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同じ空気を吸う
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そして、涼君は晴れて入社し俺の直属の部下になった。
長年あこがれ続けていた初恋の君が俺と毎日仕事をしてくれる…。ああ、どうしても気持ちが空回りしてしまう。
今日は涼君が企画書案を持ってきてくれた。
主任である俺が必ず目を通すと伝えていたからだ。
涼君を目の前に座らせて同じ空気を吸う。
企画書はほぼ完ぺきだ。流石だな。
ちらちらと思い人を見るために視線が勝手に涼君に動いてしまう。
冴えないスーツと髪型で一瞬の見た目では分からないかもしれないが、実は涼君の顔は整っている。
長いまつげに綺麗な鼻筋。
笑うと形の良い大きめの瞳が三日月形に変わりドキリとしてしまう。
よく見ると手足もすらりと長くてスタイルが良い。
安物のスーツのおかげで上手くこの素材を隠してくれている。
露出している首筋はため息が出るほどなまめかしくて吸い付きたくなってしまう。
いかんいかん。
仕事中にそんなことを考えてはいけない。
ふうと何度も呼吸を整えて頭から邪念を取り払う。
涼君がぼんやりしていたので女の事でも考えていたのかと聞くと、否定しない回答だった。
じゃあ、彼女の事でも考えていたのかとカマをかけてみたら、それは違う、彼女はいないって話だった。よ、よし!
今無性に嬉しい…。感動のあまり呼吸が乱れる。
これじゃ企画書を読んで息を乱す変質者だ。気持ち悪がれてしまう。
深呼吸をしながら冷静を装って企画書を眺めていると、涼君が斎藤さんに資料を見てもらう事を提案してきた。
そんなこと絶対駄目だ。
この時間は俺が涼君をゆっくりと観察し、交流する機会なのだから。
斎藤さんは典型的なくたびれたマイホームパパだ。
社歴が長い分俺もよく頼る人で、悪い人ではないのは理解している。
だが、涼君との距離がいささか近いのが気になっていた。
しかし、涼君の教育係を別の人にとなると独身が多いこの部署、他に安全な適任者がいない。
今、涼君のビジュアルを含めたハイスペックさを認識されると厄介だ。
俺は斎藤さんに頼るなと説明し、この役得だけは死守した。
ある日、涼君がデスクでお弁当を食べている姿があった。
こっそり近づくと、見るのが悲しくなるような、夕飯の残り物を寄せ集めたような茶色い弁当だった。
申し訳なさ程度にブロッコリーが一つお米ゾーンに転がっていた。
彼のスーツと言い、この弁当と言い金銭に困っているのだろうか?
前職も割と名の通った企業だったはずだ。役職がつかなければ給料が低かったのだろうか?
物凄く心配になる。
本当は仕事帰りに一杯やってかないか?と誘いたいところだが、ちょうど管理者会議でそのフレーズはパワハラになりかねないので死語認定されたところだ。
涼君から誘ってもらうには良いんだろうが、そんな気配はない。
俺の自宅に誘うのは以ての外だ。
友人や恋人であればこのハードルは低いんだろうけど、今は上司と部下だからな。
俺にできることと言えば、出張土産と言う名のプレゼントしかできない。
少しでも涼君の生活が潤うように、けどもらう相手の負担にならないぎりぎりの値段設定で毎回涼君にお土産を渡してきた。
何回目かのお土産のお礼の際、すごく気に入った味があったと言ってもらえた。
それを説明してくれる彼の笑顔が何よりの礼だ。ああ、こんなに近くで彼の笑顔が見れるなんて、幸せだ。
しかも、涼君に俺の事をカッコいいとか素敵だとか言ってもらえた。
今まで数えきれないほどお世辞は言われてきたが、涼君に言われると破壊力がすごい。
嬉しさが脳内を充満していた。
それだけで舞い上がっていたのに、予想外にも涼君が俺の肩をぽんぽんと触ってきた。。
自分から触りたくて仕方がなかった人から予告なく優しく触られ、脳内が嬉しさの充満を通り越し、ヒューズしてしまった。
