245 / 304
最終章 黒い羽と青のそら
夜会は苦手 1
しおりを挟む
「サリー……これさぁ……」
「レティシア様好みの穏やかな、お色かと思いますが?」
「うん、確かに色は好みなんだけどね……」
色は、全体的にシックなグレー。
なのだけれども。
(ホルターネック……だよね……たぶん……)
現代日本風に表現すれば、おそらく「そのような」ものだ。
首の前から後ろに回して紐で結び、服を提げるような形。
それほどめずらしいものではなかったし、水着などでは、よく見かけるものでもある。
さりとて。
(いや、これ……ヒモ細過ぎない……っ?!)
もはや、糸。
少し力を入れて引っ張れば、簡単に切れるのは間違いない。
という、くらいに「ホルター」部分が細い。
しかも、前で2つに分かれているタイプではなく、2本の「糸」が、首元から、胸元に向かって、逆三角形を作っている。
レティシアイメージのホルターネックが、ハンドバッグの持ち手部分のような形だとすれば、これは、その逆なのだ。
そして、その「紐」の頂点から、今度は三角形に脇のほうへ、布が広がっているわけなのだが。
(てゆーか、ヘタしたら、横チ……やめとこう)
レティシアは「横乳」という言葉を自主規制。
前の世界の前の体形とは違い、今のレティシアは、見た目ほっそりだが、意外に胸はふくよかなのだ。
それを、さらに、上げたり寄せたりしているせいで、胸が「三角形」の布部分を外れ、脇からこぼれそうだった。
(伸縮性はあるみたいだから、動きにくいってことはないけど……)
腰から太腿まで、ピターッと布が張り付いている。
そこから、ふくらはぎに向かっては、ゆるやかな曲線で広がっていた。
ふくらはぎから下には、ふさふさした「羽っぽいもの」が、あしらわれている。
「こ、これさ……見えちゃったり、しないかな……?」
「編み上げ紐は、しっかりしていますから、ほどけたりいたしませんわ」
サリーは、鏡の中で、にっこりしていた。
そういうものなのかと思いつつも、不安は拭いきれない。
そう、最大の問題は、胸元なのだ。
胸の下あたりまで、V字に切れ込んでいて、編み上げになっている。
レースがあしらわれているとはいえ、所詮はレース。
スッケスケだった。
いくら編み上げの紐がしっかりしていると言われても、心もとなさ過ぎる。
(背中丸出しのほうが……大人しく感じるってさ……どうなんだろう……)
前回の「背中丸出し」のほうが露出度は高く、よほど布面積は少なかった。
が、今回のドレスは「お胸がぽろり」しそう感が強いのだ。
胸を見られるより、尻もとい臀部を見られるほうがマシ、と思えてしまう。
「夜会ですもの。ほかのご令嬢がたは、もっと派手に着飾ってこられますわ」
「そ、そうなんだ……」
確かに、ラウズワース公爵令嬢は、ただの訪問であったにもかかわらず、かなり派手な感じのドレスを身にまとっていた。
きっと夜会ともなれば、より派手なものになると言われても、納得はできる。
「レティシア様が、ほかのご令嬢がたに遅れを取るなど、あってはなりません」
「う、うん……」
「あまりに露骨なものや、下品なものはNGですけれど」
サリーは笑っているが、レティシアは笑えない。
あまりに露骨、だと、内心では思っていたからだ。
(下品ではないよ、下品では、ね……でも、胸を強調し過ぎな気が……)
レティシアがグルグルしている間にも、サリーは綺麗に髪を結いあげていく。
なにがどうなっているのか、さっぱりわからない。
あっという間に、首元がスカスカ。
おでこもくっきり。
髪の、ひと筋も落ちていない。
完全に編み上げられている。
(なんていうか……花輪……リースっぽくて、可愛いけどね……前髪ないのって、顔がはっきりするから、落ち着かないんだよなぁ)
しかし、サリーが頑張ってくれているのだ。
それに、自分で髪を結うこともできないのだし、文句の言える立場ではない。
これも「慣れ」だと諦める。
あとは、薄化粧をして、軽めの装飾品を身につけた。
軽めとはいえ、高額商品には違いない。
パチリと耳を挟む形のイヤリングは、花型をしている。。
花にデザインされた透明感のある宝石は、ダイヤモンドだろう。
現代日本だと、どのくらいの値段になるのか、想像もつかない。
なにしろレティシアは宝石には、まるで興味がなかったので。
(そんなに大きくなくて派手に見えない……って言ってもさあ! 落としたらって思うと、怖いじゃん!)
