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キャサリンはラウズワースの屋敷にいる。
私室で報告を受け、体を怒りに震わせていた。
「本当に、ネイサンは、そう言ったのね?」
「はい、姫様。彼は、あの娘に、きみを選ぶ、と言っておりました」
あの娘とは、格下の伯爵令嬢セラフィーナ・アルサリアのことだ。
ネイサンに、あの赤毛を口説き落とすように言ってはいる。
正妻選び当日に恥をかかせるためだった。
「自分が落とされて、どうするのよ」
キリキリと奥歯が軋む。
屈辱感に、キャサリンの腸は煮えくり返っている。
ネイサンの言葉を、わずかにでも信じたのが間違いだったのだ。
すべてを鵜呑みにはしていなかったが、彼のする選択について、キャサリンは疑っていなった。
自分を選ぶ、ということだけは。
異変を感じたのは、夜会の時。
ネイサンがセラフィーナに興味を示し始めた。
最初は口説くため、気を惹かれているフリをしていたとわかっている。
が、ダンスをする頃には、ネイサンの瞳に本気の「興味」が漂っていたのだ。
キャサリンは嫌な予感をいだいた。
ネイサンが、正妻選びまでの間、セラフィーナで「遊ぶ」のはかまわない。
最終的に自分を選びさえすれば、キャサリンの目的は達成される。
なんなら、婚姻後、セラフィーナを愛妾としてかかえることも許しただろう。
さりとて。
ネイサンは、キャサリンよりセラフィーナを選ぶと言い出していた。
口先だけとも考えられるが、嫌な予感を振りはらえずにいる。
万が一、ネイサンがセラフィーナを選ぶようなことがあれば、キャサリンはとんだ赤っ恥をかくのだ。
サロンでの逢瀬は、ほとんど周知の事実となっていた。
誰も口にはしないが、ネイサンとの関係は知られている。
周囲は、キャサリンが「捨てられた」と思うに違いない。
しかも、格下の伯爵令嬢に、かっ攫われるという「汚名」つき。
キャサリンにネイサンの思惑など知る由もない。
なぜ彼がセラフィーナに興味を示しているのかがわからず苛々している。
「アルサリアとの婚姻なんて、ネイサンには意味がないはずだわ」
ネイサンの思惑はわからないが、婚姻の目的は、はっきりしていた。
彼は、ウィリュアートン公爵家と並ぶ大派閥を作りたがっている。
キャサリンも似た思いをいだいているため、容易に想像がついた。
大派閥になれば、ほかの貴族たちを下に見ることができる。
少なくとも貴族相手に膝を屈して挨拶をする必要はなくなるのだ。
たとえウィリュアートンであろうと。
キャサリンにとっても、大いに魅力的な「結果」と言える。
そのためにこそ、ネイサンの正妃候補となる気になった。
本音では「候補」にされるなど、不本意極まりない。
ネイサンのほうから「どうか妻になってほしい」と跪くべきだと思っている。
それでも、選ばれるのは確実、との考えから、我慢していた。
「もし彼女を選ぶようであれば……」
キャサリンは、自分の前に跪いている女性に視線を向ける。
メイド服を身につけてはいるが、メイドではない。
「セラフィーナ・アルサリアを消してちょうだい、ナンシー」
「かしこまりました、姫様」
ナンシーは魔術師だった。
とはいえ、ナンシーは王宮には属しておらず、キャサリンが個人的にかかえている。
王宮もナンシーの存在には気づいていないはずだ。
そもそもロズウェルドの魔術師は、国王と契約し、魔力を与えられていた。
魔術師は、その魔力を使い、魔術を操っている。
が、例外もあった。
半端者。
王宮魔術師から、そう呼ばれている者たちだ。
通常、魔力顕現しても、国王と契約をしなければ、いずれ魔力は消える。
しかし、半端者は魔力が消えず、維持し続けていた。
そうした、どっちつかずの者という皮肉をこめて「半端者」と言われているのだ。
キャサリンは、なぜそのような者がいるのかまでは知らない。
たまたまメイドとして雇ったナンシーが、半端者だと気づいただけだった。
本来、半端者は異端者扱いされ、忌避される。
当然に、雇い入れる貴族などない。
半端者だとわかった時点で王宮に通達し、屋敷からは追い出す。
「頼んだわよ」
