2度目も、きみと恋をする

たつみ

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30.真実の解釈

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 久しぶりにクリニックの入るビルを見上げ、ほっと息を吐き出す。感慨深さから出たものだが、何度目かとなる、自分の日常に戻ってこられたのだという実感を噛み締めていた。
 和彦がいない間に済ませたという改装部分を、クリニックの再開前に自分の目で確認しておきたかったのだ。定期的に機器のメンテナンスや、清掃業者も入れていたということで、ずいぶん気を配っていたもらっていたようだ。いつ戻ってくるかどうかわからない和彦を待ちながら、クリニックを維持するのは、賢吾にとってずいぶん負担だっただろう。
 室内に足を踏み入れると、電気をつけてざっと見て回る。一番気になっていた仮眠室にも入ってみたが、ドアと窓ガラスが明らかに厚みが増しており、鍵も厳重になっているが、変化はそれぐらいだともいえ、ひとまず安心した。もっとも、見えないところで防犯システムのレベルを上げていたとしても、和彦にはわからないのだが。
 なんとなくベッドの下を覗き込むと、見覚えのないゴルフクラブが転がっていた。ずいぶん前に千尋とゴルフレッスンを受けに行こうと話に出ていたが、慌ただしさからすっかり流れてしまった。改めて誘うつもりなのだろうかと、首を捻る。
 非常階段に通じるドアも同様に頑丈なものになっていたが、他人から見て奇異に映るほどではない。あくまでここは、どこにでもある美容外科クリニックだ。
 清掃が行き届いているのはもちろんのこと、受付カウンターなどに飾られていた小物もさりげなく季節に合わせたものとなっている。
「ぼくの出番はなしだなー……」
 特に注文をつけたいこともなく、和彦は待合室に戻ってソファに腰掛け天井を仰ぎ見る。組員を駐車場に待たせているため、あまりのんびりもできないのだが、クリニックを再開したときのことをあれこれと考えていると、スマートフォンが鳴った。
『――子犬にじゃれつかれたそうだな』
 開口一番の賢吾の言葉に、なんのことかと眉をひそめたあと、顔を綻ばせる。仕事熱心な組員は、和彦が車を降りてすぐに賢吾に連絡を取ったようだ。
「あんたにかかると、若い子はみんな子犬なんだろうな」
『子犬は子犬でも、闘犬として育つか、猟犬として育つかの違いはあるがな。うちの千尋ですら、見てくれは可愛いが愛玩犬じゃないからな。お前ならよくわかってると思うが』
「……親バカ」
 電話越しに聞こえてきた低い笑い声にゾクリとする。
『クリニックで気になるところは? 今ならまだ、手を加えるにしても再開までには間に合うはずだ』
「いや、これで注文をつけたらバチが当たる。細かいところまで気にかけてくれたみたいで、感謝してる」
『だったらあとは、スタッフの補充だけだな』
 そちらも長嶺組に任せておくだけだ。
 いよいよクリニックの再開が見えてきて、また忙しい日々が始まることに、重圧と同じぐらい高揚感を覚える。美容外科医として立ち働く自分が、和彦は嫌いではないのだ。医者となるよう使命づけられた経緯を知ったあとでも。
「休んでいた分、バリバリ稼がないと」
『仕事にのめり込み過ぎて、俺たちをほったらかしにされるのも困るんだが』
「何、言ってるんだっ……」
 いまさら賢吾の軽口に動揺して、反射的にソファから立ち上がる。急に暑くなり、わざわざ空調を入れるまでもないので、通りに面した窓を開ける。
 見下ろすと、いつもは車で待機している組員が、通りに立って慎重に辺りを見渡している。
「――……ぼくが動くと、周りがピリピリするな」
『お前のせいじゃなく、お前を口実にして動きたがる連中がいるということだ。好き勝手やらせて、高みの見物を決め込んだらどうだ』
「ぼくの神経を舐めないでほしいな。普通の人間より柔なつもりだ」
 賢吾は意味ありげに、ふっと短く息を吐いた。
『今日、総本部で会った二人は、前からの顔見知りなんだろう。一人は、三田村がたまに面倒見てると話していたが』
「どちらも千尋とほぼ歳は変わらないはずだ。三田村が気にかけている子は、加藤というんだ。見た目は強面だけど、言われたことは一生懸命やるタイプかな。まあ、三田村がよく知ってるから、気になるなら聞いてくれ。もう一人は……生意気。あと多分、ぼくは嫌われてる。小野寺というんだけど。今時の遊んでる大学生風」
『南郷がお前につかせたんなら、見た目通りのガキじゃねーということか』
「どういう形で護衛につくのかは、あんたのほうで総和会と相談してくれ。ものすごくありがた迷惑だけど、断るわけにもいかないんだろ」
『適当にじゃれつかせておけ。千尋にバレたら、キャンキャンとうるさいかもしれないが』
 それはそれで面倒だと、和彦は顔をしかめる。南郷が後見人になった以上、総和会が日常生活にさらに関わってくるというなら、許容できる範囲を、男たちを使ってすり合わせていくしかない。
『――総和会を甘く見るなよ』
 突然声音を変え、賢吾が囁いてくる。ざわりと肌が粟立った。
「えっ……」
『オヤジは、伊勢崎組を警戒している。組長である伊勢崎龍造は、北辰連合会というでかい組織で顧問にも就いてる。そんな重職についてる人物が、組員数人を引き連れてこちらに出張ってきているんだ。新しい商売を始めるとか秋慈には言ったらしいが、本当のところはわからない。面と向かって目的を問えれば楽だが、そういうわけにもいかない。で、伊勢崎組の連中が、うちの大事な〈オンナ〉をつけ回してるとなりゃ――』
「堂々と捕まえられるわけだな。ぼくは餌か」
『お前が若造二人を気にかけるのをいいことに、ちゃっかり別動隊が離れた位置で、網を張っているかもな』
 怪しい風体の男たちをぞろぞろと引き連れて歩く自分の姿を想像して、和彦はうんざりとして呟く。
「コントか」
『尾行の件から感じるのは、伊勢崎組からお前に対して、敵意も害意も乏しいということだ。だからこそ、薄気味悪い。できれば俺は、直接は手を出したくない。総和会が進んで厄介事を引き受けるというなら、ありがたく押し付ける』
「……ぼくも、勝手に片付いてくれるなら、それで……」
 そうは言っても、伊勢崎組や伊勢崎龍造は忌避したい存在であっても、彼の息子について考えるときは、胸が妖しくざわつくのだ。尾行については、和彦が〈変な虫〉扱いされ、息子に近づくなと牽制されているという可能性もありうる。口が裂けても賢吾には言えないが。
 すべて終わったことだと自分に言い聞かせながら、窓を閉める。用は済んだので、再び施錠してあとは帰宅するだけだ。
「あっ、そういえば――」
『どうした?』
「仮眠室のベッドの下に、ゴルフクラブがあったけど、あれ、なんだ?」
『野球バットのほうがよかったか? お前が振り回しやすそうな重さを選んだつもりだ。万が一の準備というやつだ。使わないに越したことはないが、いざとなったときに武器が必要だろ。スタンガンやナイフだと、お前自身が怪我する危険があるからな』
 絶句したあと、和彦は大きくため息をつく。過保護すぎると指摘したかったが、たった今、尾行だ護衛だと話したばかりで説得力もない。ありがたく賢吾と長嶺組の心遣いを受け取っておくことにした。




