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ナイスアシスト
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次の日から私たちはお弁当を持って食堂で昼ご飯を食べることになった。
山根さんはコンビニのおにぎりとサンドイッチを大量に持ってきてた。
そして黙々と食べて、本当に私たちの会話に一切入ってこない。
食べているか持ってきていた本を読んでいる。
聞き耳立てているような気配もなくてすごく配慮してくれていた。
それはマコさんにも伝わっているみたいだった。
そんな日が何日が続いたある日、見たこともない男性社員3人組から食堂で声をかけられた。
「すみませーん。ここ僕たちも良いですか?何か最近すっごい可愛くてきれいな女性が食堂に来てるな~って気になってたんですよ。僕たちと一緒に昼ご飯食べたいな~と思って声かけちゃった。元営業部の平井さんだよね。すごい綺麗になってびっくりした。隣の可愛い女性は平井さんの後輩?はじめまして。最近入社したの?あ、間近で見たらやっぱりすげ~可愛い。美人さんだね。」
3人組の一人がまくし立てるように私たちに近づいてきた。
ああ、これがナンパというものか?君くわうぃ~ね~。ってテレビで芸人さんが披露してるけど、これの事か。
初めて体験した。
「すみません。今彼女と大事な話してるのでご一緒にご飯は出来ないんです。」マコさんが申し訳なさそうに断ってくれる。
そうそう。私は今マコさんと重要なコスメの話をしてるの。その後はぽんちゃんの画像を送ってもらう予定なんだから。ご一緒は出来ないんです。
「ええ?つれないな~。ちょっとくらいいいじゃない。社内交流だよ。そんな拒否しないでよ~。」
だめだ、全然聞いてない。
社会人っていうのはこれくらいへこたれずに押しが強い方が仕事する上で重要なのかな?
なら、私が応戦だ。
「彼女、今無理って言ってましたよね。しつこいです。俺が彼女たちとご飯中なんです邪魔しないでください。ってか鼻の下伸びすぎ。」
低い声がした。声は小さいけど何故か響く声だった。
「うえ?何だよぬりかべみたいな男だな。え?お前が平井さんたちとご飯食べてるって?もっとマシな嘘つけよ。」
「本当です。山根君とランチ中なんです。」
「そうです。山根さんと一緒にご飯食べてるんですよ。」
「…。俺と一緒に飯食いたいですか?」
「ぜって~やだ。何だよ、ぬりかべの番犬付かよ。ったく。もういいよ。じゃあね平井さん。また番犬いないときに声かけるわ。」
そう言って3人組は別の席に座ってくれた。
「山根君、ありがとう。助かったよ。」
「山根さん、助かりました。すみません。」
「いや、全然大丈夫。」
そう言って山根さんはまた本を読み始める。
さっきの3人組もそうだけど、山根さんってただ大きい男の人だから相手がひるむんじゃない気がする。
何と言うか、いざという時に出てくる圧というか勝負強さというか…。
普段は全く感じさせない威圧感があるんだよね。
相当勝負の世界で活躍してたのかなあ?
