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贈り物
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パーティーが開催される一週間前にマリーナ嬢への贈り物を一緒に探しに行こうという口実を使ってアリスをデートに誘った。
アリスは今日の装いも定番で分厚い眼鏡にぶかぶかの制服だ。
でも明らかに髪の毛の艶が違う。よく見ると肌の血色も良くなり艶も出ている。今まで慢性的な睡眠不足だったけど薬と距離を置いているから生活が改善され劇的に健康になっているのは目に見えてわかる。
「アリス、何か綺麗になったきたな。」ついポロリと本音が本人の前で出てしまった。
「うえ?アレックス様?い、今、私を綺麗って?」アリスが口をパクパクさせて顔を赤くさせている。
「ああ、言った。健康的ですごくいいと思う。けど…。」
「け、けど?」
「アリスが親しみやすい女の子って周りに知られると、ちょっと困る。」
「…。」
「ああ、固まらないでくれ。気持ちが重すぎるな。気持ちが悪いと自分でも思う。すまなかった。容姿や外見の事を色々言われるのはアリスは嫌か?」
「え?えっと…。えっと…。」アリスがすごく困って言葉を探している。困らせたいわけではない。
「ははは。いいんだ。嫌ならその時、気にせず気持ち悪いと言ってくれ。さあ、今日はマリーナ嬢の贈り物を探すぞ。正式なものはもうお互いの家で用意しているけど今日は学生らしい気持ちの込めたものを探そう。」
「あ、は、はい。マリーの好みそうなものをいくつかピックアップしています。一緒に参りましょう。」話題が変わりアリスが少し気分を切り替えてくれたので安心した。
アリスは重い空気を引きずらないし、いい加減に機嫌を損ねたりしない。そこがまた一緒にいて心地いい。
マリーナ嬢への贈り物は特別な刻印入りのリップクリームを選んだ。病を患ってから肌質が変わったようで今までの化粧品がすべてかぶれてしまうとアリスが聞いていたから低刺激の化粧品をアリスが探していたらしい。
そこまでは良かったんだが…。
この化粧品店の店主が厄介な奴だった。
妙にアリスと親しくて馴れ馴れしい。横にいる俺は婚約者なんだが明らかに挑発しているように見える。
そして、その店主は20代半ばの男で顔が整っている。身長は俺より高くスタイルも良い。所作も綺麗だし、平民じゃないだろうとすぐ分かった。
よくよく聞くとその男ジョンとやらは隣国の貴族だそうだ。アリスと奴の会話をずっと注意深く聞いていた。
「ジョン、開店おめでとう。ついに自分の店を持ったのね。」
「ああ、アリス。君もすごい功績を残したじゃないか。君も叔父さんから聞いたよ。君こそおめでとう。この化粧品たちは君のお眼鏡にかなったかな?」
「ジョン、素晴らしいわ!どの化粧品にも使用した薬草や成分を書いていてすべて低刺激の身体に優しいものだわ。こんな化粧品を作るなんて流石ジョンだわ。」
「ははは。アリスにそう言ってもらえたら安心したよ。しがない貴族の5男坊だから手に職をつけたいと思っていたけどまさかこの分野で店を出すとは自分でまだ夢のようだ。」
「私が隣国にいるとき叔父さんに一緒に教わったものね。ジョンはお兄さんみたいだったから私は色々助かったのよ。」
「いやいや、年頃になってもやりたいことが見つからなくてふらふらしていたんだ。たまたま公務で君の叔父さんと出会って薬学を教わることになったんだ。僕よりも小さな女の子が必死になって病の研究をしているのをみて僕はすごく励まされたんだよアリス。」
「そんな。私…。」
「う、ううん!」わざとらしく咳ばらいをした。
「あ、アレックス様。ごめんなさい。昔話に気を取られていたわ。こちらジョン。じゃなくてジョバンニ=フォレストさん。隣国の伯爵家の子息の方よ。一緒に薬学を学んだ仲なの。」
「初めまして。アレックス=モーガンさんですね。同じ伯爵家と言いたいところだけど僕は5男坊でこの通り平民みたいな暮らしなんだ。好きな事して楽しんでいる変な男と思っておいてくれ。君はアリスの婚約者だっけ?」
「話がよく伝わっているようで何よりです。あなたもパーティーに行かれるんですか?」俺は何だすごくイライラしながら対応する。
「ん?パーティー?ああ、マリーナ嬢のパーティーかな?一応出席する予定だよ。あの侯爵家とは外交でお世話になっているからね。」
「まあ、ジョンも来るの?じゃあ賑やかになるわね。」
「はははは。そうだね。アリスは?」
「わ、私はその…。」
「すみません。僕から話を振っておいて失礼ですが、パーティーでのアリスの扱いは秘密事項なので当日までお伝え出来ないんです。さあ、アリス買い物は終わったからもう行こうか。ジョバンニさん、これで失礼します。」
「ああ、長話になったね。じゃあアリス、もしパーティーで出会ったら挨拶させてくれ。君のような聡明な女性の存在が知られたら近づけるか分からないけどな。アレックス君、僕の事はジョンでいいからね。じゃあ、また。」
