俺の事嫌いなんですよね?

ミミリン

文字の大きさ
上 下
17 / 29

俺の初出張

しおりを挟む
週が明け、草野主任は出張だったので、あの日少し険悪になった話は蒸し返さずに済んだ。


その後草野主任が帰ってきても特に普段と変わらず業務を進めている。

そして、俺は斎藤さんと出張のスケジュールを確認し合うために個室に移動している。

個室で仕事のスケジュールや訪問先に提示する内容など全て確認を終え、少し休憩時間をとっていた。


泊りがけになるのでホテルは斎藤さんが進んで予約を取ると言ってくれた。

「あのさあ、田上君だから言うんだけどさあ…。」

「はい、何でしょう?」

「女性社員に聞かれたら村八分になるんだけど、田上君だから言うんだけど…。」

「むちゃくちゃもったいぶるじゃないですか。何ですか?」斎藤さんのこういうノリ結構好きだ。斎藤さんは職場ではベテランで、プライベートは3児のパパさんだ。

「泊まる日は串カツを食べに行きたいんだよ。そこでビール飲んでさ。」

「良いじゃないですか。お供しますよ。」

「そんで、俺が予約予定のホテルの近くにお姉ちゃんの店が沢山あるわけ。」

「ああ、綺麗なお姉さんいるお店ですか?」

「そうそう。ちょっと触らせてもらう系。」

「なるほど。興味深いですね。」

「ああ、田上君ならそう言ってくれると思った。田上君も興味あるなら社会見学で付いてきてもいいよ。」

「そうですね、考えておきます。」

「まあ、田上君はこれからいくらでも遊べるもんな。俺は今三人目産まれて、嫁さんにいっつも怒られてさあ。たまには気分転換しても罰は当たらないと思うんだ。」

「俺、結婚してないし子供もいないから分からないですけど、大変そうですね。」

「そうそう。田上君独身だし、よく見るとカッコいいから今後結婚と言う名の檻に入った時後悔しないように存分に遊ぶことをお勧めするよ。」

「は、はあ。アドバイスありがとうございます。」


「楽しそうな会話してますね。」後ろから聞きなれた低い声がした。


斎藤さんと俺はビクッと肩が震える。

振り返ると口は笑ってるけど目が笑っていない草野主任が立っている。

「草野主任、お疲れ様です。先ほど大阪出張の日程スケジュールを組んで完成したところです。なあ、田上君。」

「は、はい。先方の提出資料も説明も予習してきました。」

「なんせ、田上君入職後初の出張ですからね。現場で色々と習得してもらおうと思います。」

「なるほど、頼もしいですね斎藤さん。」

「はい。ありがとうございます。」

「けれど、その出張は私と田上君で行くことになりました。これは部長、課長指示です。」

「うえ?草野主任がですか?」斎藤さんがびっくりしている。

「まあ、私も遠方の現場に向かう回数が減ったのですが得意先に顔を見せることも大切ですから、この指示に従うつもりです。」


まじでえ?勘弁してくれ。詰んだ…。


「田上君、出張で斎藤さんに色々教えてもらおうとしていたみたいだね。仕事と夜の楽しみ方も。」

「いえいえいえ。滅相もありません。ね、斎藤さん?」

「はい。至って真面目に出張に臨む次第です。」

「へえ。まあ、そう言うことにしておきましょう。斎藤さん、この日は休日にして普段子育て頑張っている奥様に変わって育児を担い、気分転換してもらってはいかがでしょうか?家族休暇つけておきます。せっかく福利厚生で休暇がありますしね。」


「は、はい。ありがとうございます…。」最後の方は聞き取れないほどがっかりしたお礼だった。

「では、田上君よろしくお願いします。出張先のホテルは私が手配しますので君は先方に行った際のシミレーションをしっかりしておいてくださいね。」


「は、はい。承知しました。」


「はい、では解散しましょう。」有無を言わせないような圧を感じる言い方だ。


俺と斎藤さんは肩をがっくりと落とし無言でとぼとぼと自分のデスクに帰って行った。





「全く…。油断も隙もないな。」その様子を見て草野主任がぼそりとつぶやく。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

処理中です...