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懐かしい人
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立ち止まって街をキョロキョロ見渡しているナンシーさんに声をかけた。
物凄い驚愕な表情でナンシーさんは固まっている。
「あれ?ナンシーさんじゃないですか?」
他人の空似?
「…。えっと、どちら様でしょうか?」
ナンシーさんは零れ落ちるんじゃないかというくらい目を丸くさせて声を絞り出して答えた。
「あ、突然ごめんなさい。私エレノアです。
昔はエレノア=ベネットだったんですけど。
今マックレーン家に嫁いだんです。
ナンシーさんじゃなかったですか?」
「エレノア様?えええ?
あなた様がエレノア様ですか?
顔つきが全く違いますけど。」
「ま、まあ、あのころと比べたらかなり変わっていると思いますけど。」
すっぴんはそこまで変わらないと思うけどね。
「確かに、お声も背丈もエレノア様です。
あまりにも堂々とされたご婦人だったので分かりませんでした。
無礼を申し訳ありません。
私、キャッシーです。」
「あ、そうだキャッシーさんだったわ。
ごめんなさいね。
王都に何かおつかいでも頼まれたの?」
「いいえ、ベネット家は解雇されました。
今は無職です。
王都なら働き口もあると思い親戚の家に住まわせてもらって就職活動をしているんですけど、週2回程度の掃除の仕事くらいしかなくて…。
あ、私なんかの話は必要ないですね。」
「いいえ、という事はキャッシーさんは今、週3程度は予定は空いているの?」
「まあ、本当はもっと働きたいんですけど、私みたいな中年で器量も学もない女は需要がないみたいです。」
「メイドなら経験もあるし、仕事先も多い気がしますけど。」
「ああ、多分ベネット家がメイド協会に何か私の事を言ったんだと思います。」
「ベネット家が?」
「え、ええ…。まあ…。いや…。」
歯切れが悪いキャッシーさん。そうか。
「キャッシーさん、私はもうベネット家とは縁が切れています。
法律上はあの家とは他人になっているので教えてもらって良いですか?」
「あ、そうだったのですね…。それなら…。」
キャッシーさんに教えてもらった情報によると、
私の実家ベネット家は、私をごく潰し扱いしてマックレーン家に嫁がせた後一括でデイビット様から金銭を授与された。
そのお金を元手に怪しい事業に手を付けて家は破産寸前らしい。
もちろん、キャッシーさんに払う手当ても出し渋り、その上キャッシーさんの仕事ぶりを見てもっと働け、節約が出来ていないなど怒鳴り散らしていた。
これ以上我慢できなくなったキャッシーさんは辞表を出すと更に怒りをあらわにしたので、こんな家族だからエレノア様は心を病んでしまったんですねと言った。
反抗したキャッシーさんを最終的に解雇はしたが、メイド協会にキャッシーさんの悪評を伝え再就職を困難にさせている可能性が高い。
そんな内容だった。
もともと金遣い荒らそうだったし、思慮深い人一人もいなさそうだったもんな~。
デイビット様の金銭がなくてもどこかのタイミングで破産はしてたでしょ。
「あんな人たちと長年住まわれてエレノア様もさぞかしご苦労なさったでしょう。
今はお幸せですか?」
「そ、そうね。まあ、そう…だと思うわ。」
ある程度自由さはある分今の生活の方が良いとはいえる。
病原菌扱いはされてるけど。
「そうですか。それはよろしゅうございます。
私の気も少し晴れました。こんな庶民の私にお声掛けくださってありがとうございました。
どうぞ、お元気で。」
キャッシーさんはぺこりと腰を折り歩き出そうとする。
「どこか、仕事の行く当てはあるんですか?」
「まあ、これだけ色々な店があれば求人の張り紙もあると思います。
歩き回って探していこうと思います。」
「そう…。それなら、毎日じゃなくていいならうちの屋敷に来ませんか?」
「へ?エレノア様の屋敷?」
「週3回食事の材料買い出しと出来れば調理、掃除、洗濯諸々の家事をお願いしたいの。
今は私が全部してるんだけど、他の事に時間が使いたくて。
あなたなら任せられるわ。」
「え?こんな私で良いのですか?」
「住んでいる所は?」
「えっと、この先のリアド地区です。」
「そう、なら近いし丁度いいわ。ベネット家でのお給料は?」
「日当5000リズです。」
「え?5000リズ?日当よ?」
「はい。住み込みでしたから朝から晩まで働くので日当でした。」
安すぎでしょ。この世界に労働基準監督署があれば違法って言いに行けるのに。
メイド協会も全然だめじゃん。これじゃ弱い者いじめだわ。
「分かりました。それ以上のお給料は保証します。どうでしょう?屋敷で働いてみませんか?」
「ぜ、ぜひ!お願いいたします!」
こうやって、キャッシーさんはマックレーン家のメイドになり、後日屋敷に来てもらう事になった。
今日、ディランに相談…というか報告はしないとな。
病原菌扱いされちゃってるけど、触らなければ話し合いは出来るかな?