 半月近く前に恋人にめった刺しにされたホストの青年は、傷が塞がる間、禁酒と安静を忠実に実行していたらしく、いくらか毒気が抜けた顔つきとなっていた。
 そろそろ抜糸の頃合いかと気にかけていると、タイミングよく総和会から連絡が入り、高層マンションの一室に連れてこられたのだ。青年が暮らしている部屋なのかもしれないが、治療さえできるならどこでもいい。
 和彦が傷口を一つ一つ確認していると、間がもたないと感じたのか青年はホストを辞めると語り始めた。水商売から足を洗うのかと思いきや、話を聞き続けていると、なんと自分でボーイズバーを始めるのだという。ホストクラブとは違うのかという和彦の問いかけに、ホストの青年――元ホストの青年は、丁寧に違いを教えてくれる。あくまでバーであり、カウンター越しでの接客となるうえに、価格帯もホストクラブに比べて低めな設定だそうだ。
 男性客も歓迎なので、オープンしたら先生も遊びに来てくださいと言われ、逞しさに和彦は笑ってしまった。しかも店の資金は、彼をめった刺しにした恋人が出すという。つまり、組のヒモつきだ。語る本人に悲愴感はないため、嫌々というわけではないようだ。
 偉そうに語れる立場でもない和彦は、さっそく抜糸に取り掛かる。それが終わると、傷口が開かないようケアテープを貼っていき、このとき、自宅でもできるようやり方を説明しておく。まだ当分禁酒を続けるよう告げると、悲しげな顔で頷かれた。
「思いがけないところで、知見を得てしまった……」
 治療を終え、エレベーターで下りながら小声で洩らす。今度賢吾に、ホストクラブとボーイズバーの違いを話してやろうと思ったが、水商売も手広く手掛けている組なので、案外もう経営しているかもしれないと考え直す。
 一仕事終えた和彦は、まだ昼食という気分ではないため、時間つぶしのために書店に立ち寄る。一階に並ぶ新刊をざっと確認してから、エスカレーターで階を上がりながら、背後を振り返る。護衛の組員がついてきているのはいつものことで、気になるのはさらにその後ろだ。今日は総和会から回ってきた仕事ではあるものの、加藤と小野寺の姿は見えない。
 総和会と長嶺組の間でどんな取り決めになったのか、またはまだ相談の最中なのか、何も知らされていないのだ。和彦の視界に入らないところで護衛――というより監視がついていたとしても驚きはないが。
 野鳥に関する本を眺めていると、スマートフォンがメッセージの着信を知らせて短く鳴る。何げなく表示を確認して、次の瞬間和彦は、本を置いて売り場を離れた。文章でやり取りするのがもどかしくて、メッセージを送ってきた相手に電話をかける。
 手短に会話を交わし、電話を切ると即座に組員のもとに歩み寄る。本を眺めている場合ではなくなって車に戻ると、次に向かうのはデパートだ。昼時ということもあって混雑しており、並んでいる花見弁当を横目に、手の込んだ総菜を何品か買い込む。さらにアルコール類売り場では、自分のワインの他に缶ビールも選ぶ。
 慌ただしく買い物を終えて向かったのは――。