だ、だめだ…。予想外の状況にパニック気味になってしまい、そそくさと立ち去ってしまった。
俺って…馬鹿で間抜けで意気地なしだ…。
長年あこがれ続けていた初恋の君が俺と毎日仕事をしてくれる…。ああ、どうしても気持ちが空回りしてしまう。
今日は涼君が企画書案を持ってきてくれた。
主任である俺が必ず目を通すと伝えていたからだ。
涼君を目の前に座らせて同じ空気を吸う。
企画書はほぼ完ぺきだ。流石だな。
ちらちらと思い人を見るために視線が勝手に涼君に動いてしまう。
冴えないスーツと髪型で一瞬の見た目では分からないかもしれないが、実は涼君の顔は整っている。
長いまつげに綺麗な鼻筋。
笑うと形の良い大きめの瞳が三日月形に変わりドキリとしてしまう。
よく見ると手足もすらりと長くてスタイルが良い。
安物のスーツのおかげで上手くこの素材を隠してくれている。
露出している首筋はため息が出るほどなまめかしくて吸い付きたくなってしまう。
いかんいかん。
仕事中にそんなことを考えてはいけない。
ふうと何度も呼吸を整えて頭から邪念を取り払う。
涼君がぼんやりしていたので女の事でも考えていたのかと聞くと、否定しない回答だった。
じゃあ、彼女の事でも考えていたのかとカマをかけてみたら、それは違う、彼女はいないって話だった。よ、よし!
今無性に嬉しい…。感動のあまり呼吸が乱れる。
これじゃ企画書を読んで息を乱す変質者だ。気持ち悪がれてしまう。
深呼吸をしながら冷静を装って企画書を眺めていると、涼君が斎藤さんに資料を見てもらう事を提案してきた。
そんなこと絶対駄目だ。
この時間は俺が涼君をゆっくりと観察し、交流する機会なのだから。
斎藤さんは典型的なくたびれたマイホームパパだ。
社歴が長い分俺もよく頼る人で、悪い人ではないのは理解している。
だが、涼君との距離がいささか近いのが気になっていた。
しかし、涼君の教育係を別の人にとなると独身が多いこの部署、他に安全な適任者がいない。
今、涼君のビジュアルを含めたハイスペックさを認識されると厄介だ。
俺は斎藤さんに頼るなと説明し、この役得だけは死守した。
ある日、涼君がデスクでお弁当を食べている姿があった。
こっそり近づくと、見るのが悲しくなるような、夕飯の残り物を寄せ集めたような茶色い弁当だった。
申し訳なさ程度にブロッコリーが一つお米ゾーンに転がっていた。
彼のスーツと言い、この弁当と言い金銭に困っているのだろうか?
前職も割と名の通った企業だったはずだ。役職がつかなければ給料が低かったのだろうか?
物凄く心配になる。
本当は仕事帰りに一杯やってかないか?と誘いたいところだが、ちょうど管理者会議でそのフレーズはパワハラになりかねないので死語認定されたところだ。
涼君から誘ってもらうには良いんだろうが、そんな気配はない。
俺の自宅に誘うのは以ての外だ。
友人や恋人であればこのハードルは低いんだろうけど、今は上司と部下だからな。
俺にできることと言えば、出張土産と言う名のプレゼントしかできない。
少しでも涼君の生活が潤うように、けどもらう相手の負担にならないぎりぎりの値段設定で毎回涼君にお土産を渡してきた。
何回目かのお土産のお礼の際、すごく気に入った味があったと言ってもらえた。
それを説明してくれる彼の笑顔が何よりの礼だ。ああ、こんなに近くで彼の笑顔が見れるなんて、幸せだ。
しかも、涼君に俺の事をカッコいいとか素敵だとか言ってもらえた。
今まで数えきれないほどお世辞は言われてきたが、涼君に言われると破壊力がすごい。
嬉しさが脳内を充満していた。
それだけで舞い上がっていたのに、予想外にも涼君が俺の肩をぽんぽんと触ってきた。。
自分から触りたくて仕方がなかった人から予告なく優しく触られ、脳内が嬉しさの充満を通り越し、ヒューズしてしまった。
だ、だめだ…。予想外の状況にパニック気味になってしまい、そそくさと立ち去ってしまった。
俺って…馬鹿で間抜けで意気地なしだ…。
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