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第2章
第10話 足りない…
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「ナビ!毒液の檻の範囲指定を奴の前方!向きを揃えて展開する!範囲指定を!」
『要請受諾。範囲指定を行います。』
ドスンドスンと、地面を揺らすように俺を追ってくる陸草鰐だが、警戒は続いているようで、唸り声をあげながらも足元を確認しながら慎重に追ってきていた…
GRRRRRR…
「くそ!爬虫類のくせに頭使ってんじゃ…ねえ!」
走りながらストレージリングの画面を操作し、黒い液体の入ったボトルを取り出し、蓋を外して陸草鰐の顔に向かってぶん投げる。
GAAAAAAAA!!
陸草鰐は、飛んできたそれを弾き飛ばしたが、蓋を開けていたため中身を盛大に撒き散らすことになった。
投げたのは木酢液のボトル。薄めていない原液の木酢液は、辺りに強烈な臭いを漂わせ、同時に陸草鰐に攻撃を始める。
GA…GAGYAAAAAA!GUGAAAA!!
ボトルの中身を、全身に浴びた陸草鰐は、叫び声をあげて暴れだし、腕の傷を押さえて転げまわりだす。
「ナビ!範囲変更!あいつを閉じ込めるように囲め!」
『要請受諾。魔法展開範囲を変更します。
…変更完了しました。』
「毒液の檻!毒液の檻!毒液の檻!!」
毒蔦縛の時のように、単独使用で抜け出されたらいけないので、勢いで魔法を連続で使用する。
すぐに魔法は発動し、陸草鰐の体は毒液の檻の中に閉じ込められた。
これならもう動けな…
GUGUGU…KUOOOOOOOOOO!!!
「な…!!」
閉じ込められた陸草鰐は、今までの咆哮とは違う超音波のような声を上げ、俺は耳を塞いでうずくまってしまう。
『行動提案。早急に麻痺毒枷を使用しこの場を離れる事を提案します。』
キーンと、耳鳴りのような音は鳴り止まないが、ナビさんの声は聞こえる。
「なんて声だ…耳が…あれ?」
頭を振って立ち上がると、辺りには凄まじい木酢液の臭いが広がっているが、陸草鰐はすでに鳴き止み、その巨体を小さく丸めて地面に伏せていた。
戦意を失ったのか?と、少し拍子抜けしていると、ナビさんが声を上げる。
『接近警告。残存の多頭鰐と、陸草鰐が急接近してきます。早急に退避して下さい。』
「は?なんで…まさか、こいつが呼んだのか?」
地面に伏せている陸草鰐に目をやると、こちらを向いているのが分かった。
さっきの声は、仲間を呼ぶためのものだったんだろう。
「くそ!麻痺毒枷!」
俺は伏せた状態の陸草鰐に駆け寄り、体の自由を奪ってからストレージリングに収納する。
かなりの体重だったようで、1体だけなのに、リングがズシリと重くなる。
だが、入れ替えている余裕はないだろうし、その辺に置いておくのも、今からやってくる他のワニに警戒されるだけだと思い、魔石の分離だけしてそのまま収納しておいた。
「重!いや、それどころ…優子!」
魔樹の方に目を向けると、優子がへたり込んでいるのが見えた。
まだ収納していないようで、先に拘束した陸草鰐も簀巻き状態で転がっている。
「なにしてんだ!次が来るぞ!!」
「や、あの…声…」
さっきの陸草鰐の声に、優子は腰を抜かしていた。
腕を掴んで立たせようとするが、完全に腰が抜けているようで立つことができなくなっている…
「だから降りて来るなって言ったんだ!」
優子を無理やり引き起こし、肩に担ぐように持ち上げ、魔樹の側まで連れて行く。
幸い、他のやつは降りて来ていない。
「いいか!?これ以上邪魔するなら、全員死ぬことになるんだ!ここから絶対動くんじゃないぞ!」
優子を魔樹の根元に置き、そこから少し離れる。
「毒蔦縛!」
優子の周り、魔樹の根元を覆う様に毒蔦縛を展開して、目隠しの壁を作り出しておく。
ワニにとって、動けない人間は餌にしか見えないだろうってのと、これ以上動き回られないようにするための処置だ。
「ナビ!指示をくれ!」
簀巻き状態の陸草鰐を収納するために走り寄りながら、ナビさんに次の指示を聞く。
『情報提示。現時点で準備に必要な生体魔素転換路の活性が足りません。』
簀巻きの陸草鰐を収納したところで、ナビさんから嫌な情報が聞かされ、俺は動きを止める…
「なんだって…?」
思っていた以上に状況は悪い様だ…
『要請受諾。範囲指定を行います。』
ドスンドスンと、地面を揺らすように俺を追ってくる陸草鰐だが、警戒は続いているようで、唸り声をあげながらも足元を確認しながら慎重に追ってきていた…
GRRRRRR…
「くそ!爬虫類のくせに頭使ってんじゃ…ねえ!」
走りながらストレージリングの画面を操作し、黒い液体の入ったボトルを取り出し、蓋を外して陸草鰐の顔に向かってぶん投げる。
GAAAAAAAA!!
