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告白
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事前に決まっていた単独出張をこなして業務に出ると、涼君と斎藤さんが出張の話し合いをしていた。
どう考えても夜のお店に行くことを計画しているだろ。
涼君がそんな店に行く必要はない。
その場で上司命令で出張を斎藤さんから交代すると伝えた。
嘘も方便だ。いや、意味が違うか?何でもいい。
これで俺は斎藤さんの奥さんに多大な感謝をされるだろう。人として非常に良い事をしたんだ。
出張先では俺はまたもや涼君のハイスペックさ加減を目の当たりにした。
しかも、若い女の子相手に涼君が「君の数式そそるね。」なんて言ってた。
「そそるね」なんて俺は言ってもらったことない。
俺だって言ってもらいたい。
けど、俺は涼君がそそるような数式を編み出せない。
これほどまでに理系と言う分野を憎んだのは初めてだ。
社長の娘、久美子さんと部長と涼君が別の世界でキラキラオーラを出しながら話し合っている。
あんなにダサいと思っていた理系オタクがこんなにキラキラしていたなんて…。俺の偏見はひどいものだ。
そうだ、オタクは国境を越えるんだ。しかも誰しもが好きになってしまう涼君だからな。
俺の恋は望みがないような気がしてきた。
涼君の隣にはあんな素朴でオタクで、いやらしさのない女性の方が良いのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら3人のやりとりを眺めていた。
ちょっとへこんでいたが、涼君の汗のかき具合を見て、社内の売店で買ったインナーを差し入れに持って行った。
扉を開けると、目の前には上半身裸の涼君が現れた。
ああ、やっぱり綺麗な体してる…。肌が白くて滑らかで、触れてみたくなる肌だ。
そんなよこしまな考えを振り払おうとしたら、まさかの涼君から背中を汗拭きシートで拭いてほしいと言われてしまった。
いやいや、だめだろう。その体でたった今妄想膨らませてたんだぞ?
一度は断ったが、ここの社員のおばちゃんに裸を見られ、体を拭いてあげようかと提案までされ怖い思いをしたと聞く。
危険だ。
こんなところでもたもたしていたら大変なことになる。俺が涼君を拭くしかない。
邪念を振り払うよう、全く縁のない宗派の念仏やお経を頭の中で再生しながら、手早く涼君の背中を拭いた。煩悩をかき消しながら。
涼君、男だからって警戒心がなさすぎるぞ。こんなんじゃ市川にすぐ取り込まれてしまうじゃないか。
何とか背中を拭き終えて商談に入った。
仕事を終えたが、やっぱり話の流れで飲みの席に誘われる。
本当なら涼君と二人っきりで串カツを食べたかった。
仕方がない、これも仕事だから。
用意してくれた店はほどほどに落ち着いた雰囲気のいい店だった。
俺は相手先の重役たちと飲みかわす。
その間、涼君は久美子さんとずっと話し込んでいる。
「彼を引き戻します。」
といっても社長が「まあ、若い二人で楽しそうにしているからいいじゃないか。楽しく過ごそうよ草野君。」と止められてしまう。
若い二人って、俺も涼君と同い年だよっ。
社長がそう言うから重役たちもみんな生ぬるい目で涼君と久美子さんを見守っていた。
じ、地獄の時間だ。
何が楽しくて好きな人が他の女性と楽しげにしているのを見守らないといけないんだ…。
やっと地獄の時間が終わり、ほろ酔いの涼君を連れて予約していたホテルにチェックインした。
ツインルームであることを涼君が驚いていたが、斎藤さんとの会話を聞いたおかげで、理由をこじつけて納得させることが出来た。
涼君を先にシャワーを浴びさせている間に今日の契約項目をまとめておく。
スーツだとしわになるからホテルのガウンに着替える。
色々悶々として疲れたんだろう、少しの間寝ていたみたいだ。
少し髪の毛が濡れた涼君が俺に話しかけてくる。ガウンを着てるから胸元が丸見えだ。
叶わぬ恋でもこれくらいは許されるかな?
涼君にベッドまで運んでもらうようお願いすると、優しくて警戒心のない涼君はすぐ肩を貸してくれた。
お互いガウンだから体が密着すると直に肌が触れる。
もっと触れることが出来た良いのに…。
ベッドに連れてきてもらい涼君の身体が離れたとき、やっぱり後悔はしたくない。
ずっと引きずっていたこの思いは、砕けもちゃんと決着をつけるべきだ。
そう思い、俺は涼君に真剣な思いを伝えることを決断した。
涼君が俺を拒絶するならすぐ部屋を出よう。拒絶されたら明日らはただの上司と部下だ。
覚悟を決めたが、目の前に彼のはだけた姿があると告白に集中できない。
俺は涼君に頼み、ガウンの乱れを整えてもらった。
「俺はずっと君の事が好きだった。今もその気持ちは変わらない。いや…それ以上なんだ。」
言った。やっと言えた。
以前同性愛に理解は多少あると言っていたが自身がその対象なのは初めてのはずだ。
さあ、涼君の反応は?
