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第2章
第12話 火炎壁
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「ぅぇ…ん?」
『警告情報。敵性体が、まもなく毒液の檻の展開範囲内に侵入します。』
魔樹の実を無理矢理食べていると、ナビさんから遂に警告が飛んできた…
足裏から感じる振動も、明らかに強くなっているのは気づいていたが、魔樹の実を食べるのに集中するために、意図的に無視していた。
「…でかくね…?」
思わず声が出てしまったが、迫って来ている魔物は、まだ全然遠いにもかかわらず、めちゃくちゃデカイことだけは分かる巨体だった。
その手前に2匹の、後ろと比較すると小さな魔物も走って来ている。
遠近感がおかしくなりそうだが、手前の2匹がさっきのワニくらいの大きさだとするなら、ちょっとデカすぎやしないだろうか?
……RRRGAAAAA!!
前を走るワニの1匹が、突然速度を上げたようで、叫び声と共に土埃を巻き上げて疾走してくる。
GA?GAGYAAAAA!!
先頭の陸草鰐が、突然足から崩れ落ちて派手に転がり、悲鳴のような声を上げる。
俺には、魔物が脚を取られた原因がすぐに分かった。
GRRRRRRGAAAAA!
BAGUAAAAA!!
GIGAGI!!
KURRRGAAAAA!
後ろを走って来ていた魔物達は、一瞬でズタボロになってしまった仲間の姿を見て、どうやったのかは遠くて見えなかったが、土煙を上げて止まっている。
魔物が止まる時に巻き上げた足元の土煙が晴れると、その異形がいやでも目に入ってきた。
多分あのデカイ三首のワニが多頭鰐なのだろうか…
遠目にも分かる陸草鰐の倍はある体躯に、本来手だったであろう箇所が頭に変わってしまっていて、それが別々に動いて声を上げているように見える。
まだ距離があるにもかかわらず、その異様はどう考えても、戦っていい相手には思えない。
止まった魔物達は、倒れた仲間に何かを話しているようだが、何を言っているのかは分からない。
その間にも、倒れた魔物の体は、毒液の檻の毒液によって、 どんどん溶かされていっているようで、地面に吸い込まれるように薄くなっていっている。
魔物が溶けて小さくなるのと反比例するように、残った魔物の声には怒りや苛立ちの感情がこもり始め、威圧感がどんどん高くなっていくのを感じた。
GRRRGAAAAA!!
GAAAAA!!
GYAGA!GYAAA!
KUKAAAAA!!
多頭鰐が何かを命令したのか、陸草鰐は声を上げて横方向へと走り始め…
先の魔物と同じように、地面に転がって叫び声をあげる。
向こうにも毒液の檻が仕掛けてあったようだ。
「ナビさん…どれだけ広く仕掛けたんだよ…」
『回答提示。毒液の檻の発動範囲ギリギリの100mまで展開しています。』
「ナビさん?そんなに離れて展開できたっけ?」
『回答提示。旅する魔樹大老の果実を摂取したことにより、マスターの生体魔素転換路の活性を限界ギリギリまで高めた事で、展開が可能になりました。』
それはまた…
GRRRRRRGAAAAAAAAA!!!
GURUAAAAAAAAAA!!!
GYAGA!GYAGAAAAAAAAA!!!
「ひっ!くそ…なんて声をしてんだ…」
今までで一番大きな咆哮に、体が揺さぶられるのを感じて無意識に悲鳴が出てしまった。
足が震えて動かない…?
「ナビさ…」
『緊急!毒蔦縛発動!』
バオン!!!