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みんなの感想(5件)

cana
2023.06.18 cana

 読み終わって、やっとタイトルに納得。笑
 一度目はミイラ取りがミイラになって、思い通りに成らない恋に相手を滅ぼし、二度目には自分が幻滅された要因を恋敵に被せてさえ選ばれないなんて、王子として生まれ育ったユリウスには耐えられなかっただろうなと。不憫です。挫折は人を成長させるから、描かれていない今後に期待しましょう。一度目も二度目にも目的とした民を守るということで納得してくれると良いのですがね。
 恋敵と言う言葉は有るけど、愛敵は無いのだなと改めて思いました。誰かより好かれるというのは自分本意で、賞味期限がある。3人いないと起こらない。誰かを愛すというのは2人で完結する。恋は愛には敵わないのかも。
 私は自分では嫌だけど、儘ならない恋は好きです。相手に嫌われてしまうかもしれなくても、色々とせずには居られない心の揺れが堪らなく好き。迷わず、揺れない心は信仰にもにも似て、憧れますが、怖じ気づきます。だから私はユリウス派。笑

たつみ
2023.06.19 たつみ

ご感想を頂きまして、ありがとうございます。
タイトルが究極のネタバレではありますが、納得していただけるかは別の問題ですので、今回、ご納得していただけたとのこと、非常に喜んでおります!
1度目のことがありますから、いろんな後悔や未練もあったのではないかと思います。ああいうことをしてしまうほど本気ではあったということでもありますし。
2度目は「こうしよう」と時間をかけて対策していたはずですが、感情はままならないものということで。
ですが、canaさまの仰るように挫折して、自分本来の目的に邁進すれば、良い方向に進める可能性はあるハズ…と思っております 笑
愛敵、素晴らしい言葉ですね! 恋の間はまだ不確定な関係性で横槍を入れる隙がありそうですが「愛し合う2人」までいくと横槍をいれる隙はなさそうです。と、同時に愛敵が存在するとなると、「愛し合う2人」を引き離してでも…という病み系のキャラクターが思い浮かんで、すごく怖い気がしました 笑
ユリウス派はいないかも、と思っておりましたので、なんだかとても嬉しかったです!
このたびも、足をお運び頂き、感謝しております♪

解除
Jasmin
2023.05.30 Jasmin

ありがとうございます。
Twitter覗いて来ました!
魅力的な後頭部とかごちそう様でした!
了解&納得でございます。全然違うじゃん!これからはこの色で動画も動かしますね。
これ。最初に目で見ていたら元ジークには思い至らなかったなと思いました。うん。切り離そう。
そして。元Gって元ジークでしょうか?
うーん。作者様がそうおっしゃるのなら…って引き下がりそうでしょう?引き下がりません!ぜひともZでお願いいたします!
文字と音と色、匂いと温度とテクスチャーなんかが密接なんですよ。もうジークはZでなくちゃ。
それにそれに。それこそ黒こそ最強!とでも言わんばかりの黒曜ボディのアイツ!あり得ない身体能力を誇り、真夜中の天敵的なアイツ!私がこの世で唯一、苦手としているアイツ!あゝもうなんていうか。ぜひぜひZでお願いいたします〜ジーク・ジオン!←?

