなことしなかった!」
「わかっている」
ユージーンが、うむとうなずく。
わずかにホッとした直後。
「だが、ウサギの俺に、お前が口づけたことは覆らん」
「ぎぎ……っ……」
もう、おかしな声しか出ない。
顔は、ぽっぽっと熱いし、反論も思い浮かばないし。
ひたすら、恥ずかしくてたまらない。
ユージーンは、レティシアを騙していた。
それを悪びれた様子もなく、抜け抜けと話している。
本来なら、怒ってしかるべきところだ。
だが、怒りより、恥ずかしさが勝っている。
そのせいで、また混乱の沼に、どぼーん。
頭からはまりこみ、意味不明な思考に走る。
いわゆる「現実逃避」だ。
「あ、あ~……あれは、ウサギで、私はウサギなら好きで……てゆーか、ウサギって、可愛いよねえ」
レティシアからは、ユージーンは、平然としているように見える。
混乱の沼で、あっぷあっぷしているレティシアは、さらに追い詰められた。
「ユージーンって、ウサギになれるんだ。へえ~いいねー! 今度……」
「ならんぞ」
すぱーん。
きれいに、レティシアの思考が断ち切られる。
ユージーンは、頬杖をやめ、体を少し前へとかがませた。
レティシアの顔を覗き込むようにして、言う。
「確かに、お前の腕に抱かれるのは心地良かった」
うはぁ~と、いよいよ顔が熱くなった。
ウサギを、ぎゅうぎゅうしていた自分を思い出したからだ。
「体中を撫で回されるのも悪くはなかったしな」
頭を抱え、夜空に向かって叫びたくなる。
あの日の自分に「そのウサギは王子様だよー」と教えたかった。
さりとて、レティシアにタイムリープ機能はついていない。
やってしまったことを、あとで悔やむ。
それを「後悔」というのだ。
「俺から1度だけ口づけたのだが、お前は、わかっておらんだろ?」
「え……うん……?」
「かまわぬさ。俺はウサギであったのだから、しかたがない。気にするな」
「あ……うん……う、ぅん……?」
「つまり、ウサギでは、またそのようなことになる。ゆえに、俺はもうウサギにはならんのだ」
なにやら自分が、説教をされている体になっている。
混乱の沼に、はまってはいたものの、さすがに、それはおかしいと気づいた。
「そもそも……なんでウサギ?」
「それは、俺にもよくわからん。ただ動物でなければ、あの森には入れなかったのでな。お前を森から連れ出すために、俺はウサギになったのだ」
レティシアは、数回、瞬きをする。
結果として、その策は成功したわけだが、頭には違う映像が浮かんでいた。
小さなウサギが、必死でレティシアの手を引っ張る姿。
思わず、声を上げて笑ってしまう。
ユージーンが驚いた顔をしているのにも、気づかない。
「そ、そんな、連れ出すのに、ウサギって……それ、ムリ過ぎでしょーよ」
あはは、あははと、お腹をおさえて笑った。
なにしろ、あの時のウサギは、レティシアに、簡単に抱き上げられてしまうくらい、軽くて小さかったのだ。
(なんで、ウサギをチョイス? て、あれ……ちょっと待って……)
笑うのをやめ、レティシアは真顔に戻る。
レティシアも、少し前かがみになり、自分を見ているユージーンのほうへと体を寄せた。
こくりと、喉が上下する。
「もしかして……ニンジンのトラウマって……」
「お前に食わされたのが、ものすごく不味かった」
「やっぱりかーッ!!」
今度は、頭をかかえてのけぞった。
あの時は、本当に野生のウサギだと思っていたのだ。
だから、あえての生野菜。
サラダとは違う。
なるべく新鮮なほうがいいだろうと、土を落とす程度にしか洗っていない。
もちろん味付けもナシだ。
単にスティック状に切っただけの代物。
「変化しても、味覚や体質は変わらんのだぞ」
ユージーンが、元々、ニンジン嫌いだったのかは知らない。
さりとて、あれが原因で嫌いになったのは、間違いない。
(ぁあ~人にトラウマ作っちゃったよ! そりゃ、私も、ユージーンにはトラウマ作られてるけどさあ! 私が見て、勝手にトラウマになっただけだし!)
そこで、また「あれ?」と思った。
頭をかかえるのをやめ、ユージーンに向き直る。
「そんなに嫌だったんなら、食べなきゃ良かったのに」
ウサギのユージーンは、きれいにニンジンを食べた。
それは覚えている。
「お前が、食べてほしそうにしていたのでな」
ユージーンが、口元を緩め、笑みを浮かべていた。
トラウマというくらいなのだから、嫌な記憶のはずだ。
なのに、ユージーンは、なにか嬉しそうにしている。
「落胆させたくなかったのだ」
あの時、レティシアは気づいていなかったが、ユージーンは、ユージーンだったのだ。
話していたこともわかっていた、と言っている。
少しずつ、記憶が蘇っていた。
ニンジンという単語を出した時、ウサギは耳をピンと立てていた。
それに、なにか、したぱたと手を動かしてもいたのだ。
(嫌いって伝えようとしてたんだ……でも、私は気づいてなくて……)
レティシアは、ちゃっかりニンジンを用意している。
最初、ウサギが口にしようとせず、がっかりしかけた。
(そっか……ユージーン、私を喜ばそうとして、食べてくれたんだ……)
レティシアは、なんとも言えない気分になる。
騙されていたことなんて、気にもならなかった。
「ニンジン食べてくれて……ありがと、ユージーン」
レティシアの言葉に、ユージーンが、ふっと笑う。
それから、大仰に胸に手をあてて、言った。
「どういたしまして」
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