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必然の再会 3
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結論から言うと、広い。
その、ひと言だった。
案内された自分の部屋の広さに、アシュリーは驚いている。
公爵と会ってから、驚くことばかりだ。
「こちらは、私室となります。あちらが衣装室、そちらが寝室。それと、あの奥が書斎にございます。浴室は、その扉の向こうにあります」
私室と言われた室内には、いくつもの扉があった。
案内がし易いようにだろう、浴室と言われた扉以外、今は開け放たれている。
向かって左が衣装室、反対側に寝室、その隣が書斎。
浴室は、衣装室の手前、私室の扉近くにあるようだ。
「お部屋の中に浴室もあるなんて……本当に、私が使ってもいいのでしょうか?」
あまりの広さと豪華さに、気後れがする。
子爵家での部屋とは、あまりに違い過ぎていた。
ここは、子爵家の小ホール並みの広さがあるのだ。
しかも、自分専用の浴室が室内にあるなんて信じられない。
「姫様は、ご婚約者との立場にございます。引け目に感じられることなど、なにもございません」
執事のジョバンニが言う。
公爵とは別の種類の穏やかさが、口調に漂っていた。
宥めるような、安心させるような物言いが、なんだか心地いい。
こんなふうに語りかけられると、うっかり心の裡を明かしてしまいそうだ。
(まだ会ったばかりの人に、あれこれ言うのは失礼だわ。気をつけなくちゃ……)
公爵もそうだが、ジョバンニもハインリヒのように豹変するとは思えなかった。
だが、役目柄、ジョバンニは、嫌なことでも嫌とは言えない。
気づかず、我慢させてしまうことになる可能性があるのだ。
実際、公爵もジョバンニも、アシュリーからすれば「大人」なのだし。
(子供だからしかたないって思われないように、頑張らないと……)
まだ少しも実感がないが、自分は、どうやら公爵の婚約者らしい。
なにかおかしな振る舞いをすれば、公爵に恥をかかせることになる。
子供だからという理由で許してもらえるとしても、そういう事態になることは、できるだけ避けたかった。
「あちらに姫様の持ち物を置いております。姫様がお疲れでなければ、明日にでも荷ほどきをいたしましょう」
「あれは……私の部屋から?」
「旦那様が、お帰りの際、一緒に持ち戻られました」
セシエヴィル子爵家にあったアシュリーの持ち物が、部屋の端に置かれている。
一緒に持ち戻ったと言うが、公爵に、そんな様子は微塵もなかった。
きっと魔術を使ったに違いない。
ほとんど魔術を見たことのないアシュリーにとっては、やはり驚きだ。
「ジェレミー様は、本当にすごい魔術師なのですね」
「それは間違いございませんが……」
ジョバンニが、ほんの少し笑う。
少し吊り気味の目が細められ、ひどく印象が変わっていた。
きつくて厳しそうな顔立ちが、ふんわりとやわらかくなったのだ。
「物の移動は人の移動より簡単ですから、魔術師なら誰でもが使える魔術です」
アシュリーは、これまで魔術師を恐れてきた。
なぜか「良くない者」だと感じ、避けてきている。
けれど、ジョバンニの話を聞いていて、好奇心がわいていた。
自分が使えるようになれるわけではないが、もっと知りたくなっている。
「それなら、さっきの柱を出すほうが難しい魔術だったのでしょうか?」
「さようにございます。あれは点門と申しまして……」
「ジョバンニ、今夜は遅いので、お話は明日にしませんか?」
リビーに言われ、ジョバンニが口を閉じた。
アシュリーは、しまった、と思う。
自分が話を長引かせてしまったせいで、ジョバンニに迷惑をかけてしまった。
焦って、2人に頭を下げる。
「すみません。私が、よけいなことを聞いてしまいました」
「姫様っ?!」
リビーの焦ったような声が聞こえた。
アシュリーには同じ年頃の友達もおらず、勤め人たちとも親しくなかったため、距離感がわからずにいる。
だから、自分が悪かったのだと思い、素直に詫びているだけだった。
少なくとも、アシュリーは、ハインリヒの考えには賛同していない。
『使用人は使用人として扱わねぇと駄目だ。俺たちとは違うんだからな』
そう言って、ハインリヒは、よく勤め人に手を上げていたのだ。
見るたびに、嫌な気分になっていた。
それが自分のせいだと思うと、罪悪感から、彼らに近づけなくなってもいる。
とはいえ、ここにハインリヒはいない。
アシュリーに詫びさせたと咎められ、勤め人が殴られることもないのだ。
「頭を、お上げくざたい、姫様。リビーは、私の話が長くなるのを知っているので姫様の体調を心配しただけなのです」
「そ、そうです! 姫様が頭を下げられるなんて……っ……」
アシュリーは、そろっと頭を上げる。
リビーは焦った表情を浮かべており、また申し訳ないような気分になった。
だが、ここで詫びれば、なおさらリビーを戸惑わせるに違いない。
「それから、姫様。私どもに、そうした話されかたはなさらないでくださいませ。気楽に話していただくほうが、私どもも気負わずにすみますので」