実は正直に白状してしまうとですね。私の中で、まだタイトルが落ちるべきところに落ちておりません。正解ともいうべき作者様の意図はあるでしょうがそれとは別に。自分がどう思うかは私には大事なことで。自分はこう思う!があって初めて、他人の意見も素直に聞けるというか。自分の立ち位置とでも言いましょうか。
このタイトル…台詞になっていますが、私には1周めからユリウスの声で聞こえて来ます。1周め、読み終えて、なんだよ、決意表明か!希望的観測か!と慌てました。私の中には、1回めだって恋だったのか!ちゅーだってまだだったんだろ!っていうツッコミがありますし。同時に、一切語られていない1回めの二人のストーリー…バーバラとユリウスが毎晩ちまちま覗いてた恋物語…それが見えそうで見えない。何かが引っかかってうまく作動できてない古いおもちゃになった気分です。本当ならてちてち歩いてお茶も運べるのに!みたいな。ユリウスがきっとのめり込んだほどのラブストーリーなのに、それが見られないなんて。あともう少しなのよ!もう少しで見えるのよ!みたいな。それで、先ほど5周めに入ったところです。他に方法を知らないから読んでる訳で。読めばわかる保証はなく。結局、人は自分が受け取れるものだけを受け取る。わからないのは私の中に何かが足りない。足りないことは悪いことではないのかも知れない。でも、自分がわかりたいと思ったのならそれはなんとしてでもわからねば!←今ココ。ああ。神様!(ため息)

たつみ
2023.05.31 たつみ

ご感想を頂き、ありがとうございます。
絶対に、この色ということではなく、違和感がなくイメージし易ければ、と思っております。そういえば、Zにしました 笑 思えば、なぜ記号的な感じで書こうとしたのか不明なのですが、基本のSにするか、音のGにするかで迷ったという、これも我ながらナゾでした…。Sは分かりにくいと思いパスしたのですが、Zeak,Zeke,ZeekとZが良かったですね。音的にズィなので音として、まんまが分かり易いかなと、おそらくあの時は判断したとは思うんですが。ちなみにヘボン式ローマ字のJIだとJなんですが、これは使えないので即却下でした 笑 Prosit

自分のつけるタイトルは、基本、究極のネタバレなので、こういう結果になるんだろうなと思いつつ、お読み頂いていることも多々あろうかと思っております。今回は、読み手のかたそれぞれの「解釈」が正解とでも申しましょうか。言ってしまえば「3人とも」にあてはまるという。
またしても他人事のようになってしまい申し訳ないところではありますが…1度目のユリウスとの関係についてバーバラが考えないようにしているので具体的な描写がなかったりします。ノヴァドも当然に語りませんし、ユリウスは…語るに語れないわけです 苦笑 なので、バーバラとユリウスの恋物語の具体的な部分はないのですが、気にかけて頂いていたツキン、2度の騙されかた、ノヴァドの語った1度目のバーバラの環境などが敷石になっております。恋物語的には、騙されかたがポイントかもしれません。ちょこっとノヴァドも考えを語っていますし。仰っておられる「ユリウスがきっとのめり込んだほど」というところは、バーバラの生活環境が大きく影響していると思います。ノヴァドが謝るのも当然で、結構、酷いんじゃないかと 苦笑
未消化の部分が少しでも解消されるとなによりなのですが、そのために…と思うと申し訳ないような気持ちもあったり。ですが、結末はあっても、想像において絶対的な正解というのはないと思っております。
ユリウスが、存外、気になるキャラクターになっているということであれば、嬉しいです 笑

