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俺の覚悟

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屋敷に着くと、イリスがげっそりとやつれた表情で待っていてくれた。


「クロエは?」


「大丈夫だ、熱はまだあるが安定している。
エレノアは大丈夫なのか?」


「イリス、一緒に部屋まで連れて行ってくれ。
男の俺じゃダメだ。」


エレノアの様子を見たイリスはすぐに状況を理解してくれたようだった。

「…分かった。
マスターは部屋に戻ってくれ。あとは私が。」



「頼んだ。」



エレノアが乱暴な対応をされたあの後、エルヴィスが知り合いに頼んでザック子爵を処分してくれたらしい。


詳細は分からないが、ザック子爵は王都には二度と入れないらしい。







あの日からエレノアは数日間眠り続けている。


腕のけがや、今までの疲労がたまっていると医師から言われた。


エレノアの様子を見るために初めてエレノアの部屋に入らせてもらった。



質素な部屋で、無駄なものはない部屋だった。

衣服などはクローゼットにしまっているのだろう。

絵画や骨とう品はなく、貴族らしくないと言える部屋だった。



部屋にあるのはクロエのぬいぐるみと、小さな棚に飾られている父上の姿絵と形見らしき香水や眼鏡などが置かれているだけだった。


エレノアはスース―と寝息を立てて寝ている。

イリスが身の回りの事をしてくれているので、化粧も綺麗に落とされている。



あどけない、美しくも可愛らしさのある寝顔だった。

エレノアの寝顔を見て覚悟を決めた。


俺は、このままではいけない。


もう、二度とエレノアにこんな思いはさせない。



「マスター、これからどうするんだ?
エレノアと離縁して彼女をこの家から解放してやるのか?」



「…。虫が良い話だが、俺はエレノアと離縁したくない。
そうならないように、考えた。
俺は軍隊に入る。それがこの家を盛り立てる近道だ。
決めたよイリス。」



「…並大抵の努力では出来ないぞ。
この国の軍人になるなど相当な覚悟でなければ続かない。
マスターは伯爵だ、それ相応の事を求められる。
プライドなんか邪魔なものはへし折られるし、甘えたことは出来ない。
今までのようなぬるま湯ではないぞ。」



「エレノアのやって来た事に比べればなんてことない。
覚悟は決めたんだ。」



「そうか。ならそれが良い。
無理なら離縁だ。私がどんな手を使ってでも別れさせてやる。」



「エレノアと別れる気は毛頭ない。」



「なら、やってみろ。応援くらいはしてやる。」



「俺は、エレノアに釣り合う男になってみせる。」




イリスに宣言したその足で、入隊の手続きを行った。

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