前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな？

焦るデイビット様

デイビット様に呼ばれた部屋はレイズ君のお父様ファルコ様の寝室だった。


ベッドで横たわっているファルコ様の顔は青白く目はうつろだった。

言い方は失礼だけど骨と皮という状態だ。


かろうじて絞り出した声で私に挨拶をしてくださった。


「きみが…エレノア…だね。レイズとは…会えたかな？」


「はい、エレノアと申します。レイズ君は有望な息子さんですね。
ファルコ様とレイズ君にお会いすることが出来て本当に良かったです。」


私はファルコ様の傍まで寄り、話しかける。


「ふふふ。私も…君と会えて…うれしいよ…。これからレイズに…よく…してやってくれ…。よろしく…たのみます…。」


「もちろんです。私にできることがあれば何でもします。それがデイビット様への恩返しにもなります。
ファルコ様、デイビット様と一緒にこの地を盛り上げるんでしょう？」


「ああ…そう…だね。ふふふ。良い妻に…きて…もらえたんだな…デイビット…。」


「そうだろう？私の人生捨てたものじゃなかったぞ。ファルコ。」


「みたい…だな。わたし…だって…。悪くない人生だった…。けど…もう、おわり…が近いようだ…。先にあちらに…行っておくからな…デイビット…。」


「ああ。そっちで私の事待っておくんだぞ。」


「デイビット様…。」


ファルコ様は少し笑って喋らなくなった。

「疲れたんだろう。寝ているようだ。」

「そう…ですか…。」


「エレノア、レイズとは話は出来たかい？」

「はい。素敵な青年でした。」

「レイズと仲良くやっていけそうかな？」

「ええ、この短時間で姉弟のような親しみを持ちましたよ。」

「ほほう。姉弟か。なるほど、それは面白い。まあ、それでも良いのかな？」


「？デイビット様どうされました？」


「ああ、ファルコとも話は済んだ。
慌ただしいが今日この足で我々の屋敷に帰ろうと思う。
エレノアとは我が息子に会わせる約束もしているからね。約束が果たせなくなると困るから、さあ、帰ろうか。
それとも、エレノアはここに残るかい？」


「私はいつもデイビット様のおそばにいます。共に帰らせていただきます。」


「そうか。急がせてすまないな。」


「いいえ。」


明らかにデイビット様は焦っている。

あの状態のファルコ様を見て色々何かを感じ取ったんだろう。

レイズ君にはああ言ったけど、奇跡だけを待つんじゃなくて、私も現実を見なくちゃいけないのかもしれない。

そんなことを考えていた。


エイデン家を去るときレイズ君がすごく残念がってお見送りをしてくれた。

もっとたくさん話したかったし、この地をしっかり案内したかったと言ってくれた。

なんていい子なんだ。

本当にデイビット様のマックレーン家にとって私が用済みになったらレイズ君のいるこの地に来させてもらおう。

そしてこの地を守り、発展させる手伝いを非力ながらさせてもらうんだ。


そう決心して名残惜しいエイデン家を後にした。