俺の事嫌いなんですよね?

ミミリン

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やっぱり嫌われている

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そう、俺の事を嫌っているであろう上司の草野優成は俺のようなみみっちい男とは違い、誰もが認めるイケメンだ。


細マッチョですらりと長い手足。

切れ長の目に筋の通った綺麗な鼻。

笑ったところを見たことないけど、歯並びも良いからきっと笑えばイケメン度マックスになると思う。


こんなすごい人俺の周りにはいない。

みんなオタクばっかりだったから。

みんないい奴ばっかりで気を許せる奴らだから今でも交流はある。

この人面接の時、最後まで俺を睨みつけるように見ていたのがすごく印象に残っている。


ああ、何とか入社できたけどあんなところで変な恨みなんか買うんじゃなかった。

漫画で表現するならトホホだ。


「あの…、草野主任。」


「何だ?」


「僕の企画書、だめだめと思うので一度斎藤さんに目を通してもらってから草野主任に提出します。」


「何故斎藤さんなんだ?」


「え、いや、斎藤さんだったらベテランだし僕より先方の内部事情も知ってると思うので…。あの、草野主任忙しいのに僕なんかの企画書を見てもらうなんて申し訳ないなって…。」


草野主任はまた俺を睨んだ後ふ~とため息をつく。


「田上君、私が忙しいか忙しくないかは君が決めることじゃない。この企画は私が責任をもって君と進めると決めたんだ。斎藤さんは関係ないだろう?」


「は、はい。すみません…。」斎藤さん、巻き込んでごめん…。

横目でちらりと斎藤さんを見ると何故か申し訳なさそうに俺を見ている。

ああ、先月3人目のお子さんが産まれて忙しんだな。

普段から濃い髭が更に濃くなって山男みたいになっている。


「よそ見をするな。」

「は、はい。すみません。」


その後数十分拷問のような待機時間を経てやっと解放してもらえた。思ったほど修正箇所がなかったのが救いだ。


さっさと企画書を指摘通り修正して時計を見ると休憩時間になっていた。


大企業らしく近代的な社員食堂があるけど俺は今流行りの弁当男子だから食堂には行かない。

自分のデスクで弁当を広げていると、頭の上に人の気配を感じた。


振り返ると、嫉妬するのもおこがましいほど整った顔の草野主任様だった。


ああ…。昼休憩中くらいは俺の事を嫌っていてもそっとしておいてほしい。

心の本音が口から出そうだった。


「これは田上君の昼ご飯かい?」

物凄くじろじろと弁当の中身を見られている。

おいおい、俺の弁当なんて見る価値ないですよ。

ほとんど茶色だし、野菜と言えば昨日茹でたブロッコリーだけだもん。


「そ、そうです。」

「自分で作るの?」

「は、はい。そうですね。」

「…。」

何だよ聞いてきたくせに全然会話続かないじゃん。


「ははは。可愛い彼女とか料理上手な奥さんでもいればもっと凝った弁当持たせてもらえるかもしれないですけど…。あまりモテないもんで。たははは…は。」


「…。」

草野主任にじっと見られる。


何で無言なんだよ。こっちが自虐ネタで話題を振ってるんだから何か突っ込んでくれよ。

ほら、田上君モテなさそうだもんね。

とか今度合コン一緒に連れて行ってやるよとか俺の彼女の友達紹介しようかとかさあ。


「田上君は自分の価値が分かってないんだね。ああ、電話だ。失礼。」


やっと喋ったかと思ったら意味不明な事を言われた。


俺の価値は可愛い彼女や料理上手な奥さんを持つほどないって事か?

失礼すぎないか?



ああ、もう止めよう。被害妄想強めて無駄に悲しい思考に陥る前にさっきの会話を忘れよう…。

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