そして、あのもさもさの髪の毛、だらしない髭の奥には整った顔立ちがあると言うことを私はこの前気が付いた。
そしてそして、山根さんが時々マコさんを見つめる視線に熱と切なさがあるのも私は知ってしまった。
でも、マコさんは全くその視線に気が付いてないんだよね。
優しい人っていうのは理解しているみたいだけど。
山根さん、陰ながら応援しています。
「あ、マコさんに渡したいものがあったんだ。あの、これよかったら…。」
「え?何々?ああああ!ぽんちゃんのブローチ?かわいいいいい。」
マコさんは私が渡したブローチを大切そうに触ってため息をつきながら称賛してくれた。
「病気していた時にフェルト細工にハマったんです。羊毛にちくちく針を刺して形を作るんですけど、ぽんちゃんの写真を見ながら作ってみました。ぽんちゃん可愛いから楽しかったです。」
「すごいクオリティだね。売れる。すっごく可愛いもん。めぐちゃん、ありがとう~。早速つけようっと。」
「フレンチブルドック…。」
「あれ?山根さん知ってるんですか?」
「あ、ごめん会話に入って。その、実家が犬を飼い始めたみたいで黒のフレンチブルなんだ。一緒だなっと思って。」
「わあ、山根君のご実家もフレンチブルなの?可愛いよね~。私会社終わったら速攻で自宅に帰ってこの子に癒されるの。」
マコさんが嬉しそうに話しを広げる。
「あ、犬飼ってるんですね…。」
「うん。すっごく可愛いんだ。あ、ご実家のブルちゃんも写真あったら今度見せて欲しいな。ぽんちゃんに見せてあげたい。」
「う…あ、はい。」
「あ、ごめんね。嫌だったよね。仲間できた~と思って勢いあまっちゃった。さっきの気にしないで。」
「いや、そういうわけじゃ…。」
「山根さんも仲間がいて嬉しすぎて言葉ならないんですよね。」私が助け舟を出す。
「う、そう、そうなんです…。」
「ああ、良かった。何か嫌な思いさせちゃったと思って。」
「それはないです。今度実家帰ったら写真いっぱいとってきます。実家近いんですぐ撮ってきます。」
山根さん、少年のようだ。健気…。
「わあ、嬉しいな。楽しみにしておくね。あ、山根君良かったら連絡先交換しない?めぐちゃんと私と山根君の3人グループ作っておいたら良いかなって思って。あ、これパワハラ?強制みたいになっちゃってる?」
マコさんが頭を抱え始めた。
「私も知りたいです!3人のグループ作って欲しいです!山根さんのフレンチブルちゃんのブローチも作りたいので画像送ってください!ぜひ!」
「あ、良いですよ。俺なんかグループに入っても面白くないですけど。」
「良いんです!ブルちゃん同盟です!じゃあマコさんと友達になってもらってグループ作りましょう!」
話が立ち消えないよう、ここは勢いで連絡先を交換するのが良い。完全におせっかいおばさんだな私。
「ああ、じゃあ。」
「山根君、ありがとう。」
「い、いえ。」
2人は連絡先を交換している。
私、かなりナイスアシストしたよね。
山根さん、私頑張りましたよ。これで一歩前進です。山根さんも頑張ってくださいね。
山根さんはコンビニのおにぎりとサンドイッチを大量に持ってきてた。
そして黙々と食べて、本当に私たちの会話に一切入ってこない。
食べているか持ってきていた本を読んでいる。
聞き耳立てているような気配もなくてすごく配慮してくれていた。
それはマコさんにも伝わっているみたいだった。
そんな日が何日が続いたある日、見たこともない男性社員3人組から食堂で声をかけられた。
「すみませーん。ここ僕たちも良いですか?何か最近すっごい可愛くてきれいな女性が食堂に来てるな~って気になってたんですよ。僕たちと一緒に昼ご飯食べたいな~と思って声かけちゃった。元営業部の平井さんだよね。すごい綺麗になってびっくりした。隣の可愛い女性は平井さんの後輩?はじめまして。最近入社したの?あ、間近で見たらやっぱりすげ~可愛い。美人さんだね。」
3人組の一人がまくし立てるように私たちに近づいてきた。
ああ、これがナンパというものか?君くわうぃ~ね~。ってテレビで芸人さんが披露してるけど、これの事か。
初めて体験した。
「すみません。今彼女と大事な話してるのでご一緒にご飯は出来ないんです。」マコさんが申し訳なさそうに断ってくれる。
そうそう。私は今マコさんと重要なコスメの話をしてるの。その後はぽんちゃんの画像を送ってもらう予定なんだから。ご一緒は出来ないんです。
「ええ?つれないな~。ちょっとくらいいいじゃない。社内交流だよ。そんな拒否しないでよ~。」
だめだ、全然聞いてない。
社会人っていうのはこれくらいへこたれずに押しが強い方が仕事する上で重要なのかな?