レティシアは、自分の家が、どのくらい金持ちなのか、知らなかった。
財産管理をしているのはグレイであり、任せきっている。
前の世界では預金残高を気にしていたが、それは生活のためだ。
ここでは、とくに意識しなくても生活できている。
グレイがネコババしたり、持ち逃げしたりする心配もしていない。
だから、財産については、なにも知らずにいた。
ただ、金持ちだからと言って、高額商品を道端に落としていいことにはならないのだ。
そこは、やはり庶民感覚が抜けていない。
「これで完璧ですわ、レティシア様」
「そ、そっかな……」
レティシアは立ち上がり、全身を鏡に映してみる。
ああ~…と、少し眩暈がした。
背中なら振り向かなけば意識を遠ざけてもいられるが、前面は、そうもいかないからだ。
「あとから、大公様もいらっしゃいますし、心配はないと思いますが、お気をつけくださいましね」
「あ、うん」
サリーの言葉に、はたとなる。
倒れそうになっている場合ではなかった。
これから行く夜会の招待主は「ウィリュアートン公爵家」の人なのだ。
「次男だっけ?」
「はい。トラヴィス・ウィリュアートン様は、あのかたの弟にあたられます」
あのかた、というのはレイモンドのことだった。
その弟から招待状が来たという。
「赤ちゃんのお披露目って、誰でもするの?」
「貴族は、たいてい行いますね」
現代日本では、身内で祝席を設けたりすることはある。
あとは、友達がお祝いを持って訪ねてきたりだとか。
けれど、大々的お披露目バーティをするとは、あまり聞かない。
レティシアの知らないセレブ世界ではあったのかもしれないけれど。
「はぁ……」
レティシアは、小さく溜め息をつく。
ちょっとだけ憂鬱な気分になっていた。
エスコート役がユージーンだから、ではない。
祖父が、一緒ではないからだ。
少し遅れて到着すると聞かされている。
祖父の夜会姿を見るのを、楽しみにしていたレティシアとしては、それが残念でならないのだ。
「遅れるといっても、それほど遅くはなられないと思いますわ」
「だと、いいなぁ。お祖父さまの夜会服って、貴重なんだもん」
「そうですね。大公様は、夜会を好まれませんから」
レティシアだって、夜会は苦手だったし、好きでもない。
見ず知らずの人に囲まれ、下手な愛想笑いを振りまき、気取った会話をするのは、性に合わなかった。
もっとも、貴族言葉を知らないレティシアは、気取ることすらも、まともにできないのだけれど。
「でも、今日の目的は、ユージーンに謝ることだしね」
「ほどほどでよろしいかと」
サリーの言う意味は、わかる。
深追いすると、逆効果になる恐れがあるのだ。
気まずさを解消する程度に、ということだろう。
「うまく言えればいいんだけどね」
「あまり考えず、いつも通りになさるのが、よろしいのではないでしょうか」
「そっか。うん、そうできるように頑張ってみるよ」
サリーに促され、扉に向かった。
少し緊張する。
ユージーンは、まだ怒っているだろうか。
「大丈夫ですよ。怒っていれば、あの人のことですから、エスコート役なんて引き受けたりはしません」
それもそうかと思うと、緊張がほぐれた。
サリーに、笑ってみせる。
「ありがと、サリー。落ち着いてきたよ」
サリーも、にっこりしていた。
そして、扉を開けてくれる。
「どういたしまして」
「レティシア様好みの穏やかな、お色かと思いますが?」
「うん、確かに色は好みなんだけどね……」
色は、全体的にシックなグレー。
なのだけれども。
(ホルターネック……だよね……たぶん……)
現代日本風に表現すれば、おそらく「そのような」ものだ。
首の前から後ろに回して紐で結び、服を提げるような形。
それほどめずらしいものではなかったし、水着などでは、よく見かけるものでもある。
さりとて。
(いや、これ……ヒモ細過ぎない……っ?!)
