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本音は会いたくない
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先日平井さんからぽんちゃんの飼い主で平井さんの住んでいるマンションの持ち主、そして平井さんの叔母である里子さんという女性と会ってほしいと言われた。
本音を言えば会いたくない。
その里子さんがどうこうではなく、人付き合いが苦手だからだ。
会ったって何を話していいか分からない。
仕事であれば話す内容が決まっているからそこまで苦ではない。
いや、それでもかなりしんどい。
時々顧客から伝えたイメージが違うと何度も修正が入ってしまうこともしばしばある。
出来る限り絵に集中したいのが本音だ。
俺は、相手のイメージをくみ取るだけでじゃなく、あえて突き放したり言いくるめたり、おだてて仕事を進めるような芸当は出来ない。
声帯の衰えたぬりかべだ。
そんな俺と平井さんの親戚が会うって想像がつかない。
ぽんちゃんのお礼とか言ってるけど、可愛い姪っ子に近づく良からぬ男を見定めるためだろう。
なんせ、あの田所と同棲するのを許可した過去があるから次は慎重にいきたいんだろう。
俺はそんな土俵に立つ男じゃない。
平井さんの恋愛対象ではないからだ。
俺が女性ならこんな野暮ったい男はお断りだ。
自分で自分を分析していてちょっと嫌になるくらいに。
最近よく思う。
平井さんがデザイン課に異動してきてから、俺の生活がどんどん変わってきている。
健康的になったのは平井さんのおかげだ。
けど、怖さもある。
大吾の時以来人とここまで距離を縮めることがなかった俺は今の変化に追いついていない気がする。
今までさび付いて動きが鈍い歯車がごりごり動き始めて、今俺のコントロールできないスピードで回転し始めている感覚だ。
ちゃんと戒めておかないといけない。
俺は身の程をしっかりわきまえて調子に乗ってはいけないと。
平井さんの件は約束してしまったからパソコンの基本を教えることはするが、それで終わりにしよう。
ぽんちゃんのことや田所との事は平井さんに新しい彼氏ができれば解決するはずだ。
それまで平井さんが困らないように俺がつなぎでいるだけ。
つなぎというか、居れば多少マシくらいの存在だ。お母さんでも忠犬でも何でも良い。
里子さんと言う人には最低限の礼儀マナーで会えばいいだろう。もうすぐに切れる縁だし。
そういえば、ぽんちゃんを病院に連れて行ったあの日、平井さんがやけに自宅に招こうとしたりご飯を食べようとしたり一生懸命な気がした。
いつも落ち着いているイメージだったからちょっと驚いたけど、平井さんにあそこまで誘われて拒否できるわけもなく…。
俺って意志弱いな。
平井さん、義理が固いからああやって俺に色々とおもてなししてくれてるんだろうけど。
今後平井さんの彼氏候補がうじゃうじゃ出てくるだろうから、その頃にはさっとフェードアウトできるようにしておこう。
本音を言えば会いたくない。
その里子さんがどうこうではなく、人付き合いが苦手だからだ。
会ったって何を話していいか分からない。
仕事であれば話す内容が決まっているからそこまで苦ではない。
いや、それでもかなりしんどい。
時々顧客から伝えたイメージが違うと何度も修正が入ってしまうこともしばしばある。
出来る限り絵に集中したいのが本音だ。
俺は、相手のイメージをくみ取るだけでじゃなく、あえて突き放したり言いくるめたり、おだてて仕事を進めるような芸当は出来ない。
声帯の衰えたぬりかべだ。
そんな俺と平井さんの親戚が会うって想像がつかない。
ぽんちゃんのお礼とか言ってるけど、可愛い姪っ子に近づく良からぬ男を見定めるためだろう。
なんせ、あの田所と同棲するのを許可した過去があるから次は慎重にいきたいんだろう。
俺はそんな土俵に立つ男じゃない。
平井さんの恋愛対象ではないからだ。
俺が女性ならこんな野暮ったい男はお断りだ。
自分で自分を分析していてちょっと嫌になるくらいに。
最近よく思う。
平井さんがデザイン課に異動してきてから、俺の生活がどんどん変わってきている。
健康的になったのは平井さんのおかげだ。
けど、怖さもある。
大吾の時以来人とここまで距離を縮めることがなかった俺は今の変化に追いついていない気がする。
今までさび付いて動きが鈍い歯車がごりごり動き始めて、今俺のコントロールできないスピードで回転し始めている感覚だ。
ちゃんと戒めておかないといけない。
俺は身の程をしっかりわきまえて調子に乗ってはいけないと。
平井さんの件は約束してしまったからパソコンの基本を教えることはするが、それで終わりにしよう。
ぽんちゃんのことや田所との事は平井さんに新しい彼氏ができれば解決するはずだ。
それまで平井さんが困らないように俺がつなぎでいるだけ。
つなぎというか、居れば多少マシくらいの存在だ。お母さんでも忠犬でも何でも良い。
里子さんと言う人には最低限の礼儀マナーで会えばいいだろう。もうすぐに切れる縁だし。
そういえば、ぽんちゃんを病院に連れて行ったあの日、平井さんがやけに自宅に招こうとしたりご飯を食べようとしたり一生懸命な気がした。
いつも落ち着いているイメージだったからちょっと驚いたけど、平井さんにあそこまで誘われて拒否できるわけもなく…。
俺って意志弱いな。
平井さん、義理が固いからああやって俺に色々とおもてなししてくれてるんだろうけど。
今後平井さんの彼氏候補がうじゃうじゃ出てくるだろうから、その頃にはさっとフェードアウトできるようにしておこう。
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