前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな？

アクシデント

近頃の旦那様、つまりディランは全く行動が読めない。

そして今も至近距離で私の事をじっと見てくる。


いや、私が高いところにある材料を取るために脚立に上っているのを見て、心配で見守りに来てくれたのか。


「エレノア、言ってくれれば俺がとるのに。大丈夫か？」


「これくらい大丈夫ですよ。
ちょっとここに普段使わない調味料を置いていて、今欲しいんですよね…っと。取れました！」


やっと取れた調味料の瓶が手元が滑りディランの方へ落ちそうになる。


「あ、ダメ！」

瓶を何とかキャッチしたけど、そのまま体のバランスが崩れて私が落ちそうになった。


「ディラン様、そこどいてください！」


危ないから避けて！



落ちてもこの高さだからちょっと痛い程度かな…

目を瞑り衝撃に備えていたけど衝撃は来なかった。



恐る恐る目を開けると私はディランに抱きしめれていた。


上から落ちてくる私を抱きとめてくれたんだ。



状況が分かると次は焦りが出てきた。





「ディラン様、ごめんなさい。すごく重いですよね。
ディラン様は大丈夫ですか？お怪我は？」



っていうか、私はディランの腕にすっぽりと収まっている。



お、男の人にここまで密着するの初めてでパニックなんだけど。



クロエによく抱き着かれたりするけど、全然違う。


身体の大きさも体温も肉厚も何もかも初めて受ける感覚だ。



は、恥ずかしすぎる…。




「でぃ、ディラン様、もう大丈夫なので腕を解いてください。」



「…。」


「？？？」

今、ディランの腕に力が入った？

と思ったけど、すぐ解放してもらえた。

気のせいだな。




「すみません。お怪我はありませんか？」



「…。ない…。失礼する…。」

小さな声でぶっきらぼうに言い捨て、

怒ったような歩き方で調理場を出て行ってしまった。




怒って…る、よね。



ああ、あまりにも私に密着しちゃったから流石に消毒しに行ったかな？




お礼を言うタイミングを逃してしまった。