「姫様に恥をかかせる者を私も許してはおけません。どうかお任せください」
キャサリンは王宮に通達もせず、ナンシーを側に置くことにした。
魔術が使える者ならば、役に立つと考えたのだ。
実際、己を拾ってくれたことに恩を感じているらしく、ナンシーはキャサリンの言いなりになっている。
ネイサンがセラフィーナを夕食に誘ったと知ったのも、ナンシーにネイサンの監視をさせていたからだ。
「あの娘、先に消してしまわれたほうが良くはないでしょうか?」
「そうも思うのだけれど……正妻候補が消えたとなると問題になるでしょう?」
「当日まで待ったほうが無難、ということですね」
「ええ。ネイサンが彼女を選んでからでも、まぁ、遅くはないわ」
キャサリンの思うところを、ナンシーも理解したようだ。
黙って、うなずいている。
ネイサンがセラフィーナを選んだ際の筋書きは決まっていた。
重責に耐えかねての自死。
アルサリア伯爵に、貴族としても父親としても、大きな痛手を負わせられる。
そして、ネイサンは、一生、キャサリンに頭が上がらない「夫」となるのだ。
セラフィーナに死なれてしまっては、自分に頼み込むよりほかないのだから。
(案外、そのほうがいいかもしれないわね。いっとき恥をかいたとしても、先々を見据えれば価値はあるもの)
婚姻後に、ネイサンの手綱を取れるのは都合が良かった。
自分はどれだけ我儘をしようと、ネイサンには許さない。
そうやって縛っておけば、2度と恥をかかされることはないだろう。
今後の利益を考えると、当日の恥など、本当に些細に思えてくる。
もちろんネイサンが予定通りの行動を取るなら、それでもかまわない。
いずれにせよ、自分に不利益はないのだ。
さっきまでの苛立ちはおさまっていた。
悩んで損をした気分にすらなっている。
「ナンシー、紅茶を淹れて」
「かしこまりました」
ナンシーはメイドではないが、キャサリンが望めば、なんでもした。
すぐに湯気のたった紅茶が差し出される。
こうしたところも便利だ。
魔術なら待たずに紅茶が飲める。
「あなたは、本当に頼りになるわね」
キャサリンは、ナンシーに、貴族的な微笑みを浮かべてみせた。
私室で報告を受け、体を怒りに震わせていた。
「本当に、ネイサンは、そう言ったのね?」
「はい、姫様。彼は、あの娘に、きみを選ぶ、と言っておりました」
あの娘とは、格下の伯爵令嬢セラフィーナ・アルサリアのことだ。
ネイサンに、あの赤毛を口説き落とすように言ってはいる。
正妻選び当日に恥をかかせるためだった。
「自分が落とされて、どうするのよ」
キリキリと奥歯が軋む。
屈辱感に、キャサリンの腸は煮えくり返っている。
ネイサンの言葉を、わずかにでも信じたのが間違いだったのだ。
すべてを鵜呑みにはしていなかったが、彼のする選択について、キャサリンは疑っていなった。
自分を選ぶ、ということだけは。
異変を感じたのは、夜会の時。
ネイサンがセラフィーナに興味を示し始めた。
最初は口説くため、気を惹かれているフリをしていたとわかっている。
が、ダンスをする頃には、ネイサンの瞳に本気の「興味」が漂っていたのだ。
キャサリンは嫌な予感をいだいた。
ネイサンが、正妻選びまでの間、セラフィーナで「遊ぶ」のはかまわない。
最終的に自分を選びさえすれば、キャサリンの目的は達成される。
なんなら、婚姻後、セラフィーナを愛妾としてかかえることも許しただろう。
さりとて。
ネイサンは、キャサリンよりセラフィーナを選ぶと言い出していた。
口先だけとも考えられるが、嫌な予感を振りはらえずにいる。
万が一、ネイサンがセラフィーナを選ぶようなことがあれば、キャサリンはとんだ赤っ恥をかくのだ。
サロンでの逢瀬は、ほとんど周知の事実となっていた。
誰も口にはしないが、ネイサンとの関係は知られている。
周囲は、キャサリンが「捨てられた」と思うに違いない。
しかも、格下の伯爵令嬢に、かっ攫われるという「汚名」つき。
キャサリンにネイサンの思惑など知る由もない。
なぜ彼がセラフィーナに興味を示しているのかがわからず苛々している。
「アルサリアとの婚姻なんて、ネイサンには意味がないはずだわ」
