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第2章 黒い風と金のいと
暗闇に飛ぶ 4
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ユージーンは、とても憂鬱な気分になっている。
今は、私室の「広い」カウチに、足を伸ばして横になっていた。
王宮に帰ったのは、今朝がたのことだ。
サイラスより、急ぎ帰ってくれと言われ、サハシーを後にしている。
いずれにせよ、そろそろ帰り時ではあった。
そして、帰ったところ「審議」が執り行われると言われた。
審議を見とどけるのも王族としての務めだ。
重要な公務のひとつとされている。
が、さっきまで行われていた審議には、意味があるようには思えなかった。
どの道、大公にはこの国に居続けてもらわなければならない。
罰せられもしないのに、審議など無駄だ。
サイラスの言っていたように、事の次第を知っておく必要はあったのかもしれないけれど。
「大公は何もしておらぬ、か」
何もしていなかろうが、していようが、大差はない。
仮に、大公が手を下していても、咎めようがないからだ。
ならば、なぜサイラスは審議を求めたのか。
サイラスが無意味なことをするとも、ユージーンは思えずにいる。
「殿下、大公様が何もしていないなどと、お思いですか?」
「いや、そのようなはずがなかろう」
「その通りです。実際に手を下したかはともかく、大公様によって2人は殺されたも同然でしょう」
ユージーンにも、それはわかっていた。
審議前、あの写真をサイラスから見せられている。
大公が暖炉前にいたところから始まり、2人が自死するまでのものだ。
大公の顔から表情は読み取れなかった。
時間軸に沿って写真を見ていっても、顔色を変えているのは死んだ2人だけだ。
大公にあったのは、最初から「最期」まで、無関心と冷徹さのみ。
(あの執事も馬鹿な真似をしたが、ラペルも愚かであったな)
ほんのわずかでも、ジョシュア・ローエルハイドに関わることなどしなければ、今夜も夜会に出られたかもしれない。
ラペル公爵夫人が、喪服の用意をする必要もなかった。
が、起こしてしまった責任の取り方としては悪くない。
大公は、ここでも冷静そのものの判断をしたようだ。
私戦は、どちらかが白旗を揚げることで収束する。
それまでは、下位貴族も巻き込み、報復につぐ報復となるのだ。
大勢の死人も出る。
対して、今回の執事ように、私戦を受けた者が見捨てられた場合は、その者だけが死ねば終わり。
本来、無関係な者は、私戦に加われない。
ローエルハイドの執事は、屋敷を出ている。
執事とローエルハイド公爵家は、現状、無関係なのだ。
そして、ローエルハイド公爵家が無関係といった状況下で、ラペル公爵家の2人は死んでいる。
しかも、自死とくれば、私戦を続ける意味がない。
当事者が、自らいなくなってしまったのだから。
今回の私戦は、これで収束となった。
大公が咎めを受けることもなく、公爵が宰相を辞することもなく。
ラペル公爵家にしても、おそらく長男が家督を継ぐことになるだろう。
大公は、2人の犠牲で、事を収めたのだ。
ユージーンは、とても憂鬱な気分になる。
あの写真を見れば、大公が手を下したのは明白だった。
手を下すと言っても、首を絞めるだの剣で切り殺すだのという直接的な手段ではない。
それでも、大公は手を下している。
あの写真に瑕疵のないことが、それを事実たらしめていた。
カウチで横になったまま頬づえをつき、立っているサイラスへと視線を投げる。
どうにも憂鬱な気分が晴れない。
問題は解決しているのだけれども、何か嫌な気分なのだ。
「大公は、あの執事を助けたのではないのだろ?」
「仰る通りにございます」
私戦が収束したのなら、執事の再雇い入れは簡単だ。
レティシアも、きっとそうする。
家族同然に思っている使用人を、ひどく心配していたに違いないので。
大公の想いも、そこにある。
執事を早々に屋敷から出した意図。
それは、レティシアに、どちらも選ばせないようにするためだ。
執事を庇い、屋敷ぐるみで私戦に挑むか。
執事を見捨て、家を守るか。
彼女に選択させないよう、大公は手を打った。
犠牲が2人ですんだのなら安いものだと、ユージーンは思う。
