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2章
10.5話
しおりを挟む夜。
空が黒く潰され、月に照らされる住宅街に一切の新鮮さを感じない。僕である鬼達と巣食う山ならば、木々の隙間から照らされる月光に誰もが魅了される。しかし、この光景は何だ。人間によって造られた白い建物が並ぶだけで、月明かりの良さを表現しきれていないではないか。英知と謳っておいて、自然すら活かせないものなど無意味。
山も無い。自然の鳴き声も無い。ただ、害ある空気を排出する乗り物が音を立てて走り去っていく光景ばかりが視界入ってきて、非常に不愉快だ。
女は電柱の天辺にて胡坐をかきながら、ある家を眺めていた。
机に向かい、何かを書き込んでいる赤髪の少女。誰かの言葉に返事しているようで、時々、後ろを振り返っては再び、机に視線を戻る動作を繰り返している。
少女から複数の妖怪の気配が感じ、一体何者なのかと疑ってしまう。一見、唯の少女に見えるのだが、妖怪達を統率している存在なのかもしれない。
女は現時点では辿り着けない真実に苛立ちながら鼻を鳴らし、立ち上がる。
「必ず、還してもらうからね」
体を震わせ、体を擦る少女を尻目、その場から飛び去った。
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