解除
Jasmin
2023.05.29 Jasmin

もう一度「最初からユリウスはめっちゃバーバラが好き。はなからバーバラ獲りに来ているぞ」と丁寧に意識して読んだらめっちゃ楽しかったです。若干、他人の不幸は蜜の味に近いユリウスどんまい気分がほろ苦かったですが。そうか。作者様はこんな風にずいぶんにまにましながら書かれていたのだなと思い至り、またしてもしてやられた感。おのれ!魔人め!
これまでは全力で警戒し、嘘くさい!で片付けてしまっていたユリウスの魅力も味わえました。おばさんぽいの形容は作者様的には遺憾だったかもですが「あーら。お隣の奥さま。おほほほほほ!」のおばさんぽさではなく、必ず実を取る体質。アイスはとっても欲しいけど!1番の希望が通らないなら「アイスなんか要らない!」と拗ねてしまい、希望が通らないことと同じくらい架空の対価であったアイスを手にできない悲しみで涙をこぼしてしまう、もはや現在、自分が何を理由に泣いているのかすらわからなくなっている男の子とは対極の、アイスも手に入れ、尚且つ、自分の希望も最大限通す方法があるのではと模索する、将来の魔な成長を確実に秘めた女の子的おばさんぽさです。たとえ最終的にはアイスしか手にできなかったとしても、とりあえずアイスは手に入れた!と喜べるタチですね。小動物的ではないですが、リアルの成人男性でも、こういう拗ねて泣く男の子を心中深く持ち続けている人は存外に多く、それを男性ならではの魅力と感じる私の好みは結局、ノヴァドなんですけれども、ユリウスのこの貪欲とも言える性質ゆえの繊細さは実は見ていて好ましいものがありました。貪欲だからこそ頻繁に生じてしまう小さな一喜一憂に都度耐え、自分で自分を励まし、諦めないことでギリ泣かずに頑張り続けられている姿とでも言うのかな。いじらしいですね。いっそ泣かせてみたくなったりもします。←おい!
小さく瞬間的に生じる心の痛みをツキンと表現されていたことが1周めから気になっておりました。チクッと表現されることが多く、他にはズキッでしょうか。実は3周めで、ツキンが最適解であったと得心し、今回もツキンを味わいながら読みました。感動のあまり、すでに私の字引きにも登録済みですが…これは私に使う機会があるのかしら?謎
そしてそして。ブルーグレーではなくアッシュブルー!とお叱り受けるかとヒヤヒヤしていましたが恩寵賜り感謝しております。黒が最強でもグレーこそが正義。笑

たつみ
2023.05.30 たつみ

ご感想を頂きまして、ありがとうございます。
繰り返しお読み頂き、別の楽しみかたをして頂けたこと、とても嬉しいです! 自分の場合、女性主人公の恋愛ものでは、複数の男性が登場したりして、誰とエンドを飾るのか不明だと、途中でドキドキの中にイライラが混ざったりすることがあります。まさかそっちを選ぶのか?!というような 笑 なので、自分が安心できる結末だと、恋敵に優しく(笑)なれたりするのです。(にまにま)
おばさんぽい、というのは、Jasmin様が仰っていた感じの雰囲気をイメージしていたので、遺憾とは思いませんでした。どうしても、というものは握って離さない、みたいな。いくつか掴みたいものはあっても、その中で優先順位をつけていて、1番を掴めればまずは肯!とできる性質。ですが、ギリギリまで両方を掴もうとする諦めない性質でもあるという 笑 悪くはないと思いつつ、どこか「1点に集中しなさい」と思うところもあったり。ユリウスの場合、1度目で「欲をかくと碌なことがない」と学んでいたのではないかと。それを見続けていたというのは、存外、ティトーヴァより悲惨かも、と思いながら書いていました 苦笑
ツキンという描写、気にかけて頂いていて、嬉しくもあり、奇妙に悔しくもあり 笑 伏線や布石はエンドに向けて書いている部分ではありますし、読み手のかたを誘導するものでもあります。が、いかにそれを隠すかというか、意識外に置いておいてもらい、のちに「あれは、こういうことか」と思って頂けるかというものだと思っていたりします。とくに布石は、気づいて頂いても頂けなくてもいい部分で、ぽつぽつと置き石している感じです。「あれ?そんなところあったっけ?」くらいな印象があれば十分と言いましょうか。気づかれたかただけの、ちょっとしたお楽しみ的な 笑 なので、最初から気づかれていたとは、隠しかたが甘かったかと、ですが、それだけ丁寧にお読み頂いていることが、やはりとても嬉しいことだなぁと感じる次第です。ありがとうございます!
髪色については、お気になさらず 笑 実際、似ていますし、絶対にこうでなければいけないということはないと思うんですよね。活字はイメージの世界ですので。(もし違いが気になるということであれば、こちらのプロフと連携している当方ツイをご覧くださいませ)
いつもキャラクターを読み込んで頂き、感謝です!

解除

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