ネイサンの思惑はわからないが、婚姻の目的は、はっきりしていた。
彼は、ウィリュアートン公爵家と並ぶ大派閥を作りたがっている。
キャサリンも似た思いをいだいているため、容易に想像がついた。
大派閥になれば、ほかの貴族たちを下に見ることができる。
少なくとも貴族相手に膝を屈して挨拶をする必要はなくなるのだ。
たとえウィリュアートンであろうと。
キャサリンにとっても、大いに魅力的な「結果」と言える。
そのためにこそ、ネイサンの正妃候補となる気になった。
本音では「候補」にされるなど、不本意極まりない。
ネイサンのほうから「どうか妻になってほしい」と跪くべきだと思っている。
それでも、選ばれるのは確実、との考えから、我慢していた。
「もし彼女を選ぶようであれば……」
キャサリンは、自分の前に跪いている女性に視線を向ける。
メイド服を身につけてはいるが、メイドではない。
「セラフィーナ・アルサリアを消してちょうだい、ナンシー」
「かしこまりました、姫様」
ナンシーは魔術師だった。
とはいえ、ナンシーは王宮には属しておらず、キャサリンが個人的にかかえている。
王宮もナンシーの存在には気づいていないはずだ。
そもそもロズウェルドの魔術師は、国王と契約し、魔力を与えられていた。
魔術師は、その魔力を使い、魔術を操っている。
が、例外もあった。
半端者。
王宮魔術師から、そう呼ばれている者たちだ。
通常、魔力顕現しても、国王と契約をしなければ、いずれ魔力は消える。
しかし、半端者は魔力が消えず、維持し続けていた。
そうした、どっちつかずの者という皮肉をこめて「半端者」と言われているのだ。
キャサリンは、なぜそのような者がいるのかまでは知らない。
たまたまメイドとして雇ったナンシーが、半端者だと気づいただけだった。
本来、半端者は異端者扱いされ、忌避される。
当然に、雇い入れる貴族などない。
半端者だとわかった時点で王宮に通達し、屋敷からは追い出す。
「頼んだわよ」
「姫様に恥をかかせる者を私も許してはおけません。どうかお任せください」
キャサリンは王宮に通達もせず、ナンシーを側に置くことにした。
魔術が使える者ならば、役に立つと考えたのだ。
実際、己を拾ってくれたことに恩を感じているらしく、ナンシーはキャサリンの言いなりになっている。
ネイサンがセラフィーナを夕食に誘ったと知ったのも、ナンシーにネイサンの監視をさせていたからだ。
「あの娘、先に消してしまわれたほうが良くはないでしょうか?」
「そうも思うのだけれど……正妻候補が消えたとなると問題になるでしょう?」
「当日まで待ったほうが無難、ということですね」
「ええ。ネイサンが彼女を選んでからでも、まぁ、遅くはないわ」
キャサリンの思うところを、ナンシーも理解したようだ。
黙って、うなずいている。
ネイサンがセラフィーナを選んだ際の筋書きは決まっていた。
重責に耐えかねての自死。
アルサリア伯爵に、貴族としても父親としても、大きな痛手を負わせられる。
そして、ネイサンは、一生、キャサリンに頭が上がらない「夫」となるのだ。
セラフィーナに死なれてしまっては、自分に頼み込むよりほかないのだから。
(案外、そのほうがいいかもしれないわね。いっとき恥をかいたとしても、先々を見据えれば価値はあるもの)
婚姻後に、ネイサンの手綱を取れるのは都合が良かった。
自分はどれだけ我儘をしようと、ネイサンには許さない。
そうやって縛っておけば、2度と恥をかかされることはないだろう。
今後の利益を考えると、当日の恥など、本当に些細に思えてくる。
もちろんネイサンが予定通りの行動を取るなら、それでもかまわない。
いずれにせよ、自分に不利益はないのだ。
さっきまでの苛立ちはおさまっていた。
悩んで損をした気分にすらなっている。
「ナンシー、紅茶を淹れて」
「かしこまりました」
ナンシーはメイドではないが、キャサリンが望めば、なんでもした。
すぐに湯気のたった紅茶が差し出される。
こうしたところも便利だ。
魔術なら待たずに紅茶が飲める。
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