どう考えても夜のお店に行くことを計画しているだろ。
涼君がそんな店に行く必要はない。
その場で上司命令で出張を斎藤さんから交代すると伝えた。
嘘も方便だ。いや、意味が違うか?何でもいい。
これで俺は斎藤さんの奥さんに多大な感謝をされるだろう。人として非常に良い事をしたんだ。
出張先では俺はまたもや涼君のハイスペックさ加減を目の当たりにした。
しかも、若い女の子相手に涼君が「君の数式そそるね。」なんて言ってた。
「そそるね」なんて俺は言ってもらったことない。
俺だって言ってもらいたい。
けど、俺は涼君がそそるような数式を編み出せない。
これほどまでに理系と言う分野を憎んだのは初めてだ。
社長の娘、久美子さんと部長と涼君が別の世界でキラキラオーラを出しながら話し合っている。
あんなにダサいと思っていた理系オタクがこんなにキラキラしていたなんて…。俺の偏見はひどいものだ。
そうだ、オタクは国境を越えるんだ。しかも誰しもが好きになってしまう涼君だからな。
俺の恋は望みがないような気がしてきた。
涼君の隣にはあんな素朴でオタクで、いやらしさのない女性の方が良いのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら3人のやりとりを眺めていた。
ちょっとへこんでいたが、涼君の汗のかき具合を見て、社内の売店で買ったインナーを差し入れに持って行った。
扉を開けると、目の前には上半身裸の涼君が現れた。
ああ、やっぱり綺麗な体してる…。肌が白くて滑らかで、触れてみたくなる肌だ。
そんなよこしまな考えを振り払おうとしたら、まさかの涼君から背中を汗拭きシートで拭いてほしいと言われてしまった。
いやいや、だめだろう。その体でたった今妄想膨らませてたんだぞ?
一度は断ったが、ここの社員のおばちゃんに裸を見られ、体を拭いてあげようかと提案までされ怖い思いをしたと聞く。
危険だ。
こんなところでもたもたしていたら大変なことになる。俺が涼君を拭くしかない。
邪念を振り払うよう、全く縁のない宗派の念仏やお経を頭の中で再生しながら、手早く涼君の背中を拭いた。煩悩をかき消しながら。
涼君、男だからって警戒心がなさすぎるぞ。こんなんじゃ市川にすぐ取り込まれてしまうじゃないか。
何とか背中を拭き終えて商談に入った。
仕事を終えたが、やっぱり話の流れで飲みの席に誘われる。
本当なら涼君と二人っきりで串カツを食べたかった。
仕方がない、これも仕事だから。
用意してくれた店はほどほどに落ち着いた雰囲気のいい店だった。
俺は相手先の重役たちと飲みかわす。
その間、涼君は久美子さんとずっと話し込んでいる。
「彼を引き戻します。」
といっても社長が「まあ、若い二人で楽しそうにしているからいいじゃないか。楽しく過ごそうよ草野君。」と止められてしまう。
若い二人って、俺も涼君と同い年だよっ。
社長がそう言うから重役たちもみんな生ぬるい目で涼君と久美子さんを見守っていた。
じ、地獄の時間だ。
何が楽しくて好きな人が他の女性と楽しげにしているのを見守らないといけないんだ…。
やっと地獄の時間が終わり、ほろ酔いの涼君を連れて予約していたホテルにチェックインした。
ツインルームであることを涼君が驚いていたが、斎藤さんとの会話を聞いたおかげで、理由をこじつけて納得させることが出来た。
涼君を先にシャワーを浴びさせている間に今日の契約項目をまとめておく。
スーツだとしわになるからホテルのガウンに着替える。
色々悶々として疲れたんだろう、少しの間寝ていたみたいだ。
少し髪の毛が濡れた涼君が俺に話しかけてくる。ガウンを着てるから胸元が丸見えだ。
叶わぬ恋でもこれくらいは許されるかな?
涼君にベッドまで運んでもらうようお願いすると、優しくて警戒心のない涼君はすぐ肩を貸してくれた。
お互いガウンだから体が密着すると直に肌が触れる。
もっと触れることが出来た良いのに…。
ベッドに連れてきてもらい涼君の身体が離れたとき、やっぱり後悔はしたくない。
ずっと引きずっていたこの思いは、砕けもちゃんと決着をつけるべきだ。
そう思い、俺は涼君に真剣な思いを伝えることを決断した。
涼君が俺を拒絶するならすぐ部屋を出よう。拒絶されたら明日らはただの上司と部下だ。
覚悟を決めたが、目の前に彼のはだけた姿があると告白に集中できない。
俺は涼君に頼み、ガウンの乱れを整えてもらった。
「俺はずっと君の事が好きだった。今もその気持ちは変わらない。いや…それ以上なんだ。」
言った。やっと言えた。
以前同性愛に理解は多少あると言っていたが自身がその対象なのは初めてのはずだ。
さあ、涼君の反応は?
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