「いきなり変えるのは難しいと思いますが、少しずつ慣れてくだされば、私たちも嬉しいのですよ、姫様」
アシュリーは、小さくうなずいた。
リビーの言うように、いきなりは難しいと感じたのだ。
この4年、誰とも踏み込んだつきあいをしたことがなかったので、どうしても、構えてしまうところがある。
「魔術の話は、また改めていたしましょう」
ジョバンニの言葉にも、うなずいておいた。
どういうふうに「長い話」になるのかはともかく、聞いてみたい気持ちは残っている。
ジョバンニが、リビーのほうに顔を向けた。
「では、あとは頼めるかな?」
「かしこまりました」
顔をアシュリーのほうに戻し、ジョバンニは軽く会釈をする。
物慣れた仕草に、品があると感じた。
子爵家の執事に品がなかったわけではないが、優雅さに欠けていた気がする。
ジョバンニの動きは優雅さもあり、つい見惚れそうになるのだ。
「私は、これで下がらせていただきます。ごゆっくり、お休みくださいませ」
「お、おやすみなさい」
精一杯「気軽な」調子で言うと、ジョバンニが、にっこりした。
やはり印象がパッと代わり、心臓が大きく跳ね上がる。
嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになっていた。
その笑顔を残し、ジョバンニが退室する。
ほう…と、軽く息をついた。
ジョバンニの仕草や笑顔に、アシュリーは、そわそわする。
どういうわけだか、甘えて抱き着きたいような気分になるので困ってしまう。
初めて会った人なのに、自分で自分の感情に戸惑っていた。
「言葉って、変えるのは難しいですよね」
リビーの言葉に、ハッとなる。
見れば、リビーが苦笑していた。
「私は、こちらに勤めて半年なのですが、彼を呼び捨てにすることに最初は抵抗と言いますか……呼びにくさがありました。倍以上も年上ですし、私より立場も上のかたですから」
「……わかります……」
「ですよね。ただ、この屋敷では、それが普通らしくて、みんな、彼をジョバンニと呼び捨てにします。歳も立場もおかまいなしなんですよ」
そう言えば、公爵も自ら「貴族らしくない貴族」だと言っていたのを思い出す。
貴族によって、それぞれ家風があるのは知っていた。
だとしても、ほかの貴族はともかく、ローエルハイドは「謎」だったのだ。
情報が少ないらしく、教育係の女性教師も、ほとんど知らないと話していた。
「私も慣れましたし、そのうち、姫様も慣れると思います」
その言葉に、気づかされる。
これから、まだ2年あるのだ。
今日は初日で、先は長い。
少しずつ慣れていくよう、自分も努力しようと、アシュリーは思った。
その、ひと言だった。
案内された自分の部屋の広さに、アシュリーは驚いている。
公爵と会ってから、驚くことばかりだ。
「こちらは、私室となります。あちらが衣装室、そちらが寝室。それと、あの奥が書斎にございます。浴室は、その扉の向こうにあります」
私室と言われた室内には、いくつもの扉があった。
案内がし易いようにだろう、浴室と言われた扉以外、今は開け放たれている。
向かって左が衣装室、反対側に寝室、その隣が書斎。
浴室は、衣装室の手前、私室の扉近くにあるようだ。
「お部屋の中に浴室もあるなんて……本当に、私が使ってもいいのでしょうか?」
あまりの広さと豪華さに、気後れがする。
子爵家での部屋とは、あまりに違い過ぎていた。
ここは、子爵家の小ホール並みの広さがあるのだ。
しかも、自分専用の浴室が室内にあるなんて信じられない。
「姫様は、ご婚約者との立場にございます。引け目に感じられることなど、なにもございません」
執事のジョバンニが言う。
公爵とは別の種類の穏やかさが、口調に漂っていた。
宥めるような、安心させるような物言いが、なんだか心地いい。
こんなふうに語りかけられると、うっかり心の裡を明かしてしまいそうだ。
(まだ会ったばかりの人に、あれこれ言うのは失礼だわ。気をつけなくちゃ……)
公爵もそうだが、ジョバンニもハインリヒのように豹変するとは思えなかった。
だが、役目柄、ジョバンニは、嫌なことでも嫌とは言えない。
気づかず、我慢させてしまうことになる可能性があるのだ。
実際、公爵もジョバンニも、アシュリーからすれば「大人」なのだし。
(子供だからしかたないって思われないように、頑張らないと……)
まだ少しも実感がないが、自分は、どうやら公爵の婚約者らしい。
なにかおかしな振る舞いをすれば、公爵に恥をかかせることになる。
子供だからという理由で許してもらえるとしても、そういう事態になることは、できるだけ避けたかった。
「あちらに姫様の持ち物を置いております。姫様がお疲れでなければ、明日にでも荷ほどきをいたしましょう」
「あれは……私の部屋から?」
「旦那様が、お帰りの際、一緒に持ち戻られました」
セシエヴィル子爵家にあったアシュリーの持ち物が、部屋の端に置かれている。
一緒に持ち戻ったと言うが、公爵に、そんな様子は微塵もなかった。
きっと魔術を使ったに違いない。
