100 / 100
第2章
第38話 餞別は?
しおりを挟む
渡した籠手を手にしたまま、ガル達は完全に固まってしまう。
ただの籠手に、何を驚くことがあるのだろうか?
「もしかして…籠手なんかの防具も、使わないのか?」
ガルは、顔を上げてこちらを見ると、何かを喋ろうと口を開いているようなのだが、パクパクと開け閉めするだけで声が出ていない。
よく耳をすませば、ミス?水?何か呟いているのが分かった?
「…ん?どうし…ミス?ミスってなん…」
「「ミスリーール!!!!」」
いきなり大声を出されて驚いた。
ガルは、そのまま籠手を抱え上げ、御者台から飛び降りてくるが、ギルは天を仰いで固まってしまった。
「つ、強き者よ!!これが何か分かっておるのか!?ミスリル製の装具だぞ!?」
今までの喋り方が嘘のように、まくしたてるように言葉を続けるガルに、驚くと同時に圧倒されてしまう。
2mを超える体躯で、しかも二足歩行の狼が口を開けて迫ってくるのは、流石に肝が冷える…
知らない相手だったら、反射的に攻撃してしまうぞ…?
「待て、落ち着…」
「ミスリル製だぞ!落ち着けるわけがなかろう!!」
ガルの体毛が興奮の為か全て逆立ち、更に体が大きく見える。
「強き者よ!いくらなんでもこれは受け取れぬ!!か、返すぞ!!」
ガルはそう言って、持っていた籠手をこちらに押しつけるように差し出してくる。
実際には、当たらないギリギリのところを見極めて止めてくれているようなんだが、圧がすごい…
仕方なく籠手を受け取ると、ガルも少し落ち着いてくれたようで、逆立っていた毛がゆっくりと寝ていく。
ミスリルなんて、ファンタジー作品の中じゃよく出てくるものではあるが、現実になるものじゃないから、見たとしても分かるわけがないよな…
「ねぇ…狼さん…いらないって?」
拒否されたからなのか、微妙に優子のテンションが下がってしまった。
わざわざ持って来てくれたんだし、どうにか受け取らせたいものだが…
「ちょっと待ってな。少し考える。」
籠手の表面に配置された金属プレートを、コンコンと叩きながら、ナビさんに聞いてみることにした。
(ナビさん。ミスリルってやっぱり希少なものなのか?)
『回答提示。原料となる鉱物資源は、鉄鉱石内に魔素を多く取り込んだ魔鉄鉱石であり、希少度は地球の鉱物資源と比較するなら、チタンやタングステンと同等程度になります。
ただし、ミスリルの精錬には、錬金術の知識と技術が必要になる為、精錬後のミスリル鋼の価値は、魔鉄鉱石の数万倍から数十万倍になります。』
おう…さすがは魔法金属…そんな高価なものを、籠手の全体を覆うように配置してるんだから、この籠手の価値は相当なものだろう。
でも…俺らが持ってても使い道がない…
そんなに高価なものを売ったりしたら、それこそ目立つことになるからね…
(ナビさん。籠手の見た目をどうにかする方法ってないか?普通に見ただけじゃ、ミスリル製って分からないようにしたりとかさ。)
『情報提示。手持ちの素材により、ミスリルスケイルガントレットの表面を偽装することが可能です。実施しますか?』
見た目がミスリルっぽくなければ、売ることはできなくても、使う分には問題無いだろう?
思った通り、ナビさんに任せれば偽装も出来るみたいだしね。
(ナビさん。何で偽装するつもりなんだ?)
『情報提示。選定条件は以下の通り。ミスリルの希少価値以下の物質であること。使用時の脱落を防ぐ為、ある程度の強度があること。これらを踏まえ、陸草鰐の甲皮もしくは、多頭鰐の甲皮を選択肢として提示します。』
ナビさんが選択肢として挙げてくれたのは、鰐の皮だった。
それなら、現状のストックは十分以上にあるものだし…どちらを使っても気にもならない。
(ナビさん。今のものと見た目が近くなるのはどっち?)
『情報提示。ミスリルスケイルガントレットの表面構造に近い造形は、多頭鰐の甲皮です。』
(ならそっちを使ってくれ。)
『要請受諾。ミスリルスケイルガントレットをストレージリング内に収納して下さい。』
俺は籠手をストレージリングに一度収納し、ナビさんの提案を実行することにした。
「え?しまっちゃうの?」
何も言わずにストレージリングに収納したので、優子が悲しそうに聞いてくる。
「いいから、少し待ってて。」
(ナビさん。宜しくね。)
『要請受諾。ミスリルスケイルガントレット、固有名なし、の偽装を開始します。経過報告を行いますか?』
(しなくていい。あ、もし着色できるなら、元の色合いに似せて欲しいな。)
『要請受諾。多頭鰐の甲皮を染色するためには、快速蜘蛛の体液、旅する魔樹大老の実、多頭鰐の眼球を使用しますが、宜しいですか?』
(問題ない。やってくれ。)
多分優子が選んだ基準が、大きさと色だと思い、駄目元で聞いた染色も、問題なく出来ると言ってくれた。
つくづく、ナビさんは万能だと思う。
『作業報告。ミスリルスケイルガントレットの偽装並びに、染色が完了しました。』
そして早い…
ただの籠手に、何を驚くことがあるのだろうか?
「もしかして…籠手なんかの防具も、使わないのか?」
ガルは、顔を上げてこちらを見ると、何かを喋ろうと口を開いているようなのだが、パクパクと開け閉めするだけで声が出ていない。
よく耳をすませば、ミス?水?何か呟いているのが分かった?
「…ん?どうし…ミス?ミスってなん…」
「「ミスリーール!!!!」」
いきなり大声を出されて驚いた。
ガルは、そのまま籠手を抱え上げ、御者台から飛び降りてくるが、ギルは天を仰いで固まってしまった。
「つ、強き者よ!!これが何か分かっておるのか!?ミスリル製の装具だぞ!?」
今までの喋り方が嘘のように、まくしたてるように言葉を続けるガルに、驚くと同時に圧倒されてしまう。
2mを超える体躯で、しかも二足歩行の狼が口を開けて迫ってくるのは、流石に肝が冷える…
知らない相手だったら、反射的に攻撃してしまうぞ…?
「待て、落ち着…」
「ミスリル製だぞ!落ち着けるわけがなかろう!!」
ガルの体毛が興奮の為か全て逆立ち、更に体が大きく見える。
「強き者よ!いくらなんでもこれは受け取れぬ!!か、返すぞ!!」
ガルはそう言って、持っていた籠手をこちらに押しつけるように差し出してくる。
実際には、当たらないギリギリのところを見極めて止めてくれているようなんだが、圧がすごい…
仕方なく籠手を受け取ると、ガルも少し落ち着いてくれたようで、逆立っていた毛がゆっくりと寝ていく。
ミスリルなんて、ファンタジー作品の中じゃよく出てくるものではあるが、現実になるものじゃないから、見たとしても分かるわけがないよな…
「ねぇ…狼さん…いらないって?」
拒否されたからなのか、微妙に優子のテンションが下がってしまった。
わざわざ持って来てくれたんだし、どうにか受け取らせたいものだが…
「ちょっと待ってな。少し考える。」
籠手の表面に配置された金属プレートを、コンコンと叩きながら、ナビさんに聞いてみることにした。
(ナビさん。ミスリルってやっぱり希少なものなのか?)
『回答提示。原料となる鉱物資源は、鉄鉱石内に魔素を多く取り込んだ魔鉄鉱石であり、希少度は地球の鉱物資源と比較するなら、チタンやタングステンと同等程度になります。
ただし、ミスリルの精錬には、錬金術の知識と技術が必要になる為、精錬後のミスリル鋼の価値は、魔鉄鉱石の数万倍から数十万倍になります。』
おう…さすがは魔法金属…そんな高価なものを、籠手の全体を覆うように配置してるんだから、この籠手の価値は相当なものだろう。
でも…俺らが持ってても使い道がない…
そんなに高価なものを売ったりしたら、それこそ目立つことになるからね…
(ナビさん。籠手の見た目をどうにかする方法ってないか?普通に見ただけじゃ、ミスリル製って分からないようにしたりとかさ。)
『情報提示。手持ちの素材により、ミスリルスケイルガントレットの表面を偽装することが可能です。実施しますか?』
見た目がミスリルっぽくなければ、売ることはできなくても、使う分には問題無いだろう?
思った通り、ナビさんに任せれば偽装も出来るみたいだしね。
(ナビさん。何で偽装するつもりなんだ?)
『情報提示。選定条件は以下の通り。ミスリルの希少価値以下の物質であること。使用時の脱落を防ぐ為、ある程度の強度があること。これらを踏まえ、陸草鰐の甲皮もしくは、多頭鰐の甲皮を選択肢として提示します。』
ナビさんが選択肢として挙げてくれたのは、鰐の皮だった。
それなら、現状のストックは十分以上にあるものだし…どちらを使っても気にもならない。
(ナビさん。今のものと見た目が近くなるのはどっち?)
『情報提示。ミスリルスケイルガントレットの表面構造に近い造形は、多頭鰐の甲皮です。』
(ならそっちを使ってくれ。)
『要請受諾。ミスリルスケイルガントレットをストレージリング内に収納して下さい。』
俺は籠手をストレージリングに一度収納し、ナビさんの提案を実行することにした。
「え?しまっちゃうの?」
何も言わずにストレージリングに収納したので、優子が悲しそうに聞いてくる。
「いいから、少し待ってて。」
(ナビさん。宜しくね。)
『要請受諾。ミスリルスケイルガントレット、固有名なし、の偽装を開始します。経過報告を行いますか?』
(しなくていい。あ、もし着色できるなら、元の色合いに似せて欲しいな。)
『要請受諾。多頭鰐の甲皮を染色するためには、快速蜘蛛の体液、旅する魔樹大老の実、多頭鰐の眼球を使用しますが、宜しいですか?』
(問題ない。やってくれ。)
多分優子が選んだ基準が、大きさと色だと思い、駄目元で聞いた染色も、問題なく出来ると言ってくれた。
つくづく、ナビさんは万能だと思う。
『作業報告。ミスリルスケイルガントレットの偽装並びに、染色が完了しました。』
そして早い…
0
お気に入りに追加
437
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(18件)
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
いくら時が戻っても
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。
庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。
思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは―――
短編予定。
救いなし予定。
ひたすらムカつくかもしれません。
嫌いな方は避けてください。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ロイザリン・ハート「転生したら本気出すって言ったじゃん!」 〜若返りの秘薬を飲んだ冒険者〜
三月べに
ファンタジー
転生したら本気出すって言ったのに、それを思い出したのは三十路!?
異世界転生したからには本気を出さねばっ……!
若返りの秘薬を見つけ出して、最強の冒険者を目指す!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
執筆お疲れ様です。
21話まで読んだんですが、マメの天然と、ボンの神経質に疲れてなかなか読み進められないのです…。そこにぬいぐるみの無邪気な天然増幅行動が、イライラしてしまい(T ^ T)
面白いと思う反面、面倒くさく感じている今日この頃。
もうちょっと塩梅良い性格の方は出てきませんか?
面白いと思う気持ちが強くなることを祈りつつ、もう少し頑張って読み進めてみようと思います。
作者です。
イライラさせてしまいすみません…
創造系の万能能力や、高すぎるステータスがあれば別ですけど、露骨な万能系主人公にしたくなかったので、慎重に動かそうとした結果がこんな感じになってます。
私としては、知らない国それも異世界に行くことになったとしたら、全員が楽観的ってのは余りにも無防備だと思いまして、ストッパー的立ち位置がボンになりました。
こちらの世界の生活に慣れれば、ボンの神経質さも抑えられると思います…
作者です。
私がもっとうまく書ければ良いのですが…
ボンとマメは結婚して長い時間を過ごしているので、お互い依存している部分はあります。
そして、まだ日本的感覚が抜けていないので、どうしても無理が出ている感じなんですよね…
章を分けたのも、区切りがいいかな?と思ったのと、ある意味仕切り直しが出来るかなと思ったからです。
魔法だとしても、あれだけの数の命を奪ったら、精神的に変わると思いますし…
シーホについては、この返信を出した次の回で動きがあります。
ただ、重婚状態には絶対しません。
ハーレムモノを見るのは嫌いではないですが、普通の日本人夫婦がハーレムや逆ハーレムの状態になったら、嫉妬やら嫌悪やら色々な負の感情で無茶苦茶になると思うんですよね…
そして、ここからは戯言なので、フレーバー程度に…
「マメ…もう少し嫉妬するとかない訳?」
「え?なんで?可愛い子にモテてんだよ?変わってほしいくらいだよ。」
「いやいや…言い寄られてんだぞ?」
「旦那がモテるのは悪いことじゃないよ。それに、私はしないけど、男なら浮気の1つや2つくらい、浮気で済ませられるなら別にいいって言ったよね?」
「その言葉、結婚当初にも聞いたけど、しないししたことないからな!?」
「大丈夫だよ、本気になったら許さないけど、浮気で家に持ち込まないなら別に気にしないから。」
「あのなぁ…俺がそんなことするように見えるのかよ?」
「やらないの分かってるから言ってるんだよ?」
「なんだそりゃ…もういい、寝るぞ。」
「ふふ、変なぼん。おやすみー」
ヤドリギ亭、最終宿泊日の夜会話のみ抜粋してみました。
所謂後付けですね…
文書力や表現力が乏しくてすみません。
>褒められてると認識していいんです…よね?
もちろんですとも! 更新が待ち遠しい小説のひとつです。
これからの展開が楽しみです。
毎日、首を長~~くして更新を待ってます。
執筆は大変かもしれませんが応援してます!
作者です。
すみません…単純に褒められ慣れてないだけです。
照れ隠し的なあれです…って何を書いているのでしょう?
楽しみにしてくれている方がいるのは嬉しいです。
これからも頑張って更新していきます。