物凄い驚愕な表情でナンシーさんは固まっている。
「あれ?ナンシーさんじゃないですか?」
他人の空似?
「…。えっと、どちら様でしょうか?」
ナンシーさんは零れ落ちるんじゃないかというくらい目を丸くさせて声を絞り出して答えた。
「あ、突然ごめんなさい。私エレノアです。
昔はエレノア=ベネットだったんですけど。
今マックレーン家に嫁いだんです。
ナンシーさんじゃなかったですか?」
「エレノア様?えええ?
あなた様がエレノア様ですか?
顔つきが全く違いますけど。」
「ま、まあ、あのころと比べたらかなり変わっていると思いますけど。」
すっぴんはそこまで変わらないと思うけどね。
「確かに、お声も背丈もエレノア様です。
あまりにも堂々とされたご婦人だったので分かりませんでした。
無礼を申し訳ありません。
私、キャッシーです。」
「あ、そうだキャッシーさんだったわ。
ごめんなさいね。
王都に何かおつかいでも頼まれたの?」
「いいえ、ベネット家は解雇されました。
今は無職です。
王都なら働き口もあると思い親戚の家に住まわせてもらって就職活動をしているんですけど、週2回程度の掃除の仕事くらいしかなくて…。
あ、私なんかの話は必要ないですね。」
「いいえ、という事はキャッシーさんは今、週3程度は予定は空いているの?」
「まあ、本当はもっと働きたいんですけど、私みたいな中年で器量も学もない女は需要がないみたいです。」
「メイドなら経験もあるし、仕事先も多い気がしますけど。」
「ああ、多分ベネット家がメイド協会に何か私の事を言ったんだと思います。」
「ベネット家が?」
「え、ええ…。まあ…。いや…。」
歯切れが悪いキャッシーさん。そうか。
「キャッシーさん、私はもうベネット家とは縁が切れています。
法律上はあの家とは他人になっているので教えてもらって良いですか?」
「あ、そうだったのですね…。それなら…。」
キャッシーさんに教えてもらった情報によると、
私の実家ベネット家は、私をごく潰し扱いしてマックレーン家に嫁がせた後一括でデイビット様から金銭を授与された。
そのお金を元手に怪しい事業に手を付けて家は破産寸前らしい。
もちろん、キャッシーさんに払う手当ても出し渋り、その上キャッシーさんの仕事ぶりを見てもっと働け、節約が出来ていないなど怒鳴り散らしていた。
これ以上我慢できなくなったキャッシーさんは辞表を出すと更に怒りをあらわにしたので、こんな家族だからエレノア様は心を病んでしまったんですねと言った。
反抗したキャッシーさんを最終的に解雇はしたが、メイド協会にキャッシーさんの悪評を伝え再就職を困難にさせている可能性が高い。
そんな内容だった。
もともと金遣い荒らそうだったし、思慮深い人一人もいなさそうだったもんな~。
デイビット様の金銭がなくてもどこかのタイミングで破産はしてたでしょ。
「あんな人たちと長年住まわれてエレノア様もさぞかしご苦労なさったでしょう。
今はお幸せですか?」
「そ、そうね。まあ、そう…だと思うわ。」
ある程度自由さはある分今の生活の方が良いとはいえる。
病原菌扱いはされてるけど。
「そうですか。それはよろしゅうございます。
私の気も少し晴れました。こんな庶民の私にお声掛けくださってありがとうございました。
どうぞ、お元気で。」
キャッシーさんはぺこりと腰を折り歩き出そうとする。
「どこか、仕事の行く当てはあるんですか?」
「まあ、これだけ色々な店があれば求人の張り紙もあると思います。
歩き回って探していこうと思います。」
「そう…。それなら、毎日じゃなくていいならうちの屋敷に来ませんか?」
「へ?エレノア様の屋敷?」
「週3回食事の材料買い出しと出来れば調理、掃除、洗濯諸々の家事をお願いしたいの。
今は私が全部してるんだけど、他の事に時間が使いたくて。
あなたなら任せられるわ。」
「え?こんな私で良いのですか?」
「住んでいる所は?」
「えっと、この先のリアド地区です。」
「そう、なら近いし丁度いいわ。ベネット家でのお給料は?」
「日当5000リズです。」
「え?5000リズ?日当よ?」
「はい。住み込みでしたから朝から晩まで働くので日当でした。」
安すぎでしょ。この世界に労働基準監督署があれば違法って言いに行けるのに。
メイド協会も全然だめじゃん。これじゃ弱い者いじめだわ。
「分かりました。それ以上のお給料は保証します。どうでしょう?屋敷で働いてみませんか?」
「ぜ、ぜひ!お願いいたします!」
こうやって、キャッシーさんはマックレーン家のメイドになり、後日屋敷に来てもらう事になった。
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