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お呼ばれ
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私は山根君に決死の告白をした。
返事もなくおおよそフラれたであろう形になっているけど、山根君との食堂ランチは続けてもらっている。
そして、今まで通り帰宅も一緒でぽんちゃんの散歩も付き合ってもらっている。
あの告白はなかったかのような振る舞いをお互い続けている。
表面上は笑顔で穏やかに山根君と話すけど内心は大きなとげが刺さった状態で笑顔を作るのがやっとな感じだ。
辛いけど一緒にいたい。
傍にいさせてもらえるならもう少し一緒にいさせてほしいと思ってしまう意気地なしな私。
業務中に珍しく営業部の課長がデザイン課にやってきた。
「あ~、平井さんお久しぶり!元気してる?」
「課長、お久しぶりです。」
久々に見た課長は少し顔色が良くなっていた。
めぐちゃんの情報によると三谷さんがすごく優秀なので課長の補佐や外勤達の管理を任せられるみたいだ。
『一番は近藤瑠美さんが異動したから課長のストレスが減ったんだと思いますけど。』
とめぐちゃんは苦笑していたな。
「課長、今日はどうされたんですか?」
「そうそう、今週の水曜日の夜に鶴丸様のお疲れ様会があるんだ。
鶴丸様からはささやかな会だから気軽に参加してほしいって言われたんだけど多分そこそこの規模だと思う。
平井さんの参加を希望されていてね。
突然決まったみたいだから参加無理でもいいんだけど、今後の事もあるしお願いしたいなあって…。」
「え?水曜日ってすぐですよね。」ぽんちゃん、預けるのは大丈夫そうだけど。
「もちろん近藤さんは来ないよ。あんなことがあったから。滝野瀬さんは丁度通院がある日で難しいみたいなんだ。」
「めぐちゃんはいないんですか…。あの、田所さんは?」
「え?田所君?彼は鶴丸様と直接関係していないから誘っていないけど。」
「そうですか。」
今私はデザイン課だから行くのは気が引けるけど鶴丸様にはお世話になったから行くべきと葛藤してしまう。
「あ、そうそう。鶴丸様からここの山根君も良かったら来て欲しいってお誘いがあったんだ。彼いてる?」
「あ、はい。ちょっと待っててください。」
私は山根君を呼んだ。
山根君は何故呼ばれたか不思議そうな顔している。
営業課長から鶴丸様のパーティの件を伝えられると明らかに戸惑っていた。
「怖がらないで大丈夫だよ。鶴丸様が来社した時山根君に親切にしてもらったことが嬉しかったんだって。こういう縁を大切にしたい人だから声がかかったんだよ。」
「いや…でも俺…。」
「山根君はいつも平井さんと一緒にいるじゃないか。平井さんこんなに綺麗だから他の来賓者に絶対目を付けられるよ。変な奴だったらどうするの?帰り店の前で待ち伏せされたらどうするの?」
「課長、冗談にならない冗談はやめてください。…分かりました。俺も行きます。水曜日の夜ですね。」
「ええ?山根君大丈夫?」
「はい。丁度いいかもしれません。」
「??」
「おっけ~!決まり!あっ!デザインの課長が俺に気づいたな!あいつ無神経だから嫌いなんだよ。同期だけど。じゃあ、場所とか時間は戻ってからメールするから確認よろしくね。お疲れ様~!」
そう言って営業課長は足早に去って行った。
「なになに?あいつ何しに来たの?俺に話し通さないとなると業務外の時間に何か君たちに頼んだな?どうせ営業部に来た話を平井さんが受けて欲しいとかじゃない?」
「流石課長、だいたい合ってます。」山根君がぼそっと言った。
「平井さん、安請け合いしたらダメだよ。君はデザイン課の大切な社員なんだから。」
「大丈夫です。ちょっとお呼ばれしただけなので、挨拶が済んだらすぐ帰宅しますから。」
「ふ~ん。気を付けてね平井さん変な男に狙われないように。」
「もう、そんなことありえないですよ。」
私は苦笑いしかできなかった。
何故なら先日私の決死の告白は見事に玉砕したからだ。