なら、私が応戦だ。
「彼女、今無理って言ってましたよね。しつこいです。俺が彼女たちとご飯中なんです邪魔しないでください。ってか鼻の下伸びすぎ。」
低い声がした。声は小さいけど何故か響く声だった。
「うえ?何だよぬりかべみたいな男だな。え?お前が平井さんたちとご飯食べてるって?もっとマシな嘘つけよ。」
「本当です。山根君とランチ中なんです。」
「そうです。山根さんと一緒にご飯食べてるんですよ。」
「…。俺と一緒に飯食いたいですか?」
「ぜって~やだ。何だよ、ぬりかべの番犬付かよ。ったく。もういいよ。じゃあね平井さん。また番犬いないときに声かけるわ。」
そう言って3人組は別の席に座ってくれた。
「山根君、ありがとう。助かったよ。」
「山根さん、助かりました。すみません。」
「いや、全然大丈夫。」
そう言って山根さんはまた本を読み始める。
さっきの3人組もそうだけど、山根さんってただ大きい男の人だから相手がひるむんじゃない気がする。
何と言うか、いざという時に出てくる圧というか勝負強さというか…。
普段は全く感じさせない威圧感があるんだよね。
相当勝負の世界で活躍してたのかなあ?
そして、あのもさもさの髪の毛、だらしない髭の奥には整った顔立ちがあると言うことを私はこの前気が付いた。
そしてそして、山根さんが時々マコさんを見つめる視線に熱と切なさがあるのも私は知ってしまった。
でも、マコさんは全くその視線に気が付いてないんだよね。
優しい人っていうのは理解しているみたいだけど。
山根さん、陰ながら応援しています。
「あ、マコさんに渡したいものがあったんだ。あの、これよかったら…。」
「え?何々?ああああ!ぽんちゃんのブローチ?かわいいいいい。」
マコさんは私が渡したブローチを大切そうに触ってため息をつきながら称賛してくれた。
「病気していた時にフェルト細工にハマったんです。羊毛にちくちく針を刺して形を作るんですけど、ぽんちゃんの写真を見ながら作ってみました。ぽんちゃん可愛いから楽しかったです。」
「すごいクオリティだね。売れる。すっごく可愛いもん。めぐちゃん、ありがとう~。早速つけようっと。」
「フレンチブルドック…。」
「あれ?山根さん知ってるんですか?」
「あ、ごめん会話に入って。その、実家が犬を飼い始めたみたいで黒のフレンチブルなんだ。一緒だなっと思って。」
「わあ、山根君のご実家もフレンチブルなの?可愛いよね~。私会社終わったら速攻で自宅に帰ってこの子に癒されるの。」
マコさんが嬉しそうに話しを広げる。
「あ、犬飼ってるんですね…。」
「うん。すっごく可愛いんだ。あ、ご実家のブルちゃんも写真あったら今度見せて欲しいな。ぽんちゃんに見せてあげたい。」
「う…あ、はい。」
「あ、ごめんね。嫌だったよね。仲間できた~と思って勢いあまっちゃった。さっきの気にしないで。」
「いや、そういうわけじゃ…。」
「山根さんも仲間がいて嬉しすぎて言葉ならないんですよね。」私が助け舟を出す。
「う、そう、そうなんです…。」
「ああ、良かった。何か嫌な思いさせちゃったと思って。」
「それはないです。今度実家帰ったら写真いっぱいとってきます。実家近いんですぐ撮ってきます。」
山根さん、少年のようだ。健気…。
「わあ、嬉しいな。楽しみにしておくね。あ、山根君良かったら連絡先交換しない?めぐちゃんと私と山根君の3人グループ作っておいたら良いかなって思って。あ、これパワハラ?強制みたいになっちゃってる?」
マコさんが頭を抱え始めた。
「私も知りたいです!3人のグループ作って欲しいです!山根さんのフレンチブルちゃんのブローチも作りたいので画像送ってください!ぜひ!」
「あ、良いですよ。俺なんかグループに入っても面白くないですけど。」
「良いんです!ブルちゃん同盟です!じゃあマコさんと友達になってもらってグループ作りましょう!」
話が立ち消えないよう、ここは勢いで連絡先を交換するのが良い。完全におせっかいおばさんだな私。
「ああ、じゃあ。」
「山根君、ありがとう。」
「い、いえ。」
2人は連絡先を交換している。
私、かなりナイスアシストしたよね。
山根さん、私頑張りましたよ。これで一歩前進です。山根さんも頑張ってくださいね。
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