もはや、糸。
少し力を入れて引っ張れば、簡単に切れるのは間違いない。
という、くらいに「ホルター」部分が細い。
しかも、前で2つに分かれているタイプではなく、2本の「糸」が、首元から、胸元に向かって、逆三角形を作っている。
レティシアイメージのホルターネックが、ハンドバッグの持ち手部分のような形だとすれば、これは、その逆なのだ。
そして、その「紐」の頂点から、今度は三角形に脇のほうへ、布が広がっているわけなのだが。
(てゆーか、ヘタしたら、横チ……やめとこう)
レティシアは「横乳」という言葉を自主規制。
前の世界の前の体形とは違い、今のレティシアは、見た目ほっそりだが、意外に胸はふくよかなのだ。
それを、さらに、上げたり寄せたりしているせいで、胸が「三角形」の布部分を外れ、脇からこぼれそうだった。
(伸縮性はあるみたいだから、動きにくいってことはないけど……)
腰から太腿まで、ピターッと布が張り付いている。
そこから、ふくらはぎに向かっては、ゆるやかな曲線で広がっていた。
ふくらはぎから下には、ふさふさした「羽っぽいもの」が、あしらわれている。
「こ、これさ……見えちゃったり、しないかな……?」
「編み上げ紐は、しっかりしていますから、ほどけたりいたしませんわ」
サリーは、鏡の中で、にっこりしていた。
そういうものなのかと思いつつも、不安は拭いきれない。
そう、最大の問題は、胸元なのだ。
胸の下あたりまで、V字に切れ込んでいて、編み上げになっている。
レースがあしらわれているとはいえ、所詮はレース。
スッケスケだった。
いくら編み上げの紐がしっかりしていると言われても、心もとなさ過ぎる。
(背中丸出しのほうが……大人しく感じるってさ……どうなんだろう……)
前回の「背中丸出し」のほうが露出度は高く、よほど布面積は少なかった。
が、今回のドレスは「お胸がぽろり」しそう感が強いのだ。
胸を見られるより、尻もとい臀部を見られるほうがマシ、と思えてしまう。
「夜会ですもの。ほかのご令嬢がたは、もっと派手に着飾ってこられますわ」
「そ、そうなんだ……」
確かに、ラウズワース公爵令嬢は、ただの訪問であったにもかかわらず、かなり派手な感じのドレスを身にまとっていた。
きっと夜会ともなれば、より派手なものになると言われても、納得はできる。
「レティシア様が、ほかのご令嬢がたに遅れを取るなど、あってはなりません」
「う、うん……」
「あまりに露骨なものや、下品なものはNGですけれど」
サリーは笑っているが、レティシアは笑えない。
あまりに露骨、だと、内心では思っていたからだ。
(下品ではないよ、下品では、ね……でも、胸を強調し過ぎな気が……)
レティシアがグルグルしている間にも、サリーは綺麗に髪を結いあげていく。
なにがどうなっているのか、さっぱりわからない。
あっという間に、首元がスカスカ。
おでこもくっきり。
髪の、ひと筋も落ちていない。
完全に編み上げられている。
(なんていうか……花輪……リースっぽくて、可愛いけどね……前髪ないのって、顔がはっきりするから、落ち着かないんだよなぁ)
しかし、サリーが頑張ってくれているのだ。
それに、自分で髪を結うこともできないのだし、文句の言える立場ではない。
これも「慣れ」だと諦める。
あとは、薄化粧をして、軽めの装飾品を身につけた。
軽めとはいえ、高額商品には違いない。
パチリと耳を挟む形のイヤリングは、花型をしている。。
花にデザインされた透明感のある宝石は、ダイヤモンドだろう。
現代日本だと、どのくらいの値段になるのか、想像もつかない。
なにしろレティシアは宝石には、まるで興味がなかったので。
(そんなに大きくなくて派手に見えない……って言ってもさあ! 落としたらって思うと、怖いじゃん!)