やっぱり新しい恋はまだまだ難しそうだ。
山根君は課長の話を黙って聞いていた。
返事もなくおおよそフラれたであろう形になっているけど、山根君との食堂ランチは続けてもらっている。
そして、今まで通り帰宅も一緒でぽんちゃんの散歩も付き合ってもらっている。
あの告白はなかったかのような振る舞いをお互い続けている。
表面上は笑顔で穏やかに山根君と話すけど内心は大きなとげが刺さった状態で笑顔を作るのがやっとな感じだ。
辛いけど一緒にいたい。
傍にいさせてもらえるならもう少し一緒にいさせてほしいと思ってしまう意気地なしな私。
業務中に珍しく営業部の課長がデザイン課にやってきた。
「あ~、平井さんお久しぶり!元気してる?」
「課長、お久しぶりです。」
久々に見た課長は少し顔色が良くなっていた。
めぐちゃんの情報によると三谷さんがすごく優秀なので課長の補佐や外勤達の管理を任せられるみたいだ。
『一番は近藤瑠美さんが異動したから課長のストレスが減ったんだと思いますけど。』
とめぐちゃんは苦笑していたな。
「課長、今日はどうされたんですか?」
「そうそう、今週の水曜日の夜に鶴丸様のお疲れ様会があるんだ。
鶴丸様からはささやかな会だから気軽に参加してほしいって言われたんだけど多分そこそこの規模だと思う。
平井さんの参加を希望されていてね。
突然決まったみたいだから参加無理でもいいんだけど、今後の事もあるしお願いしたいなあって…。」
「え?水曜日ってすぐですよね。」ぽんちゃん、預けるのは大丈夫そうだけど。
「もちろん近藤さんは来ないよ。あんなことがあったから。滝野瀬さんは丁度通院がある日で難しいみたいなんだ。」
「めぐちゃんはいないんですか…。あの、田所さんは?」
「え?田所君?彼は鶴丸様と直接関係していないから誘っていないけど。」
「そうですか。」
今私はデザイン課だから行くのは気が引けるけど鶴丸様にはお世話になったから行くべきと葛藤してしまう。
「あ、そうそう。鶴丸様からここの山根君も良かったら来て欲しいってお誘いがあったんだ。彼いてる?」
「あ、はい。ちょっと待っててください。」
私は山根君を呼んだ。
山根君は何故呼ばれたか不思議そうな顔している。
営業課長から鶴丸様のパーティの件を伝えられると明らかに戸惑っていた。
「怖がらないで大丈夫だよ。鶴丸様が来社した時山根君に親切にしてもらったことが嬉しかったんだって。こういう縁を大切にしたい人だから声がかかったんだよ。」
「いや…でも俺…。」
「山根君はいつも平井さんと一緒にいるじゃないか。平井さんこんなに綺麗だから他の来賓者に絶対目を付けられるよ。変な奴だったらどうするの?帰り店の前で待ち伏せされたらどうするの?」
「課長、冗談にならない冗談はやめてください。…分かりました。俺も行きます。水曜日の夜ですね。」
「ええ?山根君大丈夫?」
「はい。丁度いいかもしれません。」
「??」
「おっけ~!決まり!あっ!デザインの課長が俺に気づいたな!あいつ無神経だから嫌いなんだよ。同期だけど。じゃあ、場所とか時間は戻ってからメールするから確認よろしくね。お疲れ様~!」
そう言って営業課長は足早に去って行った。
「なになに?あいつ何しに来たの?俺に話し通さないとなると業務外の時間に何か君たちに頼んだな?どうせ営業部に来た話を平井さんが受けて欲しいとかじゃない?」
「流石課長、だいたい合ってます。」山根君がぼそっと言った。
「平井さん、安請け合いしたらダメだよ。君はデザイン課の大切な社員なんだから。」
「大丈夫です。ちょっとお呼ばれしただけなので、挨拶が済んだらすぐ帰宅しますから。」
「ふ~ん。気を付けてね平井さん変な男に狙われないように。」
「もう、そんなことありえないですよ。」
私は苦笑いしかできなかった。
何故なら先日私の決死の告白は見事に玉砕したからだ。
やっぱり新しい恋はまだまだ難しそうだ。
山根君は課長の話を黙って聞いていた。
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