俺の事嫌いなんですよね?

ミミリン

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お礼をさせてほしい

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あれ、草野主任が俺って言った。

怖いから手を繋いでほしいって…。何だそのギャップ狙いは。

俺が女子なら鼻血出すぞ。


「そんなお願いで良かったらいつでも聞きますよ」何かこの人にも弱みがあるって知ってちょっと嬉しいし。


「あ、ありがとう。じゃあ…。」


そう言って草野主任は俺の手を握った。

そう、握ったのだが、何故か…


恋人繋ぎじゃんこれ。


え?必然的に腕も密着するし体の距離もすごい近いぞ。体温が伝わる…。


あれ?そもそもこの人、俺が触った時すっごい避けてたじゃん。


この握り方じゃないと怖さ克服できないのかな?でも、不快じゃないかな?

「あの、草野主任大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ。田上くんのおかげだ。本当にありがとう。」


今まで見たことのない満面の笑みで答えてもらった。


ん~。じゃあ、いっか。あんまり深く考えないでおこう。上司と仲良くなるのは悪い事じゃないしな。


草野主任と恋人繋ぎをしながら3個目のアイテムを見つけに行く。

ああ、そろそろ目的地っぽいな。ん?草野主任が時々ため息をついたりなんとなーく震えてるような感じがした。

普段嫌っている俺に手つなぎを頼むんだからよっぽど怖かったのかな?

何かトラウマでもあるとか?

「草野主任、もう少しで終わりますからね。」


「あ、ああ。ありがとう。そうだ、この研修が終わったら今日のお礼をさせてほしい。」


「ええ?いいですよちょっと手つないだだけじゃないですか。大丈夫です。そんなことしなくても僕誰にも言いふらしたりしませんよ。それにいつもお土産までもらってるしお礼しないといけないの僕の方ですから。」


「いや、それでは俺の気が済まない。」

草野主任ところどころ私から俺呼びに変わってる。やっぱり新鮮だな。

「ああ、そうだ。さっき田上君が一緒に出掛ける友達が減ったって話していただろ?」


「あ、はい。」そうなんだよ。みんなオタクで女性に免疫なくて二次元好きばかりだったのに、みんなそれなりの坊ちゃんで有名企業に勤めてたらモテ始めたんだよな。

そしたらあれよあれよと結婚しちゃってさ。今じゃ子供もいる奴も増えてきた。

まあ、二次元好きは変わってないけど。


俺は奨学金返済中のしがないサラリーマンだったからモテなかったけど、ああいうのを見ると結婚欲がちょっと低下してしまった。何だかんだで女の子ってやっぱりお金好きだもんな。超現実主義ってやつ。


「私の周りもそうなんだ。みんな家庭を持ってしまってね。田上君は同じ年だから分かってもらえるよね、この何とも言えない孤独感を。」


「え、ええ。まあ。でも、草野主任なら綺麗な女の人沢山誘ってくれるんじゃないですか?」


「女性のしたたかさにちょっと抵抗感が出ていてね。さっき田上君も言ってたじゃないか変に期待されるのがプレッシャーって。私も勝手に理想を押し付けられるのが息苦しいんだよ。」


「そうなんですね。草野主任だったら確かにモテるけど苦労も多そうですね。」


「さっきから田上君は私の事モテるとかカッコいいとか言うけど、全然そんなことないよ。

本当に好きな人からは相手にされないし情けない空回りばっかりだ。
中身を知って慕ってくれる友達も少ないしこの通り怖がりだし。」草野主任が眉毛を下げて笑っている。


この人が自虐するなんて…。そっか。完璧すぎて上辺だけを見られるのも大変だな。


「そんな…。草野主任仕事も出来るし人望もあります。さっきミーティングで俺の事かばってくれたし、ちょっと感動しました。かなり恥ずかしかったけど。あはは。」


草野主任も一緒に笑ってくれると思ったのにすごく驚いた顔をしてうつむいてしまった。

けど、手はがっつり恋人繋ぎでつながれたまま。

やっぱり、いまいちこの人の距離感分からない。さっきも調子乗ってしまったかな…。せっかく褒めてもらったのにあの言い方は良くなかったか。


「た、田上君。」

「は、はい。」

「今度、一緒に帝国ホテルのアフタヌーンティーに行こう。ぜひお礼させてくれ。」すごい顔が近い。これだけ整った顔が近いと迫力があるなあ。


草野主任が必死な感じだ。それだけ友達が少ないし寂しんだな。まあ、俺もその気持ちはよく分る。


「分かりました。実は僕甘いものもすごく好きでずっと行きたかったんです。男一人でいくのも抵抗あるし成美ちゃんは友達ともう行ってきたって言うから諦めようと思ってたんです。ぜひ行きましょう。」


「あ、ありがとう。ああ、すごく嬉しいよ。本当にありがとう。」そう言って握っていた俺の手を優しく引かれ草野主任の頬にそっと寄せられた。


「あ、あの…。草野主任、手…。」俺の手があなたのほっぺたにちょっとついてる。いや、別に良いんだけど…。


「う、うわああ!ごめん!」そう言うとすごい勢いで手を離された。


「いえいえ、大丈夫です。ああ、3個目のアイテムありましたよ。これは像かな?アリクイかな?よし。これで3個揃ったからゴールですね。すぐそこだからさっとゴールしましょう。」

「あ、ああ…。」何故か草野主任はじっと俺と握っていた自分の手を見つめていた。


大丈夫ですよ。もう肝試し終わるし、怖がりなこと誰にも言わないから。この人ちょっと不思議系か?


無事ゴールして上司と部下の奇妙な肝試しが終了した。


まあ、ちょっと草野主任の意外な一面見れて結果良かったかな?

そして、肝試しが終わった後そのまま終礼して就寝時間となった。


次の日、研修生たちは昼までミーティングだったけど、草野主任は朝一で会社に呼ばれて出勤したそうだ。忙しい人だなあ。
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