陸草鰐は、飛んできたそれを弾き飛ばしたが、蓋を開けていたため中身を盛大に撒き散らすことになった。
投げたのは木酢液のボトル。薄めていない原液の木酢液は、辺りに強烈な臭いを漂わせ、同時に陸草鰐に攻撃を始める。
GA…GAGYAAAAAA!GUGAAAA!!
ボトルの中身を、全身に浴びた陸草鰐は、叫び声をあげて暴れだし、腕の傷を押さえて転げまわりだす。
「ナビ!範囲変更!あいつを閉じ込めるように囲め!」
『要請受諾。魔法展開範囲を変更します。
…変更完了しました。』
「毒液の檻!毒液の檻!毒液の檻!!」
毒蔦縛の時のように、単独使用で抜け出されたらいけないので、勢いで魔法を連続で使用する。
すぐに魔法は発動し、陸草鰐の体は毒液の檻の中に閉じ込められた。
これならもう動けな…
GUGUGU…KUOOOOOOOOOO!!!
「な…!!」
閉じ込められた陸草鰐は、今までの咆哮とは違う超音波のような声を上げ、俺は耳を塞いでうずくまってしまう。
『行動提案。早急に麻痺毒枷を使用しこの場を離れる事を提案します。』
キーンと、耳鳴りのような音は鳴り止まないが、ナビさんの声は聞こえる。
「なんて声だ…耳が…あれ?」
頭を振って立ち上がると、辺りには凄まじい木酢液の臭いが広がっているが、陸草鰐はすでに鳴き止み、その巨体を小さく丸めて地面に伏せていた。
戦意を失ったのか?と、少し拍子抜けしていると、ナビさんが声を上げる。
『接近警告。残存の多頭鰐と、陸草鰐が急接近してきます。早急に退避して下さい。』
「は?なんで…まさか、こいつが呼んだのか?」
地面に伏せている陸草鰐に目をやると、こちらを向いているのが分かった。
さっきの声は、仲間を呼ぶためのものだったんだろう。
「くそ!麻痺毒枷!」
俺は伏せた状態の陸草鰐に駆け寄り、体の自由を奪ってからストレージリングに収納する。
かなりの体重だったようで、1体だけなのに、リングがズシリと重くなる。
だが、入れ替えている余裕はないだろうし、その辺に置いておくのも、今からやってくる他のワニに警戒されるだけだと思い、魔石の分離だけしてそのまま収納しておいた。
「重!いや、それどころ…優子!」
魔樹の方に目を向けると、優子がへたり込んでいるのが見えた。
まだ収納していないようで、先に拘束した陸草鰐も簀巻き状態で転がっている。
「なにしてんだ!次が来るぞ!!」
「や、あの…声…」
さっきの陸草鰐の声に、優子は腰を抜かしていた。
腕を掴んで立たせようとするが、完全に腰が抜けているようで立つことができなくなっている…
「だから降りて来るなって言ったんだ!」
優子を無理やり引き起こし、肩に担ぐように持ち上げ、魔樹の側まで連れて行く。
幸い、他のやつは降りて来ていない。
「いいか!?これ以上邪魔するなら、全員死ぬことになるんだ!ここから絶対動くんじゃないぞ!」
優子を魔樹の根元に置き、そこから少し離れる。
「毒蔦縛!」
優子の周り、魔樹の根元を覆う様に毒蔦縛を展開して、目隠しの壁を作り出しておく。
ワニにとって、動けない人間は餌にしか見えないだろうってのと、これ以上動き回られないようにするための処置だ。
「ナビ!指示をくれ!」
簀巻き状態の陸草鰐を収納するために走り寄りながら、ナビさんに次の指示を聞く。
『情報提示。現時点で準備に必要な生体魔素転換路の活性が足りません。』
簀巻きの陸草鰐を収納したところで、ナビさんから嫌な情報が聞かされ、俺は動きを止める…
「なんだって…?」
思っていた以上に状況は悪い様だ…
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