2度目も、きみと恋をする

たつみ

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23.病床の親和

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 細い指先の先まで、締め付けない程度の強さで布を巻きつける。白い布にはすぐさま内側から濃緑が滲み、斑になった。
「……はあ…」
 日が暮れ、ようやく一連の作業を終えた彼は、気の抜けた呼気を吐いて床に座り込んだ。その目前には、ぐったりと四肢を投げ出している小さな体がある。頭から足の先までところどころ濃緑の滲む布が巻きつけてあり、舶来物に詳しい人物などが見ようものなら、木乃伊だと騒いだろうと思えるほどだった。
 だがしかし、それでも拾った当初よりは相当に見られるようになった。少なくとも人間だとわかるようになったし、呼吸も大分整っている。呼吸の妨げにならないようにと巻かれた布の隙間から静かに息を吐き出し、また静かに吸い込んでいる小さな隙間に瓢箪から汲んだ水を雫一粒ほどずつ与え、十滴ほど飲ませたあと、華奢な身体に静かに薄い布団をかけてやる。やはり傷に響き、びくりと斑に濃緑な木乃伊は震えたが、それも一瞬のことだった。
 やがてもせずに微かな寝息が聞こえる。乱れも殆どなく、途切れそうな気配もない。ほうと息を吐いて安堵した彼は、座り込んだまま、そろりと視線を木乃伊の下腹部に向け、それからなにかを振り払うように首を振った。
 脳裏には、酷い火傷に覆われながらも確認できた、木乃伊の秘処が浮かんでしまう。疚しい下心があったわけでなく、純粋に薬を塗りつけるためだけに触れてしまっただけだ。しかしそれすら彼には溜息を吐いてしまうほどに緊張してしまうことだった。
 焼け爛れ、元の顔かたちはもちろん性別すら危うかった布の塊は、驚いたことに股の間に二つの性があった。辛うじて火傷が軽かった男性の証にもと薬液を塗りたくって布を当てていると、ふと触れてしまった指で気付いたのだ。守られるようにひっそりとあった花莟は稚く、焦土に咲いた花のようだった。幸いにも火傷はない様子だったが、万が一があってはと薬液を布ですくって塗り、そのまま布を当ててある。それ以上は、触れることもなかった。
「…ぅ、ァ…」
 ふと、木乃伊ミイラが声をあげた。見ると、僅かに腕が動いて、元あった場所からずれていた。人間は昏睡しているときは動かないが、睡眠時には無意識に動くように出来ている。腕が動いたということは昏倒ではなく、少なくとも眠りに浸っていることだ。それならば、ひとまずは安心できる。
 包帯の隙間からぼさぼさと突き出ている、燃えずに残った少量の髪の先に少しだけ触れて、彼はそれからしばらく、木乃伊の焼けた口から零れる寝息を聞いていた。


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