ジョンは俺の無礼な態度に反応せずニコニコと手を振っている。
ああ、何だかイライラするな。
アリスは今日の装いも定番で分厚い眼鏡にぶかぶかの制服だ。
でも明らかに髪の毛の艶が違う。よく見ると肌の血色も良くなり艶も出ている。今まで慢性的な睡眠不足だったけど薬と距離を置いているから生活が改善され劇的に健康になっているのは目に見えてわかる。
「アリス、何か綺麗になったきたな。」ついポロリと本音が本人の前で出てしまった。
「うえ?アレックス様?い、今、私を綺麗って?」アリスが口をパクパクさせて顔を赤くさせている。
「ああ、言った。健康的ですごくいいと思う。けど…。」
「け、けど?」
「アリスが親しみやすい女の子って周りに知られると、ちょっと困る。」
「…。」
「ああ、固まらないでくれ。気持ちが重すぎるな。気持ちが悪いと自分でも思う。すまなかった。容姿や外見の事を色々言われるのはアリスは嫌か?」
「え?えっと…。えっと…。」アリスがすごく困って言葉を探している。困らせたいわけではない。
「ははは。いいんだ。嫌ならその時、気にせず気持ち悪いと言ってくれ。さあ、今日はマリーナ嬢の贈り物を探すぞ。正式なものはもうお互いの家で用意しているけど今日は学生らしい気持ちの込めたものを探そう。」
「あ、は、はい。マリーの好みそうなものをいくつかピックアップしています。一緒に参りましょう。」話題が変わりアリスが少し気分を切り替えてくれたので安心した。
アリスは重い空気を引きずらないし、いい加減に機嫌を損ねたりしない。そこがまた一緒にいて心地いい。
マリーナ嬢への贈り物は特別な刻印入りのリップクリームを選んだ。病を患ってから肌質が変わったようで今までの化粧品がすべてかぶれてしまうとアリスが聞いていたから低刺激の化粧品をアリスが探していたらしい。
そこまでは良かったんだが…。
この化粧品店の店主が厄介な奴だった。
妙にアリスと親しくて馴れ馴れしい。横にいる俺は婚約者なんだが明らかに挑発しているように見える。
そして、その店主は20代半ばの男で顔が整っている。身長は俺より高くスタイルも良い。所作も綺麗だし、平民じゃないだろうとすぐ分かった。
よくよく聞くとその男ジョンとやらは隣国の貴族だそうだ。アリスと奴の会話をずっと注意深く聞いていた。
「ジョン、開店おめでとう。ついに自分の店を持ったのね。」
「ああ、アリス。君もすごい功績を残したじゃないか。君も叔父さんから聞いたよ。君こそおめでとう。この化粧品たちは君のお眼鏡にかなったかな?」
「ジョン、素晴らしいわ!どの化粧品にも使用した薬草や成分を書いていてすべて低刺激の身体に優しいものだわ。こんな化粧品を作るなんて流石ジョンだわ。」
「ははは。アリスにそう言ってもらえたら安心したよ。しがない貴族の5男坊だから手に職をつけたいと思っていたけどまさかこの分野で店を出すとは自分でまだ夢のようだ。」
「私が隣国にいるとき叔父さんに一緒に教わったものね。ジョンはお兄さんみたいだったから私は色々助かったのよ。」
「いやいや、年頃になってもやりたいことが見つからなくてふらふらしていたんだ。たまたま公務で君の叔父さんと出会って薬学を教わることになったんだ。僕よりも小さな女の子が必死になって病の研究をしているのをみて僕はすごく励まされたんだよアリス。」
「そんな。私…。」
「う、ううん!」わざとらしく咳ばらいをした。
「あ、アレックス様。ごめんなさい。昔話に気を取られていたわ。こちらジョン。じゃなくてジョバンニ=フォレストさん。隣国の伯爵家の子息の方よ。一緒に薬学を学んだ仲なの。」
「初めまして。アレックス=モーガンさんですね。同じ伯爵家と言いたいところだけど僕は5男坊でこの通り平民みたいな暮らしなんだ。好きな事して楽しんでいる変な男と思っておいてくれ。君はアリスの婚約者だっけ?」
「話がよく伝わっているようで何よりです。あなたもパーティーに行かれるんですか?」俺は何だすごくイライラしながら対応する。
「ん?パーティー?ああ、マリーナ嬢のパーティーかな?一応出席する予定だよ。あの侯爵家とは外交でお世話になっているからね。」
「まあ、ジョンも来るの?じゃあ賑やかになるわね。」
「はははは。そうだね。アリスは?」
「わ、私はその…。」
「すみません。僕から話を振っておいて失礼ですが、パーティーでのアリスの扱いは秘密事項なので当日までお伝え出来ないんです。さあ、アリス買い物は終わったからもう行こうか。ジョバンニさん、これで失礼します。」
「ああ、長話になったね。じゃあアリス、もしパーティーで出会ったら挨拶させてくれ。君のような聡明な女性の存在が知られたら近づけるか分からないけどな。アレックス君、僕の事はジョンでいいからね。じゃあ、また。」
ジョンは俺の無礼な態度に反応せずニコニコと手を振っている。
ああ、何だかイライラするな。
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