ほとんど魔術を見たことのないアシュリーにとっては、やはり驚きだ。
「ジェレミー様は、本当にすごい魔術師なのですね」
「それは間違いございませんが……」
ジョバンニが、ほんの少し笑う。
少し吊り気味の目が細められ、ひどく印象が変わっていた。
きつくて厳しそうな顔立ちが、ふんわりとやわらかくなったのだ。
「物の移動は人の移動より簡単ですから、魔術師なら誰でもが使える魔術です」
アシュリーは、これまで魔術師を恐れてきた。
なぜか「良くない者」だと感じ、避けてきている。
けれど、ジョバンニの話を聞いていて、好奇心がわいていた。
自分が使えるようになれるわけではないが、もっと知りたくなっている。
「それなら、さっきの柱を出すほうが難しい魔術だったのでしょうか?」
「さようにございます。あれは点門と申しまして……」
「ジョバンニ、今夜は遅いので、お話は明日にしませんか?」
リビーに言われ、ジョバンニが口を閉じた。
アシュリーは、しまった、と思う。
自分が話を長引かせてしまったせいで、ジョバンニに迷惑をかけてしまった。
焦って、2人に頭を下げる。
「すみません。私が、よけいなことを聞いてしまいました」
「姫様っ?!」
リビーの焦ったような声が聞こえた。
アシュリーには同じ年頃の友達もおらず、勤め人たちとも親しくなかったため、距離感がわからずにいる。
だから、自分が悪かったのだと思い、素直に詫びているだけだった。
少なくとも、アシュリーは、ハインリヒの考えには賛同していない。
『使用人は使用人として扱わねぇと駄目だ。俺たちとは違うんだからな』
そう言って、ハインリヒは、よく勤め人に手を上げていたのだ。
見るたびに、嫌な気分になっていた。
それが自分のせいだと思うと、罪悪感から、彼らに近づけなくなってもいる。
とはいえ、ここにハインリヒはいない。
アシュリーに詫びさせたと咎められ、勤め人が殴られることもないのだ。
「頭を、お上げくざたい、姫様。リビーは、私の話が長くなるのを知っているので姫様の体調を心配しただけなのです」
「そ、そうです! 姫様が頭を下げられるなんて……っ……」
アシュリーは、そろっと頭を上げる。
リビーは焦った表情を浮かべており、また申し訳ないような気分になった。
だが、ここで詫びれば、なおさらリビーを戸惑わせるに違いない。
「それから、姫様。私どもに、そうした話されかたはなさらないでくださいませ。気楽に話していただくほうが、私どもも気負わずにすみますので」
「いきなり変えるのは難しいと思いますが、少しずつ慣れてくだされば、私たちも嬉しいのですよ、姫様」
アシュリーは、小さくうなずいた。
リビーの言うように、いきなりは難しいと感じたのだ。
この4年、誰とも踏み込んだつきあいをしたことがなかったので、どうしても、構えてしまうところがある。
「魔術の話は、また改めていたしましょう」
ジョバンニの言葉にも、うなずいておいた。
どういうふうに「長い話」になるのかはともかく、聞いてみたい気持ちは残っている。
ジョバンニが、リビーのほうに顔を向けた。
「では、あとは頼めるかな?」
「かしこまりました」
顔をアシュリーのほうに戻し、ジョバンニは軽く会釈をする。
物慣れた仕草に、品があると感じた。
子爵家の執事に品がなかったわけではないが、優雅さに欠けていた気がする。
ジョバンニの動きは優雅さもあり、つい見惚れそうになるのだ。
「私は、これで下がらせていただきます。ごゆっくり、お休みくださいませ」
「お、おやすみなさい」
精一杯「気軽な」調子で言うと、ジョバンニが、にっこりした。
やはり印象がパッと代わり、心臓が大きく跳ね上がる。
嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになっていた。
その笑顔を残し、ジョバンニが退室する。
ほう…と、軽く息をついた。
ジョバンニの仕草や笑顔に、アシュリーは、そわそわする。
どういうわけだか、甘えて抱き着きたいような気分になるので困ってしまう。
初めて会った人なのに、自分で自分の感情に戸惑っていた。
「言葉って、変えるのは難しいですよね」
リビーの言葉に、ハッとなる。
見れば、リビーが苦笑していた。
「私は、こちらに勤めて半年なのですが、彼を呼び捨てにすることに最初は抵抗と言いますか……呼びにくさがありました。倍以上も年上ですし、私より立場も上のかたですから」
「……わかります……」
「ですよね。ただ、この屋敷では、それが普通らしくて、みんな、彼をジョバンニと呼び捨てにします。歳も立場もおかまいなしなんですよ」
そう言えば、公爵も自ら「貴族らしくない貴族」だと言っていたのを思い出す。
貴族によって、それぞれ家風があるのは知っていた。
だとしても、ほかの貴族はともかく、ローエルハイドは「謎」だったのだ。
情報が少ないらしく、教育係の女性教師も、ほとんど知らないと話していた。
「私も慣れましたし、そのうち、姫様も慣れると思います」
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