朝になったらラペル公爵家ごと消えていた可能性もあったからだ。
(大公は、あれに何も話してはおらんのだろうな)
執事を家から出した理由も、ラペル公爵らに手をかけたことも。
そして、王宮はこれを秘匿する。
レティシアが、知ることはない。
知らなければ、執事の帰還を素直に喜べる。
彼女の心情を慮るのなら、事実を告げたりはしないだろう。
彼らは、勝手に自死したのだ。
ユージーンとて、死んだ2人を気にかけてはいない。
彼らは、そう、とても愚かだった、というだけのこと。
審議室で見せたように、非常に皮肉屋ではあるが、大公は、おおむね陽気で穏やかな人物だと信じられている。
皮肉を言われ、少しばかり不愉快になっても、直後には笑わせてくれるのだから、誰も大公を本気で憎んだりはしない。
そして、恐れもしない。
大公と自分たちとの違いを、せいぜい偉大な魔術師と、持たざる者くらいに測っている。
重臣たちですら、そう思っていると感じられるのだから、ユージーンは呆れずにはいられなかった。
中には、神のように崇める者もいるけれど、ジョシュア・ローエルハイドは神ではない。
自然の脅威に近しい存在なのだ。
しかも、意思を持っている。
それが、どれほど恐ろしいことか。
気づいているユージーンにとっては、さらに空恐ろしい。
大公は、審議の場で、やけに饒舌だった。
ことさらにふざけたり、茶化したりしている。
ユージーンと2人だけで話した際にはなかった姿だ。
あの湖で、大公がわずかに見せたもの。
一瞬ではあったが、暗くて深い闇の底に沈められそうな、不安と恐怖につつまれた。
大公の「それ」の前では、己の身のちっぽけさを否応なくつきつけられる。
夜会の際の殺気が、ただの「忠告」に過ぎなかったのだと思い知った。
落雷や暴風雨、地の振動や海の隆起に、人は怯える。
もとより言葉が通じるなどとは思わないし、止められるとも思わないからだ。
なすすべがないと、本能的に悟っている。
だから、怖い。
大公の持つ力には、そういうものが感じられた。
ふれたからこそ、わかるのだ。
人ならざる力、人ならざる者。
なのに、人の姿をしており、優しく穏やかな人物といった印象だけを、周囲に与えている。
自然とは脅威を内在させつつも、恩恵を与えてくれるものでもあった。
大公がこの国を救い、今なお抑止力となっているのは、確かに恩恵なのだ。
ただ、問題なのは、自然に意思はないが、大公にはある、ということ。
「あの写真は、お前が用意していたのか?」
ふと、思い立って、サイラスに聞いてみる。
サイラスは、静かに首を横に振った。
「ラペル公爵家は私戦を挑んでいたので、用心していたようです。おかかえの魔術師に自ら看髄をかけさせ、模画も仕込ませていたのですよ」
「それが、お前の元に届けられたのか」
「ラペル公爵家にも貴族としての意地があったのでしょう。大公様への審議を嘆願してまいりました」
そういうことか、と納得する。
サイラスが審議を開いたのは、ラペル公爵家の顔を立てるためだった。
結果は見えていても「行った」という実が必要だ。
貴族同士の諍いに王族が関与できなくても、王宮には「政」の役割がある。
大臣たちが、渋々ながらも顔を揃えていたのは、この建前を成立させようとしてのことだ。
彼らは、領主や貴族たちとの繋がりが深い。
何もしてくれないとなれば、貴族たちは彼らの指図に従わなくなるだろう。
王宮の存続も危ぶまれる。
なにしろ王宮の財政は、領主を含め貴族から納められる税によって賄われているのだから。
「内乱とまでは申し上げませんが、火種が飛び火するのを、避けなければならなかったのです」
やはりサイラスのすることに無意味なことなどない。
少しだけ、つっかえていたものが、すとんと腑に落ちる。
審議のことは、これで終わりだ。
なのに、ユージーンの憂鬱さは、心に居座ったままでいる。
目を伏せ、軽く眉間を指で揉んだ。
その目の奥に、レティシアと大公の姿が浮かぶ。
レティシアは大公に全幅の信頼を寄せていた。
すっかり身を委ね、惜しむことなく感情をあずけてもいたのだ。
そして、レティシアの前で見せていた大公の笑みも本物だったように思える。
自分など入り込めないくらいの結びつきがある気がした。
(俺にはわからんが……家族とは、そういうものなのだろうな)