レティシアは、自分の家が、どのくらい金持ちなのか、知らなかった。
財産管理をしているのはグレイであり、任せきっている。
前の世界では預金残高を気にしていたが、それは生活のためだ。
ここでは、とくに意識しなくても生活できている。
グレイがネコババしたり、持ち逃げしたりする心配もしていない。
だから、財産については、なにも知らずにいた。
ただ、金持ちだからと言って、高額商品を道端に落としていいことにはならないのだ。
そこは、やはり庶民感覚が抜けていない。
「これで完璧ですわ、レティシア様」
「そ、そっかな……」
レティシアは立ち上がり、全身を鏡に映してみる。
ああ~…と、少し眩暈がした。
背中なら振り向かなけば意識を遠ざけてもいられるが、前面は、そうもいかないからだ。
「あとから、大公様もいらっしゃいますし、心配はないと思いますが、お気をつけくださいましね」
「あ、うん」
サリーの言葉に、はたとなる。
倒れそうになっている場合ではなかった。
これから行く夜会の招待主は「ウィリュアートン公爵家」の人なのだ。
「次男だっけ?」
「はい。トラヴィス・ウィリュアートン様は、あのかたの弟にあたられます」
あのかた、というのはレイモンドのことだった。
その弟から招待状が来たという。
「赤ちゃんのお披露目って、誰でもするの?」
「貴族は、たいてい行いますね」
現代日本では、身内で祝席を設けたりすることはある。
あとは、友達がお祝いを持って訪ねてきたりだとか。
けれど、大々的お披露目バーティをするとは、あまり聞かない。
レティシアの知らないセレブ世界ではあったのかもしれないけれど。
「はぁ……」
レティシアは、小さく溜め息をつく。
ちょっとだけ憂鬱な気分になっていた。
エスコート役がユージーンだから、ではない。
祖父が、一緒ではないからだ。
少し遅れて到着すると聞かされている。
祖父の夜会姿を見るのを、楽しみにしていたレティシアとしては、それが残念でならないのだ。
「遅れるといっても、それほど遅くはなられないと思いますわ」
「だと、いいなぁ。お祖父さまの夜会服って、貴重なんだもん」
「そうですね。大公様は、夜会を好まれませんから」
レティシアだって、夜会は苦手だったし、好きでもない。
見ず知らずの人に囲まれ、下手な愛想笑いを振りまき、気取った会話をするのは、性に合わなかった。
もっとも、貴族言葉を知らないレティシアは、気取ることすらも、まともにできないのだけれど。
「でも、今日の目的は、ユージーンに謝ることだしね」
「ほどほどでよろしいかと」
サリーの言う意味は、わかる。
深追いすると、逆効果になる恐れがあるのだ。
気まずさを解消する程度に、ということだろう。
「うまく言えればいいんだけどね」
「あまり考えず、いつも通りになさるのが、よろしいのではないでしょうか」
「そっか。うん、そうできるように頑張ってみるよ」
サリーに促され、扉に向かった。
少し緊張する。
ユージーンは、まだ怒っているだろうか。
「大丈夫ですよ。怒っていれば、あの人のことですから、エスコート役なんて引き受けたりはしません」
それもそうかと思うと、緊張がほぐれた。
サリーに、笑ってみせる。
「ありがと、サリー。落ち着いてきたよ」
サリーも、にっこりしていた。
そして、扉を開けてくれる。
「どういたしまして」
2
お気に入りに追加
307
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
幸せな人生を目指して
える
ファンタジー
不慮の事故にあいその生涯を終え異世界に転生したエルシア。
十八歳という若さで死んでしまった前世を持つ彼女は今度こそ幸せな人生を送ろうと努力する。
精霊や魔法ありの異世界ファンタジー。

叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

人質王女の恋
小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。
数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。
それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。
両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。
聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。
傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる