夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第14話 上から来た

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ゴツゴツした多頭鰐スクナダイルの皮膚に触れたと思ったら、その巨体が一瞬で消えてしまった。

「……は?」

『特殊実行。ストレージリングを操作します。多頭鰐スクナダイルの魔石分離を完了しました。
展開魔法の解呪を実施。展開中の毒液の檻ベノムケージ及び毒蔦縛ポイズンアイビーの解呪を完了しました。』

「は?ちょ、え?」

展開が急すぎて、まるでついていけない…
終わった…でいいのか?

『権限解放。緊急脅威体の無力化を確認。緊急状態の解除により、権限を解放します。
合わせて、高負荷によるエラーを解消するため、再起動を実行します。』

「…じ!がぎ!!!」

戦闘終了と共に、ナビさんが俺の体を動かすことをやめ、それによって体の機能が戻されたのだが、足の痛みも戻ってきてしまい、激痛に悶えることになった。

「な…!!ぐ…!!麻痺毒枷パラライバンド!!」

魔法によって、なんとか痛みを抑えることが出来た。

「ナビ!少し説明しろよ!?」

…あれ?
いつもならすぐに回答が来るのに、一向に回答が来ない。

「おい、え?ナビ?聞いてるか?おーい…」

ダメだ…
再起動するって言ってたから、それが原因だと思うけど、ナビさんと意思疎通が出来なくなってしまった。
呼びかけても、なんの反応も返ってこなくなってしまった…

「どうなってんだよ…くそ…この足じゃ歩けないよな…」

魔樹まで戻れば、優子マメに治してもらえるのだが、潰された右足は痛々しい状態になっているので、見ているだけで抑えた痛みが戻って来る様な気までして来る…
早くなんとかしないと、このままじゃまずい状態なのは分かっているが、歩くことができる状態ではない。

「…よし…毒蔦縛ポイズンアイビー。」

傷口がこれ以上広がらない様に注意しながら、毒蔦を右足に巻きつける様に展開して固定する。
足が動かない様に固定できたら、そのまま体全体を少し地面から浮かせる様に毒蔦を操って持ち上げる。

「おっと…バランスが難しいな…」

毒蔦の成長に指向性を持たせることで、地面を這うように魔樹に向かって伸ばしていく。
歩くくらいの速度しか出ないが、上に乗っていればきっちり進んでくれるので、これはこれで何かに使えるかもしれない…

ウネウネと進む毒蔦が、2分くらいかけて魔樹の下まで伸びてくれたのだが、優子マメはまだ回復していなかったようで、魔樹の下で座ったままだった。

優子マメ。終わったぞ。とりあえず、これ…治してもらっていいか?」

「え?あ、うん…」

優子マメに足を治すためのヒールと、麻痺を治すためのキュアをしてもらう。
痛みがなくなり、問題なく動かせることを確認すると、俺は立ち上がって優子マメの前に立った。

「…それで、怪我はないか?」

「多分…うん、無いよ。」

「そうか。それなら良かった…とでも言うと思ったか!?」

「にゃ!」

優子マメの頭を、いつもより少し強めにチョップする。
変な声を出しているが、そんなことはどうでもいい。

「なんで降りてきた!しかも降りてきて速攻で動けなくなるし!怪我したらどうするつもりだったんだ!!」

降りて来るなって言ったのに、なんで優子マメが降りてきたのか。

俺が怪我する分には、後で優子マメに治してもらうことだって出来るだろう。
生命線である回復役が、軽々しく前に出るなんて、あってはならないことなのが分かっていないとしか思えない。

「叩かなくてもいいじゃん…」

「何かあってからじゃ遅いんだよ!少しは考えて行動し…」

「…さー…」

何か聞こえた気がして、魔物モンスターが残っていたのかと辺りを見渡す。
何も…いない?

ガサ

上から音がして見上げると、白い塊が降ってきていた。
後ろに倒れながらそれをなんとかキャッチする。

「おわ!…え?でっかちゃん?」

「ぼんさーん…うぅ…」

なんで降ってきたのかは分からないが、腕の中には大きい方のぬいぐるみが小さく震えていた。

「どうしたよ…ん?」

「ぼんさん怪我してた…危ないことしないって言ったのに~…」

泣いている?のか?
元がぬいぐるみなので、涙は流していないが泣いているらしい…

優子マメを怒っていたのに、完全に毒気を抜かれてしまった…

「えっと…ほら、怪我は治ったし。大丈夫だから、な?」

まるで聞いてくれない…
今回は俺、悪く無いと思うんだけどな…
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