夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
上 下
42 / 100
第1章

第38話 バタバタと落ち着きのない人

しおりを挟む
領主の邸を無事に後にし、村の中を歩いてヤドリギ亭に戻っているのだが…
何かに見られているような気がして気持ちが悪い…

(ナビさん…誰か着いてきてる?)

『回答提示。後方15m、テンセリット邸の門から、村人ロンがマスターを見ています。移動する様子はありません。』

屋敷に着いた時に、消えたみたいに動いた人だな…
一応警戒しておいた方がいいのか?

(ナビさん、念の為あの家に居た人達が、俺と優子マメ達に何かしてきそうなら、早めに警告してくれ。)

『回答提示。行動監視を行います。』

これで、何かしてきても早めに分かる。
ハーグさんの身のこなし、素人の俺でも何かやっていることは分かったし、多分、ロンって人もそうだろう…

こっちは一般人だぞ…なんでそんな戦闘のプロっぽい奴の相手を…
考えたら、今更になって怖くなってきた…

「ボンさん…ですよね?」

「ふゃ!へ?」

もしかして、ものすごく危なかったんじゃないかと思い始めて居たところに、後ろから声をかけられたから、めちゃくちゃ驚いた。

声のした方に振り返ると、そこにはシーホさんが立っていた。

「あの…この間は…すみませんでした。」

「え?あ、いえ…こちらこそ…」

多分彼女には、俺は避けられると思っていたのに、わざわざ声をかけられ、その上謝られてしまった。
会うことを想定していなかったから、どうしよう…何を話せばいいんだ…?

「あの…ボンさん…?どうかしましたか?」

「あ、いや…シーホさんには避けられると思っていたんですが…」

あんな事を言ってしまったからな…
村の中で見かけたとき、こっちから声をかけても、逃げられるか殴られるか無視されるかくらいに考えていたんだが…

「避けるなんて…私は、助けていただいたのにあんなことをして…本当にごめんなさい!」

「ちょ…あの…」

あんまり騒がれると…これ、周りに…

「おや?シーホと…あんたは…おぉ!ボンさんか!」
「なに?ボンさんだと!?」
「ボンさん?え?どこどこ!?」

やっぱり…

「あんたのおかげで助かったよ!なぁ!これ食ってくれ!」
「いやあの…」
「おいおい!抜け駆けはダメだろう!なぁ、これ、うちで作ったサッテンだ。」
「あ、なら俺も持ってくるからまっててくれ!」
「な、俺もだったら持ってくるぞ!」

うん聞いちゃくれない。
なんだこの人たちは…

こんなもん一々対応出来ない…
何かを貰うのもちょっと遠慮したい。
よし、全力でヤドリギ亭に逃げ込もう。

(ナビさん!ヤドリギ亭までの安全なルート指示緊急でよろしく!)

『情報提示。目的地までの移動ルートを確定。視覚情報にルート線を表示します。リアルタイムで追加情報を反映させていきます。』

よし!逃げよう!そうしよう!そうと決まったら即逃げだ!

「あ、ボンさ…え?はや!」

村人の間をすり抜け、ヤドリギ亭までの道を駆け抜けていく。

シーホさんには悪いが、あんなに注目されながら何かを話せるとも思えないし、話があるならヤドリギ亭に来るだろう…



「はひ…は…つか…ぜ…」

だめだ…全力で走ったら…やばい…息が…これ…死ぬ…

「ボン、思ったより早かったな?どうしたんだ、そんなに息を切らして…」

「途中…シー…あっ…バレ…走っ…」

「そうか、シーホに会ったか。それで村の奴らにバレて逃げて来たと…
とりあえず、飲み物持ってきてやるから、座って休んでな。」

キャナタさんは、息切れしながら喋ったのに内容が分かったらしく、飲み物を取りにカウンターの奥に…

ん?なんかいい匂いが…

「そうだ、ボン。マメが凄いんだ。」

キャナタさんが持ってきてくれた果実水を飲んでいると、いきなりそう言われ、飲んでた果実水を吹き出しかける。

「げほ…ぐ…はい?」

嫌な予感しかしないんだが…
なんだ?何をした…

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫です…それで、優子マメが何ですって?」

「あぁ、マメがロールに料理を教えてくれていてな。俺も少し食べさせてもらったんだが、あれは流行る気がするな。うん。」

…ぬぁーー……
やっぱりなんかしやがったー……

「キャナタさん、優子マメは調理場ですか?カウンターの奥ですよね?ちょっとお邪魔しますね?優子マメーーー!!」

「おい、ボン、ちょっとどうしたんだ?おい、待てって。」

カウンターの奥に初めて入ったが、調理器具も少なく、随分と殺風景な感じだった。

「あ、ぼん。お帰り。」

「ボンさんお帰りなさい。マメさんに料理を教わってたんですけど…」

そうだろうね。
ここに入ってすぐ分かったよ…
この匂いはアレの匂いだもんね?

「ロールさん、すみませんがちょっと待ってもらえますか?優子マメ、今すぐこっちに来なさい。」

「え?どうかしたの?」

優子マメの手を引き、調理場を出る。
入れ違いでキャナタさんとすれ違う。

「勝手に入ってごめんなさい。少し優子マメと話があるので、待っていて下さい。後で説明します。」

「お?あ、分かった。」

これ以上厄介なことにならないように、少しでもキャナタさんたちから離れないと…

「ね、どうしたの?」

階段の下あたりで、優子マメに問われる。
…聞きたいのはこっちですが?

「俺が聞きたい。優子マメ、何してんの?」

「え?料理をロールさんに…」

「ダメだって言わなかったっけ?ややこしいことになるからダメだって言ったよね?なんで教えるのよ!?」

もう、なんで人の言うこと聞いてくれないかな?

「えっと…流れで?かな?」

「なが…ダメだ、頭痛くなって来た…」

どんな流れだよ…
あぁ…もう無理、キャナタさん達にも口止めしないと…

「大丈夫?」

「大丈夫じゃない!誰のせいだと…」

「あの…すみません…」

「何だ!…へ?」

いつのまにか背後に誰かが立って居たらしく、声をかけられる。
なんかデジャヴな気がする…



ーーーー
作者です。
バタバタしてますね。
何を作って居たかは、次回?その次かもしれませんが…
感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...