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お揃い
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研修がやっと終わって自宅に帰りひと眠りした。
これが新卒だったらこのまま仲良くなった子たちと飲み明かすんだろうけど俺は明日の業務に備えて休む方を選んだ。
市川君に誘われたけど連絡先交換だけして帰宅した。
結局残念なことに、無村かすみちゃん似の女の子とは連絡先交換は出来なかった。
いやいや彼女を作るために研修に行ったわけではないんだから。と一人突っ込みを入れる。
そういえば草野主任は成美ちゃんといい感じになったのかな?意外だよなあの人がギャル系好きっていうの。
色々人は見かけによらないな~。
次の日の朝、いつも通り業務を遂行する。
草野主任には馴れ馴れしくならないように、淡々と業務の質問をしてデスクに戻ろうとした。
けど、ぐっと腕を掴まれた。
おいおい、またこの人距離感バグってるじゃん。
人が近づくと怖がるのに自分から突然触ってくるとか。何か何考えてるか読めない人だよな。
「あ、す、すまない。田上君、ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「あ、はい。大丈夫です。」俺は誰もいない会議室に連れていかれた。
「あの、先日は研修会で色々と助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ。僕は何もしてませんよ。気にしないでください。それに草野主任が怖がりだって誰にも言わないですから安心してください。」
「あ、ああ。」
「…話はそれだけですか?」
「いや、その…。」
何かいっつも圧のある指示を出すけど、今日は柄にもなく歯切れが悪いな。体調良くないのかな?
「その、肝試しのお礼の件だが次の日曜日とか予定を空けてくれないか?」
え?あの話本気だったんだ。別にお礼とか良いのに。気を使いすぎだよ。
「いや、良いですよ。休日なんだから僕なんかと一緒に居てもつまらないだろうし気を使わないでください。」
休みの日まで部下と過ごすんだったら一人で映画でも見に行く方が有意義だろう。
「田上君は何か予定とかあるのか?」
「いや、ないですけど。一緒にデートに行く相手もいないですしちょっと映画見て本屋でも寄って吉野家いって一日終わりです。僕と一緒だとつまらないですよ。」
自分で言っていて情けなくなるな。こんな人生勝ち組の人からしたらちっぽけな休日だろう。
「つまらないなんて絶対思わない。田上君と一緒に行きたいんだ。頼む。田上君にしか頼めないお願いなんだ。」
草野主任は俺に向かってガッツリ頭を下げた。
え?お礼から頼みごとに変わってる?それだけアフタヌーンティー行きたいのか?
まあ女の子とそんなところ行ったら後々付き合ってる設定にされたりするのかな?
俺と成美ちゃんの関係とはわけが違うんだろう。
「わ、分かりました。頭を上げてください。僕で良かったら一緒に行きます。」
「そ、そうか!ありがとう!すごく嬉しいよ!」頭を上げた草野主任は俺の両手を握って感謝を述べてきた。
また体が近い。いや、別に良いんだけど。
「ああ、すまない。嬉しさのあまり、どうしても我慢できなくて。」
嬉しくて男の手を握る姿なんて想像できないけどなあ。本当にギャップが激しくて変わった人だ。
「では、待ち合わせの事を後で伝えたいから田上君の連絡先を交換しても良い?」
ポケットからプライベート用であろう携帯電話をすっと出してきた。
ああ、この人のプライベートの連絡先なんて女性社員からしたら喉から手が出るほど欲しいものなんじゃないか?
「あ、はい。えっと僕はこれです。この肝試しの時にもらったハチ割れ猫の写真です。」
「ああ、これ?昨日アイコン変えたの?」
「へへへ。そうなんです。何か愛着が産まれてしまって。今このマスコット僕のベッドに転がってるんです。」
「へ、へえ。田上君のベッドに…。」
「あ、ちょっと引きました?」
「い、いや。引かないよ。その、羨ましいと思ってしまって。」
「あ、草野主任にも渡しますよ。アリクイとかコアラもありますよ。何だ言ってくださいよ、草野主任がファンシー好きでも大歓迎ですよ。今度持ってきますね。どっちが良いですか?あ、ハチ割れが良いならお譲りしましょうか?」
「い、いや。大丈夫だ。ああ、でもやっぱり一つもらおうかな。アリクイをお願いしよう。」
「分かりました。アリクイですね。あれも像みたいで可愛いですよ。」
「ああ、ありがとう。楽しみにしているよ。」
「はい。あ、草野主任のアイコンは…あ、初期設定の人型ですね。」
「ああ。あまりそういうものに関心がなくて。でも私もアリクイに変えてみようかな。」
「あははは。是非そうしてください。草野主任なら意外性があって可愛いですよ。俺とお揃いにしましょうよ。」
「あ、ああ…。」
草野主任が押し黙ってしまった。斜め下を向いて視線が合わなくなってしまった。あ、怒ってる?
