23 / 84
日常茶飯事 3
しおりを挟む 夜会。
お披露目。
さっきは聞き流してしまったが、思い返すと恐ろしい。
なにしろ自分が「人前に出る」ということなのだ。
おそらく学校の全校集会で壇上に上がるよりも注目されるだろう。
「妃殿下? どうなさいました?」
サビナの声に、ハッとした。
ディーナリアスがいない代わりに、サビナがいる。
着替えは、すでにすませていた。
毎日、サビナの世話になっている。
いつもはカウチ、ディーナリアスの膝にいるのだが、今はイスに座っていた。
テーブルには紅茶が置かれている。
その横には、1口サイズで、種類も豊富なクッキーの山。
5日目にきて、ようやく「好きに食べてもいい」のだと認識しつつあった。
クッキーを、ひと口ぱくり。
甘い味に、少しだけ気分を持ち直す。
近くに控えているサビナを見上げた。
「あ、あの……や、夜会が……」
「妃殿下のお披露目ですね」
にっこりされても、ジョゼフィーネは笑えない。
夜会になど出たことがないからだ。
どういう「作法」なのかも知らずにいる。
恥をかくに決まっていた。
(私だけ、じゃない……あの人も……)
ディーナリアスにも恥をかかせることになる。
この5日、彼から怒られたり、罵声を浴びせられたりすることはなかった。
おおむねディーナリアスは、いつも、ゆったりとしている。
王族だからなのか、彼の性格なのかはともかく、せかせかした感じがない。
ジョゼフィーネとの会話にも苛立ちは見せなかった。
(我慢してただけかも……一応、嫁だし……)
今まで親切だったからといって、これからもそうとは限らない。
いつ切り捨てられるか、わからないのだ。
嫌な夢を見たせいか、前世の記憶に引っ張られている。
暴力といった目に見える悪意も怖いが、目に見えない悪意は、もっと怖い。
じっと潜ませておいて、ある日、突然ぶつけられるかもしれないからだ。
「夜会は、お嫌いですか?」
ジョゼフィーネは、サビナの問いに首を横に振る。
好きも嫌いもない。
出たことがないので判断のしようがなかった。
ジョゼフィーネだって年頃の女性なのだ。
憧れのようなものはある。
屋敷の外、窓から、こっそり覗いたこともあった。
アントワーヌが招待されていた夜会だ。
姉たちと代わる代わるダンスを踊っていたアントワーヌの姿を思い出す。
「わ、わた、私……っ……」
ガタっと、イスから立ち上がった。
恐ろしいことに気づいている。
「いかがされました?!」
「わ、私、だ、ダンス……できない……っ……」
踊ったのなんて、前世での小学校の運動会以来だ。
夜会のダンスは、運動会のフォークダンスとは違う。
どうしよう、どうしようと、頭がグラグラした。
ジョゼフィーネは、貴族教育をいっさい受けていないのだ。
前世の記憶の中、童話のダンスシーンの描写が頭をよぎる。
獣姿の男性と町娘が踊る場面だった。
外国の人って誰でもダンスできるのかな、などと思ったのを覚えている。
が、ジョゼフィーネの前世は日本であり、フォーマルなダンスなんて、普通は踊れない。
顔面蒼白。
夜会でダンス、と考えただけで、ぶっ倒れそうだ。
大国の王太子と婚姻するのだから、そういうことが付随するのは当然。
とはいえ、テーブルマナーだの言葉遣いだのに関し、ディーナリアスがこだわりを見せたことはなかった。
だから、うっかり忘れていたのだ。
「まだ夜会までは、お時間がございます。練習をなさってみてはいかがでしょう? もちろん私もおつきあいさせていただきますので」
サビナの言葉はありがたい。
ありがたいのだが。
(私にダンスなんて……無理……できない……どうせ練習したって……)
うまくできるはずがない、と思った。
自分は、できそこないなのだ。
やれることなんて何もない。
動かないのが1番いい。
ジョゼフィーネは、まだまだハイパーネガティブ思考。
後ろ向きからの脱却は、ほど遠かった。
「妃殿下、時には無理をすることも必要な場合がございます。練習して、それでも無理なら、その時は私にそう仰ってくださいませ」