レティシアが家族をとても大事にしていることは、ユージーンも知っている。
今は、私室の「広い」カウチに、足を伸ばして横になっていた。
王宮に帰ったのは、今朝がたのことだ。
サイラスより、急ぎ帰ってくれと言われ、サハシーを後にしている。
いずれにせよ、そろそろ帰り時ではあった。
そして、帰ったところ「審議」が執り行われると言われた。
審議を見とどけるのも王族としての務めだ。
重要な公務のひとつとされている。
が、さっきまで行われていた審議には、意味があるようには思えなかった。
どの道、大公にはこの国に居続けてもらわなければならない。
罰せられもしないのに、審議など無駄だ。
サイラスの言っていたように、事の次第を知っておく必要はあったのかもしれないけれど。
「大公は何もしておらぬ、か」
何もしていなかろうが、していようが、大差はない。
仮に、大公が手を下していても、咎めようがないからだ。
ならば、なぜサイラスは審議を求めたのか。
サイラスが無意味なことをするとも、ユージーンは思えずにいる。
「殿下、大公様が何もしていないなどと、お思いですか?」
「いや、そのようなはずがなかろう」
「その通りです。実際に手を下したかはともかく、大公様によって2人は殺されたも同然でしょう」
ユージーンにも、それはわかっていた。
審議前、あの写真をサイラスから見せられている。
大公が暖炉前にいたところから始まり、2人が自死するまでのものだ。
大公の顔から表情は読み取れなかった。
時間軸に沿って写真を見ていっても、顔色を変えているのは死んだ2人だけだ。
大公にあったのは、最初から「最期」まで、無関心と冷徹さのみ。
(あの執事も馬鹿な真似をしたが、ラペルも愚かであったな)
ほんのわずかでも、ジョシュア・ローエルハイドに関わることなどしなければ、今夜も夜会に出られたかもしれない。
ラペル公爵夫人が、喪服の用意をする必要もなかった。
が、起こしてしまった責任の取り方としては悪くない。
大公は、ここでも冷静そのものの判断をしたようだ。
私戦は、どちらかが白旗を揚げることで収束する。
それまでは、下位貴族も巻き込み、報復につぐ報復となるのだ。
大勢の死人も出る。
対して、今回の執事ように、私戦を受けた者が見捨てられた場合は、その者だけが死ねば終わり。
本来、無関係な者は、私戦に加われない。
ローエルハイドの執事は、屋敷を出ている。
執事とローエルハイド公爵家は、現状、無関係なのだ。
そして、ローエルハイド公爵家が無関係といった状況下で、ラペル公爵家の2人は死んでいる。
しかも、自死とくれば、私戦を続ける意味がない。
当事者が、自らいなくなってしまったのだから。
今回の私戦は、これで収束となった。
大公が咎めを受けることもなく、公爵が宰相を辞することもなく。
ラペル公爵家にしても、おそらく長男が家督を継ぐことになるだろう。
大公は、2人の犠牲で、事を収めたのだ。
ユージーンは、とても憂鬱な気分になる。
あの写真を見れば、大公が手を下したのは明白だった。
手を下すと言っても、首を絞めるだの剣で切り殺すだのという直接的な手段ではない。
それでも、大公は手を下している。
あの写真に瑕疵のないことが、それを事実たらしめていた。
カウチで横になったまま頬づえをつき、立っているサイラスへと視線を投げる。
どうにも憂鬱な気分が晴れない。
問題は解決しているのだけれども、何か嫌な気分なのだ。
「大公は、あの執事を助けたのではないのだろ?」
「仰る通りにございます」
私戦が収束したのなら、執事の再雇い入れは簡単だ。
レティシアも、きっとそうする。
家族同然に思っている使用人を、ひどく心配していたに違いないので。
大公の想いも、そこにある。
執事を早々に屋敷から出した意図。
それは、レティシアに、どちらも選ばせないようにするためだ。
執事を庇い、屋敷ぐるみで私戦に挑むか。
執事を見捨て、家を守るか。
彼女に選択させないよう、大公は手を打った。
犠牲が2人ですんだのなら安いものだと、ユージーンは思う。
朝になったらラペル公爵家ごと消えていた可能性もあったからだ。
(大公は、あれに何も話してはおらんのだろうな)
執事を家から出した理由も、ラペル公爵らに手をかけたことも。