いきなりナビさんが魔法を使ったかと思うと、凄まじい衝撃が俺の体を吹き飛ばした。
ゴロゴロと地面を転がり、何とか顔を上げたとき、何が起きたのか分からなかった…
ナビさんが使った毒蔦の壁が炎に包まれ、周りの地面にも炎の壁が立ち上がっている…
「これは…何が…」
『緊急!退避行動実行!』
何が何だかわからず戸惑っていると、ナビさんによって俺の体が勝手に動かされていく。
「うお!ちょ!おい!」
足が勝手に動いて草原を走る。
どうなっているのか分からないが、背中を焼かれるような熱が後ろから迫ってくる。
振り返ると、炎の壁が次々と生み出されて追って来ていた。
『警告情報。敵性体が、まもなく毒液の檻の展開範囲内に侵入します。』
魔樹の実を無理矢理食べていると、ナビさんから遂に警告が飛んできた…
足裏から感じる振動も、明らかに強くなっているのは気づいていたが、魔樹の実を食べるのに集中するために、意図的に無視していた。
「…でかくね…?」
思わず声が出てしまったが、迫って来ている魔物は、まだ全然遠いにもかかわらず、めちゃくちゃデカイことだけは分かる巨体だった。
その手前に2匹の、後ろと比較すると小さな魔物も走って来ている。
遠近感がおかしくなりそうだが、手前の2匹がさっきのワニくらいの大きさだとするなら、ちょっとデカすぎやしないだろうか?
……RRRGAAAAA!!
前を走るワニの1匹が、突然速度を上げたようで、叫び声と共に土埃を巻き上げて疾走してくる。
GA?GAGYAAAAA!!
先頭の陸草鰐が、突然足から崩れ落ちて派手に転がり、悲鳴のような声を上げる。
俺には、魔物が脚を取られた原因がすぐに分かった。
GRRRRRRGAAAAA!
BAGUAAAAA!!
GIGAGI!!
KURRRGAAAAA!
後ろを走って来ていた魔物達は、一瞬でズタボロになってしまった仲間の姿を見て、どうやったのかは遠くて見えなかったが、土煙を上げて止まっている。
魔物が止まる時に巻き上げた足元の土煙が晴れると、その異形がいやでも目に入ってきた。
多分あのデカイ三首のワニが多頭鰐なのだろうか…
遠目にも分かる陸草鰐の倍はある体躯に、本来手だったであろう箇所が頭に変わってしまっていて、それが別々に動いて声を上げているように見える。
まだ距離があるにもかかわらず、その異様はどう考えても、戦っていい相手には思えない。
止まった魔物達は、倒れた仲間に何かを話しているようだが、何を言っているのかは分からない。
その間にも、倒れた魔物の体は、毒液の檻の毒液によって、 どんどん溶かされていっているようで、地面に吸い込まれるように薄くなっていっている。
魔物が溶けて小さくなるのと反比例するように、残った魔物の声には怒りや苛立ちの感情がこもり始め、威圧感がどんどん高くなっていくのを感じた。
GRRRGAAAAA!!
GAAAAA!!
GYAGA!GYAAA!
KUKAAAAA!!
多頭鰐が何かを命令したのか、陸草鰐は声を上げて横方向へと走り始め…
先の魔物と同じように、地面に転がって叫び声をあげる。
向こうにも毒液の檻が仕掛けてあったようだ。
「ナビさん…どれだけ広く仕掛けたんだよ…」
『回答提示。毒液の檻の発動範囲ギリギリの100mまで展開しています。』
「ナビさん?そんなに離れて展開できたっけ?」
『回答提示。旅する魔樹大老の果実を摂取したことにより、マスターの生体魔素転換路の活性を限界ギリギリまで高めた事で、展開が可能になりました。』
それはまた…
GRRRRRRGAAAAAAAAA!!!
GURUAAAAAAAAAA!!!
GYAGA!GYAGAAAAAAAAA!!!
「ひっ!くそ…なんて声をしてんだ…」
今までで一番大きな咆哮に、体が揺さぶられるのを感じて無意識に悲鳴が出てしまった。
足が震えて動かない…?
「ナビさ…」
『緊急!毒蔦縛発動!』
バオン!!!
いきなりナビさんが魔法を使ったかと思うと、凄まじい衝撃が俺の体を吹き飛ばした。
ゴロゴロと地面を転がり、何とか顔を上げたとき、何が起きたのか分からなかった…
ナビさんが使った毒蔦の壁が炎に包まれ、周りの地面にも炎の壁が立ち上がっている…
「これは…何が…」
『緊急!退避行動実行!』
何が何だかわからず戸惑っていると、ナビさんによって俺の体が勝手に動かされていく。
「うお!ちょ!おい!」
足が勝手に動いて草原を走る。
どうなっているのか分からないが、背中を焼かれるような熱が後ろから迫ってくる。
振り返ると、炎の壁が次々と生み出されて追って来ていた。
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