サビナが、ジョゼフィーネの前に跪き、手を握ってくれる。
暖かい手だった。
「私のほうから、きちんと殿下にダンスのお断りを申し上げます」
「え……」
「私は、殿下に申し訳ないなどとは思いませんので」
さっぱりとした口調で言われ、ジョゼフィーネの肩から少しだけ力が抜ける。
練習してもダメかもしれない。
やっぱり無理だったということになるだろう。
だとしても、それをディーナリアスに告げる必要はないのだ。
(で、でも……本当に大丈夫? あの人に、どんなふうに言われるか……)
ジョゼフィーネは無能なのでダンスしないほうがいい、というような言いかたをされることも考えられる。
たいていは、悪いことは、なんだって自分のせいにされてきた。
サビナが庇ってくれるとは信じきれずにいる。
自分の手を握る暖かい手を信じたい気持ちはあった。
それでも、やはり怖かったのだ。
傷ついていない場所がないくらい、ジョゼフィーネの心は傷ついている。
傷の上に、さらに傷が積み重ねられてもいた。
そのせいで警戒心を解くことができずにいる。
「実際、口実はいくらでも作れるのですよ? 疲れておられるとか、この国にまだ慣れておられないとか。スルーすることは簡単なのです」
言葉が、ジョゼフィーネの胸に、ぐっと沁み込んできた。
逃げようとすれば逃げられる。
サビナは、そう言っているのだ。
(逃げたい……逃げたいよ……けど……でも……)
ディーナリアスの顔が浮かんでくる。
彼はジョゼフィーネを急かせることもなく、いつも「大丈夫」というように、頭を撫でてくれる人だった。
どこまで信用できるかはともかく、政略結婚でも愛は必要だと説いていた。
サビナに視線を向け、ジョゼフィーネは「無理をする」決意をする。
自分にも少しくらいできることがある、と信じたかったのかもしれない。
お披露目。
さっきは聞き流してしまったが、思い返すと恐ろしい。
なにしろ自分が「人前に出る」ということなのだ。
おそらく学校の全校集会で壇上に上がるよりも注目されるだろう。
「妃殿下? どうなさいました?」
サビナの声に、ハッとした。
ディーナリアスがいない代わりに、サビナがいる。
着替えは、すでにすませていた。
毎日、サビナの世話になっている。
いつもはカウチ、ディーナリアスの膝にいるのだが、今はイスに座っていた。
テーブルには紅茶が置かれている。
その横には、1口サイズで、種類も豊富なクッキーの山。
5日目にきて、ようやく「好きに食べてもいい」のだと認識しつつあった。
クッキーを、ひと口ぱくり。
甘い味に、少しだけ気分を持ち直す。
近くに控えているサビナを見上げた。
「あ、あの……や、夜会が……」
「妃殿下のお披露目ですね」
にっこりされても、ジョゼフィーネは笑えない。
夜会になど出たことがないからだ。
どういう「作法」なのかも知らずにいる。
恥をかくに決まっていた。
(私だけ、じゃない……あの人も……)
ディーナリアスにも恥をかかせることになる。
この5日、彼から怒られたり、罵声を浴びせられたりすることはなかった。
おおむねディーナリアスは、いつも、ゆったりとしている。
王族だからなのか、彼の性格なのかはともかく、せかせかした感じがない。
ジョゼフィーネとの会話にも苛立ちは見せなかった。
(我慢してただけかも……一応、嫁だし……)
今まで親切だったからといって、これからもそうとは限らない。
いつ切り捨てられるか、わからないのだ。
嫌な夢を見たせいか、前世の記憶に引っ張られている。
暴力といった目に見える悪意も怖いが、目に見えない悪意は、もっと怖い。
じっと潜ませておいて、ある日、突然ぶつけられるかもしれないからだ。
「夜会は、お嫌いですか?」
ジョゼフィーネは、サビナの問いに首を横に振る。
好きも嫌いもない。
出たことがないので判断のしようがなかった。
ジョゼフィーネだって年頃の女性なのだ。
憧れのようなものはある。
屋敷の外、窓から、こっそり覗いたこともあった。