そして、王宮はこれを秘匿する。
レティシアが、知ることはない。
知らなければ、執事の帰還を素直に喜べる。
彼女の心情を慮るのなら、事実を告げたりはしないだろう。
彼らは、勝手に自死したのだ。
ユージーンとて、死んだ2人を気にかけてはいない。
彼らは、そう、とても愚かだった、というだけのこと。
審議室で見せたように、非常に皮肉屋ではあるが、大公は、おおむね陽気で穏やかな人物だと信じられている。
皮肉を言われ、少しばかり不愉快になっても、直後には笑わせてくれるのだから、誰も大公を本気で憎んだりはしない。
そして、恐れもしない。
大公と自分たちとの違いを、せいぜい偉大な魔術師と、持たざる者くらいに測っている。
重臣たちですら、そう思っていると感じられるのだから、ユージーンは呆れずにはいられなかった。
中には、神のように崇める者もいるけれど、ジョシュア・ローエルハイドは神ではない。
自然の脅威に近しい存在なのだ。
しかも、意思を持っている。
それが、どれほど恐ろしいことか。
気づいているユージーンにとっては、さらに空恐ろしい。
大公は、審議の場で、やけに饒舌だった。
ことさらにふざけたり、茶化したりしている。
ユージーンと2人だけで話した際にはなかった姿だ。
あの湖で、大公がわずかに見せたもの。
一瞬ではあったが、暗くて深い闇の底に沈められそうな、不安と恐怖につつまれた。
大公の「それ」の前では、己の身のちっぽけさを否応なくつきつけられる。
夜会の際の殺気が、ただの「忠告」に過ぎなかったのだと思い知った。
落雷や暴風雨、地の振動や海の隆起に、人は怯える。
もとより言葉が通じるなどとは思わないし、止められるとも思わないからだ。
なすすべがないと、本能的に悟っている。
だから、怖い。
大公の持つ力には、そういうものが感じられた。
ふれたからこそ、わかるのだ。
人ならざる力、人ならざる者。
なのに、人の姿をしており、優しく穏やかな人物といった印象だけを、周囲に与えている。
自然とは脅威を内在させつつも、恩恵を与えてくれるものでもあった。
大公がこの国を救い、今なお抑止力となっているのは、確かに恩恵なのだ。
ただ、問題なのは、自然に意思はないが、大公にはある、ということ。
「あの写真は、お前が用意していたのか?」
ふと、思い立って、サイラスに聞いてみる。
サイラスは、静かに首を横に振った。
「ラペル公爵家は私戦を挑んでいたので、用心していたようです。おかかえの魔術師に自ら看髄をかけさせ、模画も仕込ませていたのですよ」
「それが、お前の元に届けられたのか」
「ラペル公爵家にも貴族としての意地があったのでしょう。大公様への審議を嘆願してまいりました」
そういうことか、と納得する。
サイラスが審議を開いたのは、ラペル公爵家の顔を立てるためだった。
結果は見えていても「行った」という実が必要だ。
貴族同士の諍いに王族が関与できなくても、王宮には「政」の役割がある。
大臣たちが、渋々ながらも顔を揃えていたのは、この建前を成立させようとしてのことだ。
彼らは、領主や貴族たちとの繋がりが深い。
何もしてくれないとなれば、貴族たちは彼らの指図に従わなくなるだろう。
王宮の存続も危ぶまれる。
なにしろ王宮の財政は、領主を含め貴族から納められる税によって賄われているのだから。
「内乱とまでは申し上げませんが、火種が飛び火するのを、避けなければならなかったのです」
やはりサイラスのすることに無意味なことなどない。
少しだけ、つっかえていたものが、すとんと腑に落ちる。
審議のことは、これで終わりだ。
なのに、ユージーンの憂鬱さは、心に居座ったままでいる。
目を伏せ、軽く眉間を指で揉んだ。
その目の奥に、レティシアと大公の姿が浮かぶ。
レティシアは大公に全幅の信頼を寄せていた。
すっかり身を委ね、惜しむことなく感情をあずけてもいたのだ。
そして、レティシアの前で見せていた大公の笑みも本物だったように思える。
自分など入り込めないくらいの結びつきがある気がした。
(俺にはわからんが……家族とは、そういうものなのだろうな)
レティシアが家族をとても大事にしていることは、ユージーンも知っている。
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