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女の子の正体

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覚悟を決めてセレネ棟に入った。

一番奥にある部屋まで女の子は歩く。

女の子はこの距離でも息切れを起こしていた。

そりゃあれだけガリガリだったら体力もないよね。

同情は良くないけどどうしても悲しい気持ちになってしまう。


一番奥の部屋の扉を開けると何とも言えないにおいが充満していた。

全く手入れがされていない人の部屋特有の匂いだ。

部屋はがらんと何もない。ベッドだけポツンとあるがそれも明らかに洗濯してなさそうな、薄っぺらい布団と言えないような布があるだけだ。


「何この部屋…。ひどい…。」


誰がこの部屋を使ってるんだろう。

そう思っていた時、女の子が私の手を軽く叩き壁を指さした。

壁には数枚の絵画が飾ってある。

婦人の絵、婦人と女の子の絵、女の子のみが描かれているそれぞれの絵だ。


「あれがどうしたの?見たらいいのかな?」

絵画の近くに立ってよ~く見ると名前や年号が記されている。

絵の婦人はデイビット様の亡くなった奥様だった。

綺麗なアイスブルーの瞳にぽってりとした唇。品があって綺麗な女性だった。


そして、隣に描かれてある女の子もこれまたぽってりとした可愛い唇にアイスブルーの瞳。可愛らしい女の子だ。

クロエ=マックレーンと記されている。

年号から計算するとこのクロエちゃんは今11歳という所だろうか。何とも美少女だな。


ん?あれ?アイスブルーの瞳?ぽってりと可愛い唇?現在11歳?

恐る恐る隣に立っているガリガリのぼろ切れを着た女の子の顔を覗いてみる。

アイスブルーの瞳、ぽってりとした唇…。ガリガリで11歳とは思えない体つきだけど、よく見ればこの絵画の女の子の特徴と全部一致している。


も、も、もしかして、あなたこの絵画のクロエちゃん?


私はジェスチャーで絵画とボロボロの女の子交互に指さして問うてみた。


女の子は真剣な目で頷いている。

まじか…。



え?マックレーンてことはデイビット様の娘ってこと?

いや、でもデイビット様はディラン様が産まれてから夫婦の営みは出来なかったって言ってたよね。

奥様が亡くなるより以前に別居してたって話だよね。

クロエちゃんは誰の子?養子?いや、マックレーン家の家系図みたけどクロエちゃんは記されていなかったぞ。


いやいやいや、そんなことより何でマックレーン家の人間がこんなひどい扱いされてるんだ?

ま、まさかあのディランに虐待を受けてるとか?


う~ん、頭の中がまとまらない。






「ちょっと、あんた誰!?」知らない女の声が後ろから聞こえた。


え?この屋敷鍵かかってるよね。誰が入ってきたの?



振り返ると赤と黒を基調としたフリフリの悪趣味ドレスに身を包んだ女性が立っている。



顔は地味だけどメイクが無理くり濃くしているからアンバランスで不細工に見える。

そして何より胸を強調しすぎている。


巨乳を自慢したいのだろうけどあれは、あれだ、あれあれ…ホルスタイン2号だ。

品がなさ過ぎて乳牛に陥っているやつだ。





「ちょっと、じろじろ見ないでくれる。この豊満なバディはあんたなんかがジロジロ見るものじゃないの。
ディランのためにめかし込んでるんだから。で、あんた誰?」



おっと、ディランの愛人か?

こちとら一応籍上は妻だけど!やるんかこら!上等じゃ。



いや、今私が妻と言わない方が今後動きやすいか。



エレノアのお付きメイドくらいに思わせておこう。相手が油断している方が何かとぼろ出しやすそうだしね。
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