ああ、またこのパターン。俺は何回この人の地雷を踏んだら気が済むんだよ。だから馴れ馴れしくするなってあれほど反省したのに…。自分の学習能力の低さに悲しくなってくる。
「す、す、すみません。お揃いとか…馴れ馴れしかったです。立場をわきまえます。じゃ、じゃあ僕はこれで失礼します!」これ以上俺の顔を見たら不快感マックスにさせてしまうだろうからダッシュで会議室を出た。
会議室に残された草野主任は…。
「何だよお揃いって…。困ったな、不意打ちが多すぎるんだよ…。」
と言いながらハチ割れ猫のアイコンを見てため息をついていた。
これが新卒だったらこのまま仲良くなった子たちと飲み明かすんだろうけど俺は明日の業務に備えて休む方を選んだ。
市川君に誘われたけど連絡先交換だけして帰宅した。
結局残念なことに、無村かすみちゃん似の女の子とは連絡先交換は出来なかった。
いやいや彼女を作るために研修に行ったわけではないんだから。と一人突っ込みを入れる。
そういえば草野主任は成美ちゃんといい感じになったのかな?意外だよなあの人がギャル系好きっていうの。
色々人は見かけによらないな~。
次の日の朝、いつも通り業務を遂行する。
草野主任には馴れ馴れしくならないように、淡々と業務の質問をしてデスクに戻ろうとした。
けど、ぐっと腕を掴まれた。
おいおい、またこの人距離感バグってるじゃん。
人が近づくと怖がるのに自分から突然触ってくるとか。何か何考えてるか読めない人だよな。
「あ、す、すまない。田上君、ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「あ、はい。大丈夫です。」俺は誰もいない会議室に連れていかれた。
「あの、先日は研修会で色々と助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ。僕は何もしてませんよ。気にしないでください。それに草野主任が怖がりだって誰にも言わないですから安心してください。」
「あ、ああ。」
「…話はそれだけですか?」
「いや、その…。」
何かいっつも圧のある指示を出すけど、今日は柄にもなく歯切れが悪いな。体調良くないのかな?
「その、肝試しのお礼の件だが次の日曜日とか予定を空けてくれないか?」
え?あの話本気だったんだ。別にお礼とか良いのに。気を使いすぎだよ。
「いや、良いですよ。休日なんだから僕なんかと一緒に居てもつまらないだろうし気を使わないでください。」
休みの日まで部下と過ごすんだったら一人で映画でも見に行く方が有意義だろう。
「田上君は何か予定とかあるのか?」
「いや、ないですけど。一緒にデートに行く相手もいないですしちょっと映画見て本屋でも寄って吉野家いって一日終わりです。僕と一緒だとつまらないですよ。」
自分で言っていて情けなくなるな。こんな人生勝ち組の人からしたらちっぽけな休日だろう。
「つまらないなんて絶対思わない。田上君と一緒に行きたいんだ。頼む。田上君にしか頼めないお願いなんだ。」
草野主任は俺に向かってガッツリ頭を下げた。
え?お礼から頼みごとに変わってる?それだけアフタヌーンティー行きたいのか?
まあ女の子とそんなところ行ったら後々付き合ってる設定にされたりするのかな?
俺と成美ちゃんの関係とはわけが違うんだろう。
「わ、分かりました。頭を上げてください。僕で良かったら一緒に行きます。」
「そ、そうか!ありがとう!すごく嬉しいよ!」頭を上げた草野主任は俺の両手を握って感謝を述べてきた。
また体が近い。いや、別に良いんだけど。
「ああ、すまない。嬉しさのあまり、どうしても我慢できなくて。」
嬉しくて男の手を握る姿なんて想像できないけどなあ。本当にギャップが激しくて変わった人だ。
「では、待ち合わせの事を後で伝えたいから田上君の連絡先を交換しても良い?」
ポケットからプライベート用であろう携帯電話をすっと出してきた。
ああ、この人のプライベートの連絡先なんて女性社員からしたら喉から手が出るほど欲しいものなんじゃないか?
「あ、はい。えっと僕はこれです。この肝試しの時にもらったハチ割れ猫の写真です。」
「ああ、これ?昨日アイコン変えたの?」
「へへへ。そうなんです。何か愛着が産まれてしまって。今このマスコット僕のベッドに転がってるんです。」
「へ、へえ。田上君のベッドに…。」
「あ、ちょっと引きました?」
「い、いや。引かないよ。その、羨ましいと思ってしまって。」
「あ、草野主任にも渡しますよ。アリクイとかコアラもありますよ。何だ言ってくださいよ、草野主任がファンシー好きでも大歓迎ですよ。今度持ってきますね。どっちが良いですか?あ、ハチ割れが良いならお譲りしましょうか?」
「い、いや。大丈夫だ。ああ、でもやっぱり一つもらおうかな。アリクイをお願いしよう。」
「分かりました。アリクイですね。あれも像みたいで可愛いですよ。」
「ああ、ありがとう。楽しみにしているよ。」
「はい。あ、草野主任のアイコンは…あ、初期設定の人型ですね。」
「ああ。あまりそういうものに関心がなくて。でも私もアリクイに変えてみようかな。」
「あははは。是非そうしてください。草野主任なら意外性があって可愛いですよ。俺とお揃いにしましょうよ。」
「あ、ああ…。」
草野主任が押し黙ってしまった。斜め下を向いて視線が合わなくなってしまった。あ、怒ってる?
ああ、またこのパターン。俺は何回この人の地雷を踏んだら気が済むんだよ。だから馴れ馴れしくするなってあれほど反省したのに…。自分の学習能力の低さに悲しくなってくる。
「す、す、すみません。お揃いとか…馴れ馴れしかったです。立場をわきまえます。じゃ、じゃあ僕はこれで失礼します!」これ以上俺の顔を見たら不快感マックスにさせてしまうだろうからダッシュで会議室を出た。
会議室に残された草野主任は…。
「何だよお揃いって…。困ったな、不意打ちが多すぎるんだよ…。」
と言いながらハチ割れ猫のアイコンを見てため息をついていた。
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