社内恋愛にご注意!!

ミミリン

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山根遥

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俺は山根遥(やまね はるか)23歳新卒で入社。今はデザイン課に配属されている。


俺の外見は俺も周りも誰も得をしないビジュアルだ。

ぼてぼてと言う表現が一番合う肉付き。

身長は180㎝あるからきっと小学生がここに居ればあだ名は確実にぬりかべ君だろう。

床屋?美容院?何年行ってないかな?俺が身ぎれいにしたところで誰も得しないし俺も得しない。


性格がひねくれているのは自分でも自覚している。


田舎から出て来た身なりに無頓着な奴とか都会に怖気づいて美容院恐怖症な奴とか思われてるだろうが、実はこれでも都会育ちだ。


小学校から私立に通い、勉強ばかりしていた。

私立だからって大人しい子供ばっかりって思われるかもしれないが、俺のクラスには面倒な男グループがクラスを牛耳っていた。


そのころ、背は低く、女の子みたいな名前でがりがりだった俺は格好のいじめターゲットになった。


どうも、顔もあの頃は女顔だったようで、いじめの内容もガキのくせに性的な嫌がらせに近いものが多かった。


わざとエロサイトを見せてきて「お前はこれで興奮するか?ちょっと見せてみろよ。」とか、突然後ろから腰を掴まれ「いい具合じゃん。男もイケる訳?」とか。


今考えても悪質なものばっかりだった。


黙っていたら徐々にエスカレートしていった。

先生や親に相談すべきだったんだろうけど、いじめの内容が暴力とかではなく性的な内容だったこともあり恥ずかしくて言い出せなかった。


こんなチビでがりがりで弱いからターゲットになるんだと考え両親に頼み込み空手を習うことになった。


初めはきつくて他の練習生の練習にもついていけなかったけど、個人競技でやればやるほど技術が身に付く空手は俺の性に合っていたようですごく楽しかった。


学校生活は相変わらず悪質なからかいがあったけど、喧嘩のために空手をするのは絶対駄目だと師範にずっと指導されてきたから反撃はしなかった。


こっそりと技を使って逃げるために空手を利用した。


その後、持ち上がりで中学生になった。

もちろん奴らも持ち上がりだ。

学校では大人しくしておかないと、いじめグループに目を付けられるため中学に上がったら部活は美術部に入った。

文科系なら何でもよかったけど、楽器は弾けないし集団行動が苦手だから消去法で美術部だった。

初めは同じ中学生なのにどうやってこんな絵を描けるんだ?と別世界に入った感覚だった。

使ってるのは絵具だけなのに?何で?魔法?と困惑していたけど同時期に入部した同級生の大吾っていう奴が色々教えてくれた。


大吾は物静かで大人びた中学生だった。

お父さんが画家で小さい頃からレッスンを受けていたらしい。

他の人から親切にされると気持ち悪く感じるけど、大吾の声のトーンや言葉の使いかた、柔らかい雰囲気のせいか俺にとって大吾との会話は心地よい時間だった。


部活の課題は美術館に行って鑑賞した絵画の模写や感想文など思っていた以上に課題が出た。

大吾と一緒に美術館に行くと展示されている絵画や造形作品の説明を俺に分かるように教えてくれる。

作者の性格や生きた時代、挫折したきっかけ、作品への影響や特徴とか。

大吾が教えてくれたおかげで消去法で入った美術部がいつの間にかすごく好きになっていた。


頭がいい大吾は教え方も無茶苦茶上手い。

「大吾みたいな先生が居たらどんな教科でも楽しく勉強できるだろうな。」


そんなことを言うと大吾は苦笑して「なんだよ、美術関係ないじゃないか。」と苦笑していた。


俺は空手と美術部と進学校の勉強でかなり忙しかったが大吾と会えるのが楽しくてすべてを両立するよう努力した。

なので、学校の成績は中の上か上の下を行ったり来たりだ。大吾はいつも上位をキープしていたけど。



放課後、部活の時間に二人とも休憩となったので、大吾に聞いてみた。


「なあ、大吾。俺いっつも大吾に絵の事教えてもらってるけど、俺と一緒でつまらないんじゃない?無理させてないか?」


「は?何だよ突然。」


「だって、大吾絵も上手いし知識もすごいしコンクールで何回も賞をとってるだろ?俺なんて基礎がまず出来てないし、掛け持ちだし大吾から見たらゴミ…それは言い過ぎか。チリみたいなもんじゃないか?」


「何だよチリって。遥はまだ分からないだろうけど、僕いっつも遥に嫉妬してるんだよ。」


「え?俺のどこに大吾が嫉妬する要素があるんだ?」


「遥はまだ分からないかもしれないけど、綺麗な絵、上手にできている絵と人が惹きつけられる絵は違うんだ。ただの景色を完璧にかける人はすごいよ。けどそれなら写真でいいじゃないっていう人が言う。逆に絵の事は深く分らないけど、この人の絵が大好きでたまらないって言うのはよくあるだろ?僕ずっと思ってた。僕は前者、遥は後者だって。」


「…。う~ん。ごめん。全く分からない…。」


「はははは。端的に言うとね、僕は遥の絵の大ファンなんだ。遥の絵を見ると心が揺さぶられたり、安心したりする。だから遥と一緒にいるのが好きって事。分かった?」


「う、うん。何となく…。えっと、でもそれって…。」俺の事が好きってことは…。


「おっと、ちなみに僕彼女いるからね。遥、今すっごく言葉探したでしょ?」


「お、おう。え?彼女?誰?」


「う~ん。もうちょっとしたら言おうと思ってたんだけど…。遥にだったら言えるか。あのね、美術部副部長の佐伯先輩。二か月前にダメもとで告白したらOKもらえた。」


「うわ~!年上?佐伯副部長?何か意外だな。大吾もっと大人しい女の子好きだと思ってたから。」


「ははは。僕元気いっぱいのボーイッシュな女の子好きなんだ。ずっと絵を描いていると沈んでいきそうなときに佐伯部長がいつも察して声かけてくれてて。それで…まあ…。」


「好きになって告白したんだ?」


「そういうことだね。彼女には黙ってて言われているから誰にも言うなよ?」


「ああ、もちろんだ。大吾良かったな。」


「ありがとう。遥は彼女とか興味ないの?」


「俺は…。今は忙しいし興味ないな。」


「そっか。良い人現れたらいいな。」


「おう。さあ、もういっちょやりますか!」

「そうだな。」俺たちはまた作品に向き合った。


大吾にはごまかしたけど、俺は女の子が少し怖い。

小学生の時悪質ないじめに遭っていた時一部の女子たちも一緒になっていじめていたからだ。

甲高いケタケタ笑う声、ギラギラした瞳、汚い言葉遣い。

派手目な女の子を見ると時々あの光景がフラッシュバックされてしまう。


いつか、俺みたいな奴を好きになってくれる女の子が居たらいいな。

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