アントワーヌが招待されていた夜会だ。
姉たちと代わる代わるダンスを踊っていたアントワーヌの姿を思い出す。
「わ、わた、私……っ……」
ガタっと、イスから立ち上がった。
恐ろしいことに気づいている。
「いかがされました?!」
「わ、私、だ、ダンス……できない……っ……」
踊ったのなんて、前世での小学校の運動会以来だ。
夜会のダンスは、運動会のフォークダンスとは違う。
どうしよう、どうしようと、頭がグラグラした。
ジョゼフィーネは、貴族教育をいっさい受けていないのだ。
前世の記憶の中、童話のダンスシーンの描写が頭をよぎる。
獣姿の男性と町娘が踊る場面だった。
外国の人って誰でもダンスできるのかな、などと思ったのを覚えている。
が、ジョゼフィーネの前世は日本であり、フォーマルなダンスなんて、普通は踊れない。
顔面蒼白。
夜会でダンス、と考えただけで、ぶっ倒れそうだ。
大国の王太子と婚姻するのだから、そういうことが付随するのは当然。
とはいえ、テーブルマナーだの言葉遣いだのに関し、ディーナリアスがこだわりを見せたことはなかった。
だから、うっかり忘れていたのだ。
「まだ夜会までは、お時間がございます。練習をなさってみてはいかがでしょう? もちろん私もおつきあいさせていただきますので」
サビナの言葉はありがたい。
ありがたいのだが。
(私にダンスなんて……無理……できない……どうせ練習したって……)
うまくできるはずがない、と思った。
自分は、できそこないなのだ。
やれることなんて何もない。
動かないのが1番いい。
ジョゼフィーネは、まだまだハイパーネガティブ思考。
後ろ向きからの脱却は、ほど遠かった。
「妃殿下、時には無理をすることも必要な場合がございます。練習して、それでも無理なら、その時は私にそう仰ってくださいませ」
サビナが、ジョゼフィーネの前に跪き、手を握ってくれる。
暖かい手だった。
「私のほうから、きちんと殿下にダンスのお断りを申し上げます」
「え……」
「私は、殿下に申し訳ないなどとは思いませんので」
さっぱりとした口調で言われ、ジョゼフィーネの肩から少しだけ力が抜ける。
練習してもダメかもしれない。
やっぱり無理だったということになるだろう。
だとしても、それをディーナリアスに告げる必要はないのだ。
(で、でも……本当に大丈夫? あの人に、どんなふうに言われるか……)
ジョゼフィーネは無能なのでダンスしないほうがいい、というような言いかたをされることも考えられる。
たいていは、悪いことは、なんだって自分のせいにされてきた。
サビナが庇ってくれるとは信じきれずにいる。
自分の手を握る暖かい手を信じたい気持ちはあった。
それでも、やはり怖かったのだ。
傷ついていない場所がないくらい、ジョゼフィーネの心は傷ついている。
傷の上に、さらに傷が積み重ねられてもいた。
そのせいで警戒心を解くことができずにいる。
「実際、口実はいくらでも作れるのですよ? 疲れておられるとか、この国にまだ慣れておられないとか。スルーすることは簡単なのです」
言葉が、ジョゼフィーネの胸に、ぐっと沁み込んできた。
逃げようとすれば逃げられる。
サビナは、そう言っているのだ。
(逃げたい……逃げたいよ……けど……でも……)
ディーナリアスの顔が浮かんでくる。
彼はジョゼフィーネを急かせることもなく、いつも「大丈夫」というように、頭を撫でてくれる人だった。
どこまで信用できるかはともかく、政略結婚でも愛は必要だと説いていた。
サビナに視線を向け、ジョゼフィーネは「無理をする」決意をする。
自分にも少しくらいできることがある、と信じたかったのかもしれない。
0
お気に入りに追加
693
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※完結しました!(2024.5.11)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる